慢性硬膜下血腫を放置するとどうなる?認知症などの症状や手術について

2022.3.23

慢性硬膜下血腫は適切な治療と早期発見で治る病気です。

頭を打った後しばらくしてから頭の中に血がたまることで脳を圧迫して頭痛、認知症、失語、麻痺、ふらつきなどの症状が出てきます。

高齢者に多く周囲の人がいつも違う様子で気づくことも多いですが、認知症などの精神症状は年齢のせいで気づかれないことも多いため、気になる症状があれば一度検査を受けてみてください。

慢性硬膜下血腫の原因

慢性硬膜下血腫の簡単な説明

慢性硬膜下血腫は頭を打った後にしばらくしてから、頭蓋骨の内側で脳を包む硬膜と脳の間に血がたまることで脳を圧迫する病気です。

交通事故など強い衝撃を受けた際に急性期におこる急性硬膜下血腫とは異なり、頭を打った直後に検査を受けて異常がなくても1-3ヶ月ほどして慢性的に血がたまることで症状を来します。左右のどちらかにできることが多いですが、両側にできることもあります(10%程度)。

血腫ができる理由はまだ完全にはわかっていませんが、脳の表面の細かい静脈が切れて小出血が生じ、そこに炎症が起こり被膜を形成して中に血液がたまり血腫となると言われています。

さらに血腫被膜の中に髄液が流入することや、被膜上の血管からの出血を繰り返すことで血腫が増大していきます。

軽い頭部への打撲や頭部打撃のない転倒


脳に萎縮のある高齢者に多い病気であり、家の机や柱で軽くぶつけたといった程度でも起こることがあり、また10-20%程度の方ははっきりとした頭部打撲歴のなくても起こることがあります。

その他の原因(アルコール多飲、感染症、癌を患っている、動脈硬化、貧血など)

 

頭部打撲や転倒歴以外の原因としてはアルコール多飲、感染症、癌を患っている方、貧血などがあります。特に癌の方は稀に硬膜に癌細胞が転移することで難治性再発性の慢性硬膜下血腫を発症する方がおられます。

どんな人がなりやすい?


男性の高齢者

 一般的に男性の高齢者の割合が多いとされていますが、頭部打撲歴のある方は女性でもなります。脳萎縮がある方は特に血腫がたまりやすく、また術後再発の可能性が高くなります。

抗血小板薬や抗凝固薬など血をサラサラにする薬を飲んでいる人

 脳梗塞や心臓の病気をされたことがある方は抗血小板薬(バイアスピリン、クロピドグレルなど)や抗凝固薬(ワーファリン、イグザレルト、エリキュースなど)を内服されていることが多く、発症リスクは高くなります。

アルコールを多飲する人

 アルコールに関しては過去の論文報告からも明らかな差はありませんが、なりやすい傾向、再発しやすい傾向にはあります。

肝臓疾患、血液疾患のある人

 肝臓疾患、血液疾患のある方は血小板の数が少ないことや、血液凝固機能に異常があることがありますので発症リスクが通常の方より高くなります。

血液透析をしている人

 血液透析をしている方も発症リスクが高くなると言われています。透析中に抗凝固薬を使用することや、動脈硬化を合併しており抗血小板薬を内服している方が多いことが原因として考えられます。

 主な症状

頭痛

血腫が原因で慢性的に頭痛が続いている場合があります。頭痛は首のこりや筋緊張、片頭痛など原因は様々ありますが、特に頭部打撲歴のある方など症状が続いていれば一度受診して相談してください。

認知症症状

血腫が原因で急速に認知症症状が進行することがあります。高齢者に多い病気であり元々認知症を患っている方も多いですが、急に認知症が進行した、異常な行動や言動が見られた場合などは血腫が原因のこともあります。

失語

日本人の大半は右利きであり、その内90%程度は左側の脳が優位半球であり言語機能があります。言語機能がある側の脳に血腫があり脳を圧迫すると、言葉が出にくい、会話が噛み合わないといった失語症状が出ます。

失禁

尿失禁は高齢者の方であれば珍しい症状ではないすが、こちらも急に失禁することが多くなった場合や普通にトイレでできていた方が失禁するようになった場合など血腫が原因となっている場合があります。

麻痺

外来を受診されて慢性硬膜下血腫が見つかる場合で最も多いのは麻痺症状です。麻痺といっても軽い麻痺であれば違和感程度のこともありますが、どちらかの腕が重だるい、ものをよく落とす、歩いていると左右どちらかに寄っていくなど歩行障害を来して周囲の人から指摘されて見つかるといった場合も多いです。

放置すると意識障害や呼吸停止になることも

慢性硬膜下血腫で緊急性を要することは稀ですが、長期間放置して血腫量が非常に増えた場合は脳を強く圧迫し意識障害や呼吸状態の悪化、最悪の場合は呼吸停止を来し命に危険が及ぶこともあります。

 

治療について

CT検査やMRI検査

慢性硬膜下血腫が疑われる場合はまず頭部CT検査で診断します。CT検査で診断することが可能ですが、慢性硬膜下水腫といった似た病気もあります。

慢性硬膜下水腫の場合は基本的に症状を来すこともなく、治療の必要性はありません。判断が難しい場合はMRI検査を追加で行えば確実に診断できます。

術後も何度かCT検査を行い、再発の危険性がないと判断されるまで1-3ヶ月置きに行うことが一般的です。

薬による治療

血腫の量が少ない場合は症状を来さないこともあり、自然と血腫が吸収されて治る場合もあります。一般的に薬による治療で効果があると言われているのは五苓散という漢方薬で血腫の吸収を促進する効果があります。

その他にはアドナ、トランサミンといった止血剤薬を用いる場合もあります。

手術による治療

慢性硬膜下血腫により頭痛、麻痺、失語、認知症など精神症状などの症状を来している場合の治療法は手術になります。手術は局所麻酔で行うことがほとんどであり頭皮を4cm程度切り、頭蓋骨に100玉程度の穴を空けます。

脳の外側にある硬膜という膜を切開し、チューブを挿入して血腫を吸い出して水で洗浄して傷を縫って終わります。手術時間は30分-1時間程度で、挿入したチューブは1日置いといて翌日に頭部CTで血腫再発がないことを確認してから抜きます。

経過が順調であれば1週間程度で退院可能となります。
また稀に石灰化した血腫や難治性の場合は全身麻酔下で開頭手術になる場合もあります。

再発と後遺症について

手術後の再発率は約10%

手術後に症状が良くなっても再発する方がおられ、約10%程度と言われています。再発した場合も血腫が少なく無症状であれば薬による治療で治ることもありますが、再度症状を来す場合には再手術が必要になります。

多くは前回治療した場所と同様の傷、頭蓋骨の穴を用いて行うことができます。

早期発見と適切な治療で症状は良くなる

慢性硬膜下血腫によって起こっている症状は適切な治療を行い血腫が無くなれば良くなることがほとんどです。早い方であれば手術直後に麻痺や失語、頭痛症状が良くなる方もおられます。

血腫による麻痺や歩行障害などの症状は血腫が無くなれば良くなりますが、発見が遅れれば廃用による筋力低下や身体機能低下によって以前のような状態に戻ることが難しくなる方もいます。

治る病気と言われますが意外と半年~1年後の良好な経過をたどる方は70%程度になります。さらに血腫が非常に増えた場合は意識障害を来し命に危険が及ぶこともまれにありますので、気になる症状があれば早めに相談してください。

頭を打って頭痛が続く、ふらつきがある人はCT検査をおすすめ


 頭をぶつけたけどその時はなんともなかった、検査したけど異常がなかった方でしばらくして最近頭痛が続いている、歩くときにふらつく、しゃべりにくいといった症状が出てきた方は一度頭部CT検査を受けられることをおすすめします。

また高齢の方は血液をさらさらにする薬を内服されている方も多いので、頭部をぶつけた覚えがないといった程度の軽微な打撲でも起こることがあります。気になる症状があれば一度頭部CT検査を受けることをおすすめします。

 

西春内科在宅クリニックができる対応

 
 西春内科在宅クリニックにはCT機器を導入しており、常勤医にはレントゲンやCT画像の読影の専門家である放射線科専門医がおります。

頭部CT検査により慢性硬膜下血腫を含む治療が必要な病変が見つかった場合には、脳神経外科の診療が可能な病院をご紹介させていただきます。

 

まとめ

 慢性硬膜下血腫は頭部打撲後にしばらくして発症する病気であり、頭痛やめまい、手足の麻痺、言語障害など様々な症状を来しますが、適切な治療をすれば症状が改善する病気です。

思い当たることがあり、ご心配な方はいつでも当院へご相談ください。

 

監修医師:

脳神経外科専門医 Dr.金光拓也