急性腸炎ってなに?ストレスが関係する?原因や症状について

2022.3.23

発熱、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛…もしかすると急性腸炎かもしれません。原因や自宅できる予防法などを紹介します

 急性腸炎とは


急性腸炎は大きく分けて感染性腸炎と非感染性腸炎があります。ここでは各々の内容についてご紹介させて頂きます。

感染性腸炎


感染性腸炎とは、なんらかの微生物が腸に感染することで発症する腸の病気の総称です。主な症状に、下痢・嘔吐・腹痛などが挙げられます。感染源となる微生物には、細菌・ウイルス・原虫・寄生虫・真菌などさまざまあります。

その中でもよく見られる腸炎は、ノロウイルスなどのウイルスが原因となるウイルス性胃腸炎と、大腸菌などの細菌が原因となる細菌性胃腸炎です。

ウイルスや細菌が感染することで、腸粘膜が炎症を起こした状態になります。腸粘膜が炎症を起こすことで、キリキリとした腹痛や、水様性の下痢、嘔吐、時に下血などを伴うようになります。

感染経路の多くは経口摂取による感染で、ウイルスや細菌になどに汚染された食物・水を摂取することで感染します。感染性が強いウイルスなどでは、ヒト‐ヒトの接触感染の可能性もあります。

非感染性腸炎

食物アレルギーによる腸炎

アレルギー性腸炎とは、特定の食物などに対してアレルギーを持つ人がその食物を摂取することで発症する疾患です。腸のアレルギー症状とも言えます。

主な症状は感染性腸炎と似ていますが、下痢・嘔吐・腹痛などの消化器系の症状で、それ以外にも全身のアレルギー症状として皮膚の発疹や喘鳴などが出現する場合もあります。

アレルギーの原因(アレルゲン)になるものは、卵やそばのような有名な食物だけでなく、魚介類に潜んでいるアニサキスという寄生虫がアレルゲンになったりなど様々です。

アレルゲンを摂取してから発症までの時間も数分で発症する場合と、数時間以上経過してから発症する場合などあります。数分で発症する場合は原因アレルゲンがわかりやすいですが、時間をおいて発症する場合はアレルギー性腸炎と気が付かれない場合もあり注意が必要です。

虚血性腸炎

虚血性腸炎は、何らかの原因で突然、大腸に向かう血管の血流障害が起きることで発症します。症状は腹痛や血便がおおく、嘔吐などは少なくなります。大腸に酸素や栄養を送る血流が突然阻害され、大腸粘膜の血液が不足すること(これを虚血といいます)で粘膜傷害を起こします。

発症しやすい人は中高年以上の方で、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病がベースにあり、動脈硬化が進んでいる方などに発症しやすいとされています。そのほかにも重度の便秘などでも発症します。

便秘により硬い便が多く腸管内にたまると、腸管の蠕動や便意があり強くいきんだ際などに大腸粘膜が過度に圧迫され、血流が低下することで虚血を起こします。真っ赤な血便がでることが多く、びっくりして病院に受診される方も多い疾患です。
 

急性腸炎の症状

下痢

下痢症状がでる疾患は急性腸炎に限りません。ただし、急性腸炎の場合は高率に下痢をきたします。感染性腸炎の場合でもアレルギー性腸炎の場合でも、腸粘膜に炎症を起こしたときなどは腸管内の分泌液が過剰となり下痢を起こします。

一般的に急性腸炎の下痢は数日~数週以内に収まる場合が多く、1か月以上下痢が続くような場合は慢性の下痢症状であり別疾患を考える必要があります。

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 嘔吐

急性腸炎で嘔吐が出現する場合は、感染性腸炎やアレルギー性腸炎の場合が多く、虚血性腸炎の場合はあまりみられません。嘔吐が起きる場合は、大腸だけでなく胃や十二指腸・上部小腸などにも炎症が起きている場合であり、虚血性腸炎は大腸に起きる虚血が主な原因であるからです。

嘔吐症状が強い場合は、飲水や食事などの経口摂取が出来ず脱水症になる危険性があるため、特に小児や高齢者では注意が必要です。


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食欲不振

食欲不振は急性腸炎の際によくみられる症状の一つです。食欲不振とは、食事を食べていないにもかかわらず食欲が出ない状態を指します。健康な状態では、食事を食べてから時間があき血糖値が下がってくると脳の視床下部にある摂食中枢が刺激されることで食欲=空腹を感じます。

しかし腸炎など何かしらの原因がある場合は、この食欲がわきにくくなります。
急性腸炎による食欲不振ならば、数日での改善が期待されるため、過度な心配は不要です。

 腹痛

急性腸炎などで腸などに炎症が起きると、その炎症が神経を刺激し痛みを自覚することになります。急性腸炎による腹痛は、腸が動くときにそった腹痛で、痛みが強弱のある波のように襲ってくるのが特徴です。

ただ、腹痛があるからといって安易に腸炎を疑うのは危険で、腹痛に加えて下痢や嘔吐がある場合に急性腸炎を考えます。
腹痛のみが症状の場合は、急性腸炎以外の原因である可能性も考えながら慎重に対応する必要があります。

 発熱

急性腸炎で発熱が起きる理由は、身体の免疫機能が働いていると考えられます。細菌やウイルス等の病原体が体の中に入ってくると、それらを排除するために免疫機能が働いて体温を上昇させるため熱がでます。

そのためアレルギー性腸炎の場合は、あまり発熱はみられません。
発熱が続く期間は原因にもよりますが、1日で解熱する場合もあれば、1週間ほど発熱が続く場合もあります。

血便

血便には大きく分けて2種類あり、黒色のタールに近いタール便と真っ赤な鮮血に近い血便があります。急性腸炎で見られる時は鮮血に近い真っ赤な血便みられることが多いですが、それは比較的肛門から近い大腸など出血が起きていることを示唆します。

タール便は、出血した血液が酸化されたり腸内細菌などにより分解された場合に見られる色で、食道や胃など上部消化管からの出血が疑われます。

急性腸炎の場合は、粘膜が炎症を受けて障害され、そこから出血するため血便がみられます。出血量が多いと命に関わる場合もあるため、血便を自覚されたら早めに医療機関を受診することをお勧めします。


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過敏性腸症候群


過敏性腸症候群とは、ストレスなどが原因で腸の機能に異常が生じ、便秘・下痢など排便の異常を繰り返すことを症状とする疾患です。

はっきりとした原因が分かっておらず予防が難しい疾患ですが、細菌やウイルスによる感染性腸炎の回復後に過敏性腸症候群になりやすいことが知られています。

過敏性腸症候群の症状である排便の異常は、人によって様々で、絶えず下痢が続く場合や便秘と下痢を数日ごとに繰り返す場合などあります。

また、ストレスがかかる場面で急に腹痛を伴い下痢が止まらないということも多く、人前に出るといつも症状がでてしまうなどと日常生活に支障をきたすようなこともありえます。

気が付いてないだけで、実は日本人の10%程度の人は過敏性腸症候群であるとも言われており、この病気は決して珍しいものではありません。排便の異常で困ることがあれば、一度内科を受診してみてください。

 

ストレスによって急性腸炎と同じ症状

ストレス性胃腸炎とは、過度な不安や緊張を自覚したときに腹痛などの腸炎症状が現れる病気です。過敏性腸症候群もストレスにより発症する場合もあり、広義のストレス性腸炎とも言えます。

ストレス性腸炎では腹痛・下痢などの腸炎症状があらわれることがありますが、血便が見られることはあまりありません。腸炎症状以外にも、肩こり、頭痛、めまいなどストレスによる諸症状がみられることがあります。

 

虫垂炎との違い

 急性虫垂炎は、虫垂と呼ばれる袋状構造をする臓器に炎症・細菌感染が起きることで発症する病気です。腹痛・下痢・嘔吐・発熱が出現するなど腸炎と症状は似ていますが、治療方針は大きく異なります。

虫垂炎に関して詳しく知りたい方は、下記
URLを参照してください。


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急性腸炎の治療

経口で水分補給

急性腸炎になった場合に最も大切なのは、水分摂取を欠かさないことです。下痢や嘔吐が続くと、体内の水分と塩分などの電解質が徐々に失われていき、脱水になってしまします。

脱水状態が続くとふらついたり、意識がもうろうとするなどと重症化してしまう場合もあります。
そのため腸炎のときはこまめに水分摂取をすることが大切で、特に塩分や水分をバランスよく含んだ経口補水液(OS-1Ⓡなど)を摂取するようにしましょう。

多くの場合は、この経口補水液を少量ずつ頻繁に口から飲ませることで、点滴などの治療を受けなくても水分摂取することが可能です。

 

食事管理

腸炎などで胃や腸が弱っているときには、食事内容に気を配ることが大切です。

ご自宅で気を付けることが出来ることとして、消化の良い食品を選ぶこと、刺激物(香辛料が多いもの、塩っ辛いものなど)を避けること、ゆっくりよく噛んで食べることが挙げられます。

また同じ食事でも冷たい食事よりも温かい食事の方が好ましく、一度にたくさん食べないようにしましょう。
お勧め食材にはうどんで、よく煮たやわらか卵とじうどんなどは消化いいので、ぜひ腸炎の時には試してみてください。

 

内服薬

解熱剤

急性腸炎の症状として出現している熱は、水分や食事が取れており倦怠感が強くないようなら、熱が高くても解熱剤を使う必要はありません。

ただし38度を超える高熱で顔色が悪く、ぐったりしている場合は、解熱剤で一時的に熱を下げるとすこし楽になる場合があります。
解熱剤を使用しても治癒までの期間を短くする効果はないため、使用するかどうかは主治医とよく相談の上、使用するようにしてください。

 

抗菌薬

急性腸炎の治療には、一般的に抗菌薬は必要ありません。その理由としては、ウイルス感染による腸炎や虚血性腸炎などの場合には効果がないこと、細菌性腸炎だとしても多くの場合自然改善が期待できるためです。

感染性腸炎の中で特定の場合(もともと免疫不全がある、中等症~重症の場合など)で、細菌性腸炎が疑わしい状況ならば症状の軽減や治療期間の短縮を期待できるため使用する場合もあります。

急性腸炎に対して抗菌薬を投与するか否かは医師によっても考え方が分かれるところですので、主治医とよく相談してから治療をしましょう。

 
整腸剤

急性腸炎の治療に整腸剤は処方が検討される薬剤です。整腸剤の効果は腸内環境を整えることですが、急性腸炎の場合には何らかの原因により腸内細菌叢のバランスが崩れているため、乳酸菌などを含む整腸剤を処方し腸内環境が整うことを期待します。

 

下痢止め

急性腸炎の治療では下痢止めはあまり使われません。特に感染による急性腸炎の場合は、腸の中にいる原因微生物を早く体の外へ出し切ってしまうべきと考えて、下痢はあえて止めない方が良いと考えます。

ただし過敏性腸症候群などで下痢症状が強く生活に支障が出る場合などは使用すべき状況であるため、急性腸炎の原因や症状に合わせて上手に使い分けることが必要です。

 

入院による点滴治療

急性腸炎の場合で、入院点滴治療が必要になる状況は多くありません。そもそも急性腸炎の際に用いられる点滴には腸炎を治療する薬は入っておらず、点滴の目的は脱水症の治療として行います。

そして腸炎の際に水分摂取として最も有効なのは点滴ではなく、経口摂取による水分摂取であるため可能な限り経口からの水分摂取を勧めます。

しかし下痢や嘔吐が頻回で、経口摂取のみでは脱水症に陥ってしまう場合には入院点滴が必要になります。点滴補液が必要かどうかは、主治医とよく相談してみてください。

 

 自宅でできる予防法


急性胃腸炎を予防する方法はその原因によって異なります。感染性腸炎であれば感染予防が大切ですし、虚血性胃炎であれば生活習慣病の治療や排便コントロールなどが大切になります。以下には感染性腸炎の予防方法をまとめます。

 

うがいや手洗い

感染性腸炎はウイルスや細菌で汚染されたものを口に入れることで発症することが多く、うがいや手洗いなどの基本的な感染予防策は重要です。

これは感染性腸炎に限ったことではなく、普通の風邪やインフルエンザなどにも共通して言えることですので、屋外から帰ってきたら、うがい手洗いをするという習慣をつけましょう。

 

食品の加熱、食器洗いの徹底汚物や糞便の片付け

家族が腸炎にかかってしまった場合は、ご家族で便や吐物を処理することがあると思います。その際に注意してほしいことは、正しい処理方法です。

それを怠ると、介護する方に感染がうつってしまう場合があります。
便や吐物を処理する時は以下の注意点があります。汚物を触る時には使い捨ての手袋を使用する、マスクを着用するなどする。もし可能ならば着脱可能なエプロンを使用して処理をする。

また処理した汚物は密閉できる袋にいれ、普段触れないような場所には置くこと。また台所や食卓の近くで嘔吐してしまった場合は、触れたかもしれない食器を入念に洗うこと、もし食品に触れてしまった場合は廃棄も検討してください。

時に加熱処理をすれば大丈夫と考える方もいますが、感染性腸炎を引き起こす原因の中には加熱処理では感染性が失活しないものもあるため注意が必要です。

 

虚血性腸炎と類似の症状がある疾患

大腸がん

大腸がんと虚血性腸炎では、血便が見られるという点で類似点があります。ただ、虚血性腸炎の血便は、排便と一致せず鮮血が排出される可能性もありますが、大腸がんの場合は便に付着した形で血便が出てくる場合が大半です。

クローン病潰瘍性大腸炎

クローン病や潰瘍性大腸炎という炎症性腸疾患では、虚血性腸炎と原因は異なりますが腸管粘膜が炎症により障害されるという点で類似点があります。そのため、下痢・腹痛・血便といった症状があらわれるため虚血性腸炎との鑑別が必要になります。

 大腸憩室炎

大腸憩室炎は、大腸にできた憩室と呼ばれる袋状の部分に炎症が起こる病気のことです。主な症状は腹痛、発熱、下痢などで虚血性腸炎と類似します。しかし、消化管出血がみられることは少ないとされます。

 

腹痛で悩む人はCT検査をおすすめ


腹痛を主症状とする疾患は多岐に渡り、それぞれで原因が異なります。原因が異なれば治療法も異なるため、できる限り正確に診断することが早期回復への近道です。

腹部CTは腹部臓器を網羅的に検査することができるため、腹痛の原因を正確に診断できます。腹痛で悩む方には、腹部CTは最適な検査の一つと言えます。

 

西春内科在宅クリニックができる対応

西春内科在宅クリニックにはCT機器を導入しており、常勤医にはレントゲンやCT画像の読影の専門家である放射線科専門医がおります。

腹部CT検査により急性腸炎を含む治療が必要な病変が見つかった場合には、消化器外科の手術が可能な診療を行っている病院をご紹介させていただきます。 

 

  まとめ

急性腸炎は一口に腸炎と言っても原因や対処法はさまざまです。また急性腸炎に類似した疾患には命に関わる病気もあるため注意が必要な場合もあります。

腹痛や下痢・嘔吐で悩む人は、早めに医療機関を受診し、相談してみてくださいね。

 

 

参考文献:

機能性消化管疾患ガイドライン2021 日本消化器病学会


監修医師:

外科専門医 Dr.梅村 将成