【倦怠感・疲労感が続く】これって新型コロナ感染症の後遺症?その他考えられる原因
こんにちは。
西春内科・在宅クリニックです。
寒くなってきて、またコロナウイルス感染症の患者さんが増えてきてしまいました。
欧米ではLong COVIDや、Post-acute COVIDなどと呼ばれています。
様々な症状を呈していることが報告されています。
特に、倦怠感や疲労感はコロナウイルス感染症の後遺症でも多くみられる症状です。
今回はコロナウイルス感染症後遺症の倦怠感や疲労感の病態や対策について詳しく解説していきたいと思います。
目次
コロナウイルス感染症後遺症とは
はじめにコロナウイルス感染症後遺症の定義について皆さんは知っているでしょうか。
アメリカ疾病予防センター(CDC)の定義では「新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)に感染してから4週間以上後に発生する可能性のある幅広い健康への影響(※)」とされています。
また、世界保健機関(WHO)の定義では「新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)に感染してから3か月の時点で、他の病気ではない2か月以上持続する症状(※)」とされています。
例えば、米国での研究では新型コロナウイルス感染症の患者の30%が9か月後の時点でも症状が持続しており、85%は軽症の患者であったと報告されています。
つまり、軽症であったからといって、後遺症が起きないということではありません。
※英文をわかりやすい形に意訳しています。
新型コロナ感染症で多い倦怠感・疲労感の特徴
新型コロナウイルス感染症後遺症のうち、倦怠感や疲労感は64%の患者で見られたとの報告もあり多くの患者でみられています。
日本では慶應大学が中心となって1000人以上の調査を行いました。
その結果、感染12か月後の患者の13%に倦怠感・疲労感の症状が出ていたことがわかっています。
これらは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(Myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome :ME/CFS)とよばれています。
6か月以上続く活動能力の低下と安静によって改善されない症状となります。
症状として以下のようなものがあるとされています。
- 疲労と機能障害:休息によっても実質的に軽減されない社会活動への障害
- 労作後倦怠感(Post-exertional malaise;PEM):発症前には耐えられた身体的、認知的ストレス暴露後に、症状や機能が悪化すること
- 睡眠の質の悪化(爽快感のない睡眠)
- 起立性不耐症:直立姿勢をとること、維持することによって症状が悪化するため姿勢をとれない
- 認知機能障害:労作、努力、ストレスによって悪化する思考や行動の障害
なかでも、労作後倦怠感(Post-exertional malaise;PEM)のコントロールが最も重要です。
治療においても管理のポイントとなります。
倦怠感・疲労感のセルフチェック
さて、ご自身がこの筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群にあてはまるかは以下のチェックリストを参考にするとよいでしょう。
①疲労と機能障害
- インフルエンザのような疲労感/倦怠感
- 何度も休んで、必要最低限の活動しかしていないのに、充電が終わらない電池のような感じ
- 思考が以前よりずっと難しくなった
- 手足や体が重く感じられ、動かしにくい
- 個人生活や家事における深刻な制限
- 仕事、キャリアの喪失
- 家に閉じこもることが多くなった
- 社会的な交流の減少や孤立感の増大
②労作後倦怠感
- わずかな労作で精神的に疲れる
- 軽い活動で体力が消耗したり、体調が悪くなったりする
- より厳しい、より長い、より繰り返される活動ほどひどくなる倦怠感
③睡眠の質の悪化
- 眠ったことがないような感覚
- 寝付けない、眠り続けられない
- 長時間、または通常の睡眠時間でも、朝はまだ気分が良くない
④起立性不耐症
- 長時間座っていたり、立っていたりする際のふらつき、めまい、時に失神
- 空間的な見当識障害または平衡感覚の喪失
⑤認知機能障害
- ブレインフォグ
- 混乱、見当識障害
- 集中できない
- 情報を処理することができない/マルチタスクができない
- 適切な言葉がでない
- 意思決定できない
- ぼんやりする/忘れっぽい
①~③のすべての症状が6か月以上続き、④、⑤のいずれかの症状を認めた場合、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群と診断されることとなります。
倦怠感や疲労感が回復する時期について
これらの症状はどれだけ続くのか、いつ回復するのかを完全に把握することはできていません。
また、症状の回復期間にもかなりの個人差があると考えられます。
その他考えられる倦怠感・疲労感の原因
倦怠感・疲労感の原因には新型コロナウイルス感染症以外にも考えられます。
例えば、以下の疾患など様々です。
- コロナウイルス以外の感染症(インフルエンザなど)
- がんなどの悪性疾患
- 呼吸器疾患
- 心疾患
基礎疾患がある方は、持病の悪化に伴う症状の可能性があります。
そのため、まずは除外が必要と考えられます。
倦怠感や疲労感があるときに控えるべきこと
とくに労作性倦怠感(PEM)は無理をしてしまうと症状が悪化していくことがわかっています。
そのため、自身の許容度を超えた運動やストレスへの暴露には十分注意をする必要があります。
「休んでしまった分仕事をしなければ」と感じてしまう方も多いと思います。
しかし、過負荷には注意しながら慎重に対応していく必要があります。
倦怠感や疲労感の治し方
ここまでご説明した筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群には治療法はありません。
そのため症状を管理していく必要があります。
アメリカ疾病予防センターでは以下のような対策を推奨しています。
① 労作後倦怠感(PEM)
PEMの患者は個人差のある一定量の運動やストレスを超えた場合に症状が出ます。
そのため、まずは「自分自身の精神的、身体的活動の限界を把握する」必要があります。
その後、その制限内にとどまる程度での日常生活での負荷をかけていき、徐々に活動量を増やしていく必要があります。
② 睡眠
睡眠後の回復が少ないと感じる方も多いと思います。
必要があれば睡眠薬の投与が補助となる可能性があります。
③ 痛み
筋肉や関節の痛み、頭痛、皮膚の痛みを感じることがあります。
ロキソニンやカロナールといった鎮痛剤は痛みの除去に役立つことがあります。
医学的な治療とは離れてしまいますが、マッサージ、ストレッチ、ヨガ、軽い運動などは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の改善につながる場合があります。
しかしすべてにおいて、確たる裏付けはありませんので治療は手探りで行うほかありません。
もし倦怠感や疲労感が続くときは
さて、ここまで読んでいただいた中で、ご自身が筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群ではないかと思った方もいるかと思います。
コロナ後遺症は患者さんが少ないため、まだまだ手探りでの治療となります。
そのため、同じような患者が多く受診されるコロナ後遺症外来を受診いただくことは効果的な治療を得ることができる可能性があります。
西春内科在宅クリニックができる対応
当院では、症状に合わせた簡単な投薬治療は行うことができます。
また、症状の程度によってはコロナ後遺症外来をご紹介することもできます。
「もしかしたら?」と思ったらまずは当院までご相談ください。
まとめ
今回は、コロナウイルス感染症後遺症の倦怠感や疲労感の病態や対策について詳しく解説しました。
この記事を読んでいただき、コロナ後遺症の倦怠感についてご理解いただけたでしょうか。
なかなか、治ることのない倦怠感が続く方は一度ご相談ください。
無理をすることは返って症状の悪化につながってしまいます。
まずは、無理をせず過ごしていただくようお願いいたします。
参考資料
・厚生労働科学研究成果データベース「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究」
・Centers for Disease Control and Prevention
・National Library of Madicine「Frequency, signs and symptoms, and criteria adopted for long COVID‐19: A systematic review」
・MECFScliniciansguide