特定疾病と特定疾患の違いとは?|高齢者の介護保険について

公開日:2022.12.07 更新日:2024.2.21

介護保険
こんにちは。

西春内科・在宅クリニックの伊藤です。

今回は病気ではなく、行政サービスである介護保険についてです。

家族が特定疾病(とくていしっぺい)と診断されたときには介護保険が利用できます。

これは自動的に付帯するものではなく、自身でサービスの申請を行うことが必要です。

知らないままですと受けられるはずだった補助が受けられなくなってしまいます。

今回はこの介護保険、特定疾病についてわかりやすく説明していきます。



特定疾病と特定疾患の違い


介護保険

皆さん、特定疾病(とくていしっぺい)と、特定疾患(とくていしっかん)の違いについて知っていますか?

ここを理解しておかないと、介護保険制度を上手に活用することはできません。

まずは、この特定疾病と特定疾患について簡単に説明します。

 特定疾病とは


特定疾病とは、介護保険施行令によって定められている16の病気のことを指します。

その多くの発症が加齢と関連していると考えられています。

詳細な病名については後ほどご説明します。

特定疾患とは


特定疾患とは2014年頃までは厚生労働省が実施する難治性疾患克服研究事業の対象に指定されている疾患とされていました。

現在は難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)ができたことにより指定難病と呼ばれ、300以上の疾患が該当します。

16種類の特定疾病一覧


厚生労働省が選定する特定疾病を順に紹介していきます。

① がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)

知っている方も多いと思いますが、悪性腫瘍を総じて「がん」と呼びます。

ここには肺がんや胃がんなどのほかにも、悪性リンパ腫や白血病といった血液がんも含まれます。

回復の見込みがない状態とは、治癒見込みがないことであり、状態によっては抗癌剤治療中でも介護保険サービスを受けることが可能です。

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② 関節リウマチ

免疫の異常によって関節に影響を及ぼす慢性炎症性疾患をいいます。

40~60歳代の女性に多い疾患です。


③ 筋萎縮性側索硬化症(ALS)

原因不明の運動ニューロン(神経細胞)が障害されることによって全身の筋肉が衰えていく疾患となります。

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④ 後縦靱帯骨化症

背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨に変化してしまうことで、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて、感覚障害や運動障害などの神経症状を引き起こす病気です。


⑤ 骨折を伴う骨粗鬆症(こつそしょうしょう)

骨の強度が弱くなりもろくなった状態を骨粗鬆症といいます。

転倒などにより大腿骨(ふとももの骨)や、椎骨(背骨)の骨折を起こすことが多くなります。

◆【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?


⑥ 初老期における認知症

脳の病気や障害などの原因で、認知機能が低下(記憶障害、行動障害など)し、日常生活に支障が出てくる状態です。

加齢に伴う物忘れとは異なります。

アルツハイマー型認知症が有名ですが、他の原因でも起こることがあります。

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⑦ 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病【パーキンソン病関連疾患】

神経変性疾患とよばれ、振戦(しんせん:体の一部のふるえ)、筋固縮(筋肉のこわばり)、無動(動きが遅くなる)、姿勢反射障害(姿勢を保てない)といった症状が代表的です。

ゆっくりとし進行していきます。

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⑧ 脊髄小脳変性症

小脳を中心とした神経の変性によって生じる病気の総称となります。

箸を使う・字を書くなどの細かい動きがしにくい、歩行時のふらつき、呂律が回らず言葉が滑らかに出ない、などの小脳性運動失調の症状が特徴的です。


⑨ 脊柱管狭窄症

脊柱管狭窄症とは、背骨(脊椎)の中心にあり、神経が通っている脊柱管が狭くなることで神経が圧迫されてしまい、痛みやしびれを引き起こす病気のこととなります。

歩いているとだんだん腰痛や足のしびれといった症状が現れ、少し休むと回復する間欠性跛行(かんけつせいはこう)になるのが特徴的です。

症状がひどくなっていくと、筋力低下、運動障害、排尿・排便障害といった症状が見られることもあります。

この病気は加齢や背骨の病気などの影響で背骨、椎間板、靱帯などが変形することが原因で起こります。


⑩ 早老症

若年性白内障、白髪、脱毛、鳥様顔貌(鼻がとがって鳥のような顔つきになる)、軟部組織の石灰化など、実際の年齢よりも早く老化の兆候が現れる病気を総じて早老症と呼びます。

遺伝子の異常によって引き起こされ、進行すると糖尿病や骨粗鬆症、高脂血症、がんなども起こります。


⑪ 多系統萎縮症

原因不明の自律神経症状、パーキンソン症状、小脳症状といった神経症状が組み和わせて発生する疾患を総じて多系統萎縮症と呼びます。

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⑫ 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症

これら3つの疾患は糖尿病が進行した場合起こる三大合併症となります。

糖尿病だけでは特定疾病ではありませんが、これらの診断基準を満たした場合、特定疾病として認められます。

糖尿病性神経障害運動神経、感覚神経、自律神経のいずれも障害を受けることがあります。手足のしびれや痛みを感じることもありますが、逆に痛みを感じなくなることもあります。立ちくらみなども起こることがありますが、神経の種類、障害の程度によって症状が異なります。

糖尿病性腎症:高血糖状態が続くことで腎臓の働きが低下してしまい起こります。症状が進むにつれて、むくみや息切れなどから始まり、最終的には透析が必要になってしまいます。

糖尿病性網膜症目の網膜にある血管が傷ついて出血してしまう病気です。飛蚊症や視野がかけることもあり、進行すると失明にもつながります。

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⑬ 脳血管疾患

代表的な病気として脳出血、脳梗塞などがある、脳の血管の異常によって起こる疾患の総称です。

顔面や手足の片側の麻痺やしびれ、記憶障害など障害をうけた部位や程度によって症状は大きく異なります。

特定疾病と認められない場合として外傷(事故など)が原因で発生したものがありますので注意が必要です。

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⑭ 閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化を原因として足の血管が細くなったり詰まったりすることで起こる病気になります。

足先まで血液が届かなくなるので、足先の冷えや痛み、歩いているとだんだん足のしびれや痛みといった症状が現れ、少し休むと回復する間欠性跛行(かんけつせいはこう)といった症状が現れます。

さらに血流が悪くなると足に潰瘍ができ、最悪の場合壊死してしまうこともあります。

無症状の動脈硬化のみでは特定疾病とは認められません。


慢性閉塞性肺疾患

慢性閉塞性肺疾患とは、気管支喘息、気管支炎、肺気腫などの肺の働きを低下させる病気の総称となります。

息切れや咳・痰などの症状を認め、喫煙習慣が大きな原因となっています。

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⑯ 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

変形性関節症とは、加齢によって関節のクッションとなる軟骨がすり減り炎症を起こしてしまうことで起こる病気です。

はじめは動き始めるときの関節痛程度ですが、進行すると歩行時にも痛みが出てきて、日常生活に支障をきたすこともあります。



特定疾病と診断されるとどのようなサービスを受けられるのか


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特定疾病と診断されて、要介護認定を受けた場合には以下のサービスを受けることが可能です。

要支援1あるいは2に認定された場合は、要介護認定よりも受けられるサービスの内容が少なくなります。

(要支援認定の場合で示したもののみ受けることができます。)

[自宅に訪問]

〇訪問介護(ホームヘルプ)
◎訪問入浴
◎訪問看護
◎訪問リハビリ
〇夜間対応型訪問介護
〇定期巡回・随時対応型訪問介護看護


[施設に通って日帰りで行うサービス]

〇通所介護(デイサービス)
◎通所リハビリ
〇地域密着型通所介護
〇療養通所介護
◎認知症対応型通所介護


[短期間の宿泊]

◎短期入所生活介護(ショートステイ)
◎短期入所療養介護


[訪問・通い・宿泊を組み合わせる]

◎小規模多機能型居宅介護
〇看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)


[施設などで生活]

〇介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
〇介護老人保健施設(老健)
〇介護療養型医療施設
◎特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど)
〇介護医療院


[地域密着サービス]

◎認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
〇地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
〇地域密着型特定施設入居者生活介護


[福祉用具を使う]

◎福祉用具貸与
◎特定福祉用具販売



要介護認定を受けるには


介護保険

要介護認定を受けるためにはお住いの自治体の窓口での申請が必要です。

本人による申請が難しい場合は、家族あるいは地域包括支援センターなどが代理申請することができます。

申請すると自治体の調査員が自宅を訪れ、認定調査が行われます。

認定調査の結果と主治医となっている先生からの意見書の結果をもとに審査が行われ要介護度が決まります。

結果は申請から原則30日以内に通知されます。



第2号被保険者でも介護保険制度は受けられるのか


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介護保険が適用されるのは原則として65歳以上の第1号被保険者となります。

しかし例外として、40歳~64歳の第2号被保険者も特定疾病により要介護状態になった場合は要介護認定を受け、介護保険を利用できます。


もし家族が特定疾病と診断されたときの対応


介護保険

ご家族が特定疾病と診断されたときには介護認定を受けて、介護保険を利用することができます。

介護認定を受けたのち、ケアプランを作成することで先述した様々な介護サービスを受けることができます。

審査期間中から介護サービスを受けたいと思った場合、結果が通知される前であっても、申請日にさかのぼって保険給付を受け、サービスを受けることが可能です。

ただし、要介護・要支援認定を受けることができなかった場合には、利用したサービスは全額自己負担になってしまいますので注意が必要となります。

また、認定の程度によって給付額が異なるため、想定とは異なる自己負担が発生する場合もあります。


西春内科在宅クリニックができる対応


西春内科在宅クリニックを受診いただきますと、主治医意見書を作成することができます。

また、定期的な診察、状態によっては定期的な往診を行うことができます。

介護保険について気になる方は、お気軽にご相談ください。



まとめ


介護保険、特定疾病についてご理解いただけたでしょうか。

介護保険サービスは様々なものがあることが分かってもらえたかと思います。

これらのサービスは申請しないと受けることができません。

知らないまま過ごしてしまうと、損をしてしまうこともあります。

自身が・家族が受けられるかどうかわからないといった際は西春内科在宅クリニックを受診しご相談ください。

参考文献

厚生労働省ホームページ「公表されている介護サービスについて」

この記事の監修医師

監修医師: 西春内科・在宅クリニック 院長 福井 康大


▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

経歴

三重大学医学部医学科 卒業
三重県立総合医療センター 
N2 clinic