高尿酸血症ってどんな病気?合併症や痛風について
高尿酸血症について知っていますか?
様々な原因により血液中の尿酸が異常に高くなった状態が続くことにより、尿酸が足の指などの関節などに沈着して腫れ上がり、激痛を生じることもある病気です。
かつてはお金持ちの病気と考えられ「贅沢病」といわれていましたが、現代においても生活習慣(環境要因)が深く関係する生活習慣病のひとつです。
ただし、生活習慣のみならず、遺伝要因が関与している病型や併存する他や、使用している薬物に起因する二次性高尿酸血症もあります。
高尿酸血症とは
高尿酸血症とは様々な原因により血液中の尿酸が異常に高くなった状態のことを指し、後述するいくつかの合併症の引き金となります。
尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態が「高尿酸血症」
高尿酸血症は、尿酸塩沈着症(痛風関節炎、腎障害など)の病因であり、性別、年齢を問わず、「血清尿酸値が7.0mg/dlを超えるもの」と定義されます。*
*出典:2019年改訂高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会 編
高尿酸血症は産生過剰型と排泄低下型に分けられる
高尿酸血症には下記の2つの病型があります。
さらに双方を併せ持った「混合型」もあります。
排泄低下型
排泄低下型とは、高尿酸血症全体の約60%を占める多数派です。
尿検査によりクリアランスというものを測定することで診断をすることができます。
産生過剰型
産生過剰型とは、高尿酸血症全体の約10%を占めます。
尿酸の産生量そのものが増加しているものを指しますが、最近までは腸管からの排泄が低下する腎外排泄低下型の病型もここに含められていました。
これらを区別するのは一般的な検査では困難であり、最近ではこれらをまとめて「腎負荷型高尿酸血症」という呼び方をするようになってきています。
高尿酸血症は食事や飲酒などの生活習慣が原因
食事・飲酒といった生活習慣(環境要因)が大きく関係しています。肥満、アルコール、特定の食品の過剰摂取がリスクとなります。
疫学的には女性よりも男性の方が多くなっており、高尿酸血症により引き起こされる痛風の発生率は、30歳以上の男性では1%を超えています。
尿酸値が高くても痛みなどの自覚症状がない
痛風のイメージが強い高尿酸血症ですが、痛風は尿酸ナトリウム1水和物(MSU)結晶による急性関節炎を起こした状態のことを指します。
尿酸値が高くても無症候性高尿酸血症もあり、必ずしも痛みを感じるとは限りません。
尿酸値が高いとさまざまな疾患のリスクが高まる
値が高いと無症候性高尿酸血症もありますが、逆に言いますと、高尿酸血症は痛風発作の必須条件であり、高尿酸血症を来たす種々の要因が痛風のリスクとなります。
そして、尿酸値が高いことは、痛風だけに限らず、尿路結石、腎障害、メタボリックシンドローム、高血圧・心血管疾患のリスクにもなります。
高尿酸血症が引き起こす病気や合併症
高尿酸血症はさまざまな病気や合併症を引き起こします。1つずつ詳しく解説していきます。
痛風
「尿酸ナトリウム1水和物(MSU)結晶」という尿酸の結晶が関節に沈着することにより、足の親指の付け根や足首などに激痛を伴う腫脹を起こします。
関節炎の一種であり、正確にはこの関節炎のことを痛風発作、痛風発作を起こすしたあとのことを痛風と呼びます。
尿路結石
尿中の尿酸濃度が高まり、結晶化した尿酸が尿路(尿管・膀胱・尿道)の内部で石を作る「尿路結石」になりやすくなり、激しい痛みを引き起こします。
結石は特に酸性環境下でより固まる性質を持つことから、尿が酸性に寄っている高尿酸血症の患者さんは再発にも注意が必要です。
腎障害
高尿酸血症は慢性腎臓病の発症に関連しており、また、血清尿酸値高値はその腎障害の進展に関連することがわかっています。
さらに、尿酸の70%は腎臓から排泄されるため、慢性腎臓病があると、高尿酸血症の悪化に拍車をかけて悪循環となってしまいます。
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームの定義や詳しい説明はここでは割愛しますが、高尿酸血症そのものはメタボリックシンドロームの診断基準には含まれていません。
しかしながら、血清尿酸値が高いほどメタボリックシンドロームの割合が高まり、逆に、メタボリックシンドロームの構成因子(内臓脂肪、高血圧、血清中性脂肪高値、インスリン抵抗性)が多いほど血清尿酸値が高いことがわかっています。
メタボリックシンドロームは、動脈硬化を通じて脳血管疾患や心血管疾患の危険因子となるため、高尿酸血症を放置するとこれらの発症リスクを高めることとなります。
高尿酸血症は高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を合併しやすい
血清尿酸値が高い人の中でも特に若年者や肥満者、女性に置いては、高血圧の割合が高いとされています。
血清尿酸値を上昇させる原因としてプリン体を多く含む食品が注目されがちですが、食事全体の量が多いだけでも上昇します。
このため、必然的に、脂質異常症や糖尿病を引き起こす生活習慣と重複することが多くなります。
高血圧・脂質異常症
高血圧・脂質異常症については以下の記事を参考にしてください。
関連記事:気づきにくい高血圧と脂質異常症は定期的な健診が大切です
糖尿病
糖尿病については以下の記事を参考にしてください。
高尿酸血症の予防法
高尿酸血症は、環境要因のみによって発症するものではありませんが、生命予後に関連する肥満、高血圧、糖代謝異常、脂質異常などともに、関連する生活習慣を改善するなど、自身でもできることを意識的に積み重ねていくことが大切です。
生活習慣の改善が第一
薬物療法の有無に関わらず、食事療法、飲酒制限、運動療法が基本となります。
食事管理
BMI(肥満度指数)や体脂肪率が高くなると血清尿酸値も高くなります。
生活習慣病一般に当てはまることですが、前提として適正なエネルギーの摂取が重要です。
さらに、血清尿酸値の上昇をもたらすプリン体の摂取を控えるために、肉類や魚の過剰摂取を避け、野菜の摂取を心がけましょう。
アルコールを控える
血清尿酸値に影響を与えるのはビールだけと思われがちですが、アルコールが肝臓で代謝される際に上昇するため、そうではありません。
しかし、酒類そのものに含まれるプリン体も影響するため、酵母、麦芽由来のプリン体を多く含むビールの方が、蒸留酒やワインよりも血清尿酸値を上昇させます。
水を飲む
血清尿酸値は脱水によっても悪化するため、適度な水分摂取は効果的です。
適度な運動
適度な運動は、肥満を是正しメタボリックシンドロームを改善することによる効果が期待されます。
一般にメタボリックシンドロームにおける運動療法は有酸素運動とレジスタンス(筋肉トレーニングなど)運動を組み合わせることが効果的とされていますが、短時間の激しいレジスタンス運動が血清尿酸値を上昇させてしまうため、痛風の患者さん(痛風発作歴のある患者さん)は、低強度の運動が推奨されます。
病院での診察
過去に健診などで高尿酸血症の指摘歴があったり、痛風発作歴がある場合は容易に診察できることもありますが、健診異常の指摘歴がなかったり、初発症状の場合には、それ以外の関節炎との鑑別が必要になります。
高尿酸血症や痛風の診察は内科へ
内科では血液検査で血清尿酸値を測定し、身体所見と併せて診断の一助とします。
尿酸値が高いと痛風発作の発症率は高まる
血清尿酸値と痛風発作の発症率は相関するため、適正な値を維持することが大切です。
発作歴の有無や併存疾患によって、血清尿酸値の治療目標値は変わってきます。
食事療法や運動療法、痛風等で痛みがあれば薬物療法を行う
大前提は食事療法、飲酒制限、運動療法です。
また、発作による疼痛に対しては薬物療法を行いますが、関節炎の発作極期とそれ以外とでは治療法は異なります。
血清尿酸値を急激に下げると症状が悪化することもありますので、状況を見ながら至適尿酸値を目指していきます。
西春内科在宅クリニックができる対応
痛風発作による疼痛と診断できた場合には症状を和らげる薬物療法を行います。
その後も、至適尿酸値を維持できるよう、フォローを行ってまいります。
何かお困りの際のご相談は受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
まとめ
いかがでしたか?痛風は単なる贅沢病、関節痛ではなく、その背景疾患である高尿酸血症は、様々なリスクをはらんだ状態であることが伝わりますと幸いです。
いまいちど、健診結果や血液検査結果を確認されてみることをお勧めいたします。
監修医師: 糖尿病・内分泌内科 田中 佑資
専門分野
糖尿病・内分泌
学会専門医・認定医
- 日本内科学会認定内科医
- 日本糖尿病学会専門医
- 日本医師会認定産業医