高齢者に多い褥瘡(じょくそう)の好発部位や予防対策、治療方法を解説

公開日:2023.10.23 更新日:2024.10.16

褥瘡

寝たきり状態になってしまった時、気を付けたいのが【褥瘡(じょくそう)】です。

褥瘡とは、先にもお伝えしましたが、寝たきり状態が続いたり、活動量が少ない高齢者に起きやすい症状です。

初期段階では皮膚の赤みやふくらみが現れますが、進行してしまうと感染症や合併症のリスクが高まります。

今回は、そんな褥瘡の重症度や、治療、予防方法などについて詳しく解説していきます。

 

 

褥瘡とは


褥瘡

褥瘡とは一般的に「床ずれ」と呼ばれるもので、体重での圧迫で起こる皮膚の傷やただれのことです。

例えば、自分で動ける人は眠っていても寝返り等を行い、同じ部分に体重がかかり続けないようにしています。

しかしながら寝たきりになっている人は自分で身体を動かすことができず、同じ部分に体重がかかり続けてしまいます。

そのため、ずっと圧迫され続けている部分の血流が悪くなってしまい、皮膚などの細胞に酸素や栄養が届かなくなってしまいます。

その結果、細胞が壊れてしまい、傷や皮膚のただれ、潰瘍ができてしまうのです。

これが褥瘡です。

 

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褥瘡の好発部位


褥瘡

褥瘡は先述の通り、身体の同じ部分に体重がかかり続けてしまうことにより起こる物です。

そのため、褥瘡は身体の下の部分(床やベッドであれば床やベッドと接するところ、座っているのであれば床や椅子などと接するところなど)にできやすくなります。

つまり、その態勢の時に体重がかかりやすくなっている部分に多くできるのです。

例えば、あおむけでベッドに寝ている場合は、後頭部、おしり(仙骨など)の部分や肩甲骨、かかとなどに体重がかかり、褥瘡ができやすくなります。

横向きに寝ている場合は、肩やひじ、太ももの付け根の外側(大転子部)や腸骨、ひざなどに体重がかかりやすいため、褥瘡ができやすくなります。

車いすなど座った状態でずっといる場合にはおしり(尾骨や坐骨の部分)、背中やひじ等にできることもあります。

 

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ステージ別:褥瘡の重症度について


褥瘡は皮膚の圧迫による細胞の障害です。

褥瘡は、初めは体重による圧迫のため皮膚の赤み(発赤)を認めます。

短時間の圧迫であれば、赤みが出ている皮膚も圧迫を取ることでしばらく時間が経過するともとに戻ります。

しかしながらこのまま圧迫を続けてしまうと、発赤が消えなくなってしまいます。

これが褥瘡の始まりとなります(時には皮膚に赤みがなくても、皮膚の奥の方に触れることで硬さを感じることがあります)。

そしてさらにそのまま圧迫を続け褥瘡が進行していくと、次は皮下出血や水膨れなどを認めます。

さらにそのまま体重での圧迫を解除せずに放置すると、血流が悪くなることで皮膚がめくれてしまったり、傷ができてしまい、の傷がどんどん深くなっていきます。

褥瘡の重症度はどの部分まで障害されているか、その「深さ」により分類されます。

NPUAP(米国褥瘡諮問員会) のステージ分類とEPUAP(欧州褥瘡諮問委員会)のステージ分類を使用することが多いのですが、それらにおいて褥瘡の深さにより1-4までのステージに分類されます。

褥瘡

ステージⅠ圧迫をとっても消えない発赤。
皮膚には傷を認めない
ステージⅡ水ぶくれ、浅い潰瘍、皮膚、真皮がなくなるような傷
ステージⅢ皮膚の下の脂肪まで及ぶ傷。
ただしその奥にある骨、腱、筋肉には達していない。
骨や筋肉等は露出していない全層皮膚欠損
ステージⅣ深く、広くなった傷で、骨、腱、筋肉の露出してしまうような全層組織欠損

褥瘡を放置した場合、どんどん重症化してしまいます。

また、傷口を清潔に保たないと細菌などに感染してしまうこともあります。

そうなると全身の状態も悪くなりますし、感染などが起こっていると、最悪の場合、命にも関わりかねなくなってしまいます。

高齢者が褥瘡になりやすい理由


褥瘡

高齢者の場合、そもそも高齢者では若年者と違い、皮膚の弾力もなくなってしまいます。

そのため、体重などでの圧迫やずれに弱く、褥瘡を作りやすい皮膚になってしまっています。

また、筋肉や脂肪の量が落ちてしまっている場合が多くあります。

筋肉や脂肪が落ちてしまうと骨ばった身体になり、そこに圧迫がかかりやすくなってしまいます。

年齢により寝たきりになった場合などは筋肉量や脂肪もさらに少なくなりますし、そもそも身体を動かさないと関節が変形して固まってしまいます。

そのため同じ姿勢になってしまうことも多く、同じ場所に体重がかかりやすくなるため褥瘡もできやすくなってしまうのです。

また、高齢者では、糖尿病などでもともと血流が悪くなっている人の割合も多くなります。

認知症などであまり動かない人も多く、褥瘡ができやすい条件がそろいやすいことも一因となるでしょう。

 

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褥瘡の治療について


褥瘡

褥瘡は褥瘡ができてからどのぐらいの時期か、また、どのぐらいの重症度かによって変わってきます。

褥瘡ができてすぐの急性期(~3週間まで)は傷口を清潔に保ち、ドレッシング剤というシートで傷口を覆います。

これにより傷口の感染を予防し、傷口を湿潤な環境に保ちます。

場合によっては塗り薬を使用したり、痛みが強い場合は痛み止めを使うこともあります。

一方で、褥瘡ができて時間が経過した慢性期(3週間~)は傷口がどの程度の深さかによって治療が変わります。

褥瘡の中でも浅いものであれば塗り薬をぬる、先述のドレッシング剤を使用して傷口を保護します。

傷口が深い場合や、組織の一部が死んでしまった(壊死)場合はその死んだ組織をはさみやメスなどで切りとる処置を行います。

さらに深い場合は汚くなった組織や死んでしまった組織などを取り除くための手術や、褥瘡で組織が死んだりして皮膚がなくなった場合は、必要に応じてその部分を埋める手術を行ったりします。

時によっては皮膚や組織が一部なくなるような傷になってしまった場合、その傷口を覆い陰圧をかけることで傷口を閉じる処置もあります。

また、どの時期によっても傷口に細菌などが感染することがあります。

その場合は塗り薬や抗菌薬の飲み薬、点滴等で感染の治療を行っていきます。

 

 

褥瘡にならないための予防対策


褥瘡

褥瘡は同じ部分に体重などでの圧迫がかけられ続けることによって起こる物です。

そのため、体重が同じところにかかり続けないように身体の向きを変えることが予防では重要です(これを体位変換と言います)。

患者さん本人が動けない場合は家族など、周囲の介護者が定期的に身体を動かしてあげることが必要となります。

また、体重を分散させるように体圧を分散するような寝具を使用することも効果的でしょう。

布団やベッドに寝ている場合はシーツや洋服がよれてしわになっていると、その部分だけ圧迫が強くなったり皮膚の摩擦が強くなったりして褥瘡ができてしまうことがあるので、しわやよれを取ることも重要です。

さらに、皮膚自体がもろくなってしまうと褥瘡もおこりやすくなります。

しっかりと栄養を取り、状態を整えることも重要です。

栄養状態が悪くなってしまうと、筋肉や脂肪も少なくなり骨ばった身体になってしまい、そこに圧がかかりやすくなるため褥瘡ができやすくなってしまいます。

また、栄養状態が悪いと、万一褥瘡になったときも治りが悪くなります

皮膚を清潔に保ち、保湿などスキンケアを行うことも重要です。

例えば寝たきりの人の場合やトイレも行けずにおむつなどで生活せざるを得ない場合もありますが、褥瘡はそのおむつの中、おしりの部分にできることもあります。

そのため、褥瘡ができてしまったのであれば便や尿などで汚染されないように注意しなければなりません。

そして何より、褥瘡ができていないのか細かく観察しておくことも重要です。

褥瘡は一度なってしまうと治るまで時間がかかるものです。

褥瘡になりかけている部分を早期に見つけることができれば、傷が浅い、赤くなっているだけの状態で治療を開始することができますし、早期に治療を開始できれば治るのも早くなります。

 

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西春内科在宅クリニックができる対応


在宅での褥瘡対応では、ヘルパーさんや家族が褥瘡を見るけることがおおいでしょう。

ただ、褥瘡と言われてもその見分け方、どのように注意すればいいかなどわからない場合が多くあります。

西春内科・在宅クリニックでは訪問診療を行っています。

ご自宅や施設に定期的にお伺いし診察を行いますので褥瘡が出来ていた場合速やかに治療を開始していただけます。

また、褥瘡ができてしまった後には、在宅でできる範囲の処置、薬の処方や皮膚を清潔に保ち、保湿するなどのケアの指導などを行って治療していきます。

万一褥瘡がひどくなってしまい、病院での処置が必要となれば、大きな病院に紹介することもできます。

まずはお気軽にご相談ください。

 

 

まとめ


褥瘡は寝たきりの人など、長時間同じ姿勢で動きにくい人になりやすい症状です。

そのような状況では誰でもなり得る症状です。

褥瘡は悪化すると骨付付近まで組織が傷ついてしまうこともあります。

また、細菌に感染してしまった場合、重症化することもあります。

褥瘡は、放置するとどんどん傷が深くなってしまうため、早期発見を行い早期に治療すること、そもそも褥瘡を作らないように定期的に身体を動かすなど予防に努めることが重要です。

参考文献

日本褥瘡学会 褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)
荒木真由美ら 持続吸引による陰圧閉鎖療法を導入した褥瘡ケアの一例 日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 2000; vol4; 68-71

この記事の監修医師

監修医師: 福井 康大