クループ症候群とは?特徴的な症状と受診目安などについて解説

公開日:2024.11.27 更新日:2024.11.27

クループ症候群

 

お子さんが夜中に特徴的な咳をし始めて心配になったことはありませんか?

 

このような症状は『クループ症候群』の可能性があります。

 

適切な知識があれば、重症化を防ぎ、お子さんの体調を早期に改善できます。

 

今回は、クループ症候群の症状から家庭での対処法まで、保護者の方に必要な情報を紹介するので、参考にしてください。




クループ症候群とは?

 

クループ症候群

 

クループ症候群は、ウイルス感染やアレルギー反応により、喉に炎症が起きる病気です。

 

主に生後6か月から3歳の乳幼児に多く見られます。

 

喉が腫れて気道が狭くなることで、以下のような特徴的な症状が現れます。

 

  • 犬の吠え声のような特徴的な咳
  • オットセイの鳴き声のような咳
  • 息を吸う時に『ゼーゼー』という音がでる
  • 声がかすれる

 

多くの場合は軽い症状で治りますが、中には急に症状が悪化することもあります。

 

特に、呼吸が苦しくなって唇が青くなるような場合は、すぐに受診が必要です。


関連記事:乾燥で咳が止まらないのはなぜ?咳の特徴や悪化させないための方法を紹介

クループ症候群の原因

 

クループ症候群

 

ウイルス性

 

クループ症候群の主な原因はウイルス感染です。

 

特に以下のウイルスが原因となることが多いとされています。

 

  • パラインフルエンザウイルス
  • インフルエンザウイルス
  • RSウイルス
  • アデノウイルス

 

インフルエンザウイルスによるクループ症候群は、他のウイルスに比べ重症化しやすい為、注意が必要です。

 

ただし、持病のある子どもは、どのウイルスでも重症化しやすいので、早めの受診をおすすめします。

 

非感染性

 

ウイルス以外にも以下のような要因が、クループ症候群の原因となります。

 

アレルギー


花粉、ハウスダスト、動物の毛、特定の食品や薬物に対するアレルギー反応が、喉や気道に腫れや刺激を引き起こし、クループ症候群の症状を誘発する可能性があります。

 

喉や気道への刺激物の吸入

 

たばこの煙、化学物質、強い香りや工業用の粉塵などが、気道の粘膜を刺激し、喉や気管支の通りを狭くしたり、閉塞したりすることがあります。

 

逆流性食道炎(GERD)

 

胃酸が食道に逆流し、喉や気道の近くまで上がってくることで、粘膜を刺激し、炎症を引き起こす可能性があります。

 

特に子供や乳幼児に多く見られます。

 

物理的な外傷

 

激しいせき込みや喉への外傷が、気道の炎症や腫れを引き起こすことがあります。

 

スポーツ中の事故や異物による損傷が原因となり得ます。

 

細菌感染

 

特定の細菌が喉や気道に感染すると、喉に炎症を起こします。

 

気道を直接刺激することで、せきや声のかすれ、呼吸の困難など、クループ症候群の特徴的な症状が現れる可能性があります。

 

これを細菌性クループと呼び、重症化することが多く抗生物質による治療が必要です。

 

このように、クループ症候群の原因は大きくウイルス性と非感染性の2つに分かれ、それぞれ異なる対応が必要です。

 

ウイルス感染は感染予防が重要で、非感染性の場合はアレルギー管理や環境対策も考慮する必要があります。




クループ症候群の特徴的な症状

 

クループ症候群

 

声がれ

 

クループ症候群にかかった子どもは、普段と異なる声になったり、声が出にくくなったりします。

 

特に、しゃがれた声やか細い声が出る場合があります。

 

これは喉の奥にある声帯という部分が腫れて炎症を起こしているためです。

 

この声の変化は、クループ特有の咳の始まりを告げるサインです。

 

夜間に症状が悪化することも多いため、日中に声の変化に気づいたら、早めに医師に相談することをおすすめします。

 

犬が吠えるような咳やオットセイの鳴き声

 

クループ症候群は、気道が狭くなることで以下のような特徴的な咳を伴います。

 

  • 犬が吠えるような乾いた咳
  • オットセイの鳴き声のような咳

 

このような独特な音を伴い、他の風邪や感染症による咳とは異なります。

 

特に夜間に症状が急に始まることが多く、お子さんが咳き込んで呼吸が苦しそうになったら、すぐに対応が必要です。

 

顔色が悪くなったり、肩で息をしたりする場合は、迷わず救急受診してください。

 

吸気性喘鳴

 

クループ症候群にかかると、息を吸う際に「ゼーゼー」という音が聞こえることがあります。

 

これを吸気性喘鳴(こきせいぜんめい)と呼びます。

 

気道が腫れて狭くなっているため空気の通りが悪くなり、息を吸う際に音が発生する状態です。

 

この喘鳴が聞こえる場合、気道の炎症が進行している可能性があります。

 

呼吸音が大きくなったり、苦しそうであればすぐに病院を受診してください。

 

陥没呼吸

 

息を吸うときに、胸や鎖骨の下がへこんでしまう状態を「陥没呼吸」と呼びます。

 

これは体が必死に空気を取り込もうとしているサインで、気道が狭くなって肺に十分な空気が入らない状態を表しています。

 

特に子どもは大人に比べて急激に症状が悪化するため、注意が必要です。

 

陥没呼吸に加えて、以下のような呼吸の異常が見られることもあります。

 

  • 鼻の穴が大きく開く(鼻翼呼吸)
  • 胸やお腹が激しく動く
  • 息を吸うたびに頭が上下に動く(ヘッドボビング)

 

このような症状を見つけたら、様子見はせず、すぐに病院を受診してください。


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クループ症候群の受診目安と診療科目

 

クループ症候群

 

受診目安

 

クループ症候群は、多くの場合自宅での対処が可能な病気です。

 

ただし、以下の症状が出たときは要注意です。

 

特に上3つの症状は危険信号なので、すぐに救急車を呼んでください。

 

  • 息を吸うときに「ゼーゼー」という音が聞こえる(喘鳴)
  • 唇や皮膚が青白くなる(チアノーゼ)
  • 胸やあばらの下がへこむような呼吸をする(陥没呼吸)
  • 子どもの様子がいつもと違う(ぐったりしている、反応が遅い)
  • 38度以上の熱が続く
  • 薬を使っても症状が良くならない

 

これらの症状は時間とともに急激に悪化することがあります。

 

特に夜間は症状が強くなりやすいので、悪化する前の昼間のうちに病院を受診しておくことをおすすめします。

 

診療科目

 

クループ症候群の診察にはまず、小児科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。

 

クループ症候群は夜間に症状が悪化しやすい病気です。

 

夜中や休日に具合が悪くなった場合は、迷わず救急外来を受診してください。

 

特に「ゼーゼー」という呼吸音が強い場合や、子どもがぐったりしている場合は、夜中でもすぐに救急車を呼んでください。




クループ症候群の治療方法

 

クループ症候群

 

重症度評価

 

クループ症候群の治療は、症状の重症度に応じて異なります。

 

軽症の場合は自宅での対処が可能ですが、重症の場合は入院が必要になることもあります。

 

呼吸の状態や咳の様子、酸素レベルなどを見て、以下のように重症度を評価します。

 

軽症

 

普段通りの生活ができている状態で、自宅での様子見が可能です。

 

  • 時々、犬の遠吠えのような咳が出る
  • 遊んだり食事したりは普通にできる
  • 呼吸は落ち着いている

 

中等症

 

症状が進んできた状態で、病院で治療(ステロイド薬など)が必要です。

 

  • 息を吸うときに「ゼーゼー」という音がする
  • 咳が目立って増える
  • 夜になると症状が悪化する

 

重症

 

危険な状態のサインが出ており、すぐに病院を受診し、入院が必要な場合があります。

 

  • 呼吸が明らかに苦しそう
  • 胸やあばらの下がへこむように呼吸する(陥没呼吸)
  • 元気がなくぐったりしている

 

最重症

 

緊急性の高い危険な状態で、救急車を呼び、すぐに集中治療が必要です。

 

  • 呼吸が極端に苦しい
  • 顔色が悪く、ぐったりしている
  • 呼びかけても反応が弱い

 

クループ症候群は夜間に急激に症状が悪化することがあるため、特に注意が必要です。

 

お子さんの様子がいつもと違うと感じたら、自己判断せず、すぐに病院を受診してください。

 

ステロイド薬

 

クループ症候群の治療には、ステロイド薬がよく使用されます。

 

ステロイド薬は、喉の炎症を抑えることで呼吸を楽にし、つらい咳も落ち着かせてくれる心強い味方です。

 

内服薬や点滴での投与が一般的で、ほとんどの場合1回の投与で大きな改善が見られます。

 

主に使われるステロイド薬は2種類あり、それぞれに特徴があります。

 

デキサメタゾン

  • 効果が1~2日間と長く続く
  • 夜間の症状悪化を防ぐのに最適
  • 寝る前に飲むことで、夜も安心して眠れる

 

プレドニゾロン

  • 効果がすぐに現れる
  • 数時間で呼吸が楽になる
  • 子どもでも飲みやすい形

 

これらのお薬は、短期間の使用であれば副作用の心配はほとんどありません。

 

まれに、一時的な機嫌の変化や食欲増加がみられることがありますが、すぐに元に戻ります。

 

アドレナリン吸入

 

アドレナリン吸入は、重症以上のクループ症候群における緊急時の治療として使用されます。

 

アドレナリン吸入はすぐに効果が現れ、短時間で症状を改善します。

 

ですが、効果は1~2時間程度と短いため、再び症状が悪化する可能性があるので注意が必要です。

 

再発した場合は、追加の吸入やステロイドの投与が必要になることもあります。

 

アドレナリン吸入と他の治療を組み合わせることで、症状の安定が期待できます。

 

その他の治療法

 

場合によっては、以下のような治療が補助的に行われます。

 

  • 酸素投与
    呼吸困難が進み、体内の酸素レベルが低下している場合に実施されます。
  • 鎮静薬
    呼吸苦による興奮や過度な呼吸努力を緩和し、子どもの状態を安定させます。
  • 加湿療法
    気道の乾燥を防ぎ、炎症を抑える効果があります。
    温かい蒸気や加湿器の利用で症状の軽減が期待できます。
  • 抗生物質の使用
    細菌感染が疑われる場合に限り使用されます。
    特に持続する発熱や膿性の痰がある場合に検討されます。

 

これらの治療法は、症状の進行状況や子どもの体力に応じて柔軟に組み合わせて行われます。


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クループ症候群の療養中に自宅でできること

 

クループ症候群

 

部屋の加湿

 

気道の炎症を軽減し、子どもの呼吸を楽にするためには、適切な湿度コントロールが欠かせません。

 

部屋の湿度管理には、以下のようなポイントがあります。

 

  • 理想的な湿度は50~60%
  • 加湿器の使用が最も効果的
  • 湿ったタオルを部屋に干すことでも加湿が可能

 

特に冬季は室内の空気が乾燥しやすいため、湿度管理にはより注意が必要です。

 

水分補給

 

喉の乾燥を防ぎ、気道の湿度を保つためには、慎重な水分摂取が必要です。

 

水分補給における主なポイントは、以下の通りです。

 

  • 水や温かいお茶、薄めたジュースを適量与える
  • 脱水を予防することが目的
  • 冷たい飲み物は喉を刺激するため避ける

 

温かい飲み物は喉の粘膜を潤し、症状の緩和に役立ちます。

 

少量でも定期的に水分を与えることを心がけましょう。

 

背中をさする

 

背中を優しくさすってあげることで呼吸が楽になることがあります。

 

特に咳が続いて苦しそうな場合、呼吸のリズムを整える効果が期待できます。

 

さする際は、膝の上に抱いたりして呼吸が楽になる姿勢にしましょう。

 

親や保護者の温かい手の感触は、子どもに安心感を与え、不安を和らげる効果もあります。

 

上半身を高くする

 

上半身を少し高くすることで、気道への負担を軽減し、症状を和らげることができます。

 

上半身を高くする際の主なポイントは、以下の通りです。

 

  • 枕やクッションを利用して上半身を高く保つ
  • 気道への圧迫を減らし、呼吸を楽にする
  • 特に夜間の症状悪化に効果的
  • 子どもが快適に眠れる姿勢を工夫する

 

ただし、症状が改善しない場合や、呼吸が苦しそうな際は、すぐに医師に相談することが大切です。




クループ症候群はうつる?登園・登校の目安は?

 

クループ症候群

 

クループ症候群自体が感染することはありませんが、原因となるウイルスが感染する可能性があります。

 

したがって、登園・登校の判断は慎重に行う必要があります。

 

登園・登校の目安としては、以下のポイントが重要です。

 

  • 解熱後24〜48時間が経過していること
  • 呼吸器症状が大幅に改善していること
  • 全身状態が安定していること
  • 医師から登園・登校の許可を得ていること

 

特に幼児や持病のある子どもは、症状が軽減していても体力が十分に回復していない場合があります。

 

安全のため、必ず病院で全身の状態を確認し、感染のリスクがないことを確認してから登園・登校を再開しましょう。

 

自己判断は避け、医師の指示に従うことが最も重要です。


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西春内科・在宅クリニックでできること

 

当クリニックではクループ症候群に対する診察、処方を行っています。

 

重症度に応じて、検査や大きい病院への紹介も可能です。

 

また、当クリニックではオンライン診療も対応しています。

 

自宅で診察を行い、緊急性の判断や、紹介状の作成を行います。

 

受診方法などがわからない場合は、お気軽にご相談ください。




まとめ

 

クループ症候群は、幼児に多く見られる呼吸器の病気で、犬が吠えるような咳や呼吸困難が特徴です。

 

主にウイルス感染が原因で、飛沫や接触で他の子どもにうつることがあります。

 

感染拡大を防ぐためにも早期の受診と適切なケアをしましょう。

 

家庭での加湿や水分補給などのケアも有効ですが、症状が悪化したり呼吸が苦しそうな場合は、早めに病院を受診し適切な治療を受けましょう。

 

医師の指示に従い、安心して療養を続けることが大切です。

 

参考文献

クループ症候群について | キャップスクリニック(医療法人社団ナイズ)

クループ症候群について

クループ|にじいろ子どもクリニック|小児科

クループ症候群で現れる咳の特徴と対処法 | 横浜弘明寺呼吸器内科クリニック健康情報

クループ症候群の治療、検査 | 茨木市総持寺の小児科|みやざきちびっこ診療所|乳幼児健診・予防接種

この記事の監修医師

監修医師: 西春内科・在宅クリニック 院長 島原 立樹


▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

経歴

名古屋市立大学 医学部 医学科 卒業
三重県立志摩病院
総合病院水戸協同病院 総合診療科
公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科

資格

日本専門医機構認定 内科専門医