乳がんのしこりは痛みがない?なりやすい人の特徴や検査についても
はじめに
今回は、乳がんについて解説していきます。
乳がんといえば女性というイメージがあると思いますが、女性のみならず男性にも知ってほしいこともありますので是非ご一読ください。
目次
乳がんについて
乳がんは乳腺の組織にできるがんで、多くは乳管から発生します。
女性のイメージが強いと思いますが、中には男性に発生することがあります。
男性も、女性と同様に多くは乳管からがんが発生します。時に乳がんは、乳房の周りのリンパ節や、遠くの臓器(骨、肺など)に転移することがあるため、早期発見・早期治療が重要になってきます。
今回は乳がんのあれこれをわかりやすく解説していきますので、気になる方はぜひしっかり読んでみてくださいね。
乳がんになりやすい人は
乳がんになりやすい年齢は、40歳代後半~50歳代とされています。
また、乳がんの7割が女性ホルモンのエストロゲンが関係しているため、エストロゲン分泌が高くなる月経の回数が多い人ほど、乳がんになりやすいとされています。
その他にも、エストロゲンにさらされる期間の長い人
- 初潮が11歳以下
- 初産が30歳以上
- 出産経験がない方
- 閉経が55歳以上
といった方では乳がんになるリスクが高いと判断されるため、注意が必要です。
また、飲酒や喫煙、肥満などの生活習慣病は乳がんに限ったことではないですが、乳がん発症リスクを高める要因になるため、注意が必要です。
乳がんの中には遺伝性の乳がん(遺伝的に乳がんになりやすい体質をもっている)と呼ばれるものがあり、乳がんを発症した人の7~10%が該当すると考えられます。
ご家族や血縁関係の近い親類に乳がんや卵巣がんの患者さんがいる場合は、いない場合と比べて乳がんを発症するリスクが高くなることが知られています。
乳がんのステージについて
ここでは乳がんのステージについて簡単に説明いたします。
【0期】 非浸潤がんといわれ、癌が発生した乳管や小葉内にとどまっているものを指します。特殊型として、乳頭部に発症するパジェット病で極めて早期の乳がんも該当します。
【I期】 しこりの大きさが2㎝以下で、リンパ節や別の臓器には転移していない段階を指します。
【IIA期】 しこりの大きさが2㎝以下で、腋窩リンパ節(わきの下)に転移があるもの。または、しこりの大きさが2から5㎝以下で、リンパ節や別の臓器への転移がないものが該当します。
【IIB期】 しこりの大きさが2から5㎝で、腋窩リンパ節に転移がある。または、しこりの大きさが5㎝を超えるが、リンパ節や別の臓器への転移がないものを指します。
【IIIA期】 しこりの大きさが5㎝以上で、腋窩リンパ節への転移があるものを指します。
【IIIB期】 しこりの大きさやリンパ節への転移の有無に関わらず、皮膚表面にしこりの一部が露出したり、皮膚の一部がむくんだり陥凹しているような状態のものです。
【IIIC期】 しこりの大きさに関わらず、腋窩リンパ節と胸骨内側のリンパ節の両方に転移のある、または鎖骨の上下にあるリンパ節に転移があるものを指します。
【IV期】 別の臓器(骨・肺・肝臓・脳など)に転移があるものを指します。 |
○乳がん10年相対生存率は以下の通りです。
- Ⅰ期 99.1%
- Ⅱ期 90.4%
- Ⅲ期 68.3%
- Ⅳ期 16.0%
( 国立研究開発法人国立がん研究センター がんの統計2022より)
しこりについて
胸のしこりを自覚した場合に、その原因が乳がんの可能性もありますが、その他の乳腺症や嚢胞などの良性疾患であったり、特に異常がない場合もあります。
乳がんのしこりには、
- 硬いこと
- 境界がはっきりしないこと
- 形が整っていないこと
- 周囲組織に癒着するため可動性が低い
という特徴があります。
逆を言えば、柔らかく、可動性が良好で、くりっと周囲との境界明瞭なしこりは良性疾患の可能性が高くなります。
また乳がんのしこりは、痛みのないしこりであることが多く、痛みがあるときは乳腺症、乳腺炎など別の疾患の可能性が高いと考えます。
とくに乳腺症はホルモンバランスの乱れからおきる生理的変化と考えられており、病気ではないので心配する必要はありません。
乳腺炎とは乳腺に炎症が起こることで圧痛、熱感、腫脹などの変化がみられる病気です。
乳腺炎は授乳中の女性であれば誰にでも起こる症状ですが、痛みが強い場合は治療を必要とする場合もあります。
○乳がんのセルフチェックをするときのポイント
乳がんのセルフチェックで重要なポイントは、
- 乳房の変形や左右差がないか
- しこりがないか
- ひきつれがないか
- えくぼのようなへこみがないか
- ただれがないか
- 出血や異常な分泌物がないか
という点をチェックすることです。
鏡の前でチェックしたり、入浴中に触ってみてたり、夜寝ころんだときにチェック、乳首を触って血性分泌物がないか、下着に分泌物付着していないかなど、チェックする状況も変えてみてください。
乳がんの検査や検診の重要性について
乳がんの場合、早期がんは2㎝までを指しますが、検診を1~2年ごとに受けなければその段階でがんを発見できないとされます。
また乳がんのステージⅠと早期の段階で発見・治療できた場合の10年生存率は99%以上と高率での治癒が見込めます。
できるだけがんにならないよう気を付ける、そして、仮になっても早期発見・早期治療で完治させるという心構えが大切です。
乳がんの治療法(手術)について
乳がんの治療法には、主に手術、放射線治療、薬物療法があり、まずは手術によってがんを切除することが基本となります。
手術後の病理結果によって、術後に放射線や薬物治療を検討します。がんの状態によっては、術前に薬物療法を行うこともあります。
手術が必要な場合
乳がんの治療は、遠隔転移していることが明らかな場合を除き、手術によって切除することが治療の根幹となります。
主な手術には、乳房部分切除術(乳房温存手術)と乳房全切除術とがあります。
これは、がんの状態や、患者さんの背景など様々なことを総合的に考え決定されます。
ホルモン療法
ホルモン療法は、乳がんがエストロゲンなどの女性ホルモンの影響を受けて増殖することを利用した治療方法です。
ホルモンの分泌や働きを阻害し、ホルモンを利用して増殖するタイプのがんを攻撃します。
閉経前と閉経後では、体内でエストロゲンがつくられる経路が異なるので、それにあった薬を使います。
放射線治療
放射線治療は、がん細胞にX線を照射することで、がんを死滅させたり小さくしたりする治療法です。
乳房部分切除術の後には、原則として残った乳房の組織に対して照射します。
乳房全切除術を行った場合は、手術した胸の範囲全体と鎖骨の上の部分に対して照射することもあります。
抗がん剤治療
抗がん剤と呼ばれる薬は、細胞が増殖する過程で、その仕組みのなかの一部を攻撃することでがん細胞の増殖を止める薬です。
がん以外の正常に増殖している細胞も影響を受けることで副作用が出現します。
抗がん剤は、単体で使用したり、必要に応じて複数の薬を組み合わせて行います。飲み薬・点滴など様々な薬剤を癌の状態に合わせて組み合わせて使います。
薬によっても効果や副作用はまちまちなので、詳細を担当医からよく聞いてから使用してください。
分子標的薬
分子標的薬は、がんの増殖に関わるタンパク質や、栄養血管、がん免疫に関わるタンパク質などを標的にした薬です。単剤で使うこともあれば、抗がん剤を組み合わせて使うこともあります。
乳がん手術後の見た目
手術後に傷がつくことは避けられず、その見た目にショックやつらい思いをされる方は少なくありません。
傷の形・色は、少しずつ周りの皮膚になじんできます。
また乳房の切除後に再建を行うこともできます。自家組織(自分のおなかや背中などから採取した組織)やシリコンなどの人工物を用いて、新たに乳房をつくることです。
再建の時期については、乳がんの手術と同時に行う一次再建と、数カ月から数年後に行う二次再建とがあります。
再建を受けるかどうかについては、担当医とよく話し合い、理解した上で決めましょう。
乳がんの予防対策について
乳がん予防として自己管理でできるものは
- 禁煙、アルコール多飲をせず適切な量の飲酒にする
- 塩分・カロリーに注意を払いバランスの良い食事をする
- 適度な運動を心がける、適正な体形を維持する
ことです。
中でも乳がんを予防するためには、飲酒を控え、閉経後の肥満を避けるために体重を管理し、適度な運動を行うことが良いと考えられています。
西春内科在宅クリニックができる対応
乳がんを疑う腫瘤(しゅりゅう)を認めたときに、触診、超音波検査、CT検査などの各種検査を行います。
もしより詳細な精査が必要と判断された場合には、紹介状を発行し、適切な医療機関に紹介します。
まとめ
乳がんは男女問わずに起こりうる病気で、特に女性には注意してほしい疾患です。
早期発見・早期治療が重要なことを認識していただき、日々の健康的な生活を心がけ、セルフチェックを行う意識をもってください。
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参考文献
・国立がん研究センター東病院 https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/breast_surgery/050/051/index.html
・国立研究開発法人国立がん研究センター がんの統計2022
・乳がん.jp https://www.nyugan.jp/faq/characteristic/heredity/
監修医師: 外科専門医 梅村 将成
資格
外科専門医/腹部救急認定医