動悸はなぜ起こる?原因や起こりやすい人の特徴とは|すぐに病院に行くべき症状を解説。
動悸とは、自分の心拍動を意識するしないに関わらず色々な形で感じることを言います。
動悸というとそれ自体が病気のように思われがちですが、動悸が全て悪いものというわけではありません。
走った後や高熱がある時には誰でもドキドキ感じることがあると思います。
そういった症状も広い意味では動悸に含まれており、そのような動悸に対しては特別な治療は必要ないこともあります。
動悸はとても身近な症状な一方で、いざ起こると不安が強くなる人も多いと思います。
そんな時に、動悸の起こり方や対処法を知っておくと安心できます。
以下の記事で動悸の種類や対処法を解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
動悸の主な症状
動悸の主な症状としては、
- 脈を速く感じる
- 脈の飛び(欠帯)や脈不整を感じる
- 脈を強く感じる
などがあります。
速く感じる場合にはドキドキドキ・・と普段よりも脈が速い状態が続きます。また、脈が速くなると同時に不規則に感じる場合もあります。
その他、脈の飛びを感じることもあります。
この場合には、規則正しく打っていた脈拍が突然1拍ないし数拍抜けることになります。
ドキ、ドキ、・・、ドキ、・・・、ドキ、といった感じになります。
脈を強く感じることもありますが、これも動悸として表現されることが多いです。
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市販の薬や漢方で対応可能な動悸の症状
動悸の原因がすでに明らかになっており、効果的な薬が分かっていれば漢方薬など市販の薬で対応することも可能な場合があります。
ただし、原因が明らかでない場合には薬により動悸が悪化する原因になることもあるので、市販薬や漢方薬の内服などは医療機関で相談してからのほうが安心です。
受診時に症状が消失していても、血液検査や24時間の心電図検査(ホルター心電図検査)などで普段起こっている動悸の原因が明らかになることもあります。
また、特に基礎疾患のない人は、たまに脈が飛ぶ程度で自覚症状が強くなければ緊急で医療機関を受診する必要性は低いでしょう。
ただし、動悸が頻繁に起こっていて今までに一度も検査を受けたことがなければ、一度医療機関を受診することをお勧めします。
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すぐに病院に行った方がいい動悸の症状
動悸で緊急性が高いものはそれほど多くありません。
ただし、速い脈が長時間持続しているような場合にはすぐに医療機関を受診したほうがよいでしょう。
具体的には、安静にしていても心拍数120回/分以上が10分以上続くような場合には念のため検査を受けることが推奨されます。
検脈法で120回/分の心拍数を確認するには、10秒間なら20回以上、15秒間なら30回以上など分割して測定する方法が非常に有効です。
また、動悸症状に付随して血圧低下や意識消失、ふらつきや胸痛、嘔吐などを認める場合には至急の対応が必要です。
すぐに医療機関を受診してください。
こうした場合に救急車を呼ぶのをためらわないようにして下さい!
致死性不整脈で意識消失を来した場合には即時の電気ショック治療が必要なことも多いです。
周囲にAED(自動体外式除細動器)があればすぐに取り寄せると共に救急要請し、場合によって心肺蘇生を行う必要があります。
西春内科・在宅クリニックへの問い合わせ番号はこちら
0568-25-5080
動悸のセルフチェック項目
動悸時のセルフチェック項目としては、まずは自身の症状がどれにあてはまるのかを確認します。
その方法としては、検脈法が推奨されています。
検脈法とは、右手の人差し指、中指、薬指の3本で左手首の窪みを少し押さえるように触れて脈拍を計測する方法です。
運動時の心拍数の確認や、不整脈のセルフチェックに推奨されています。
セルフチェックとしては、以下のような項目をまずは確認します。
- 脈は速く感じるのか、強く感じるのか、飛んで感じるのか
- 脈の不整を自覚できるか(検脈で脈が不規則になる)
- 動悸の発症および停止は突然(はっきり分かる)なのか、
- なんとなく始まってなんとなく終わるのか
- 持続時間はどれくらいか(数秒なのか、数分や数十分、それ以上の持続なのか)
- 動悸が始まった際に何かしていたか(運動や飲酒、その他普段と異なる行動をとっていたかどうか)
上記のような症状を医師に伝えますと、動悸の原因を探る時に参考になることが多いです。
また、不整脈によってはいつからの発症なのかが非常に重要となります。
動悸が起こる原因とは?
動悸が起こる原因には、大きく分けると*1不整脈疾患と、*2洞性頻脈(どうせいひんみゃく)との2通りがあります。
*1 不整脈疾患: 脈拍の異常ではなく、心臓のリズム(調律)の異常のこと *2 洞性頻脈 : 生体反応の結果として正常な脈が速くなること |
不整脈疾患には、以下のように多くの種類があります。
●上室期外収縮
次の心拍が生じると予想されるタイミングより早期に生じる心臓の電気的な興奮のことで、余分な心拍が現れる。
心房あるいは房室接合部から生じる期外収縮を上室性期外収縮という
●心室期外収縮
心室(心臓の血液を全身に送り出す場所)から生じる期外収縮のこと
●発作性上室頻拍
突然脈拍が速くなり、しばらく続いた後に突然止まる不整脈
●心房粗動
心房が1分間に240回以上という通常よりも速いペースで規則的に動いている状態のこと
●心房細動
心房が小きざみに震え、十分に機能しなくなる不整脈のひとつ
●心室頻拍
何かしらの原因により心室が通常よりも速いペースで規則的な興奮をする不整脈
●心室細動
心室がブルブル震えて(細動)、血液を送り出せなくなった状態(心停止状態)のこと
一方、洞性頻脈は、前述したように
- 飲酒や運動
- 脱水時
- 甲状腺疾患
- 貧血
などによっても起こります。
症状から動悸の原因を推測できることはありますが、正確な診断には症状だけでは不十分で、心電図検査が必要となります。
また、原因によってはその他血液検査を含めた追加の検査を行って初めて確定診断に至ることもあります。
受診時に症状が改善していると心電図検査を行っても原因が分からず、その場合には必要に応じて24時間以上の心電図検査(ホルター心電図検査)なども考慮されます。
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動悸が起こるのはどんな人に多い?
動悸を自覚するのは、一般的には安静にしている時が多いです。
運動時には気が付きにくい症状でも、安静にしている時や夜に横になっている時に気になることが多くなります。
しかし、不整脈の種類によっては運動時に特に起こりやすいものもあります。
動悸が起こりやすいのは心臓疾患がある人というイメージがあると思いますが、それ以外でも動悸は起こることがあります。
特に、甲状腺疾患や貧血などは動悸を起こしやすいので、動悸の鑑別診断としてチェックを忘れてはいけない項目となります。
また、基礎疾患がない人であっても、飲酒後や脱水の際、発熱時や高ストレス環境、疲労が特にたまっている時などは動悸が起こりやすくなるので注意が必要です。
また、以下の人たちは特に動悸が起こりやすいため注意しましょう。
心臓疾患がある人
心臓疾患がある人は、心臓を動かす源になる電気信号に乱れが生じやすく、不整脈が起こりやすくなります。
また、もともと心臓疾患のある人で急に不整脈が増えている場合には心臓疾患の状態が悪くなっているサインのこともあるので、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
そして、心臓疾患がある人は内服している薬の影響で脱水に注意が必要で、少しの運動でも身体に負担がかかりやすくなります。
そのため、病的でないとしても動悸が生じやすいため注意が必要です。
貧血ぎみな人
貧血が起こると、体内の各臓器に対する酸素需要に応えるため心拍数を増やして対応する生体反応が起こります。
その結果として、脈が整ったままで速くなる「洞性頻脈」を起こしやすくなります。
もともと貧血と言われている人で、動悸が頻繁に起こるようになっている場合には貧血が悪化していることも考えられるため、医療機関を受診して検査を受けるようにしましょう。
また、検査の結果貧血が進行している場合には身体のどこかから出血を起こしている可能性もあります。
早めの精密検査が必要になることもあるので、健診などで貧血を指摘された方は医療機関で検査を受けることをお勧めします。
甲状腺ホルモンが正常でない人
甲状腺ホルモン値の異常によっても動悸が起こることがあります。
甲状腺ホルモンが高値になると脈が速くなりやすく、洞性頻脈を来したり心房細動などの不整脈につながることもあるため、動悸の鑑別に甲状腺ホルモン測定も有用です。
また、甲状腺ホルモンが低下すると、反対に脈が遅くなることもあります。
脈が遅くなるとふらつきや気分不良などの症状を来すことがありますが、脈が飛んだ後の1拍を大きく自覚して、動悸として感じることもあるので注意が必要です。
甲状腺機能亢進症、機能低下症はいずれも治療が必要になることが多いです。
また、一度良くなっても再発することがあるため、これまでに何か異常を指摘されていた人で動悸が増えた場合には医療機関で検査を受けるようにしましょう。
ストレスを感じやすい人
ストレスも動悸を起こしやすくする大きな原因の一つです。
20代の若い健康な人でも仕事や勉強など、強いストレスを感じていたり、疲労がたまっていると不整脈が起こりやすくなります。
一般的には上室期外収縮や心室期外収縮などの期外収縮性不整脈が起こりやすいです。
そして、それをきっかけに心房細動や発作性上室頻拍などの他の不整脈につながることもあります。
従って、若い人だから大丈夫と考えずに、動悸症状が持続したり頻繁に起こる場合には医療機関へ相談するようにしましょう。
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西春内科・在宅クリニックでできる治療
動悸の患者様が受診されると、まずは血圧や心拍数などバイタルサインを確認したうえで安定していれば症状が起こった状況を確認します。
そして心電図検査で脈の状態を確認して診断をつけ、必要に応じて治療を行います。
ただし、受診時に症状が改善している場合には正確な診断が困難なことも多いです。
その場合には、24時間心電図検査(ホルター心電図検査)や血液検査、心エコー図検査などを組み合わせることで鑑別診断を進めることが可能となります。
受診時に症状が消失しており、動悸の原因が特定できない場合には他の検査で異常なければ治療は行わずに経過観察となることが多いです。
受診時に不整脈が続いていて持続が望ましくない場合には、内服薬あるいは点滴での治療を要することがあります。
また、命に関わるような危険な不整脈が続いており、血圧低下その他危険な兆候があれば、すぐに電気ショックなどの治療を要することもあります。
まとめ
動悸という症状は、医療機関を受診される患者様の中でも非常に多いものになります。
動悸の原因は多岐にわたり、原因が最後まで特定できないことも少なくありません。
大切なことは致死性不整脈あるいは明らかな基礎疾患を有するケースを見逃さないことであり、治療が必要な場合に適切な治療を行うことです。
動悸が突然起こると誰しも不安を感じると思います。
前述したような危険な徴候がある場合にはもちろん早期に医療機関を受診することが望ましいです。
またそうでなくても今までに動悸で検査を受けたことがない場合には念のため検査を受けることがお勧めです。
セルフチェック項目で記載したような項目は診断時にとても参考になります。
医療機関を受診される際には、自分の動悸症状がどれに該当するのか、分かる範囲で構わないので思い出しておいて下さい。
参考文献
〇2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン(日本循環器学会/日本不整脈心電学会合同ガイドライン)
〇不整脈概論‐専門医になるためのエッセンシャルブック‐ 2013年, メジカルビュー社
監修医師: 循環器内科 小正 晃裕

- 関西電力病院 循環器内科