癬疥(かいせん)を放っておくとどうなる?うつる確率や高齢者に多い理由とは
2023.8.07
疥癬(かいせん)とは、ヒゼンダニというダニの1種が皮膚に感染することで、腕や脚、ときには体全体に激しいかゆみが出る病気です。
皮膚の角質層に住みついたヒゼンダニや、その糞などに対するアレルギー反応により、皮膚の炎症やかゆみが生じます。
疥癬は、人から人へ感染します。
寝具などを介する間接的な接触でも感染することがあるので注意が必要です。
疥癬は、抵抗力の弱い高齢者の方に多くみられ、高齢者施設の中で流行することがあります。
今回は、疥癬の原因や症状、放っておくとどうなるのかなどについて解説していきます。
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目次
疥癬の原因

疥癬の原因は、ヒゼンダニと呼ばれる寄生虫です。
この小さなダニは、人の皮膚の表面に穴を掘り、その中で繁殖します。
基本的には、感染者との肌の接触から広がります。
手を握る、性的接触などの直接的な接触に加え、共有の寝具や衣類の使用などの間接的な接触によっても感染が広がることがあります。

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疥癬の症状

疥癬の主な症状は、皮膚の炎症と強いかゆみです。
かゆみは、特に夜間や暖かい場所で悪化します。
症状は、陰部や体の中心部、指の間などによく現れます。
指の間には、いわゆる「疥癬トンネル」が現れてきます(これはあとで解説します)。
かゆみが強すぎて、夜まったく眠れない、と訴える方も多いです。
かゆみから皮膚をかき過ぎたことで、皮膚がひどい炎症状態(かき壊し)になると、
小さな水疱やかさぶた、潰瘍(かいよう)ができてしまうこともあります。
また、疥癬には「通常疥癬」と「角化型疥癬(ノルウェー疥癬)」の2つのタイプがあります。
通常疥癬 | ・体に寄生しているヒゼンダニは10匹ほど ・感染力はそれほど強くない ・強いかゆみを伴う赤いぶつぶつが全身に出ることが多い |
角化型疥癬(ノルウェー疥癬) | ・体に寄生しているヒゼンダニは、100~200万ほど ・通常疥癬と比べ感染力が強い ・通常疥癬の症状に加えて、角質の増殖が特徴的な症状 ※角質の増殖とは、手足・おしり・肘・膝・爪などに、ざらざらの厚い角質がかさぶたのように付いた状態のことで、かゆみがない場合もある |

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疥癬トンネルって?

疥癬トンネルとは、疥癬になった際に見られる、長さ数mmのわずかに盛り上がった、白っぽい線状の発疹(はっしん)のことを言います。
ヒゼンダニは、このトンネル内に卵を産みつけ、繁殖していきます。
疥癬トンネルは、疥癬に最も特徴的で、診断の決め手となる重要な皮膚症状です。
手のしわや指の間でよく見られます。
また、陰部に赤いブツブツとして現れることもあります。

疥癬を放っておくとどうなるの?

疥癬を放っておくと、原因であるヒゼンダニが生きたまま活動するので、
✅かゆみ
✅赤いぶつぶつ
✅角質の増殖
などの症状がどんどん悪くなっていきます。
ヒゼンダニの数が増えるにつれて、他人への感染リスクも高まります。
具体的な感染確率は、一人一人の免疫の強さや、病原体の量などに影響されるので一概には言えません。
人の肌と肌との直接的な接触や、寝具など衣類を介した間接的な接触で他人に感染します。
発症までの潜伏期間は、約1~2ヶ月と言われています。
どんな人が疥癬になりやすいの?

疥癬になりやすいのは、高齢者の方です。
若い方に比べて免疫力が低下していることに加え、老人ホームなどの共同で生活する施設での人同士の接触機会が多いこともこの理由です。
また、高齢者の方は、皮膚が薄く乾燥しやすく、皮膚バリア機能が低下していることも理由としてあります。
そのほか、感染者との接触の機会が多い介護士や看護師などの医療従事者も感染リスクが高いと言われています。
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疥癬は自然に治る?

疥癬は、自然に治ることはありません。
疥癬は寄生虫であるヒゼンダニによる感染症ですので、飲み薬や塗り薬での治療が必要です。
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疥癬の治療について

疥癬の治療は、正確に診断を行うことから始まります。
皮膚の表面をピンセットで採取し、ヒゼンダニやその卵を顕微鏡で確認し、診断を行います。
治療には、ヒゼンダニを駆除するための飲み薬や塗り薬を使います。
飲み薬
飲み薬には、イベルメクチン(製品名:ストロムクトール錠)があります。
空腹時に1回内服していただくことで、約10日間の効果を発揮します。
1週間おきに2回内服していただくことが一般的です。
ただし、ステロイドや免疫抑制剤を投与されているなど、患者さまの背景によっては、3回以上の投与が必要になることもあります。
なお、イベルメクチンにはかゆみを止める作用はありません。
塗り薬
以下があります。
・フェノトリンローション(製品名:スミスリンローション5%)
・イオウ剤
・クロタミンクリーム(製品名:オイラックスクリーム)
・安息香酸ベンジル
首から下の全身にかけて、症状の出ていない部分も含めてくまなく塗ることが大切です。
特に手や指の間、足、外陰部には念入りに塗りましょう。
また、かゆみに対しては、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬を併用することも多くあります。
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疥癬にならないためにできること

〇感染者との密接な接触を避ける
疥癬にならないためには、感染者との密接な接触を避けることが一番大切です。
握手、性的な接触、共有の寝具や衣類の使用など、感染リスクの高い状況を避けましょう。
ヒゼンダニは、直接の肌接触から感染が広がります。
なお、アルコール除菌は皮膚表面の細菌やウイルスの除菌には役立ちますが、ヒゼンダニに対しては直接的な効果はありません。
〇衛生習慣をつける
普段から、衛生習慣をつけていくことが大切です。
手洗いをこまめに行い、清潔な環境を保つよう心がけましょう。
〇共有の日用品に注意する
寝具や衣類、タオルなどを共有する場合には、注意が必要です。
特に感染者がいる場合は、これらの物品の共有を避けるか、十分な清潔さを保つようにしましょう。
〇感染者の早期発見と治療
疥癬が疑われる場合は、できるだけ早く医師の診断を受け、適切な治療を行うことが大切です。
周囲の人への感染予防のためにも、早めの治療が大切です。
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西春内科在宅クリニックでの対応方法
西春内科在宅クリニックでは、各種検査等により、診断がついた場合に内服薬や外用薬の処方をさせていただきます。
皮膚の症状から疥癬が疑われる場合には、近くの皮膚科クリニックへの受診をおすすめします。
通常疥癬であれば、基本的な感染対策ができていれば、特別な隔離は必要ありません。
一方、角化型疥癬の場合は感染力が強いため、リネン類の熱処理、予防衣の着用、濃厚接触者の予防内服、必要に応じて感染者の方の個室隔離などの指示をさせていただきます。
あまりに症状が激しい場合は、基幹病院の皮膚科にご紹介させていただきます。
お気軽にご相談下さい。
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まとめ
今回は、疥癬の原因や症状、放っておくとどうなるのかなどについて解説しました。
疥癬は、ヒゼンダニが人間の皮膚に寄生して起こる皮膚の病気です。
感染者との直接的な接触だけでなく、衣類を介した間接的な接触でも感染する可能性があります。
感染対策をしっかり行うとともに、もしかかってしまった場合には、適切な診断と治療に加えて、周囲へ感染させない予防対策が大切です。
【参考文献】
・あたらしい皮膚科学 第3版
・日本皮膚科学会 皮膚科Q&A
・疥癬診療ガイドライン第3版(日本皮膚科学会)
この記事の監修医師