急性腸炎とは|症状や治療について詳しく解説

公開日:2025.9.16 更新日:2025.9.16

急性腸炎は、突然の腹痛や下痢、嘔吐などの症状が起こる病気です。

これらの症状は、日常生活に大きな支障をきたすことがあり、適切な治療を受けないと症状が悪化することもあります。

この記事では、急性腸炎の原因、症状、治療法を詳しく解説します。

入院が必要なケースや回復のサインについても説明しますので、参考にしてください。

急性腸炎とは

急性腸炎とは、胃や腸などの消化器官に炎症が急激に発生する病気で、突然の強い腹痛や下痢、嘔吐などの症状を、数日間伴うのが特徴です。

急性腸炎の原因によって、大きく「感染性腸炎」「非感染性腸炎」に分けられます。

感染性腸炎はウイルスや細菌などの病原体が原因で、非感染性腸炎は食生活やストレス、血流障害などが原因です。

次の項目では、それぞれの違いや原因について詳しく解説します。

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急性腸炎は2種類に大別される

感染性腸炎

感染性腸炎は、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が原因で発症する腸炎です。

代表的なものに、ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス性腸炎や、サルモネラ菌やカンピロバクターなどの細菌性腸炎などがあります。

これらの病原体は、汚染された食品、水、または接触感染などで体内に侵入し、腸に炎症を引き起こします。

また、感染力が非常に強いため、感染者の嘔吐物や下痢便の処理を適切に行う必要があります。

非感染性腸炎

非感染性腸炎は、ウイルスや細菌などの病原体ではなく、体内のさまざまな要因が腸に影響を与えて生じる腸炎です。

食生活やストレス、血流障害など、さまざまな要因で引き起こされることが多く、原因の特定が難しいこともあります。

感染性腸炎と違い、人へとうつる心配はありませんが、思い当たる要因を排除することが大切です。

詳しい原因は次の項目で説明します。

急性腸炎の原因

感染性腸炎の原因は、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体による感染です。

一方、非感染性腸炎は、複数の原因によって発症するため、以下で詳しく解説します。

暴飲暴食

急激な食事の取りすぎや脂っこいもの、刺激の強い食品を大量に摂取することで、消化器官に負担がかかり、腸に炎症が起こることがあります。

特に、普段から健康的な食生活をしていない場合、急な食べ過ぎが急性腸炎の引き金となります。

食物アレルギー

特定の食物に対するアレルギー反応も、急性腸炎の原因の一つです。

アレルギーを引き起こす食品を摂取すると、免疫系が過剰に反応して腸内に炎症が起こります。

子供やアレルギー体質の人に多く見られます。

虚血性大腸炎

虚血性大腸炎は、腸への血流が一時的に不足することで起こる腸炎です。

加齢や動脈硬化などの血管障害で、腸への血液供給が不足し、腸の一部が炎症を起こします。

特に高齢者に多く見られる病気です。

ストレス

強い精神的ストレスや身体的疲労でによって、急性腸炎を引き起こすことがあります。

ストレスがかかると、胃酸の分泌が増え、腸の動きが鈍くなったり、過剰になったりして消化器系に負担がかかります。

さらに、消化器官への血流が減少することで、腸内に炎症が起こりやすいです。

関連記事;腹痛と「吐き気」「冷や汗」「顔面蒼白」「下痢」が同時に見られる場合に考えられる原因とは?

急性腸炎の症状

急性腸炎の症状は多岐にわたり、生活の質に大きな影響を及ぼすことがあります。

以下の症状が現れた場合には、早急な対処が必要です。

腹痛

急性腸炎で最も一般的な症状が腹痛です。

激しい痛みが腹部全体、もしくは特定の部分に現れます。

特に食後や下痢の際に痛みが強くなり、波のように繰り返すことがあります。

下痢

水分を多く含む水様性の下痢が頻繁に見られるのが特徴です。

急性腸炎では、1日に何度もトイレに行かなければならないほどの頻回な下痢が続き、日常生活に支障をきたすことがあります。

感染性腸炎の場合は、原因となるウイルスや細菌を下痢と共に排出しているので、下痢止めの安易な使用は控えましょう。

吐き気や嘔吐

急性腸炎では、吐き気や嘔吐がよく見られます。

特に感染性腸炎では、病原体が消化器系を刺激し、食欲不振と共に吐き気を引き起こします。

そのため、食事が摂れなくなることも多いです。

発熱

体の免疫反応として発熱を伴うことがあります。

特に細菌性腸炎では、38℃以上の高熱が数日間続くこともあります。

血便

虚血性大腸炎や一部の感染性腸炎では、腸の内側が傷ついて出血し、血液が混じった便が見られることがあります。

血便は危険なサインのため、直ちに医療機関を受診してください。

食欲不振

腸の炎症により消化機能が低下し、食欲不振が起こります。

食べ物を見たり、匂いを嗅ぐだけで吐き気を感じたり、気分が悪くなることもあります。

脱水症状

激しい下痢や嘔吐が続くと、体内の水分が失われ、脱水症状が起こります。

脱水症状には、口の渇き、めまい、倦怠感といった症状が現れます。

これらの症状が現れた場合は、無理をせず、安静にしながら適切な水分補給を行いましょう。

特に幼児や高齢者では、脱水が進行しやすく重篤な状態になることがあるため注意が必要です。

水分がとれない場合は、病院を受診するようにしましょう。

急性腸炎で入院が必要なケースとは?

以下の状態になった場合は急性腸炎で入院適応になることがあります。

  • 嘔吐がひどく、口から水分の摂取できない
  • 下痢が頻繁に起こる
  • 脱水症状がひどく、意識障害を起こしている
  • 腸閉塞などの合併症を起こしている

下痢や嘔吐が頻繁に起き、体内の水分やミネラルが失われ、口から水分の摂取ができないと脱水症状になります。

そのため、点滴で水分やミネラル、ビタミンを補給するために入院が必要です。

入院治療は、絶食をして胃や腸を休め、電解質やビタミンを含む点滴で、水分と栄養を補給します。

関連記事:水下痢の原因とは?腹痛がないのに止まらないのはなぜ?

入院期間や費用は?

通常、点滴は水様性の下痢が治まるまで行われます。

徐々に食事を摂取し、普通食に戻り、下痢が治まれば退院となります。

入院期間はおよそ2日~1週間程度です。

入院費用は、入院期間や部屋のタイプ(個室または大部屋)、治療内容によって異なってきますが、1日あたりの自己負担額の平均は20,700円です。

病院によって費用は異なりますが、健康保険適用で自己負担が3割の場合、4~6日の入院で約80,000円前後かかることが多いです。

合併症の治療が必要な場合は、さらに費用がかかるため、事前に医療機関で確認することをおすすめします。

急性腸炎は何日で治る?治ったサインはある?

原因や症状の重さ、個人の体調によって回復期間は異なりますが、適切に対処すれば1~3日で症状が軽減することが多いです。

ウイルスや細菌が原因の感染性腸炎では、病原体が体外に排出されると共に症状が緩和されます。

非感染性腸炎でも、腸の負担を軽減することで徐々に改善が見られます。

急性腸炎が治ったと判断できるサイン

以下のようなサインが見られる場合、急性腸炎が治ったと判断できます。

症状の消失

腹痛や下痢、嘔吐などの急性腸炎特有の症状がなくなり、日常生活に支障がない状態に戻った場合、回復していると言えます。

腹痛が完全に消え、下痢が通常の便に戻れば、腸の状態が改善しているサインです。

固形の便が確認できる

水様性の下痢が治まり、正常な固形の便が出るようになれば、腸の機能が回復しているサインです。

食欲が戻る

食欲が戻り、通常の食事を摂取できるようになれば、消化器系が正常に機能し始めているサインです。

食事をしても吐き気や腹痛がなければ、回復していると言えます。

体力や気力の回復

体力が戻り、疲れや倦怠感がなくなった場合、体全体が回復しているサインです。

日常生活を以前のような活動ができることは、回復の良い兆候です。

注意すべき点

回復のサインがあっても、以下のような状況が続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

症状が1週間以上続く

急性腸炎は数日で改善しますが、1週間以上症状が続く場合は、他の病気の可能性も考えられます。

高熱や激しい腹痛が続く

高熱が続いたり、腹痛が引かない場合は、感染が進行しているか、他の合併症の可能性があります。

血便や脱水症状が見られる

血便や重度の脱水症状は危険なサインです。

注意すべき点で上げた3つのいずれかに該当する場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

関連記事:腹痛の原因は?疑うべき病気と和らげる方法

西春内科・在宅クリニックでの対応

西春内科・在宅クリニックでは、患吐き気止めや整腸剤、解熱鎮痛剤の処方が可能です。

医師が必要と判断した場合は、点滴を行うこともあります。

まとめ

急性腸炎は、原因や症状の重さに応じて治癒期間が異なりますが、多くの場合は1~3日で回復します。

治ったサインには、症状の消失、固形の便の確認、食欲の回復、体力の回復などがあります。

これらのサインを参考に、自分の体調を見極めることが大切です。

また、症状が長引いたり、重症化していると感じたら、早めに医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。

参考文献

急性腸炎 – 医療法人 岩﨑内科

急性腸炎のストレス・感冒性腸炎(お腹にくる風邪)|大阪江坂胃腸内科・内視鏡内科クリニック

急性腸炎の原因は?何日で治る?|石川消化器内科・内視鏡クリニック

急性腸炎はうつる?細菌やストレスが原因?治し方や食事を医師が解説

この記事の監修医師

監修医師: 西春内科・在宅クリニック 院長 島原 立樹


▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

経歴

名古屋市立大学 医学部 医学科 卒業
三重県立志摩病院
総合病院水戸協同病院 総合診療科
公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科

資格

日本専門医機構認定 内科専門医