風疹(風しん)はどんな症状が出る?妊娠時に気をつけるべき理由と感染経路について

公開日:2025.9.16 更新日:2025.9.16

風疹は風疹ウイルスで引き起こされる感染症です。

風疹ウイルスに感染しても症状がない不顕性感染(*1)から、重い合併症を起こす状態まで非常に幅広いです。

風疹に対する免疫が不十分な妊娠中の方に感染した場合、お腹の赤ちゃんが感染し、先天性風疹症候群という先天奇形を起こす感染につながる可能性があることが大きな問題です。

今回は風疹が妊婦に危険な理由や、麻疹との違いについて解説していきましょう。

不顕性感染(ふけんせいかんせん)(*1)=病気に感染しても症状がないこと

風疹とは

風疹は風疹ウイルスの感染で起こり、喉などの粘膜から排泄されるウイルスが唾などの飛沫を介して感染が広がります。

1人の感染者が何人に感染させうるかの指標となるR0(基本再生産数)は風疹で6~7

インフルエンザの2~3と比べて高く、麻疹の12~18と比べると低い程度の感染力を持っています。

風疹ウイルスに感染後、潜伏期間は14~21日と長めです。

感染しても症状のでない不顕性感染が15~30%ほど。

不顕性感染の状態で風疹に免疫のない方、特に妊娠初期の方に知らず知らずに感染を広げてしまう恐れがあります。

関連記事:【秋から冬にかけて注意】ノロウィルス感染症になる原因や症状、消毒方法を解説

風疹の主な症状

14~21日の潜伏期を経て、発熱、発疹、耳のうしろ、首、後頭部のリンパ節腫脹が特徴的です。

発熱をしないこともあります。

発疹は淡い紅色で小さい隆起性で全身に広がります。

咳、喉の痛みなどの上気道炎症状や目の充血、目やにがでることもあります。

風疹の症状は子どもでは比較的軽いことが多いのです。

2000~5000人に1人くらいの割合で脳炎や血小板減少性紫斑病(*1)などの合併症を起こします。

大人は、発熱や発疹の期間が長く、関節痛がひどいことが多いとされています。

血小板減少性紫斑病(けっしょうばんげんしょうせいしはんびょう)(*1)=血小板数が減少し、出血しやすくなる病気

妊婦が風疹に感染すると危険な理由

風疹のワクチンを打っていなかったり、風疹の抗体化が不十分な妊婦が、妊娠20週までに風疹に感染すると胎盤を介してお腹の赤ちゃんも風疹ウイルスに感染してしまいます。

流産や早産のリスクになったり、出生児に先天性風疹症候群という先天性の奇形や障害を起こすことがあります。

先天性風疹症候群は、以下のさまざまな症状などを起こします。

  • 先天性心疾患
  • 難聴
  • 白内障
  • 網膜症
  • 肝脾の腫大
  • 血小板減少
  • 糖尿病
  • 発育遅滞
  • 精神発達遅滞
  • 小眼球

先天性風疹症候群に対しての治療法はないため、妊娠中の女性が風疹に感染しないように、妊娠前にワクチン接種をしておく(妊娠中はワクチン接種は受けられないため)ことが重要です。

そして、周囲の人が妊婦に感染をうつさないように風疹ワクチンを接種して予防しておくことも必要になります。

関連記事:手足口病の症状や潜伏期間、子供だけでなく大人の初期症状やうつる確率について解説

風疹と麻疹の違い

風疹と麻疹の違いとしては、麻疹は感染力が風疹以上に高く、以下の症状などが強いことがあります。

  • 発熱
  • 咳などの上気道症状
  • 目の症状
  • 発疹

麻疹も妊娠中の女性に感染すると、流産や早産のリスクは高くなるため、注意したい感染症です。

風疹の抗体検査とは

検査は血液検査で簡単に行えます。

風疹の抗体保有率は年齢や男女差が非常に大きいことが知られています。

妊娠可能年齢の女性の抗体保有率は95%と高く維持されていました。

しかし、妊婦健診の風疹の抗体検査で抗体価が低いと指摘される方もいるため、妊娠20週までの感染には注意が必要です。

一方、男性の風疹抗体の保有率は40代前半で80%40代後半は78%50代前半で76%と低くなっています。

実際に風疹にかかる方も30~50歳代までの男性が中心です。

今でこそ風疹は男女ともに定期接種になっています。

しかし、1976年当初は女子中学生のみが定期接種であったため、この年代の男性は風疹ワクチンの接種の機会が一度もない状態となってしまいました。

その対策として、現在厚生労働省では風疹の追加的対策として、昭和37年度〜昭和53年度生まれの男性に風疹の抗体検査と予防接種を無料で受けられるクーポン券を発行しています。

また、厚生労働省が対象にしている年代以外の方でも、自治体が風しん抗体検査を補助しているところがあります。

気になる方はぜひ自治体のホームページを確認してみましょう。

関連記事:感染力が強い麻疹(はしか)の症状とは?予防接種や風疹との違いについても解説

風疹の予防接種について

風疹の予防接種は風疹ウイルスを弱毒化(*1)させた風疹生ワクチンが使われています。

風疹と麻疹の混合ワクチンが定期接種として使われています。

1~2歳未満に1回接種(第1期)と5歳以上7歳未満の小学校就学前に1回(第2期)が定期接種として実施されています。

2回接種を受けることで、95%以上の人が風疹ウイルスに対する免疫を獲得することができます。

麻疹との混合ワクチンなので、麻疹・風疹どちらの抗体も獲得することができます。

弱毒化生ワクチンは妊娠中には打てません。

抗体価検査をして抗体が低いことが判明した妊娠可能な年齢の女性は、非妊娠時にワクチンを打って2ヶ月程度避妊をしましょう。

抗体価が低い状態ですでに妊娠している場合には、風疹が発生している地域や人混みを避けて感染しないように注意しましょう。

出産後はどのタイミングでも風疹ワクチンを接種できますので、主治医に相談してみましょう。

また、周囲の方や家族で抗体価が低い方がいれば、ワクチンを打っていただくと、妊娠女性とお腹の赤ちゃんを守ることができます。

弱毒化(*1)=病原性を弱める

もし風疹になったらどうすればいい?病院での治療は?

風疹かもと思ったら、かかりつけ医やお近くの病院に受診前に電話をして診察可能かきいてみましょう。

受診を指示されたら、飛沫感染をして周囲の方に広げてしまうので、マスクをして受診しましょう。

風疹には特別な治療法はなく、症状を和らげる対症療法が中心になります。

発熱や関節痛に対して解熱鎮痛薬などを使います。

関連記事:【医師監修】解熱剤が効かない?解熱剤の種類と使うタイミング、効果や副作用について

西春内科・在宅クリニックでの対応

風疹の可能性がある場合には、事前に電話などでご相談ください。

発熱、発疹、リンパ節腫脹の3つの兆候がそろわない場合、臨床症状のみでは診断が難しい場合には、血液検査による血清診断を行うことがあります。

まとめ

風疹が妊婦に危険な理由や、麻疹との違いについて解説しました。

風疹は、感染しても症状がでない人がおり、その方が知らず知らずに感染を広げている可能性がある場合があります。

特に妊娠初期の女性に感染した場合には赤ちゃんが先天性風疹症候群という病気になるリスクがあることがポイントです。

風疹は、ワクチンで予防できます。

行政や自治体から抗体検査のクーポンが届いた場合や、ご家族や周囲の方が妊娠を考えている場合など、風疹のことが気になったら病院で相談して抗体検査やワクチン接種を受けましょう。

参考文献
 国立感染症研究所「風疹とは」

国立感染症研究所「先天性風疹症候群とは」

 国立感染症研究所 感染症疫学センター「風疹に関する疫学情報:2022年11月18日現在」

厚生労働省「風しんの追加的対策について」

この記事の監修医師

監修医師: 西春内科・在宅クリニック 院長 島原 立樹


▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

経歴

名古屋市立大学 医学部 医学科 卒業
三重県立志摩病院
総合病院水戸協同病院 総合診療科
公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科

資格

日本専門医機構認定 内科専門医