動悸はどんな病気の症状?セルフチェック項目や治し方を紹介
動悸はとても身近な症状である一方、いざ起こると「もしかして病気では?」と不安が強くなる人も多いと思います。
そんなときに、動悸の起こり方や対処法を知っておくと安心できるでしょう。
本記事で動悸の種類や対処法を解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
動悸とは
動悸とは、自分の心拍動を意識するしないに関わらず様々な形で感じることを言います。
動悸というとそれ自体が病気のように思われがちですが、動悸が全て悪いものというわけではありません。
走った後や高熱がある時には誰でもドキドキと鼓動が速くなることがあると思います。
そういった症状も広い意味では動悸に含まれており、そのような動悸に対しては特別な治療は必要ないこともあります。
動悸のセルフチェック項目
動悸時のセルフチェック項目としては、まずは自身の症状がどれにあてはまるのかを確認します。その方法としては、検脈法が推奨されています。
検脈法とは、右手の人差し指、中指、薬指の3本で左手首の窪みを少し押さえるように触れて脈拍を計測する方法です。
運動時の心拍数の確認や、不整脈のセルフチェックに推奨されています。
上記の検脈法を頭に入れた上で、以下のような項目を確認しましょう。
- 脈が速く感じるか
- 脈が強く感じるか
- 脈が一定のリズムを刻まずとぶことがないか
- 明らかに脈が不規則でないか
- 動悸の発症および停止は突然か
- なんとなく始まってなんとなく終わるか
- 持続時間はどれくらいか
- 動悸が始まる直前に何をしていたか
上記のような症状を医師に伝えると、動悸の原因を探る際に参考になることが多いです。
また、不整脈によってはいつからの発症なのかが非常に重要となります。
すぐに病院に行った方がいい動悸の症状
動悸のみで緊急性が高いものはそれほど多くありません。
ただし、速い脈が長時間持続しているような場合にはすぐに医療機関を受診したほうがよいでしょう。
具体的には、安静にしていても心拍数120回/分以上が10分以上続くような場合には念のため検査を受けることが推奨されます。
検脈法で120回/分の心拍数を確認するには、10秒間なら20回以上、15秒間なら30回以上など分割して測定する方法が非常に有効です。
また、動悸症状に付随して血圧低下や意識消失、ふらつきや胸痛、嘔吐などを認める場合には至急の対応が必要です。
こうした場合に救急車を呼ぶのをためらわないようにして下さい!
致死性不整脈で意識消失を来した場合には即時の電気ショック治療が必要なことも多いです。
周囲にAED(自動体外式除細動器)があればすぐに取り寄せるとともに救急要請し、場合によって心肺蘇生を行う必要があります。
動悸の原因となる疾患
動悸がすべて危険ということではありませんが、下記のような病気や疾患などが原因で起こることもあります。
- 不整脈
- 心不全
- 狭心症
- 心臓弁膜症
- 高血圧症
- 低血糖症
- バセドウ病
- 気管支喘息
- COPD
- 肺塞栓症
- 更年期障害
- 貧血
- ストレス
ここでは、動悸を引き起こす可能性のある病気や疾患を確認していきましょう。
不整脈
読んで字の通り、本来一定であるはずの心拍動のリズムが不規則になる心疾患です。
動悸の他に息切れや胸痛といった症状が見られることが多いです。
心電図で見たときの波形で種類が分かれており、中には失神や心不全、最悪の場合突然死に至る不整脈もあるので注意が必要です。
心不全
広義では心臓が正常に動いていない状態のことを指し、心臓から十分な血液量が全身へ供給されなくなることで動悸が激しくなる疾患です。
また、酸素や栄養不足によって運動後に息切れしたり疲れやすくなったりするのも特徴です。
循環障害によりむくみといった症状が見られることも多いですが、知識がなければ心疾患と結びつけることが難しく、意外と見落としがりになります。
こちらも酸欠によるめまいや失神などを起こすこともあり、最悪の場合死に至ることもあります。
狭心症
心臓から出る大動脈から3つに枝分かれしている「冠動脈」が詰まって狭くなってしまい、全身へ酸素や栄養が十分に行き渡らなくなる病気です。
言うまでもなく、詰まった本数が多いほど重篤な狭心症となります。
心臓弁膜症
心臓は4つの部屋に分かれており、「右心房」→「右心室」→「左心房」→「左心室」の順に流れており、それぞれ境目には逆流を防ぐための弁が付いています。
この弁が加齢や先天的な要因などで逆流防止の役割を果たさなくなることで、心不全や不整脈といった様々な合併症を引き起こす恐れがあります。
高血圧症
常に血圧が高い状態のこと。定義は医療機関や媒体によって多少異なりますが、最高血圧が140mmHg、最低血圧が90mmHg以上だと高血圧と定義づけられます。
基本的に高血圧による自覚症状はほとんどないとされていますが、最高180mmHg、最低120mmHgを超える状態では心臓が強く拍動し、自覚できるレベルになることもあります。
低血糖症
低血糖の状態では、自律神経の調節機能によって血糖値をコントロールしようとする作用が働きますが、その際に起こる迷走神経反射というメカニズムの作用として動悸や倦怠感などといった症状が現れる場合があります。
バセドウ病
バセドウ病は甲状腺の機能が異常に活発になり、代謝機能をコントロールできなくなる病気です。
言ってしまえば何もしていないにも関わらず常に運動しているのと同じような状態になることで酸素が必要となり、動悸や息切れといった症状として体に現れます。
気管支喘息
気管支喘息では発作が起きた際に呼吸困難感を呈し、心臓が全身へ酸素を供給しようとして激しく拍動するため、動悸を自覚するようになります。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
慢性気管支炎や肺気腫、間質性肺炎などといった病気を総称したものです。COPDは息をうまく吐き出せなくなるのが特徴です。
人間の肺は吐き出した息に比例して息を吸い込むようにできているため、息をうまく吐き出せないことで必然的に吸い込む量も少なくなり、心臓が酸素を全身に供給するために拍動が多くなります。
肺塞栓症
体のどこかでできた血栓が肺動脈に詰まってしまう病気です。エコノミークラス症候群という名前に聞き覚えはないでしょうか?
あれはエコノミークラスの狭い機内で体が長時間縮こまっていたことが原因で血栓ができ、それが肺動脈を塞いでしまうケースが多いために名付けられた俗称です。
酸素欠乏により心臓に負担がかかり、拍動が激しくなって動悸を自覚します。
更年期障害
女性の更年期障害はホルモンバランスの乱れによって引き起こされます。
更年期に女性ホルモンを分泌する卵巣の機能が衰えると、ホルモンの管理を行う脳の視床下部という部分に異常をきたします。
視床下部は自律神経を司る器官でもあるため、呼吸や拍動をコントロールすることが難しくなり、結果として動悸や息切れなどが起こります。
貧血
貧血の状態だと、少ない血液量を心臓が速く脈打つことでカバーしようとするため、拍動が多くなり動悸が起こります。
ストレス
ストレスでもホルモンバランスが乱れることがあるため、更年期障害と似た作用機序で動悸や息切れといった症状が見られる場合があります。
動悸の治し方は?
動悸が起こったらまずは安静にすることが大事です。不安だからといって何か行動を起こすとさらに鼓動が速まってしまい、心臓へ負担をかけることに繋がります。
動悸は酸素の供給量が少なくなって起こることが多いため、深呼吸をして肺の中に酸素を多く取り込むのも有効です。
また、動悸は交感神経が優位になって起こるので、目をつぶってまぶたの上から優しくマッサージをしたり、手の甲の親指と人差し指の間にあるくぼみを押すなど、副交感神経を刺激するツボを刺激するのも効果的です。
なお、これらは精神的な原因で動悸が起きている場合には有効ですが、心疾患などの場合だと酸素欠乏がさらに進んでしまう恐れがあるため、必ずしも推奨されるわけではないということを覚えておきましょう。
◆狭心症の原因や症状、治療について|心筋梗塞との違いは?前兆がある?
市販の薬や漢方で対応可能な動悸の症状
動悸の原因がすでに明らかになっており、効果的な薬が分かっていれば漢方薬など市販の薬で対応することも可能な場合があります。
ただし、原因が明らかでない場合には薬により動悸が悪化する原因になることもあるので、市販薬や漢方薬の内服などは医療機関で相談してからのほうが安心です。
受診時に症状が消失していても、血液検査や24時間の心電図検査(ホルター心電図検査)などで普段起こっている動悸の原因が明らかになることもあります。
また、特に基礎疾患のない人は、たまに脈が飛ぶ程度で自覚症状が強くなければ緊急で医療機関を受診する必要性は低いでしょう。
ただし、動悸が頻繁に起こっていて今までに一度も検査を受けたことがなければ、一度医療機関を受診することをお勧めします。
🔻横浜内科・在宅クリニックのブログ記事
西春内科・在宅クリニックでできる治療
動悸の患者様が受診されると、まずは血圧や心拍数などバイタルサインを確認したうえで安定していれば症状が起こった状況を確認します。
そして心電図検査で脈の状態を確認して診断をつけ、必要に応じて治療を行います。
ただし、受診時に症状が改善している場合には正確な診断が困難なことも多いです。
その場合には、24時間心電図検査(ホルター心電図検査)や血液検査、心エコー図検査などを組み合わせることで鑑別診断を進めることが可能となります。
受診時に症状が消失しており、動悸の原因が特定できない場合には他の検査で異常なければ治療は行わずに経過観察となることが多いです。
受診時に不整脈が続いていて持続が望ましくない場合には、内服薬あるいは点滴での治療を要することがあります。
また、命に関わるような危険な不整脈が続いており、血圧低下その他危険な兆候があれば、すぐに電気ショックなどの治療を要することもあります。
まとめ
動悸という症状は、医療機関を受診される患者様の中でも非常に多いものになります。
動悸の原因は多岐にわたり、原因が最後まで特定できないことも少なくありません。
大切なことは致死性不整脈あるいは明らかな基礎疾患を有するケースを見逃さないことであり、治療が必要な場合に適切な治療を行うことです。
動悸が突然起こると誰しも不安を感じると思います。
前述したような危険な徴候がある場合にはもちろん早期に医療機関を受診することが望ましいです。
またそうでなくても今までに動悸で検査を受けたことがない場合には念のため検査を受けることがお勧めです。
セルフチェック項目で記載したような項目は診断時にとても参考になります。
医療機関を受診される際には、自分の動悸症状がどれに該当するのか、分かる範囲で構わないので思い出しておいて下さい。
参考文献
〇2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン(日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン)
〇不整脈概論‐専門医になるためのエッセンシャルブック‐ 2013年, メジカルビュー社
監修医師: 循環器内科 小正 晃裕
- 関西電力病院 循環器内科