介護が必要になる原因で多いフレイル(高齢による衰弱)とはどんな状態なのか?
フレイルは、英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源となっています。
日本語に訳すと「虚弱」 や「老衰」、「脆弱」といった意味です。
高齢者が増えている現代社会において、フレイル に早く気付き、正しく治療、予防することが大切です。
そこで今回は、フレイルについて詳しく解説していきます。
目次
フレイルとはどういう状態?
フレイル(高齢による衰弱)は、厚生労働省研究班の報告書では「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知 機能等)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身 の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上 が可能な状態像」とされています。
健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間になります。
つまり、要介護状態になる手前の段階と言えます。
フレイルになる原因
フレイルになる原因には以下のようなものがあります。
- 年を取って、動かなくなること。
- 社会との交流が減ること。
- 筋力が低下すること。
- 認知機能が悪くなること。
- 疲れやすくなること
- 体重が減ること。
- 栄養が不足すること。
フレイルの症状と診断基準
フレイルの症状の判断基準は以下の通りです。
- 体重減少 ダイエットをしていないのに、6か月で2㎏以上の体重減少
- 握力が男性で28㎏、女性で18㎏より弱い
- わけもなく疲れた感じがする(ここ2週間)
- 歩く速さが秒速1mより遅い
- 軽い運動 体操 あるいは定期的な運動 いずれも週1回もしていない。
フレイルとサルコペニアの違いは?
サルコペニアは筋力低下のことを指します。
一方、フレイルはそれに加えて 精神機能や社会性の低下なども含まれており、より広く大きな概念です。
要介護になるには筋力低下だけでなく、脳の機能にも注意が必要ということです。
フレイルになると認知症を発症しやすい理由
フレイルになると認知症になりやすい理由は、筋力低下、精神活動の低下が脳の機能低下に関与しています。
認知症とはすなわち、脳の機能低下によって引き起こされる様々な症状のことであるので、フレ イルは認知症の前段階と言えます。
元気で活動性の高い人が突然認知症になるのではなく、筋力や気力が落ち、身体機能、精神機能の低下が前段階として発生しますので、フレイルを経て、認知症を発症する方が多くなります。
また、脳血管障害などの疾患は認知症の原因になりますが、活動性の低下が高血圧や糖尿病 などの内科疾患の原因となります。
つまり、フレイルが原因で、認知症の原因となる高血圧や糖尿病の疾患を引き起こし てしまい、認知症に至る患者様も多いと考えられます。
◆認知症が一気に進む原因や知っておきたい予防と対策について
◆認知症の検査方法と費用について|治療の副作用は?|検査を拒むときはどうすればいい?
フレイルの進行を防ぐためにできる対処法や予防法
フレイルの進行を防ぐには、筋力を維持することが最も大切です。
食事としては、たんぱく質の摂取が最も重要です。 お肉、魚、卵、大豆などを積極的に食べて運動しましょう。
筋力を増やすには、体重1.5g以上のたんぱく質が望ましいといわれていますが、普通の食事だとこれ 以上にはなかなかなりません。
いちいち、食事ごとに計算するのも無理です。よって、「できるだけ頑張っ てお肉や魚を食べよう!」という考えでいいと思います。
高級な牛肉などは、脂肪が多いので、私は財布にも体にも優しい、鶏の胸肉や脂肪の少ない赤みの多い牛肉などを上手に調理して食べることをお勧めしています。
筋力アップには単なる運動ではなく、目的を持った筋トレが大切です。
歩くだけ、ラジオ体操だけといった運動では筋力を増やすことは難しく、筋肉になるべく強い負荷をかける必要があります。
体の中で最も大きな太ももの筋肉[大腿四頭筋]を例にあげると、単に足を伸ばして持ち上げるだけでなく、一番筋肉が強く収縮する(一番キツイと感じる)ところまでしっかり足を上げて、その状態を限界までキープするといった、より強く目的をもったトレーニングがお勧めです。
🔻こちらも合わせてご覧ください。
▶︎骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由|副作用や注射治療について解説 | 横浜内科・在宅クリニック
フレイルは完治するのか
“完治” という言葉をどう考えるかによります。
人は誰もが、加齢に伴って筋力も脳の機能も落ちます。それが普通です。
寿命を全うするまで、自分の足で歩いて、身の回りのことは自分でできる状態を保ちたい、それ が万人の願いです。
その願いが叶うことが 完治 と考えるなら、努力次第で、多くの人がフレイルを完治させること が可能といえます。
もし家族がフレイルかもしれないと思ったときは 、社会的なつながりのサポートはご家族によるところが大きいです。
なるべく会話をし、一緒に外出し、運動習慣があるか、一緒にできる運動をこなしたり、働きかけていた だくことが非常にいい刺激になります。
西春内科在宅クリニックができる対応
当院では、患者様の様子を把握して、運動指導などを通じてフレイルの予防に取り組みます。
必要に応じて訪問リハビリテーションの導入などを提案し、筋力低下を予防したり、社会的な関わりをより多くもっていただけるように働きかけています。
まとめ
今回はフレイルについて詳しく解説しました。いかがでしたか。
認知症にならないためにも、フレイルの予防が非常に重要です。
認知機能が低下してから、もとに戻すのは難しく、予防第一とい えます。
認知症予防のためにはフレイルの状態にある段階で、できる限り、フレイルが進まないよう、も とに戻るよう働きかけることが肝心です。
お年寄りの元気がない、痩せてきた、力が弱くなった という兆候を見逃さず、健康で歩ける状態を長く保てるように積極的に周囲が サポートしましょう。
◆パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説