みぞおちや右肩の痛みもしかすると胆石が原因かも?胆石症は自然治癒する?

公開日:2022.8.18 更新日:2023.12.25

突然ですが質問です。


ジューシーなお肉料理を食べた後や、サクッと美味しい揚げ物を食べた後などに、ギューッとお腹が痛くなったことはありませんか?


「あるある!」となった方は今日の記事は必見です。


後ほど詳しく解説しますが、それは胆石かもしれません。


右のあばら骨のあたりやみぞおち、時には右肩に痛みが出ることがあります。


そのような症状に心当たりのある方はもちろんですが、胆石は10−20人に1人の割合 で生じる病気です。


現在症状がない人でも他人事ではありません。


原因や症状、検査、治療まで一通り解説していきますので、是非最後までご覧いただければと思います。



胆石症とは




胆石症とは、胆嚢(たんのう)の中に石ができることによって食後に痛みが出たり、胸焼けやお腹が張る感じがでたりする病気のことです。


「えー、胆石って言葉はなんとなく聞いたことあるけど、臓器の話になると、胆嚢がどこにあって何しているのかもわからないよ!」という方もいらっしゃるかもしれません。


一言で言うと、肝臓で作った胆汁を食事の時まで濃縮して溜めておく袋が胆嚢です。


食物を消化して栄養を吸収するために、人体はいろいろな消化酵素を含んだ液を分泌しています。


唾液や胃液、膵液などですね。


それらと並んで胆汁という消化液があります。


これは肝臓で生成されるのですが、24時間垂れ流しでは効率が悪いですよね。


食事をして食物が通っていく時にだけ集中的に出したほうが効率がいいと思いませんか。


そのため、胆嚢という袋が胆汁を濃縮して溜めておいてくれるのです。


肝臓の下に腰巾着のようにぶら下がっていて、体の表面からでいうと右のあばらの中のあたりです。


そんな胆嚢の中には常に胆汁が充満しています。


コレステロールや石灰成分、ビリルビンなどのさまざまな物質が原因で胆汁内に石の塊が生成されます。


石があるだけで症状が出なければ何の問題もないのですが、食事を摂って胆汁が分泌される時に石が詰まって疝痛発作(せんつうほっさ)と呼ばれる痛みなどの症状を生じるようになることもあります。


これが胆石症です。

▶︎尿管結石で石が出る前兆は?バナナやポカリスエットが効果的?-横浜内科・在宅クリニック


胆石症を引き起こす原因




では、そんな胆石はなぜ生じるのでしょうか。


胆石症を引き起こす原因や危険因子について解説していきます。


胆石はその石の性状からコレステロール結石色素性結石に分けられます。


コレステロール結石はその名の通り、コレステロールが元になります。


色素性結石の大半はビリルビン酸カルシウムを主成分とする黒色結石で、血液のゴミなどが原因になります。


原因の中では、、コレステロール結石が約8割を占めます。


そのコレステロール結石ができやすい人の特徴として従来から「5F」が知られています。

  • Fatty:太った
  • Forty:40歳以上の
  • Female:女性
  • Fair:白人
  • Fecund / Fertile:多産の


5Fはこの5つの頭文字をとった語呂合わせで、北米に多い疾患でした。


ただ近年では食事の西洋化に伴い、日本でも胆石症の有病率が上昇してきており、10−20人に1人の割合でみられます。


その他にも下記のようなさまざまなリスク因子があります。

  • 遺伝性素因
  • 妊娠
  • 糖尿病
  • 脂質異常症、高コレステロール血症
  • 急激な体重減少(とくに胃の手術の後)
  • 他の内服薬


以上のような項目に当てはまるという方は、胆石ができやすいかもしれないということを頭の片隅に置いた方が良いかもしれません。

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気づきにくい高血圧と脂質異常症は定期的な健診が大切です


胆石症の症状や痛みについて




「ちょっと先生、わたしリスクあてはまってるんだけど!胆石になったらどんな症状がでるの!?」と心配されている方もいらっしゃるかもしれません。


ここからは胆石症の症状や特徴的な痛み方について解説していきます。

胆道疝痛とは?


胆石症の痛み方は「胆道疝痛(せんつう)」という言葉が存在するくらい有名です。


古典的な胆道疝痛は右季肋部(肋骨に沿った部分)、右上腹部、心窩部(みぞおち)に起こる強烈な鈍痛で、背中(特に右肩甲骨のあたり)に放散することがあります。


一般的に波のある強い痛みのことを疝痛(せんつう)と呼ぶのですが、胆道疝痛の場合は一定しており、波がないことが多いです。


特に脂肪分の多い食事は胆嚢の収縮を誘発するため、脂っこい食事の後に急激に痛みが生じることが多いです。


少なくとも30分以上は続き、1時間以内に頭打ちになって6時間以内で和らぐことが多いです。

胆石症の症状は?


胆道疝痛に伴って
吐き気、嘔吐、冷や汗などを生じることがあります。


他にも胆石症の患者では以下のような症状も多く報告されています。

  • 腹部膨満感
  • 逆流によるゲップ
  • 胸焼け


いずれも
胆石症と直接関連があるかどうかははっきりとしていません。


 胆石により胆汁の分泌が悪くなることにより便の色が薄くなるという症状も言われることがあります。


しかし、現実的には便の色が薄くなるほどの胆道の閉鎖になる前に痛くて医療機関を受診して発覚することが多いと考えます。


胆石症は急に症状を生じることが多く、慢性に進行する胆道癌などの腫瘍性病変で特徴的な症状と考えられます。

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胆石症は自然治癒する?





さて胆石症の症状について解説してきましたが胆石症は自然治癒することはほぼありません。


しかし、胆石症それ自体は命に関わるものでもありません。


石が詰まって胆嚢が「うーん!」と力むことによる痛みなので痛みを我慢すれば自然に和らぎます。


ただ、胆石発作を繰り返しているうちに合併症を引き起こす可能性があり、そうなると命に関わる事態に発展してしまいます。


大きく分けると炎症と穿孔(せんこう)の2つです。


胆石により胆汁が鬱滞することにより胆嚢炎、胆管炎、膵炎などの感染症を引き起こす可能性があります。


胆汁の流れ道の中で石がどの部分に詰まるかにより病気が異なります。


また、胆嚢結石がつまることにより胆嚢内圧が上昇することで胆嚢が破れてしまうことがあり、その場合には激烈な腹痛と発熱を生じます。


胆汁性腹膜炎という状態になり緊急手術をしなければ命を落としてしまう可能性が高い重篤な状態です。


「えー!そんなことになるの!?こわい!」という声が聞こえてきそうですが、リスクを正しく理解いただくために客観的な数字をご紹介しておきます。


まず大前提として胆石症患者の大半は無症状であり、生涯を通じて無症状のままであることが多いです。


最大30年近く観察した研究では19.6%の患者さんが症状を起こしたと報告されています。 


少なく見積もっても半分以上の患者さんは胆石発作を経験せずに済むと考えられますので、過剰に心配することはないのではないでしょうか。


ただ残念なことに自然治癒することはほぼありません。


そのため、結石が大きいほど胆道を塞ぎやすくなる可能性がありますし、小さな結石がたくさんある場合にも詰まりやすいため、石の状態を定期的にチェックしておくのは良いと考えます。


胆石症の病院での検査と治療について


胆石症がどんな病気なのか、少しずつわかってきましたでしょうか。


胆石症が疑われた、もしくは診断された時にどんな検査や治療を行うのかについても簡単に解説していきます。

胆石症の検査方法


まず最初に、血液検査、腹部レントゲン検査、腹部超音波検査が行われるのが一般的です。


石の種類によってはレントゲンで写らないこともあり、その場合はは超音波検査が特に有用です。 


次に行う検査としては
CTを用いたDIC-CTとMRIを利用したMRCPがあります。


立体的に再構築して評価できる点や、胆嚢だけでなく胆嚢管や総胆管などまで評価できる点が利点です。


胆石症の治療について


結論から言って、現在の日本のガイドラインでは無症状の胆石症は経過観察が推奨されています。


年に1度程度の経過観察をしながら、症状が出た場合には胆嚢摘出術を検討するというのが主流です。


手術はほとんどの場合、腹腔鏡で行われます。



(腹腔鏡手術の術中)


手術を希望しない場合や、手術に耐えることが難しい状況では、飲み薬による胆石溶解療法や体外衝撃波破砕療法(ESWL)なども選択肢の一つになります。


胆石症の入院期間はどれくらい?


一般的な腹腔鏡下胆嚢摘出術の場合、術後3−5日程度で退院することが多いです。


術前の準備なども含めて1週間以内に収まることが多いでしょう。


ただ個人個人の状況(併存疾患や服薬状況、全身状態)により入院期間は前後しますので、担当医に確認してください。


胆石症の予防法について




「先生~、胆石症についてはだいぶわかってきたけどさ!肝心の予防について教えてよ!どうしたら胆石にならずに済むの?」


「胆石を溶かす食べ物はあるの?」


ということが気になってきますよね。やはり病気にならないのが一番ですから、胆石になりにくい食事などについて最後に解説していきます。


【ビタミンC】


ビタミンC(アスコルビン酸)はコレステロールの異化作用と、コレステロールの胆汁酸への変換作用に関連していると考えられており、ビタミンCを常用していた人では胆石が半分程度であったとの報告があります。


 ビタミンCを多く含む食品としてはピーマン、ブロッコリー、キウイフルーツ、イチゴなどが挙げられます。


【ナッツ類】


また不飽和脂肪酸を多く含むナッツ類も胆石症のリスクを下げる可能性があると報告されています。
15) 


【その他】


その他には
コーヒーやアボカドなどもあります。


逆に、コレステロールを多く含む卵や脂肪の多いお肉、揚げ物などは胆石のリスクを上げると考えられますので注意が必要でしょう。


▶︎尿管結石で石が出る前兆は?バナナやポカリスエットが効果的?-横浜内科・在宅クリニック

西春内科在宅クリニックができる対応




当院では胆石症の診断に有用な血液検査、レントゲン検査、超音波検査のいずれも行うことができます。


また、CT検査も行うことができ、さまざまな角度から診断アプローチをとることが可能です。


無症状の間は定期的に経過観察を行いながら、内服治療を開始したり手術治療を紹介したりと、患者様ひとりひとりの状況に合わせてベストなサポート体制を目指しています。


>>西春内科在宅クリニックの健康診断について


まとめ


以上、胆石症の概要から検査・治療、そして予防まで解説してきました。


なんとなく知り合いからきいたことあるけどよくわかってなかったよという方もいらっしゃるのではないでしょうか。


今回の記事が少しでもみなさんのお役に立てれば嬉しいです。


当院では胆石症の診断に必要な検査も行うことができますし、定期観察も可能です。


今回の記事をご覧になって気になることがあったり心当たりがあるという方は是非一度ご相談に来られてはいかがでしょうか。


最後までお読みくださりありがとうございました。



参考文献


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この記事の監修医師

監修医師: 福井 康大