五月病の症状やなりやすい人の特徴|うつ病との違いなども解説
4月より新年度を迎え、大学生や新社会人となる方、
また転職や人事異動など新しい環境で働きだした方など
あっという間に1か月が過ぎ、
ゴールデンウイークなどの大型連休も終わり…
いざ登校・出勤しようとすると、「気分がふさぐ」「やる気が起きない」という状態となり、場合によっては不登校や欠勤になってしまうことがあります。
この現象を、一般的に「五月病」と呼んでいます。
最近では企業の研修期間などが延びたことにより、時期が6月にずれ込んでくるケースも見受けられます。
今回は、そんな五月病の症状やなりやすい人の特徴、うつ病との違いについて詳しく解説していきます。
目次
五月病の主な症状
五月病は、正式な医学用語ではありません。
臨床現場において、精神科診断では、「適応障害」とする症例が多い印象があります。
中にはその他の精神疾患の可能性もあるので、「五月病」と言う言葉から軽く考えることなく、十分に注意が必要です。
この記事の後半では五月病のセルフチェック項目を紹介しているので、ぜひ活用してみてください。
五月病になりやすい人の特徴
「五月病」になってしまう主な原因に、新しい環境に馴染めない、適応できないことが挙げられます。
以下などといった人間関係によるものであったりします。
- 初めての一人暮らしや職場の雰囲気に馴染めないといった環境面
- すでに出来上がってしまっている人間関係に溶け込めずに疎外感を感じる
- 新しい上司や部下といった上下関係に悩む
その他にも、ノルマや残業が多すぎてついていけないといった、オバーワークが続いているといったケースもあります。
そういった事はだれしもが経験すると思います。
しかし、それらの状況であれば、皆が「五月病」になるということではありません。
そういった環境に馴染めずにストレスを抱えた状態が長期間に渡って続くことで、心身共に疲弊し、
前述した様な何かしらの症状が出てきます。
「五月病」になりやすい人にはいくつかの特徴があります。
一般的には、まじめで頑張り屋さんがなりやすいと言われていますが、もう少し具体的に紹介します。
まずは、そもそも新しい環境に馴染むことが昔から苦手であった、もしくは新しい環境で対人関係を作ることを苦手としている人です。
人間関係を作るというのは、みなさんが想像しているよりもずっと多くのエネルギーを使います。
さらに、誰にでもいい顔をしてしまう、失敗を極度に恐れる、困ったときに誰かに相談できない、こういった人たちです。
周囲への過剰な気遣いや、新しい環境で失敗してはいけないという極度の緊張、悩みを一人で抱えてしまうことは、ストレスを多くため込む原因です。
五月病とうつ病の違い
五月病とうつ病は違いますか、という質問を受けることは珍しくありません。
しかし、「五月病」という言葉が医学用語で無い以上、同列に扱うことはできません。
五月病とは、新年度が始まり、五月から六月といった、少し時間が経過した後に、心身の不調をきたした状態を指しています。
心身の不調とは、「うつ病」や「適応障害」、その他の精神疾患と様々です。
つまり、五月病の状態が、うつ病である人がいるということです。
五月病と言うと、なんだか少し軽症のイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、
実は「うつ病」であったなんてことが無いように、心身の不調を感じた際は、一度最寄りの病院に相談することをお勧めします。
それでは、「うつ病」と「適応障害」の違いは何でしょうか。
双方ともに気分が落ち込んだ状態であることは共通しますが、いくつかの違いがあります。
まず、はっきりとした原因がわかるかどうかです。
原因となったイベントストレスがわからないことがしばしばあります。
かなり漫然とストレス環境にいた結果、気が付いたらうつ病というイメージです。
うつ病では仮に思い当たるストレスから離れてみたとしても、中々良くなりません。
うつ病は、ストレスの大小や、ストレスの有無に関わらず、脳の機能が低下した状態です。
治療として、精神療法や環境調整はとても重要ですが、抗うつ薬などの薬物療法もきちんと行う必要があります。
基準A、B、Cの3つを合わせたものが、抑うつエピソードと呼ばれるものです。
うつ病の診断基準
A
以下の症状のうち5つ以上が2週間以上存在する
※(1)抑うつ気分または(2)興味・喜びの喪失が症状には必ず含まれる
※(3)と(9)を除き、症状はほぼ毎日存在する
- ほぼ終日に渡る抑うつ気分
- ほぼ終日ほとんどの事柄に興味や喜びを抱けない
- 食欲の減退または亢進
- 睡眠障害
- 精神運動制止(ブレーキがかかったように考えたり動いたりすることができない)または精神運動焦燥(じっと落ち着いていることができず、動き回ってしまう)
- 疲労感がある、やる気を持てない
- 自己の無価値感、または過剰な罪責感や不適切な罪責感
- 思考力や集中力が減っている、決断困難
- 死に関する反復思考や、反復的な自殺念慮(死にたいという気持ち)、自殺の計画を立てること、自殺企図(自殺するための行動を取ること)など
B
その症状は、臨床的に意味のある苦痛や、勉学や仕事、家事などの大切な領域における機能障害をもたらしている。
※軽症の場合、非常に努力して何とか正常な機能を保っていることもある
C
症状は物質の生理学的作用や他の身体疾患によるものではない
D
症状は他の精神疾患では上手く説明できない
(例)統合失調感情障害、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、他の特定および特定不能の統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群
※鑑別基準については後編の記事で解説します
E
躁病または軽躁病エピソードが存在しない
※躁病または軽躁病エピソードが物質の生理学的作用や他の身体疾患によるものであれば、この除外は適応されない
発症の原因は比較的短期間の出来事がきっかけです。
そのため、原因となったストレスイベントを特定しやすくなります。
適応障害では原因となっているストレスから距離をとることで症状が改善することが多いです。
また、そのストレスから解放されている時には、楽しいことを楽しめます。
適応障害とはストレスにさらされているため、心身共に限界を迎えている状態、一般的に心が折れたと言われる状態です。
たとえ、薬を飲んでも、今起こっているストレスが消えるわけではないので、薬物療法よりも、精神療法や環境調整がとても重要になります。
適応障害の診断基準:DSM-5
A
識別可能なストレス因子が原因の情緒的、行動的な症状が、一連のストレス因子が始まってから3か月以内に起こる。
B
その症状や行動は、下記の1つまたは両方によって証明されることが、臨床的に明らかである。
- 症状の重大性と存在に影響を及ぼす外的要因や文化的背景を考慮したとしても、ストレス因子の強さや酷さとは釣り合わない、著しい苦痛がある。
- 社会的、職業的、あるいは他の重要な領域での機能的な、著しい障害がある。
C
そのストレス関連の症状は、他の精神疾患の基準を満たさないし、既存の精神疾患の増悪でもない。
D
その症状は通常の死別による悲しみの表現ではない。
E
一度そのストレス因子やその結果がなくなれば、その症状は更に6か月以上続くことはない。
決して適応障害が軽く、うつ病が重いということではなく、それぞれに適した治療が必要です。
どちらも専門的な診察が必要であると考えています。
五月病では、五月から六月頃に、以下に該当する場合は適応障害の診断が付く場合が多くあります。
- 新しい環境に馴染めない
- 新しい人間関係に悩んでいるなど
- 心身の不調の原因が明らかな場合
五月病チェックシート
「五月病」として疑わしい症状は以下です。
- 気分がふさぐ
- 体がだるい、すぐに疲れてしまう
- 考えが悲観的になる、ネガティブになる
- 集中できない、ミスが増える
- 食欲が落ちる
- 夜が眠れない、何度も目が覚める
- 頭痛や腹痛、めまいなど、身体的な不調がある
このような症状が続いている、もしくは学校や職場に行こうとする、もしくは学校や職場に行くことを想像すると悪化する場合は、一度病院へ相談することをお勧めします。
五月病の治し方
「五月病」を治すためには、まず五月病の正確な精神科的な診断が必要です。
まずは、病院を受診し、医師の診察を受けましょう。
しかし、「五月病」を予防していく、少し変だなと思った時に自分でできる対処法を別の記事にまとめておきます。
ぜひそちらも読んでみて下さい。
関連記事:五月病になったときの抜け出し方・乗り越え方、対策法などを紹介
病院やクリニックでの処方
「五月病」と言う状態を診察し、必要な治療を行うは一般的には精神科、もしくは心療内科になります。
しかし、精神的な不調の原因が、身体疾患から生じることもあります。
以下の場合でも、からだがだるいと感じることはあり、それに気が付いたのが偶然5月や6月という事もあり得ます。
- 甲状腺などの代謝異常
- 免疫の病気
- 血液のがん
- 肝臓などの臓器の不調
精神科、心療内科クリニックにて身体疾患の存在を見つけることは難しい場合もあるので、まずは体に問題がおこっていないか、最寄りもクリニックにて一度確認しておくことをお勧めします。
体の病気が見つかれば、もちろんその治療を優先しましょう。
また、体に特に問題がないのであれば、精神科や心療内科へ紹介してもらいましょう。
最寄りに精神科や心療内科が無い、もしくは病院の数が少なく初診の予約が取れない、そのような地域も方もいらっしゃると思います。
そのような場合は、専門外であっても精神科領域を多く診察されている医師に治療を行ってもらうことも検討していただいて構いませんので、極力早めに治療を開始するようにしましょう。
長く放置する、長くストレス環境にさらされることで、病状が悪化する可能性があります。
一番良くないのは、自分で「五月病」だと決めつけて、睡眠薬や安定剤といった薬を処方してもらうように、医師に依頼することです。
それらの薬は対症療法であり、風邪で例えると、解熱剤や咳止めなどにあたります。
症状が緩和しているからと言って、治ったと勘違いし、余計風邪を悪化させた経験はありませんでしょうか。
また、それらの薬は依存性や耐性の観点からも、漫然と使用することには注意が必要なものも多いです。
十分に使い慣れた医師に相談し、治療を受けるようにしましょう。
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科在宅クリニックでは、常勤の内科医が様々な心身の不調に対して、診察を行っております。
まずは、精神的な不調の陰に、体の病気が隠れていないかを確認し、
必要であれば最寄りの精神科や心療内科と連携し、治療を行っています。
連休明けから、なんだか体調が万全な感じがしない。
倦怠感が続いている。
などありましたら、まずはお気軽にご相談ください!
まとめ
今回は、五月病の症状やなりやすい人の特徴、うつ病との違いについて詳しく解説しました。
五月病になってしまう主な原因は、新しい環境に馴染めない、適応できないことです。
気分がふさぐ、体がだるい、すぐに疲れてしまうなどの症状が続く場合は、一度精神科もしくは心療内科への受診をお勧めします。