免疫力を高める方法や食べ物について|低下してしまう原因も解説

公開日:2023.10.30 更新日:2024.10.01

免疫力

免疫力は人が生きていく上で不可欠な機能
です。

しかし、自分でコントロールするのはなかなか難しいものですが、少し生活習慣を変えるだけで免疫力をアップすることができます!

今回は、そんな秘訣を本コラムでご紹介します。

 

 

免疫について

 

“免疫”とは?


免疫ってまずなんでしょうか?

なんとなく体を良い方向にもっていってくれる体の機能の一つという認識だと思います。

その認識で正解です!

ここではまず、その一つの機能としての免疫について、どういう戦略が体の中で展開しているのかを深掘りしていきましょう。

免疫力

“免疫”の定義


“疫病”(集団発生する伝染病)を“免ずる”(許して取り除く)と書きます。

国際空港など行くと、免税店がありますが、これは”税金”を”免ずる”お店で、出国者に対して消費税・関税・酒税・たばこ税等を免除して販売しています。

それと同じ言葉の作りで、”免疫”とは、体からするとあまり入ってきてほしくない税金(伝染病)を免除してくれるありがたい機能です。

体の中での免疫反応について


免疫は血液や組織の中に存在する免疫細胞が担っています。

免疫細胞は、血液検査で白血球という項目が出てくると思いますが、この白血球が主に免疫細胞です。

白血球の中には、以下が存在し、それぞれ異なった役割があります。

  • 好中球
  • リンパ球
  • 単球
  • 好酸球
  • 好塩基球

好中球

 

白血球の中で最も割合が多い血球です。

微生物の中で特に細菌を捕食します(これを食作用といいます)。

細菌感染に対する免疫反応として非常に大切な役割を果たします。

リンパ球

 

T細胞とB細胞とNK(ナチュラルキラー)細胞が存在します。

T細胞、B細胞はこれらの細胞がお互いに関連しあって、B細胞は抗体を産生してウイルス自体をやっつけたり(液性免疫)、T細胞はウイルスに感染した細胞を破壊したり(細胞性免疫)します。

また、NK細胞は常に全身をパトロールしている免疫細胞で、ウイルス感染した異常な細胞や、がん細胞などが存在していた場合は、これらを認識した上で破壊します。

単球

 

単球も好中球と同様に食作用があります。

これが血液中から組織に移行すると、マクロファージという細胞になり、組織におけるゴミ(死んだ組織など)や侵入してきた異物を食作用により除去してくれます。

リンパ球に『こんなやつが入ってきたよ!』って教えてくれる役割もあります。

好酸球

 

寄生虫感染に対する血球です。

現在はあまり寄生虫感染症の患者さんが少ないため、アレルギーに関する血球という認識です。

好塩基球

 

こちらもアレルギーに関する血球です。

免疫力

白血球のうち、これらの血球が血液中に何%ずつ存在しているかが、採血検査を考える上では大切になります。

例えば、好中球が増えている場合は、体の中で細菌感染が起きているのかな?などといったように考えることができます。

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自然免疫と獲得免疫について


免疫が働いて、細菌やウイルスといった微生物を撃退するときに、1-2で挙げた免疫細胞が働きます。

しかし、その攻撃対象となる微生物に特異的に作用する免疫(特異的な免疫)なのか、どんな微生物に対しても広く作用する免疫(非特異的な免疫)なのかということが免疫学では非常に大切になってきます。

この二つは以下のような名前の分類があります。

  • 攻撃対象が決まった免疫(特異的な免疫)・・・獲得免疫
  • どんな微生物にも作用する免疫(非特異的な免疫)・・・自然免疫

ともに先ほど述べた白血球の細胞が複雑に作用して起こる免疫反応ですが、簡単に言ってしまえば、

自然免疫は、免疫細胞の表面に存在するアンテナのようなものが危険な異物と察知すると、その対象を免疫細胞が食べたり、攻撃を加えるような免疫反応です。

一方で、獲得免疫は、攻撃対象を決めてそれのみを攻撃するスマートな反応と考えるとよいでしょう。

どのような反応かというと、体に入ってきた微生物を自然免疫細胞が食べ、その情報をリンパ球に情報伝達します。

リンパ球は情報を認知すると、キラーT細胞がその情報の異物のみを食べたり、攻撃し、B細胞は液性免疫としてその情報の異物に対する抗体を作り、異物を攻撃します。

抗体が異物に付着すると、そこで炎症反応が起こるようになったり、自然免疫細胞に対して、『これは美味しいよ!』といった情報を与えることになり、自然免疫細胞に食べられてしまいます。

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自然免疫と獲得免疫は別に働く免疫反応ではなく、このようにお互いに連動して働く免疫反応なのです。

大きく自然免疫と獲得免疫での異なる点は、攻撃対象となる異物の情報を学習するかということです。

つまり、獲得免疫のおかげで、次に同じ異物が入ってきた際に、強力でなおかつ迅速な免疫反応を行うことができます。

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免疫力が低下するとどんな影響がある?


免疫反応の司令塔として最も重要な役割を果たしているのがリンパ球です。

このリンパ球の機能低下をきたすと、いわゆる『免疫力が低下する』という状態を起こします。

それでは、免疫力の低下が起こるとどのようなことが起こるのでしょうか?

まず免疫とは、広い意味で、『自己と他者(非自己)を区別し、非自己を排除する仕組み』と言い換えることができます。

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ここでいう非自己とは、ここまでにで出てきた微生物(細菌やウイルス)が主たるものとなりますが、他にもアレルギーの原因となる花粉やホコリなどの、絶対的に人体に有害ではない異物も非自己に入ります。

つまり、免疫力が低下するということは、これらの非自己を排除する機能が低下するということを意味します。

それに伴い以下のようなことが起こりやすくなる。



感染をおこしやすい


以下のいくつかの例から、みていきましょう。

免疫力が正常な人は、カゼウイルスにかかっても、先ほど述べたように自然免疫、獲得免疫が働いてウイルスの増殖を抑えてくれるので、1週間程度で治癒します。

しかし、免疫力が低下している人では、容易に肺炎を起こしたり、全身に炎症を起こしたりします。

基本的に真菌(カビ)は、全身のいたるところに存在はしていますが、免疫が抑え付けてくれるので発症しません。

それ故に生体と共存して生きている存在です。

しかし、免疫力が落ちた人では、真菌感染症が発症します。

口唇ヘルペスや帯状疱疹はヘルペス属というウイルスの分類にあるウイルス感染症です。

ヘルペスウイルスは多くの人が成人する前に感染をおこし、潜伏感染(感染しているが、活動性がなく無害である状態)しています。

これは免疫が働くことで、人体に悪影響を及ぼさないように抑えつけているからです。

しかし、免疫力が落ちた人では、このストッパーの役割となっている免疫が有効に働かず、口の周りや皮膚に水疱を伴う皮疹をおこします。

つまり、健康と思われていた人が、突然カビの感染に罹患したり、帯状疱疹を起こしたりというエピソードがあった場合は、逆説的にその患者さんの免疫力か落ちているんだな?その背景には何かあるかな?と考える材料になります。

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アレルギー反応をおこしやすい


アレルギーとは、通常では特に無害な物質が、生体の過敏反応により、その物質を非自己として認識して異物として排除しようとする反応です。

とくにその過敏反応には先ほど述べた獲得免疫が関与しており、免疫細胞が抗体を産生したり、異物を攻撃したりします。

アレルギーがおこりやすい状態とは、免疫力が低下しているというよりは、免疫のバランスが悪いという表現が正しいでしょう。

がんが発症しやすい


人間の体は約60兆個の細胞で構成されていますが、そのうち約2%が新陳代謝などで毎日生まれ変わっています。

今この瞬間にも多くの細胞が生まれ、死んでいっているのです。

これらの体を構成する正常細胞は細胞分裂(細胞内でDNAを複製させる)を繰り返して細胞数を増やしますが、これは時計のような精密機械が時を刻むような緻密なシステムです。

そして、ほんの小さな時間のずれが大きな時間のずれを引き起こすように、小さなDNAの複製ミスが異常な細胞を生じさせます。

これが、がん細胞が発生する原因となり、1日になんと人間の体の中では3000から5000個のがん細胞が生み出されています。

しかし、毎日がん細胞がこれだけ産生されていたら、ほとんどの人間がすぐにがんになってしまいます。

ここで、がん細胞をやっつけてくれるのが免疫細胞になります。

がん細胞は普通の細胞で表面を構成するタンパク質が異なるために、免疫細胞によって非自己と認識されます。

それによって標的とされたがん細胞は、免疫細胞によって破壊されてしまうのです。

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免疫力が低下する原因は?


それでは、免疫が低下する原因を議論する前に、免疫に影響を与える因子について考えてみましょう。

一概には言えませんが、大原則として『免疫力の70%は腸内環境が関与し、後の30%が心・神経が関与』しています。

なんで、免疫なのに腸や心なの?という疑問は出てくると思いますが、ここで解説していこうと思います。

免疫と腸内環境について


免疫力の70%は腸内環境が関与すると言いましたが、これは腸には免疫細胞の約7割が粘膜、特に小腸粘膜に集まっているからです。

この免疫細胞を活性化するのが腸内細菌なので、免疫力を高めるためには、よい腸内細菌を増やすことが大切になります。

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食物は、口から食道、胃を経て十二指腸、小腸、大腸の腸管へと運ばれ、肛門から便として排泄されますが、この過程で栄養や水分を吸収します。

この食物として、この1本の管である消化管に入ってくるものの中には人体に有益なものもあれば、有害なものもあります。

腸は、その食物を体内に取り入れてよいかどうかを瞬時に見分ける働きをしてくれます。

それとともに、食物に含まれる病原菌などから、身を守るために、腸には強力な免疫機能が必要です。

腸の特に回腸にはパイエル板という腸管特有の免疫組織が存在します。

そして、この特有の免疫組織を活性化しているのが、3万種類、1000兆個以上生息している腸内細菌です。

腸管は腸内細菌を通じて、免疫反応を高めるだけでなく、過剰な免疫反応により人体に悪影響が出ないように調整する役割もあります。

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これらのことから、腸管内の状態が悪いということは、全身の免疫系の70%に対して悪影響を及ぼしていることになります。

免疫と心・神経について


これまで、免疫系は人体の中で脳の支配を受けない独立した生体維持機能と考えられてきましたが、最近になって免疫系と精神神経系の関与が論じられるようになってきました。

また、脳から免疫系への指令のみならず、免疫系から脳への情報伝達もあり相互に影響しています。

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人体には、恒常性(ホメオスタシス)という機能が備わっています。

これは簡単に言うと人体をよいバランスに維持するための機能です。

そして、このホメオスタシスを構成する系統として免疫系内分泌系神経系の3系統があり、これらの臓器がこっそり人間が快適に生活する上での調整を行ってくれています。

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免疫系


これまで説明してきた通りの系です。

内分泌系


ホルモンという情報伝達物質が血液中に分泌され、それぞれの臓器に働きかけます。

例えば、甘いものを食べすぎて血糖値が急激に上昇したら、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されて、血液中の糖を細胞の中にしまい込み、血糖値を下げる方向にはたらきます。

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神経系

 

神経には随意神経と不随意神経といって、自分の意思でコントロールできる(随意)神経とコントロールできない(不随意)神経がありますが、ホメオスタシスに関与するのは不随意神経です。

特に不随意神経の中で大切なのが、自律神経です。

自律神経は、交感神経と副交感神経の2つがあり、交感神経がアクセル、副交感神経がブレーキとしてその臓器に対して働きます。

特に交感神経はノルアドレナリンが興奮性の伝達物質(アクセル)として、副交感神経はアセチルコリンが抑制性の伝達物質(ブレーキ)としてはたらいています。

これらによって交感神経は、人体に危険が迫った際に、体を興奮状態にさせ臨戦体制にします。

一方で、副交感神経は人体の緊張をほぐし、リラックスさせる方向に作用します。

これら、交感神経と副交感神経がお互いバランスをとりあいながら働くことが大切です。

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どのように神経系と内分泌系が関連し、免疫系に作用してくれるのでしょうか?

まず、神経系と内分泌系の関連については、わかりやすいかと思います。

内分泌系の臓器、例えば甲状腺、膵臓、副腎などは、自律神経(アクセルとして交感神経、ブレーキとして副交感神経)線維が臓器内に密に入り込んでいます。

それによって、意思とは関係なく調整がおこります。

一方で、内分泌系から出たホルモンが多すぎたり、少なすぎたりすると血流に乗ったホルモンの量を脳など神経系がモニタリングして、内分泌臓器への自律神経刺激の強度を調整することで、ホメオスタシスを維持しています。

これをフィードバック機構といいます。

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神経系、内分泌系と免疫系はどのように関連しているのでしょうか。

神経伝達物質の免疫系に及ぼす影響ですが、一般的に交感神経は免疫反応を抑制する方向にはたらき、副交感神経は免疫反応を強化するようにはたらくことが言われています。

特に自律神経の影響を強く受ける免疫細胞はリンパ球です。

リンパ球は全身に存在するリンパ節や免疫臓器に存在しますが、血液中にもある一定数のリンパ球が放出され、存在しています。

交感神経はリンパ節に働きかけ、リンパ球の放出を抑制し、副交感神経はリンパ節に働きかけ、リンパ球の放出を促するように作用するといわれています。

つまり、交感神経が強くはたらいていると、リンパ球の機能が低下し、それはつまり免疫力を低下させることに繋がります。

この自律神経の免疫への影響に関しては、この機序以外にも諸説報告されており、今回紹介した機序はその中の一つです。

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面白いことに神経系ではなく、内分泌臓器の中にも副腎髄質という交感神経と同様に働く臓器があります。

副腎髄質からは交感神経線維と同様のノルアドレナリンやアドレナリン、ドーパミンという物質が放出され、血液中に放出されます。

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次に、ホルモンの免疫系に及ぼす影響です。

ホルモンには各臓器ごとに役割の異なるホルモンが存在しますが、免疫機能と最も関係のあるホルモンは、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールです。

コルチゾールとは、体の中で作られるステロイドホルモンで、よく『ステロイドの薬は怖い』といったフレーズを聞くかもしれませんが、このステロイド薬とほぼ同一の物質です。

つまりステロイド薬というものは人体の中で作られている物質であり、詳細は省きますが適切に使用すれば怖くありません。

このコルチゾールというホルモンは、多くのリンパ球に細胞死(アポトーシス)を誘導します。

これによって、免疫の司令塔であるリンパ球が低下することで免疫力は低下します。

甲状腺ホルモンが白血球の自然免疫反応を高めるなど、その他のホルモンも免疫系への影響は各種ありますが、今回は割愛します。

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それでは、免疫系からの神経、内分泌系への影響はどのようなものでしょうか?

先ほど、1-3. でサイトカインという炎症を周囲の組織に知らせる物質の名前を出しました。

このサイトカインは免疫細胞が産生する伝達物質で、神経系における神経伝達物質や内分泌系におけるホルモンといった物質と類似した機能で、周囲の免疫細胞や組織への情報伝達するためのタンパク質です。

サイトカインには機能的にT細胞の調節に機能するもの、B細胞の抗体産生を調節するもの、腫瘍細胞に作用して直接増殖抑制や破壊を起こさせるもの、アレルギーの炎症に関与するものなど様々な機能を有するものがあります。

サイトカインは基本的には免疫系の相互作用に関連する物質とされていますが、実は免疫系から脳や内分泌系へ向けての作用もあります。

これら、免疫系、内分泌系、神経系の関連についてまとめると、以下の図のようになります。

これら3系統が、お互いに密接に連絡を取り合うことで、ホメオスタシスの維持がなされています。

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免疫力を高める方法:ストレスの緩和


現代人は、昔の人たちと比べて免疫力が低下しているといわれています。

その原因として、『現代人の精神的なストレスの質』が問題とされています。

ストレスは、外部からの刺激によって身体に起こる反応のことを言います。

一般的に、ストレスは精神的ストレスと身体的ストレスに分かれ、精神的ストレスは、仕事や家庭におけるトラブルによる『心への負担』で、身体的ストレスは、怪我や病気による『肉体への負担』です。

厚生労働省の「労働者健康状況調査」によれば「仕事や職業の環境でストレスを感じている」労働者の割合は、1982年には50.6%であったものが、2012年には60.9%になっており、現代人は強い精神的ストレスを感じていることがわかります。

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特に『現代人の精神的なストレスの質』とは、モノや情報が手軽に手に入る現代の社会では、物質的な要求は満たされやすいことで、顧客の要求も強くなる傾向にあり、それによってサービスやモノを提供する人々の達成目標が必然的に高く設定されやすくなります。

されに機械化、AIなど技術の進歩によって仕事の効率性が高まり、生産性も高まるように見えますが、実際のところは生産性は高まる分、働いているという自己の存在意義が感じにくくなったり、人と人との関係性が希薄になって孤立する人も増えています。

また、家庭環境にも変化が見られ、核家族化や両親共働きによる子供の心の発達への影響なども子供の心のストレスへの抵抗性を低下させる要因として危惧されています。

つまり、これまでになかった異質な精神的ストレスを感じやすい環境になってきているのです。

免疫力

現代人は慢性的に自分に負担をかけ続けることで、自律神経機能の異常を引き起こしているのです。

3の免疫が低下する原因で述べたように、交感神経が過剰になり続けている状態は、免疫力が低下する方向にはたらきます。

ストレスに対する緊急反応として、まず働く系は自律神経系であり、交感神経興奮により脳の視床下部からはノルアドレナリン、副腎髄質からアドレナリンが分泌され早い反応が起こります。

次に、少し遅れて内分泌系のゆっくりとした反応が起こります。

これらの急性、亜急性反応によって最終的に遅発的に免疫系が低下してきます(下図)。

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交感神経が過剰になり、上記のホルモンが産生されると、T細胞やNK細胞の機能が低下します。

特にこれらのストレスホルモンに最も影響を受けやすいのは、NK細胞です。

精神的ストレスにより、NK細胞の活性は数分で下がり、ストレスの度合いに応じて低下するといわれています。

そして、NK細胞の活性は、副交感神経刺激によって回復することも実験で示されています。

この現代のストレス環境で生きる上で、免疫力の向上のためには、副交感神経を刺激して、交感神経とのバランスをとってあげることが必要です。

それでは、ストレスを溜めないために、日常的にはどのようなことに気をつけるべきでしょうか。

いい人であることをやめる


いい人とは、他人から言わせたら『都合の』いい人であり、このような人は、我慢することが習慣化しています。

周囲の人たちも、この人に任せたら楽だという思考回路を形成してしまい、お願いしやすい人(都合のいい人)になってしまいます。

我慢することはストレスに繋がり、交感神経を持続的に活動状態にさせます。

いい人は早死にすると言われますが、免疫学的な観点からも正しい慣用句かと思われます。

自他共に認める『いい人』をやめて、断りたいことは断りましょう。

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主体的に生きよう


家族や友人含めて周囲の人間の指示に従って生きるのではなく、自分の考えを持ち、自分で人生をコントロールしているという感覚を持ちましょう。

主体性を持つことは楽しいです。

自分はこの業務をするのが好きだから、この仕事についていると考えている人と、いやいや仕事をしている人では、仕事に対する向き合い方も変わってきます。

そうすると、仕事に対するストレスの度合いも変わってきます。

そのためには、自分が本当は何がしたいのか?ということをよく考え、人生を見直す必要があります。

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よく笑おう


『笑い』は、人間が成長・発達する上で、他人に敵対心をなくさせるコミュニケーションのための武器です。

笑いがあれば人間関係は円滑になり、それによる対人ストレスはだいぶ緩和するのではないでしょうか。

営業職など顧客対応が必要な職種の方は対人関係でストレスを抱えることは多いですが、その中に笑いを取り入れることで、ストレスの緩和が期待できます。

また、『笑う』という行動は、神経・内分泌系から免疫系へと導く、心と体のプログラムを活性化して、免疫の上昇を導きます。

笑うことで、NK細胞活性が上昇するというデータもこれまでに数多く報告されています。

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お風呂に入ろう


入浴には副交感神経機能を高め、ストレスにより高まった交感神経を抑制する作用があります。

寝る1時間前を目安に、ぬるめのお湯(37〜39℃)に20分〜30分ゆっくり浸かるとよいでしょう。

42℃以上のお湯は交感神経機能を高めるように作用するために、控えましょう。

また、長時間の入浴は脱水を起こします。

脱水状態は、心臓へ戻ってくる血液が低下することから、心拍を増やすために交感神経が活性化されてしまうので、逆効果になります。

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『ゆっくり』を心がける


人間は焦っていると、交感神経が過剰に緊張している状態となります。


それがまたストレスにつながり悪循環となります。

例えば、仕事で上司から仕事のノルマなどを急かされると、逆に仕事のパフォーマンスが落ちることってありますよね。

他人から急かされる、もしくは自分を追い込んで焦らせるような習慣は慢性的な交感神経過剰状態を引き起こしています。

この習慣から脱却するためには、何事も『ゆっくり』やることが大切です。

人から急かされても、敢えて一呼吸おいて『ゆっくり手を動かして』みたり、『ゆっくり話してみる』ことが大切です。

また、『ゆっくり』やるためには、色々なことが準備できた状態でないといけません。

例えば、翌日の予定を前日の夜に決めて紙に書いておいたり、その心構えまで書いておくと準備万端です。

なにしろ、『明日の行動をやりやすくする』ことで、心への負担がだいぶ減るのです。

お母さんに、夜に明日の準備をしておきなさい!ってよく怒られましたが、あの発言にはそういう深い意味があったのです。

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免疫力を高める方法:睡眠の質の改善


睡眠は、夜間に心と体をメンテナンスしてくれる生物にとって欠かせない機能です。

睡眠中に記憶の整理や大脳の休養によるメンタルの安定化をしてくれるだけでなく、身体の細胞を修復して疲労を回復してくれます。

睡眠は、ただ寝てればよいというだけではなく、『睡眠の質』というものが大切になってきます。

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睡眠中の自律神経は基本的に副交感神経が優位となっています。

それによって交感神経系に傾いた自律神経のバランスの調和を睡眠が担ってくれます。

それゆえに、睡眠の質の低下は、神経―内分泌―免疫系に強く関連していると言われています。

睡眠障害では、神経内分泌ストレスにおいては、ノルアドレナリンやコルチゾールの上昇により高血圧や動脈硬化、心血管疾患の発症を高めるとともに、免疫学的にはNK細胞の数と機能ともに低下させ、がんの発症と関係することが指摘されています。

つまり、睡眠障害は、日本人の死因の1位の悪性腫瘍、2位の心疾患の両方を引き起こすリスクがあるのです。

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それでは、睡眠の質を高めるにはどのようなことにきをつけるべきでしょうか。

睡眠の質を高めるには睡眠のための準備として、睡眠の前後で何気なくやっている生活習慣を見直すことが大切になります。

就寝前後の食事


食事は寝る3時間前に済ませましょう。

食事という行為を自律神経の働きで分けて考えると、『噛む、飲み込む』という動作は交感神経が働き、『消化、吸収』という行動は副交感神経が働いています。

つまり、寝る前にもぐもぐ食べてしまうと、交感神経が働き自然な睡眠に入れません。

消化吸収するときに副交感神経が働くから眠くなるんじゃないの?と言われそうですが、睡眠に関する問題は消化吸収の後に出てきます。

消化吸収された食物のうち、炭水化物は分解され小腸から吸収されます。

その後、血液中に入り血糖値を上昇させます。

その血糖値の上昇が、反応性低血糖を起こし、さらにこれを是正しようと交感神経と副交感神経が交互に頑張ってしまいます。

この自律神経の変動が睡眠には悪影響を及ぼし、入眠障害や浅い睡眠などを起こして、睡眠の質を低下させる原因となります。

起きた時に、『寝たのに寝た気がしない』という経験はありませんか?

そんな時は多くが、この自律神経障害による睡眠の質の低下が考えられます。

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また、食後2〜3時間は胃に食物が残りますが、胃に食物が残留下状態で横になってしまうと、胃酸逆流の原因となります。

胃酸逆流は、睡眠中に起こると覚醒作用を起こすことで、睡眠障害の原因となります。

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次に起床後の食事(朝ごはん)に関してです。

朝ごはんはきちんと食べるようにしましょう。

朝は就寝中の副交感神経から交感神経に切り替わる時間帯であり、この切り替わりがうまくいくほど、すっきりした1日の始まりを迎えることができます。

噛む、飲み込む動作は交感神経を刺激します。

また、日中の活動性が高まる時間帯にエネルギーが供給されていることで、1日の代謝が高まり、太りにくくなります。

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睡眠前1時間のスマートフォン操作は控える


スマートフォンからはブルーライトがかなり出ています。

最近のスマホではブルーライトが自動でカットされるようにセットされているようですが、それでも完全ではありません。

ブルーライトは視神経を介して脳に働きかけ自律神経を強く刺激します。

ブルーライトは朝の太陽の光に含まれている光の成分であり、交感神経を活性化させます。

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就寝前にスマホを見続けることは脳を活動する方向に働きますので、睡眠の質を低下させる原因となりますので、就寝前1時間以内のスマホ操作は控えましょう。

一方で、起床時はまずカーテンを開けて、ブルーライトが含まれる朝日を浴びることで交感神経を優位にし、脳を活性化することで、活動的な1日をはじめることができます。

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就寝前に考えたり、悩むのはやめよう


考えることは、脳を活動させてしまうので、できるだけ考え事は就寝前にはしないよう心がけましょう。

特にネガティブな感情は、恐怖、心配といった情動をコントロールする脳の扁桃体を刺激します。

扁桃体が不快と判断すると、自律神経系に作用し交感神経に働き、脳を活動させるとともに、動悸や震えなど恐ろしいものに遭遇した時のような反応が身体的にも生じてしまい、寝るどころでなくなり、睡眠の質を低下させます。

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免疫力を高める方法:運動習慣

 

適度な運動は、免疫力の向上に寄与すると言われています。

『適度な』というところがポイントで、過度な運動は、免疫力を低下させることが実験的にわかっています。

適度とはどのようなものでしょうか?

これは運動強度(運動による体へ負担)と運動時間によって規定されています。

1時間以内の比較的短時間の運動では、運動強度に依存してリンパ球が増加し、好中級、単球、好酸球も軽度増加します。

特に、NK細胞は運動負荷で鋭敏に反応し、短時間、高強度の運動で、運動直後に平均で6倍まで増加し、運動終了後は、運動前の半数まで減少するといった劇的な変動を起こします。

運動習慣と感染リスクに関しては、Jカーブモデルが言われており、『適度』な運動習慣がある人は、感染しにくいですが、過度な運動はむしろ感染のリスクが高まります。

激しいトレーニングを継続するスポーツ選手は上気道感染(かぜ)の頻度が一般人より3倍も高いことが報告されています。

ウイルス感染の頻度が高いことから、T細胞昨日の低下が指摘されています(文献3より)。

免疫力
文献3より引用・改編

適度な運動が大切である理由がおわかりいただけたでしょうか。

過度な運動は免疫学的な観点からは、運動不足であることより身体に対して悪い影響があるのです。

日常生活には、無理のない適度な運動習慣を取り入れましょう。

適度な運動の運動量とは

ウォーキングなど、息が少し切れるくらいの中等度の運動を1日に20〜30分することです。

日常生活の中で、健康効果を高める適度な運動としては、水泳やジョギングなど有酸素運動が挙げられますが、手軽に行うことができるのが、ウォーキングです。

これまで運動習慣がなく、運動に対する抵抗がある方は、まずは歩くことから始めてみましょう。

免疫力

まずは、10分だけでもよいのです。

最初の1週間くらいは、身体的に何も変化はないでしょう。

しかし、そのかわりに1週間毎日続けることができたという自信につながります。

その自信は、運動を習慣化させるための原動力になります。

できたら、毎日の運動習慣をカレンダーにチェックし、何をどのくらいの時間やったかということを書くようにしましょう。

すると、毎日自分が習慣化できているということになり、非日常だった運動習慣が日常化するのです。

 

 

免疫力を高める方法:食事習慣

 

免疫力を高める上で最も大切なのは、食事習慣だと考えています。

食事は、当たり前のように毎日おこなっている身体活動ですが、良い食事習慣か悪い食事習慣かで、人生は大きく変わってきます。

3-1の免疫と腸内環境で述べましたが、人体の免疫力の70%は腸内細菌と腸管粘膜が担っています。

これらに直接的にアプローチすることができるのが毎日の食事になります。

免疫力

免疫力

腸内環境を整えるものとしては、乳酸菌やビフィズス菌以外にも酵母菌、麹菌、酢酸菌、納豆菌なども善玉菌として働きます。

具体的には、ヨーグルト、チーズ、味噌、納豆、キムチなどの漬物が推奨されます。

色々な種類の菌を取り入れた方がよいと言われ、これらの食材も一つの種類のものを食べ続けるのではなく、色々試して食べていくことが大切と言われています。

ヨーグルトに含まれる乳酸菌にも種類が多数あり、ある人には合っている乳酸菌が、他の人には合わないということもあります。

人の数がたくさんいれば、その腸内環境も千差万別です。

自分に合った発酵食品を選択するのも大切なのです。

免疫力

また食物繊維には水に溶けるもの(水溶性)と、水に溶けない(不溶性)ものがあります。

水溶性食物繊維のほうが、腸内細菌は好んで食べますが、不溶性食物繊維にも腸内のカスや細菌の死骸を絡めとって、便として(便の量を増やして)まとめて排泄するという役割があり、水溶性、不溶性食物繊維ともに大切です。

免疫力

その他に免疫力を高めるために大切な食物について

番外編にはなってしまいますが、腸管免疫以外の視点で、免疫力を高めるために大切な食事について記します。

タンパク質とアミノ酸

 

免疫反応がおこるために必要なサイトカイン(情報伝達物質)やB細胞が産生する抗体は、タンパク質からできています。

つまり、タンパク質の摂取量が少ないと、これらの武器を作る材料不足ということになり、免疫力は絶対的に低下します。

ミネラル

 

亜鉛は、微生物が人体に入ってこないようにする皮膚や粘膜のバリア機能維持に大切ですが、免疫細胞の成長に欠かせない栄養素です。

日本のみならず、全世界的に摂取不足にあります。

ビタミン

 

各種ビタミンは、それぞれの免疫細胞の働きに影響を与えます。

ビタミンCは好中球、NK細胞、T細胞の働きに関与し、ビタミンB,D,Eなどそれぞれが免疫細胞の活性化の役割があります。

その中で、免疫力を高める観点から最近注目されているのが、ビタミンDです。

ビタミンDは、骨代謝に関与し、血液中のカルシウムの動態を司どるビタミンですが、最近、糖尿病やがん、精神疾患の発症など様々な研究データが発表されるようになってきました。

免疫に関してもビタミンDは関与しており、特に昨今の新型コロナ感染症では、ビタミンDの摂取量が低い人に重症化リスクがあると報告されています。

どうやらビタミンDには気道感染症を予防する効果が数多く報告されるようになってきています。

 

西春内科在宅クリニックができる対応


免疫力低下に伴う新型コロナウイルス感染を含む、上気道感染症は時に重症化することがあり、緊急を要することがあります。

西春内科在宅クリニックでは、まずは現在重症な状態にあるのかということを的確に判定し、重症度に応じた対応をさせていただきます。

発熱外来では、新型コロナウイルスPCR検査・抗原検査、インフルエンザ抗原検査も行えますので、発熱・風邪症状などでお困りの方はお気軽にご相談下さい。

新型コロナウイルス・インフルエンザ・帯状疱疹・肺炎球菌のワクチン接種も可能です。

 

 

まとめ

 

免疫力の低下は数多くの疾患を引き起こします。

現在流行中のCOVID-19感染症は、ウイルスの特殊性もありますが、『人間の免疫力の大切さ』についても考えさせられることが多い感染症でした。

免疫には、ただ強い弱いだけなく、免疫のバランスが大切であり、人体に侵入してきた微生物に対して働きすぎても、働かなすぎても人体に害悪となります。

特にCOVID-19感染症に関しては、感染症というより、それにより二次的に生じた過剰な免疫反応が、基礎疾患の悪化などをもたらしたと言っていいでしょう。

制御性T細胞の話を文面に少しだけ出しましたが、実はこの免疫がしっかり働くか否かが、免疫の過剰を抑えることができ、コロナにかかわらず、様々な疾患を予防する上で大切になります。

なにごとにもバランスが大切ではありますが、免疫もそれぞれの系が強く出過ぎないようにバランスが大切となってきます。

そのためには、生体機能維持のための神経系、内分泌系、免疫系のバランスをとることが大切です。


『ストレス緩和』
『睡眠の質の向上』
『運動習慣』
『腸内環境を考えた食事習慣』


などのアプローチでホメオスタシスを調整していくことが大切です。

免疫力

参考文献

‣永井克也 自律神経による生体制御とその利用 化学と生物51. 3. 2013
‣藤原憲治 慢性疲労における睡眠障害および免疫系の動態に関する研究 京府医大誌 118(12) , 823-841, 2009
‣鈴木克彦 運動と免疫 日本補完代替医療学会誌 1(1), 31-40, 2004
‣藤田絋一郎 笑う免疫学 自分と他者を区別するふしぎなしくみ ちくまプリマー新書, 2016  
‣小林弘幸 免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず プレジデント社, 2020

この記事の監修医師

監修医師: 耳鼻咽喉科専門医/アレルギー専門医 永田 善之

専門分野

耳鼻咽喉科全般 アレルギー・鼻副鼻腔疾患

専門分野

日本耳鼻咽喉科学会専門医・指導医
日本アレルギー学会専門医

監修医師: 福井 康大