帯状疱疹はうつる?ワクチンを打つべき理由も解説
帯状疱疹は水ぼうそうと同じ種類のウイルスで起こる皮膚の病気です。
(水ぼうそうウイルスとは別のウイルスです。)
体の左右どちらかの神経に沿って、痛みを伴う赤い発疹と水ぶくれが多数集まって帯状に生じます。
症状の多くは上半身に現れ、顔面、特に目の周りにも現れることがあります。
加齢などによる免疫機能の低下が発症の原因となることがあります。
50歳代から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。
以前は「50歳以上の者」に帯状疱疹ワクチンの接種が推奨されていましたが、2023年6月23日から「帯状疱疹に罹患するリスクが高い18歳以上の者」へ接種対象が拡大となりました。
今回は、そんな帯状疱疹について原因や、症状、ワクチンを接種すべき理由などについて詳しく解説していきます。
目次
帯状疱疹になる原因
帯状疱疹は、多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こります。
水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内(神経節)に潜伏していて、過労やストレスなどで免疫機能が低下すると、ウイルスが再び活性化して、帯状疱疹を発症します。
日本人成人の90%以上は、このウイルスが体内に潜伏していて、帯状疱疹を発症する可能性があります。
関連記事:MRSAとは?感染経路や症状を解説|高齢者がなりやすい理由も
帯状疱疹の症状や合併症について
【症状】
発症すると、皮膚の症状だけでなく、神経にも炎症を起こし、痛みが現れます。
通常、皮膚症状に先行してこの痛みが生じます。
その後皮膚症状が現れると、ピリピリと刺すような痛みとなり、夜も眠れないほど激しい場合があります。
よくある経過を述べると、片側の神経分布に一致してビリビリ、ジンジンといった神経痛様の疼痛、知覚異常あるいはかゆみが数日から1週間続き、やがて虫さされのような赤みが出現します。
この時期に軽度の発熱やリンパ節腫脹、頭痛などの全身症状がみられることもあります。
間もなく赤みの上に小水疱(みずぶくれ)が多発し、水疱は中央にくぼみがあります。
内容は初め透明ですが、黄色い膿となり、6~8日で破れてびらん(ただれ)または潰瘍になります。
皮疹の出現後1週間までは紅斑や水疱が新生し、皮疹部の拡大がみられますが、以後治癒に向い、約2週間でかさぶたとなり、約3週間でかさぶたは脱落して治癒します。
症状が激しい場合は潰瘍が残る事もあり、傷として傷の処置や塗り薬を塗って直していくことになります。
【治療】
治療としては、基本的には水痘・帯状疱疹ウイルスに対する抗ウイルス薬を1週間内服することで治癒に向かいます。
血液検査で腎機能や肝機能を確認して処方することが多いです。
処方後のポイントとしては、抗ウイルス薬の効果発現までに2日ほど時間がかかるという点です。
内服開始しても1-2日は症状悪化する可能性があります。
途中で薬が効かないと内服中止せず、しっかり1週間継続いただくように注意してください。
ただ、重症例であったり、汎発性帯状疱疹と言って全身に皮疹が見られる場合については入院し点滴での加療が必要になるケースも存在します。
【合併症】
帯状疱疹が現れる部位によって、皮膚症状以外の症状が出ることもみられます。
顔面に起きる帯状疱疹では角膜炎や結膜炎を引き起こしたり、まれに耳鳴りや難聴、顔面神経麻痺などの合併症が出現することがあります。
また、腰部や下腹部に発症すると便秘になったり、尿が出にくくなったりという症状を伴うこともあります。
こういった合併症が疑われる際は皮膚科のみならず他科とも連携を取り治療を進めていきます。
多くの場合、皮膚症状が治ると痛みも消えますが、神経の損傷によってその後も痛みが続くことがあり、これは「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼ばれ、最も頻度の高い合併症です。
これは帯状疱疹によって皮疹が生じた領域に痛みが生じます。
3か月ないしそれ以上続く痛みであり、焼けるような痛み、刺すような痛み、たたかれたような痛み、深部の痛み、かゆみ、しびれなどを感じることが多いです。
また、通常は疼痛刺激とならないような、触る・撫でるといったわずかな刺激だけでも痛みを感じる状態が見られることもあります。
帯状疱疹後神経痛を起こさないためには、なるべく早く帯状疱疹の治療を開始すること、すなわち、早期診断と抗ウイルス薬の内服、病初期からしっかり鎮痛剤を内服して痛みをコントロールすることが大事です。
帯状疱疹が疑われるような症状を自覚した際は早めに近くの皮膚科を受診し早期診断ができるように心がけましょう。
帯状疱疹はうつる可能性があるのか?
帯状疱疹は、自身の体内に潜伏している水ぼうそうのウイルスが再び暴れだすことで発症する病気です。
そのため、周りの人に帯状疱疹という病気そのものがうつることはありません。
ただし、水ぼうそうになったことのない人(特に子供たち)にウイルスをうつしてしまう可能性はあります。
帯状疱疹になったら、乳幼児や予防接種をしていない子ども、免疫機能が低下する病気になっている方に接触するのは避けたほうがよいと考えられます。
また、先述した”汎発性帯状疱疹”であれば感染力が強くウイルスを拡散する恐れが強いため、全ての水疱がかさぶたになるまで入院管理下で個室隔離となります。
関連記事:【冬から注意】子供の水疱瘡(みずぼうそう)|症状や潜伏期間、予防接種について-家来るドクター
帯状疱疹になったらしてはいけないこと
大まかに言えば、しっかり休養を取るというのが大事になります。
帯状疱疹は免疫機能が低下することによって発症するため、例えば睡眠不足であったり、過度のストレスを抱えたりといったことは控えるようにしましょう。
また、患部を冷却することもやめておきましょう。
捻挫などと異なり、帯状疱疹については患部をホットタオルなどで温めることで疼痛が和らぐとされています。
帯状疱疹でワクチンを打つべき理由
帯状疱疹は50歳を超えると罹患率が高いとされています。
そもそも病気にならないようにするため、また、病気になったとしても症状を軽くしたり、後遺症を軽くしたりするためにもワクチン接種をお勧めいたします。
帯状疱疹ワクチンには2種類あり、それぞれ予防効果、ワクチンの効果の持続期間、費用など異なるところがあるため、次の項目にそれぞれまとめているので参照ください。
関連記事:インフルエンザワクチンの副反応・副作用で起こる症状や出やすい人の特徴について解説!
帯状疱疹のワクチンにかかる費用
帯状疱疹のワクチンについては2種類あり、それぞれについて説明します。
いずれも予防接種になるため保険適用というわけではなく、施設により金額も様々ですが、費用面が問題なければ高い予防効果を示す②のシングリックスの方をおすすめいたします。
①1回接種ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)
接種対象者は50歳以上の方です。
平均約8000円/回の費用になります。
弱毒化されたウイルスを使用します。
水痘ワクチンとして、小児に使用されているものと同じものです。
有効性は約50%で、5年を超えると有効性が低下すると言われています。
妊娠されている方、免疫機能に異常のある疾患(HIV感染症など)に罹患されている方、免疫抑制を起こす治療(ステロイド、シクロスポリンなど)を受けられている方には接種できません。
②2回接種ワクチン(シングリックス)
接種対象者は「50歳以上の者又は帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の者」です。
当院で行う場合は22000円/回のため、2回接種合計で44000円の費用になります。
高い予防効果を示したワクチンです。
予防効果は全年齢帯で90%以上と報告されています。
欧米では広く接種が推奨されており、高齢者への推奨ワクチンとなっています。
生ワクチンを接種できない免疫抑制状態の方でも接種可能です。
ただし、問題点もあります。
- 筋肉注射であり、注射部位の痛み、腫れ、発赤などの副反応が起こります。
- 2回の接種が必要です。初回の注射から2ヶ月空けて2回目を投与します。
当院の帯状疱疹のワクチンのご案内はこちら
コロナワクチンと帯状疱疹の関係性は?
コロナワクチンによる帯状疱疹発症のリスクについては様々な見解がされております。
コロナワクチン接種と、それによる帯状疱疹発症の関連性について、いくつかの文献では
“関連あり、帯状疱疹の発症リスクは上昇する”
と報告されているものもあれば、また他の文献では
“関連なし、ワクチン接種で発症リスクは上昇しない”
と報告されています。
ここからは私見になりますが…
他のワクチン接種においても帯状疱疹発症の報告があることはあるため、多かれ少なかれコロナワクチン接種による帯状疱疹発症との関連はあるように感じます。
ただ、それが他のワクチン接種と異なりどれほどの優位差があるのかについては今後更なる研究が必要になるかと思われます。
帯状疱疹の予防対策
帯状疱疹に罹患しないためにできる予防対策は、間違いなく予防接種をすることになります。
かかりつけの先生とも相談いただき、50歳以上の方はもちろん、18歳以上の方でも接種が推奨される方は帯状疱疹ワクチンの予防接種を検討されてください。
日常生活でできる予防対策としては規則正しい生活を送ること、適度に運動すること、過度にストレスを溜めないことなどです。
西春内科在宅クリニックができる対応
帯状疱疹が疑われる場合は近くの皮膚科クリニックへ紹介したり、在宅のため皮膚科受診が困難であれば当院で抗ウイルス薬の処方や疼痛のコントロールなどを行ったりしていきます。
また、当院ではシングリックスのみになりますが、帯状疱疹ワクチン接種も行っております。
帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛を予防、軽症化すべくワクチン接種を検討されてみてください。
帯状疱疹ワクチン接種についてのご案内はこちら
まとめ
帯状疱疹は80歳までに3人に1人はかかる病気と言われています。
場合によっては帯状疱疹後神経痛といって長い期間痛みなどの症状が続いてしまうこともあります。
部位によって様々な合併症も懸念されるため、早期治療介入が必要な病気です。
また、2023年6月末よりワクチン接種対象者も拡大されたため、該当する方はかかりつけの主治医とも相談のもと、ワクチン接種を検討されてみてはいかがでしょうか。
参考文献
日本皮膚科学会ホームページ
Shiraki K. et al. Open Forum Infect Dis. 2017; 4(1): ofx007.
国立感染症研究所,帯状疱疹ワクチン ファクトシート,平成29(2017)年2月10日.
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JAMA Netw Open. 2022 Nov 1;5(11):e2242240.
Oxman MN, et al. N Engl J Med. 2005; 352(22): 2271–2284.