腎ろうとは?どんな人が対象になるのか?在宅における注意点を解説

公開日:2023.4.24 更新日:2024.10.08

ろう は腎臓から膀胱への尿の通り道である尿管の通りが悪く、腎臓の機能が悪くなってしまうことを防ぐための手段です。


また、身体に管が入ることになるため、管理には注意が必要です。

今回は、腎ろうを造設する目的や対象となる患者、注意点などについて詳しく解説していきます。

膀胱 =骨盤の中にある袋状の臓器



腎ろうとは?




腎ろうは背中から腎臓に穴をあけて、チューブ( カテーテル )を留置し、尿の流れを確保する方法です。

腎臓で作られた尿は、尿管を通り、 膀胱 へ流れていきます。

膀胱 に溜められた後、尿道から排出されるというのが正常な流れです。

ところが 悪性腫瘍 の尿路への 浸潤 (*1)や尿路損傷により腎臓から膀胱 までの尿の流れが妨げられてしまいます。

すると腎臓から先へ尿を流すことができなくなり、そのまま放っておくと腎不全になってしまいます。

そのため腎臓から尿を外に出すための方法として腎ろうが必要になってきます。

*1浸潤 =がん細胞が周囲の組織へ広がること。=悪性腫瘍の尿路への浸潤とは、正常部分に悪性腫瘍が侵入に正常構造を破壊するということ

腎ろうの対象となる患者・適応疾患について




腎ろうの目的は大きく分けると尿路変更泌尿器尿路内視鏡(*1の2つあります。

腎ろうを造設し、長期で管理が必要になるのは尿路変更の場合です。

今回は尿路変更について解説していきます。

尿路変更は、以下に対して、腎機能を守る目的で行われます。

  • 尿管結石 による尿管閉塞(*2)
  • 尿管 浸潤 による尿管閉塞(*2)
  • 尿管ステント留置(*3)が困難な尿管閉塞(*2)
  • 悪性腫瘍 の尿管圧迫

尿管閉塞状態で、特に尿管ステント留置(*3)が不可能な場合に適応となります。

その際、具体的な適応疾患としては、以下のようになります。

  • 尿管結石 嵌頓 (*4)状態
  • 胃癌などの消化器癌による腹膜転移や子宮癌などの婦人科癌による尿管圧迫
  • 尿管 浸潤 のある場合

*1泌尿器尿路内視鏡 =膀胱や尿道を内視鏡で観察する検査
*2尿管閉塞=腎臓、尿管、膀胱、尿道など、尿が通過する経路(尿路)のどこかが詰まり、尿の流れが遮断された状態
*3尿管ステント留置=腎臓と膀胱をつなぐ尿管が塞がらないように、尿管ステント(拡張可能な網目状の小さい金属製の筒)という管を留置する施術
*4嵌頓 =腸の一部がヘルニア門に挟まり込んで、おなかのなかに戻らなくなってしまった状態

腎ろうとウロストミーの違い




尿路変更には腎ろうと別の方法としてウロストミー(尿路ストーマ)があります。

ウロストミーは回腸導管や尿管皮膚ろうといった尿路変更術によって造設されます

尿の出口はお腹からに変更となります。

新しく作られた尿の出口に尿を溜めておくストーマ装具を着用して、適宜交換する必要があります。

ウロストミーを造設する原因のほとんどが膀胱癌で 膀胱 を摘出したことによるものです。

また、腎ろうではなく、ウロストミーを選択するためには尿管が利用できることが必要です。

なので、尿管閉塞状態の場合にはウロストミーではなく腎ろうを選択することになります。

腎ろうに痛みはある?




腎ろうを造設する際には麻酔をして行いますが、麻酔が切れると最初のうちは管の入っている箇所に痛みを感じることがあります

次第に痛みは和らいできますが、落ち着いてからも管が動くことで痛みを感じてしまう方はいらっしゃいます。

なので、管の固定の仕方や、強く引っ張ったりしないよう注意が必要です。

在宅での腎ろうのカテーテル交換時の注意点




在宅で腎ろうのカテーテル 交換を行うために、レントゲン撮影設備を利用しなくても交換が可能です。

しかし、腎ろうを造設した後、カテーテル(*1)の通り道がしっかりと形成されるまでに1ヶ月ほどかかります。

腎ろう造設後、数回は泌尿器科での交換が必要になります。

カテーテルの通り道がしっかりと形成された後、レントゲン撮影設備を使用しなくても、カテーテル交換をスムーズに行えることが確認できれば、

在宅でのカテーテル交換が可能と考えられます。

また、 カテーテル 交換がスムーズに行えず、うまく入らない場合や、抜けてしまってしばらく時間が経過してしまった場合には、在宅でのカテーテル交換は困難になります。

そのため、対応可能な医療機関へご紹介させていただくことになります。

*1カテーテル =体内に挿入して、検査や治療などを行うための柔らかい細い管

腎ろうはいつまで続ける必要がある?




腎ろうを造設した後は尿やカテーテル自体の管理に注意をしなくてはならないため、これまでの生活とは大きく変わってしまいます

徐々に腎ろうに慣れていくとはいえ、いつまで続けなくてはいけないのかと考えるのは当然のことです。

腎ろうをいつまで続ける必要があるのか、ということについては、原因が何であるかが重要です

尿管結石が原因である場合には結石を取り除くことで腎ろうが不要になる可能性はあります

悪性腫瘍 による尿管閉塞であれば、悪性腫瘍(*1)が改善しない限りは腎ろうは一生必要となります。

*1悪性腫瘍 =腸の一部がヘルニア門に挟まり込んで、おなかのなかに戻らなくなってしまった状態

腎ろうの脇から尿が漏れる時は




腎ろうによって腎臓で作られた尿はカテーテルを通じてバッグへ回収されます

しかし、カテーテルの脇から漏れてしまうこともあります。

ほとんどの尿がバッグへ回収できており、多少漏れている程度であれば、あまり気にする必要はないです。

しかし、ほとんどが漏れてしまうような場合には注意が必要です。

原因としては、以下の場合が考えられます。

  • カテーテル内に汚れが詰まっている
  • カテーテルの先端の位置が悪い
  • カテーテルが折れ曲がってしまっている

ご自身で対処可能な問題もあれば、カテーテル交換が必要な場合もあります。

そのため、原因がわからない場合には医療機関へご相談いただくことをお勧めいたします。

関連記事:自己導尿の目的とは?カテーテルとの違いや男女別の手順を解説

腎ろうからの尿量が少ない時は




腎ろうから流れてくる尿量が少ない場合に原因として考えられるのは、以下の通りです。

  • 脱水状態で作られる尿量が減っている
  • 前述の脇漏れの原因と同様でカテーテルに異常がある

脱水状態については水分補給や点滴で対応が可能
です。

カテーテルの異常については前述の通り対応が可能です。

何が原因なのかよくわからない場合やご自身で解決が難しい場合には、医療機関へご相談いただくことをお勧めいたします。

腎ろうの予後について




腎ろうは腎臓を貫いて 腎盂  (*1)までカテーテルの先端が入っています。

そのため、腎臓への影響はないのか不安に感じられる方がいらっしゃるかもしれません。

腎ろうを造設した直後は腎臓から出血することがあります

一時的に腎臓の機能が低下することはありますが、大きく低下することは稀です

また、長期間の腎ろう管理となることが原因で腎臓の機能が低下するということもないので、心配する必要はありません

*1腎盂 =腎臓の中の尿が通る部分

訪問診療での対応




訪問診療では腎ろうの カテーテル を交換し、適切に固定するといった処置を自宅や施設で行うことができます

また、腎ろうから尿が流れてこないなど、腎ろうに関わるトラブルについて簡単なものであれば、医療機関まで行くことなく、自宅や施設で対応することが可能です。

西春内科在宅クリニックができる対応




腎ろうの カテーテル は少なくとも月に1回交換が必要です。

そのため、通院が難しい方は自宅や施設での交換ができると負担が軽減します。

西春内科在宅クリニックでは在宅医療でのカテーテル交換が可能です

カテーテル管理についても丁寧に指導させていただきます。

他にも様々な不安があるかと思いますので、ご相談いただいたことについて親身に対応したいと考えております。

まずはお気軽にご相談ください。



まとめ


今回は、腎ろうを造設する目的や対象となる患者、注意点などについて詳しく解説しました。

腎ろうは造設した後、一生付き合っていかなくてはならないことがほとんどであり、

管理の仕方が大切です。

記事を読んでいただき、今後腎ろう管理が必要になりそう、

現在腎ろう管理しているけれど今後の管理が心配

という方は、ぜひご相談ください。

【参考文献】

「がん患者の泌尿器症状の緩和に関するガイドライン2016年版」日本緩和医療学会

この記事の監修医師

監修医師: 日本泌尿器科学会専門医 石川 智啓

専門領域

泌尿器科一般

認定・資格

泌尿器科専門医(日本泌尿器科学会)
da Vinci Surgical Systemコンソールサージャン・サーティフィケート

監修医師: 福井 康大