高齢者だけじゃない!40代からでもなる若年性認知症とは?なりやすい人や原因について

2022.8.01

認知症は高齢者だけが発症する病気ではありません。

 

認知症は、一般的には高齢者に多い病気ですが、65歳未満で発症した場合には、「若年性認知症」と呼ばれます。

 

若年性認知症の場合は、働き盛りの世代で発症するため、ご本人のみならずご家族の生活への影響が大きくなる特徴があります。

 

病気のために仕事に支障が出て、経済的に困難な状況に陥るなど、教育、就職、結婚などの人生設計が変化することも少なくありません。

 

若年性認知症は社会的にも大きな課題を抱える疾患ですが、一般的にまだまだ認識が不足している疾患のひとつです。

 

今回は、高齢者だけではなく、若年層からでも罹患する可能性がある若年性認知症とは何歳から発症してどのような病気を呈するのか、その症状や原因などについても解説していきます。

 

若年性認知症とはなにか?

 

若年性認知症とは、従来から言われてきた40歳から64歳に発症した初老期認知症に18歳から39歳までに発症した若年期認知症を加えた認知症の総称です1)。

 

2017年度から2019年度に実施した日本医療研究開発機構の認知症研究開発事業によって実施した若年性認知症の調査によれば、わが国の若年性認知症の有病率は18歳~64歳人口10万人当たりで約50人、若年性認知症者の総数はおよそ3.6万人と推計されました2)。

 

20代の年齢からでも発症する可能性がある若年性認知症は、高齢者の認知症と類似点も多いですが、異なる特徴もいくつかあります。

 

例えば、以下のような様々な問題が顕在化します。

 

  • 発症年齢が若い
  • 異常に気付きにくく受診が遅れる傾向がある
  • 初発症状が認知症特有のものとは限らないので診断しにくい
  • 就労中に発症することが多くて経済的問題が大きい
  • 車運転が中断される

 
>>アルツハイマーと認知症の違いは?原因や初期症状、なりやすい人の特徴について

若年性認知症の原因 

 

認知症というのは、一つの病名ではありません。それは若年性認知症であっても変わりません。

 

認知症を起こす病気はさまざまですが、多くの場合は脳の病気であり進行性を有する疾患となります。

 

国の調査ではアルツハイマー型認知症が最も罹患率が多くて、次いで血管性認知症、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症による認知症が続きます。

 

では、一つずつ詳しく説明していきましょう。

 

アルツハイマー病

 

アルツハイマー病とは脳の神経細胞が徐々に減って、正常に働かずに機能しなくなるタイプの認知症です。

 

脳内に「タウ蛋白」という異常物質が沈着して、「老人斑」が形成されることに伴って、神経細胞に異常をきたすことで脳細胞が破壊され萎縮していきます。

 

主に、加齢、女性、糖尿病などが本疾患の危険因子として挙げられます。

 

もの忘れ、短気になる、置き忘れやしまい忘れ、趣味などに関心がなくなる、時間や場所の感覚が衰える、片付けが苦手になるなどの症状が挙げられます。

レビー小体認知症

 

レビー小体認知症とは脳内部に、「α-シヌクレイン」というたんぱくが変化して凝集してできる「レビー小体」という異常物質が蓄積されて発症するタイプの認知症です。

 

一般的に、幻視、緩慢な動作、手足の震えなどのパーキンソン症状、軽度のもの忘れ、1日の中で症状が変動する(日内変動がある)などの特徴が挙げられます。

 

前頭側頭型認知症

 

前頭側頭型認知症とは脳の前方部分(前頭葉や側頭葉)が萎縮することによって引き起こされます。

 

通常では、45~65歳の人に発症しやすいと言われています。

 

人格の変化や非常識な行動が目立つ、失語、共感・感情移入ができない、食事の好みが変化、社会性の低下、同じ言動を繰り返すなどの症状が代表的です。

 

脳血管性認知症

 

脳血管性認知症とは、脳卒中(脳梗塞や脳出血)などに引き続いて起こるタイプの認知症です。

 

障害された血管の場所によって症状が異なります。

 

計算力や理解力・記憶力などの障害、運動まひ、歩行障害、排尿障害、のみ下すことに支障がある、感情のコントロールが難しくなる、抑うつ症状などを引き起こします。

 

若年性認知症の症状

 

若年性認知症における症状などは高齢者の認知症と大きく変わらないと言われています。

 

しかし、高齢者認知症と違って老化現象がない分、認知症の症状が目立ちやすく周囲の人々が症状変化や進行を判断しやすいという特徴があります。

 

特徴の第一は発症年齢が若いことで、まさに働き盛りに発症することになり、自然と仕事に関することを始めとして社会生活のさまざまな場面で課題が生じます。

 

もの忘れにより仕事でミスをする、あるいは家事が下手になると、本人や家族は「いつもの自分とは様子が異なる」、「どうも普段と調子が違っておかしい」ことに気がつきますが、これらの症状の背景に“認知症”が存在するとは思いつかず、受診が遅れる場合があります。

 

認知症のなかでも特に多いタイプとされているアルツハイマー型認知症の場合には、「もの忘れ」といった記憶障害に続いて、「見当識障害」も起こしやすいと指摘されています3)。

 

記憶障害とは、主に自分が実際に体験した過去の出来事などに関する記憶が抜け落ちる認知症の障害(中核症状)  のひとつと認識されています。

 

見当識障害とは時間や場所、人の判断がつかなくなっていく状態です。引っ越しや入院、子供との同居など環境が変わった時にとりわけ強く現れます。

 

本人が自覚を有する物忘れとは異なって、自覚がないために日常生活に重大な支障が出現します。

 

また、レビー小体型認知症の際にも、「もの忘れ」といった記憶障害よりむしろ「見当識障害」が前面に目立つことが往々にしてあります。

 

認知症は、本人はもちろんのこと、家族や周囲に大きな負担をもたらします。

 

一般的に、認知症に関する介護の平均期間は6~7年程度と言われていますが、認知症の経過には個人差があるために一概に寿命は何年とは言い切れません。

 

自分の人生において、「最期はどうなるのか」より「最期はどうしたいか」を深く考えることが重要です。

 

漠然と日常的に恐れるより、「最期はこう迎えたい」と理想を描くことが、認知症を抱えている一人一人の残りの人生の生活の質を高める観点からも必要なことと考えられます。


>>認知症における顔つきが変わる理由と初期症状や代表的な種類

若年性認知症になりやすい人の特徴

 

若年性認知症になりやすい人の性格の代表例として、「協調性がない」ことが挙げられます。

 

協調性が乏しい場合、他人とのコミュニケーションが少なくなって脳が活性化する機会を失って認知症に罹患しやすいと考えられます。

 

また、短気で怒りっぽい方も、他人との円滑なコミュニケーションが取れないことが多く孤立する傾向になるために、認知症になりやすいと想定されます。

 

さらに、普段からあらゆる物事に対してネガティブ思考になりやすく、小さなことや細かい事項をくよくよ気にする性格の人は、ストレスを感じやすくうつ病を発症して他人との交流が少なくなることで脳刺激が減少して、若年性認知症の発症リスクが上昇します。

 

また、自尊心が高くて他人との交流を避ける方は、どうしても他人と接触する機会が減る分、脳の働きは鈍化して若年性認知症になりやすいと指摘されています。


>>認知症が一気に進む原因や知っておきたい予防と対策について

物忘れ外来での若年性認知症の検査と治療について 

 

検査方法

 

若年性認知症の診断は、高齢者の認知症と同様に、ある程度定められたチェック手順によって総合的に実施されます。

 

  1. 問診…本人、家族から発症までの経過を聴取します。
  2.  神経心理検査…MMSE(ミニメンタルステート検査)、長谷川式認知症スケール(HDS-R)などの検査ツールを用いて認知機能を評価します。
  3.  脳に関する画像診断検査…脳に萎縮の有無があるかどうかを調べるMRIやCT、PET検査などを行います。
  4.  一般的な身体検査…必要に応じて血液検査や心電図検査、感染症検査、レントゲン撮影などを実施します。

 

若年性認知症の治療法

 

認知症の一部症状については早期診断によって改善を期待できる場合があり、治療法の研究や新薬の開発が進行しています。

 

しかし、残念ながら現時点では若年性認知症のほとんどにおいて根本的な治療法は確立されていません。

 

実際には、薬物療法やリハビリ療法、生活習慣の改善、周囲の環境調整などの方法を組み合わせて、症状進行を遅らせる、あるいは症状を軽減させる治療が実践されています。

 

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、中核症状である認知機能障害などに対して症状を緩和させる薬がありますし、理学療法や作業療法のリハビリテーション療法によって、行動心理症状を改善させる一定の効果が期待できます。

 
日常でできる予防法

 

若年性認知症を予防するには、食事や運動、喫煙などの生活習慣を見直すことが重要です。

 

規則正しい生活を送ること以外にも、日常的に脳を活性化させることを目標としましょう。

 

例を挙げると、定期的に旅行に出かける、信頼できる友人との食事会などに参加するなど、日常生活の中に、心がわくわくするようなイベントを積極的に取り入れて他人とコミュニケーションを確保することで脳が活性化されて若年性認知症の予防に繋がります。

 

もし自分・身内が若年性認知症になってしまったら

 

万が一、自分や身内の家族に認知症の疑い症状を認めた際には、まずは病院など医療機関で専門医に相談しましょう。

 

認知症に症状が類似している他の病気が隠れている可能性も検討されますし、適切な治療や介護を受けるためにも、どの種類の認知症かを診断してもらうことは重要です。

 

認知症を抱えた方にとっては、その事実と共存しながら安心して生活できる環境を整備することが重要なポイントとなります。

 

具体的には、

 

  • 家族として本人を責めない
  • 認知症に関して正しい知識を身につける

 

などの適切な心構えや患者本人との関わり方を認識する必要があります。

 

周辺の人々を困らせる認知症の症状ばかりに目を向けるのではなく、認知症を患った本人の変わらない部分の本質をしっかりと観察して、あらゆる状況に応じた必要な手助けを多様な場面で予防的に実践することが重要です。

 

例えば、

 

  • 規則正しい生活を過ごすために
  • 1日のスケジュールをメモ書きにする
  • 予定している時間を効果的に本人に知らせるために、スマートフォンのカレンダー機能やデジタル時計を活用する

 

など工夫しましょう。

 

また、自分や身内が若年性認知症に罹患した場合には、国などの経済支援の制度も活用できますし、行政や民間のサポート制度を積極的に利用して施設介護体制を整えることによって介護の負担を単独で負わないことが重要な観点です。

 

西春内科在宅クリニックができる対応

 

若年性認知症は、早期発見により様々な対応策を講じることが出来る病気です。

 

日常生活における些細な変化を出来る限り見逃さずに、心配事や不安点などがあれば専門の医療機関で主治医に気になる症状や状態を具体的に説明して相談を受けましょう。

 

西春内科・在宅クリニックでは、常勤の内科医師の診察により、若年性認知症の診断、治療をサポートすることが出来ます。

 

まとめ

 

一般的に言われる「認知症」とは高齢者の認知症のことを指すことが多く、特65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」と呼びます。

 

認知症は、何らかの脳病変によって認知機能が低下することによって社会生活や日常生活に支障をきたした状態であると考えられています3)。

 

認知機能とは、近時記憶・遠隔記憶などを含む記憶、時間・場所に関する見当識、判断力と問題解決力、地域社会における活動能力、金銭管理を始めとする家庭生活力、および学習実行機能などを意味しています。

 

認知症の始まりではないかと疑われる言動を認めた際には、最寄りの認知症外来など医療機関を受診して相談しましょう。

 

今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。

 

 参考文献

 

1)  健康長寿ネットHP

2)  東京都健康長寿医療センター研究所 プレスリリース「わが国の若年性認知症の有病率と有病者数」 

3)  エイザイ相談e-65.net HP


 

この記事の監修医師

甲斐沼 孟医師

医師 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)

【プロフィール】

平成19年に現大阪公立大学医学部医学科を卒業。初期臨床研修修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科勤務、平成26年より国家公務員共済組合連合会大手前病院で勤務、令和3年より同院救急科医長就任。どうぞよろしくお願い致します。

【専門分野】

救急全般(特に敗血症、播種性血管内凝固症候群、凝固線溶異常関連など)、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域

【保有資格】

日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医、日本救急医学会認定ICLSコースディレクター、厚生労働省認定緩和ケア研修会修了医、厚生労働省認定臨床研修指導医など