舌下免疫療法のメリット|どんなアレルギーに有効?
こんにちは!西春内科・在宅クリニック院長の島原です。
花粉症の患者様が増える時期になりました。
ご自身や身の回りの方など、アレルギーでお悩みの方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回はアレルギーの根本的治療方法として舌下免疫療法についてご紹介いたします。
有効となるアレルギーや副作用、注意点などについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
舌下免疫療法とは?
アレルギー性疾患にはさまざまなものがありますが、日本では以下などによる通年性アレルギー性鼻炎がよくみられます。
- スギ花粉による花粉症
- ダニ
- カビ
- 昆虫
- ペットの毛
花粉症やアレルギー性鼻炎の一般的な治療法は、内服薬、点眼薬、点鼻薬などを使用し、せき、くしゃみ、鼻水、目の腫れやかゆみといった、すでに発症しているアレルギー症状をやわらげるものです。
ただこういった薬物療法では十分に症状が軽減されず、日常生活に支障をきたしてしまうケースも多くあります。
こういったケースで次の治療選択肢として、アレルゲン免疫療法があります。
アレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因となっているアレルゲンを少量から体内へ投与することで、体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を根本から起こりにくくする治療法です。
アレルゲン免疫療法ではこれまでは治療薬を皮下に注射する「皮下免疫療法」が主流でしたが、近年では治療薬を舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場し、自宅で簡単に服用できるようになりました。
「舌下免疫療法」は、スギ花粉症またはダニによる通年性アレルギー性鼻炎と確定診断された患者さんが治療を受けることができます。
以下で舌下免疫療法について詳しく解説していきます。
舌下免疫療法のメリット
根本的な体質改善
舌下免疫療法は、アレルギーの原因となっているアレルゲンを少量から体内へ投与することで、体をアレルゲンに慣らし、根本的に体質を改善することによって、アレルギー症状そのものを起こりにくくする、というものです。
アレルギー反応を根本から抑えることで、不快な症状が大幅に軽減されることが期待できます。
また、頻繁に鼻や目を擦ることによって皮膚が荒れたりすることもなくなり、アレルギー治療薬特有の、眠気が出てしまう、といったこともないので、日常生活を落ち着いて過ごすことができます。
自宅で治療可能
「皮下免疫療法」では、病院で注射を打つため、痛みを伴い、また治療の始めは徐々に増量するため頻回な通院が必要になります。
一方、「舌下免疫療法」は、1日1回、治療薬を舌の下に置いて、しばらくそのままにしてから飲み込むという治療法で、痛みがなく、自宅で服用できます。
保険適用
舌下免疫療法は高額な自費診療ではなく保険適用の治療です。
3割負担の方ですと、一か月の平均費用は以下の通りです。
アレルギー種類 | 治療薬の費用 |
スギ花粉 | 1,800円前後 |
ダニアレルギー | 2,000円前後 |
なお、この金額に診療費や検査費などが加わります。
対象年齢が幅広い
舌下免疫療法は一般に5歳以上65歳未満の方が治療対象です。
お子さんでもスギ花粉症・ダニによる通年性アレルギー性鼻炎を治療でき、「子ども医療費助成制度」の対象にあたるため、対象のお子さんは自己負担なしで治療を受けられます。
舌下免疫療法はどんなアレルギーに有効?
現在日本では、スギ花粉症とダニによる通年性アレルギー性鼻炎に対する治療薬が保険適応となっています。
アレルギー種類 | 治療薬 |
スギ花粉症 | シダキュア(鳥居薬品) |
ダニアレルギー | ミティキュア(鳥居薬品) |
なお、スギ花粉症の舌下免疫療法においては、スギと共通のアレルゲンをもつヒノキ花粉症にも一定の効果がある可能性が示唆されています。
舌下免疫療法の副作用
舌下免疫療法では副作用として、以下などがあらわれることがあります。
- 口の中のむくみやかゆみ
- 不快感
- 唇の腫れ
- 喉の不快感
- 耳のかゆみ
副作用の症状の多くは軽微で、治療を続けるうちに自然に軽快することが期待できます。
一方で非常にまれですが重篤なアレルギー反応としてアナフィラキシーを起こすことがあります。
アナフィラキシーとは急性の過敏反応によって全身の蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛、嘔吐などの消化器症状や息苦しさなどの呼吸器症状、突然のショック症状(血圧低下、意識の混濁など)が見られる疾患で、多くは服用後30分以内にあらわれます。
万が一、疑わしい症状がでたら直ちに医療機関を受診する必要があります。
舌下免疫療法の注意点
効果が出るのに時間がかかる
舌下免疫療法は少しずつアレルゲンを投与し、体をアレルゲンに慣らしていくことでアレルギー反応を起こしにくくする治療法なので、効果が得られるのに1~3か月程度を要します。
長期間の薬の服用が必要
舌下免疫療法は少しずつアレルゲンを体を慣らしていくことで徐々に効果が高まっていくことを期待できる治療法なので、最大効果を得るためには一時的な治療ではなく長期的な継続が必要となります。
基本的には3年以上治療を継続することが推薦されています。
長期間の治療を完遂できれば、治療終了後も長期にわたり症状をおさえることが期待できます。
時期によっては治療を開始できない
スギ花粉が飛んでいる時期は体がスギ花粉のアレルゲンに対して過敏になっているため、スギ花粉症に対する舌下免疫療法を新たに開始することはできません。
医療機関にもよりますがスギ花粉の飛んでいない6~11月ごろに治療を開始することが一般的です。
なおダニによる通年性アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法は、時期に関係なくいつでも開始できます。
副作用が起こることがある
舌下免疫療法はアレルゲンを投与する治療法なので服用後にアレルギー反応がおこるおそれがあります。
多くは軽い副作用ですがまれに重篤なアレルギー反応が発現するおそれがあるため注意が必要です。
なお、副作用の発現を防ぐため、服用前後2時間は、激しい運動やアルコール摂取、入浴は避ける必要があります。
治療を受けられない人がいる
重症気管支喘息のある方は治療を受けることはできません。
またそれ以外でも、以下の方は基本的に治療を勧められません。
- 5歳未満の小さなお子さんや65歳以上の方
- 悪性腫瘍、自己免疫疾患、免疫不全症などがある方
- 気管支喘息の方
- 妊婦、授乳婦
- 全身性ステロイド薬を使用している方
- 非選択的β遮断薬を使用している方
- 三環系抗うつ薬やMAO阻害薬を使用している方
- 口腔内の術後や炎症などがある方
- 重度の心疾患・肺疾患・高血圧がある方
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西春内科・在宅クリニックでできること
当院では内科外来で舌下免疫療法を行っております。
最初に問診、診察および、アレルゲンを確定するための血液検査などを行い、スギもしくはダニに対する抗体反応が陽性となるかどうかを確認します。
確定診断がつけば、治療を開始します。
急性アレルギー反応の経過観察のため1回目の服用は院内で行っていただきます。
問題なければ翌日からは自宅での服用を行います。
つらいアレルギー症状でお困りの方、なんとか耐えながら日常生活を送っている方も、舌下免疫療法を行って大幅に症状の軽減が得られ、その後快適に過ごされている例も多く経験しております。
舌下免疫療法に関して詳しくお聞きになりたい場合はお気軽にご連絡ください。
まとめ
今回は舌下免疫療法に関して解説をさせていただきました。
一般的な治療法で改善しないアレルギー症状でお困りの方は、次の治療選択肢として、舌下免疫療法があることを知っていただき、ご検討いただければと思います。
監修医師: 西春内科・在宅クリニック 院長 島原 立樹

▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。
経歴
名古屋市立大学 医学部 医学科 卒業三重県立志摩病院
総合病院水戸協同病院 総合診療科
公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科