咳喘息は喘息ではない?違いや症状のチェック項目をご紹介

公開日:2023.11.27 更新日:2024.10.08

咳喘息

みなさんは咳喘息と言う病気をご存じでしょうか。

咳喘息は喘息とは異なり、咳を唯一の症状として、それが2か月以上続く病気です。

今回は、そんな咳喘息と喘息との違いや、咳喘息を放置するリスクなどについて詳しく解説していきます。

最近なかなか咳が止まらないと感じている方は、是非記事を読んでいただき、必要に応じて最寄りの医療機関に相談してみて下さい。


咳喘息と喘息の違い


咳喘息

咳喘息と喘息は両方とも、気道に炎症が起こっている状態と言う点では一緒です。

しかし、炎症が起こった結果、生じる症状に差があります。

咳喘息炎症が起こった結果、気道の組織が敏感になってしまい、ちょっとした刺激で咳が出てしまう
喘息炎症が起こった結果、気道の筋肉などの組織がむくみ、空気の通り道が狭くなってしまう場合や、炎症によって痰が増えて空気の通り道の邪魔になってしまう場合

空気の通り道が狭くなっているので、笛などの楽器で経験があるように、狭いところを空気が通り抜けると「ヒューヒュー」と音がしますよね

それに、十分に空気が肺まで届かない、または体から空気を吐き出せないとなると、息苦しさを感じるようになります。

つまり、咳喘息だから軽症、喘息だから重症ということではないので(呼吸困難感が無い分、咳喘息の方が辛さを感じないかもしれませんが)注意が必要です。

また、咳喘息であっても、気道は狭くはなっていますが、炎症が繰り返されることによって、さらに気道が狭くなったり、痰が増えてきたりと、喘息と変わらない状態になっていく恐れもあります。

そのため、咳が続く場合は、一度最寄りの医療機関に相談するようにしてみましょう。



咳喘息とは?


咳喘息

長い期間、咳がとまらないため病院に受診したら、咳喘息と言われた方もいらっしゃるかもしれません。

咳喘息とは、一般的に喘息(気管支喘息)と言われる疾患の一種なのです。

しかし、典型的な喘息のように、「ヒューヒュー」と言った笛のような呼吸音や呼吸困難感などの症状は伴わず、咳だけが唯一の症状である病気です。

ただ、咳喘息の約30パーセントで気管支喘息に移行すると言われており、早い段階から治療を行うことが推奨されています。

どうして咳喘息を発症してしまうのでしょうか。

そのためには、まず私たちの呼吸について、大まかに理解しておかなければなりません。

まず、鼻や口から吸いこんだ空気は、気道と呼ばれる空気の通り道を経て、肺に送られます。

気道には、加温、加湿、クリーナーの役割が備わっており、最終的に肺の中が無菌状態になるように外敵から守ってくれています。

なぜなら、空気には酸素以外にも様々なものが混ざっているからです。

目に見えないウイルスや、ばい菌、ダニやほこり、その他のアレルギー物質などは、体内への侵入を防がなければなりません。

そういった異物を体内へ侵入させない仕組みが気道には備わっています。

そして、実際に体外へ追い出そうとするのが、咳の役割です。

咳は生体防御反応の一種なのです。

さて、咳喘息では、好酸球と言う炎症を引き起こす白血球の一種が、何らかの原因によって気道に集まってきてしまい、そこで炎症を起こしてしまいます。

気道に炎症が起きてしまうと、ちょっとした刺激で咳が出てしまうのです。

実際に、咳喘息のきっかけとなるのは、風邪をひいた時や、たばこの煙、またほこりやダニ、花粉、動物の毛などといったアレルギー物質を吸い込んだ時、その他にも過労やストレスと言った場合もあります。

▶アトピー咳嗽の原因はストレス?症状のチェック項目や治し方を紹介



咳喘息を放置するリスク


咳喘息

咳喘息をほっておくと、どうなるのでしょうか。

自然に治る場合もあるのですが、統計上は適切に治療を受けないと30~40%の人が喘息に移行してしまうと言われています。

また、咳喘息の様に、咳が長引く病気達を「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」と呼びます。

咳喘息以外にも慢性咳嗽の原因となる病気はあるため、自己判断はとても危険です。

咳が長引く場合は、最寄りの医療機関に相談するようにしてください。

尚、2年間適切に治療をすれば、喘息への移行を防げるという報告もあります。

▶高齢者に多い誤嚥性肺炎は治るのか|急変したときの対応法について

咳喘息かもしれない症状のチェック項目


咳喘息

診断に際しては、病歴や身体症状を確認した上で総合的に判断されます。

下記に咳喘息の診断基準を簡易的に示します。


① 喘鳴(ヒューヒューなどの呼吸音)を伴わない咳が8週間以上続く
② 気管支拡張薬が有効である
③ 気管支喘息にかかったことはない
④ 8週間以内に風邪などを引いていない(咳が出始めてからは風邪をひいていない)
⑤ 気道が過敏になっている
⑥ 咳を引き起こすアレルギー物質などに反応して咳がでる
⑦ 胸部レントゲンで異常はみつからない


※さらに簡略化して①②を満たせば咳喘息と診断されることがあります。

また、「からだケアナビ」にわかりやすいチェックシートがあったので、こちらも参考にしてみてください。


□咳が一旦出るとせき込んで止まらなくなる
□夜、横になるとせきこんで寝付きにくい
□夜中にせき込んで目が覚めることがある
□冷気、寒暖差でせき込む
□電車や人ごみの中でせき込む
□たばこの煙や強い香水が苦手
□風邪の後に激しい咳が続いた経験がある
□咳は激しいが息苦しさやゼイゼイと言う音はない
□子供のころ、小児喘息だった
□喉のイガイガを取り除こうと咳をした結果、せき込む


※上記の項目に3つ以上当てはまる場合は咳喘息の可能性があります。



咳喘息は自然治癒するの?


咳喘息

咳喘息は気道の炎症によって起こることは既に解説しました。

自然に炎症が改善することは勿論あるのですが、咳喘息は繰り返す可能性があります。

咳喘息、すなわち気道の炎症が繰り返されるとどうなるでしょうか。

例えば、皮膚の一部分を何度も火傷してしまったとしましょう。

 1回目は多少きれに治っても、何度も繰り返すと皮膚が硬くなったと言う話を耳にしたことはないでしょうか。

これはすべての細胞にいえることですが、炎症が起こって破壊、その後に修復といった過程が繰り返されると、細胞は完全に元に戻ることが難しくなり、伸縮性が失われ、固くなってしまうのです。

結果として、気道は本来の働きが出来にくくなり、より発作を起こしやすくなってしまう悪循環に陥りますし、咳喘息以外にも気道や肺の病気にかかってしまった際にも重症化してしまう原因になります。

自然治癒には期待しすぎることなく、適切に治療を行うことがとても大切です

▶高齢者がなりやすい肺炎の症状|急変したときの対応や治療について

咳喘息の治療について


咳喘息

診断と治療を兼ねて、気管支拡張薬を使用します。

咳喘息においては、吸入による気管支拡張薬により症状が良くなることが、診断に繋がります。

逆に言えば、気管支拡張薬を使ったのに改善が見られない場合は、他の病気を疑うことになります。

咳喘息は気道の炎症によって起こることは既に解説しました。

気管支拡張薬には炎症を抑える効果はありません。

咳喘息と診断された場合には、炎症が再び起こらないように、吸入ステロイド薬を継続していくことになります。

尚、2年間適切に治療をすれば、喘息への移行を防げるという報告があります。

▶乾燥で咳が止まらないのはなぜ?咳の特徴や悪化させないための方法を紹介

西春内科在宅クリニックができる対応


西春内科在宅クリニックでは、常勤医師にて、つらい咳症状に対して丁寧に診察を行い、必要に応じて検査を行い、治療に結び付けていきます。

クリニックには珍しい、CTを導入してるのでCT撮影など、より詳しい検査も可能となっています。

咳が止まらない等、お困りの症状ございましたらお気軽にご相談下さい。



まとめ


長引く咳は、咳喘息である可能性があります。

咳喘息は自然におさまる可能性もありますが、再発を繰り返すうちに喘息に移行してしまう恐れもあり、油断できない病気です。

適切に治療をすることで喘息への移行を防ぐこともできます。

是非、咳がとまらないと心配になった際には、最寄りの医療機関に相談するようにしてください。


参考文献

乾燥する季節は咳喘息にご用心 | 知っておきたい病気・医療 | からだケアナビ 

この記事の監修医師

監修医師: 精神科専門医/精神保健指定医 竹下 理

監修医師: 福井 康大