心不全について!もしものために知っておきたい心不全の種類や症状、治療について

公開日:2022.4.13 更新日:2024.3.06

心不全は命にかかわる危険な状態です。前兆を掴んで早期予防しましょう!



心臓の働き、心不全とは

 

心不全の概要

 
心臓は肺と連携して酸素を十分含んだ血液を全身の組織へ送るのが仕事です。全身の組織へ血液を送る際の血管を「動脈」と言います。また、酸素を使い終わった血液が心臓へ戻ってくる際の血管を「静脈」と言います。

 

心臓→動脈→組織→静脈→心臓
と一方向性の血液の流れが維持されることで私達の全身の循環は成り立っています。続いて心臓と肺の血液の流れを説明します。

 

組織で酸素が使われた静脈の血液は心臓へ戻った後、肺で酸素を付加され、再度心臓へ戻されます。その後、心臓から酸素が十分含まれた動脈の血液が全身の各組織へ送られます。

 

この心臓、肺の一連の血液の流れを①右心系、②左心系に分類します。右心系とは静脈の血液が心臓へ戻り、心臓から肺へ静脈の血液を送るまでの経路です。一方、左心系とは肺からの動脈の血液が心臓へ戻り、心臓から全身の組織へ送られるまでの経路です。

 

心臓と肺の関係を深く理解するために、血液の流れをさらに細かく説明します。心臓の右心系、左心系にはそれぞれ「心房」、「心室」という部屋があります。右心系は「右心房」、「右心室」、左心系は「左心房」、「左心室」と呼ばれます。それぞれの部屋を「弁」と呼ばれる水門が隔てています。

 

右心房と右心室を隔てている弁が「三尖弁」、右心室と肺を隔てている弁が「肺動脈弁」、左心房と左心室を隔てているのが「僧帽弁」、左心室と動脈を隔てているのが「大動脈弁」と名付けられています。

 

今までの全身の血液循環をまとめますと、
静脈→右心房→三尖弁→右心室→肺動脈弁→肺→左心房→僧帽弁→左心室→大動脈弁→動脈

と言うのが詳細に説明した血液の流れになります。

病名ではなく状態のこと

 

心不全とは上記の心臓→動脈→組織→静脈→心臓の血液の流れが何かしらの原因で妨げられてしまう状態を意味します。心不全は場所(①右心系、②左心系)、時期(①急性、②慢性)で分類することができます。例えば突然右心系に問題が生じ、心不全の状態となった際は急性右心不全と言う表現になります。

 

心不全の種類 場所の分類

右心不全(右心系の異常)

 

右心系の血液の流れを妨げる要因が出現してしまった状態です。三尖弁・肺動脈弁疾患、虚血性心疾患、心臓の筋肉の異常・炎症、先天的な心臓の構造異常、左心不全に続発するもの、肺疾患などが挙げられます。

 

左心不全(左心系の異常)

 

左心系の血液の流れを妨げる要因が出現してしまった状態です。虚血性心疾患、心臓の筋肉の異常・炎症、僧帽弁・大動脈弁疾患、貧血、高血圧症、不整脈などが挙げられます。

 

心不全の種類 時期の分類

急性心不全

 

突然心不全を発症してしまった状態です。入院を要する緊急事態であったり、状態によっては命に関わる状態です。

 

慢性心不全

 

心不全が長い時間続いている状態です。内服の薬等で状態が安定し、自宅で過ごせることが多いです。

 

急性心不全、慢性心不全の関係

 

急性心不全で入院を要した場合、原因が解決できれば、元の元気な心臓に戻ることが可能です。一方で心不全の原因が解決できず、残ってしまう場合は慢性心不全として薬の内服を継続することになります。慢性心不全の人の心機能がさらに悪化すると入院加療が必要となることがあります。

 

 

代表的な心不全の原因


虚血性心疾患

 

心臓は筋肉の塊であり、心臓自身も動脈からの血液を受け取って活動しています。心臓へ血液を供給している動脈は「冠動脈」と呼ばれ、主に①右冠動脈、②左冠動脈前下行枝、③左冠動脈回旋枝の3種類があります。

 

冠動脈が動脈硬化などで狭くなってしまい、心臓への動脈の血液が減少してしまう疾患を「狭心症」、冠動脈が閉塞し心臓の筋肉が壊死してしまう疾患を「心筋梗塞」と言います。いずれも心不全の原因となります。「虚血性心疾患」はそうした狭心症、心筋梗塞の総称です。

 

狭心症、心筋梗塞の状態次第では内服だけで解決できず、追加治療が必要になることがあります。具体的にはステントと言う金属の筒を使用して冠状動脈をカテーテルで広げる「経皮的冠状動脈形成術」、心臓の周りの血管を心臓の血管へ縫い付けることで血流を再開させる「冠動脈バイパス術」があります。冠動脈の狭窄・閉塞の場所、数によって術式が選択されます。




高血圧性心疾患

 

高い血圧を放置してしまうと心臓の筋肉の壁が分厚くなり、「心肥大」という状態になります。イメージとしては手足の筋力トレーニングをすると筋肉が大きくなることと一緒です。

 

ただし、心臓の場合は心肥大になると心臓の運動効率が落ちてしまい、全身へ血液を送る能力が悪くなってしまいます。

 

また、高い血圧に心臓が晒され続けると圧に耐えられなくなり、心臓の機能が低下してしまいます。いずれも心不全の原因となります。高血圧を放置せず、生活習慣(塩分、食事節制)、適切な内服を継続することが肝要です。

 

弁膜症

 

組織→静脈→心臓→肺→心臓→動脈→組織と言う一連の血液の流れを維持するために心臓の中には水門の役割をする「弁」が存在します。弁が壊れ、逆流してしまうことを閉鎖不全、固くなって開閉し辛くなることを狭窄と言います。いずれも血液の流れが妨げられ、心不全の原因となります。「弁膜症」とは弁に異常を来した疾患の総称です。

 

心臓には三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁の4つの弁が存在します。それぞれの弁で閉鎖不全、狭窄が生じるメカニズムは異なりますが、弁自体に問題が生じたり、弁周囲の心臓環境の影響を受けることで異常を来すことが多いです。

 

内服の治療でコントロールが不良な場合は手術が必要になります。異常を生じた弁の場所により、「弁置換術(人工弁の交換)」または「弁形成術(自己弁の修復)」のいずれかが選択されます。

 

その他(心筋症、心筋炎、先天性心疾患、不整脈、肺疾患、薬剤)

 

他にも心不全となる原因があります。


「心筋症」

 

心臓の筋肉自体の問題です。遺伝的な要素と、高血圧などによる心肥大による後天性の要素があります。

「心筋炎」

 

心臓の筋肉に細菌、ウイルスなどが感染し、心臓の運動が妨げられます。


「先天性心疾患」

 

生まれつき心臓の構造に異常があり、本来の血液の流れが妨げられます。


「不整脈」

 

不整脈は心臓のリズムが乱れてしまう疾患の総称です。脈が早くなってしまうもの、遅くなってしまうもの、心臓の中に血栓ができてしまうもの、出現すると命に関わるものなど様々な種類があります。いずれにしても脈の乱れにより、全身に血液を送る動きが妨げられてしまいます。


「肺疾患」

 

肺の機能が損なわれてしまうと静脈の血液に酸素が付加できなったり、肺から心臓へ流れる血液が減少することで全身の循環が妨げられます。


「薬剤」

 

薬の種類によっては副反応で心臓、肺の機能が損なわれてしまうことがあります。


「貧血」

 

貧血になると血液の酸素が薄くなります。酸素が薄い血液は心臓、全身の組織に負担がかかります。貧血の原因は多岐に渡るため、血液検査で貧血を指摘されましたら、かかりつけ医に相談して下さい。

 

心不全になりやすい人

 

心不全を100%予防することは難しいですが、生活習慣の見直しをすることで心不全を回避する可能性を高めることができます。

 

生活習慣病の方

 

心臓に影響を与える因子として生活習慣病(高血圧症、脂質代謝異常症、糖尿病、高尿酸血症)、喫煙、大量飲酒が挙げられます。これらは生活習慣の是正、適切な内服の継続によりコントロールが可能です。

関連記事:高血圧と脂質異常症については

既に持病を抱えている方

 

持病によっては心臓、肺へ影響を与える病態、薬の内服をしている可能性があります。かかりつけの医師に一度相談して下さい。

 

心不全の症状でこの症状があれば危険

 

血液循環の破綻により一方向性であった血液の流れが滞り、渋滞を起こすことが原因で症状が出現します。血液循環の破綻がどこで起こるかによって多彩な症状を示します。その中でも代表的な症状は以下となります。

動機・息切れ

 

心不全により心臓に血液が貯留、拡大、心臓の筋肉が引き伸ばされることで様々な不整脈が引き起こされます。脈拍が極端に早くなると息切れが生じることがあります。

 

呼吸困難

 

血液循環が滞ると体に水分が貯留し、体重が増えたり、肺に水が溜まったりすることで呼吸が苦しくなります。横になると呼吸が苦しく、体を起こすと少し楽になる状態を「起座呼吸」と言い、心不全の典型的な呼吸様式です。

 

むくみ

 

体液貯留により全身の組織がむくみ、顔や手足のむくみで気づく場合が多いです。体重増加も顕著であり、重症な場合、数日で5kg程度増加する場合があります。

 

その他(食欲低下、手足の冷え、脱力感・疲労感)

 

その他、消化管がむくんで食欲が落ちたり、末梢の循環不全により手足が冷えたり、脱力感や疲れ易さを感じることがあります。

心不全の初期症状は気づきにくい場合があります。例えば、以前より連続して歩ける距離が短くなった、階段昇降が少し辛くなった、外出すると途中で休憩を挟むことが多くなった、連続して喋り続けると息が続かない…この様な症状は心不全の初期段階かもしれません。

 

放置をすれば命を失う危険性が非常に高い

 

症状が年齢、体力の衰えと自己判断し、医療機関の受診が遅れると命にかかわる場合があります。   

 

心不全の治療や予防について

 

放置をせず、すぐに病院へ

 

気になる症状がございましたら、かかりつけの医療機関へ躊躇せずに相談してみましょう。早期発見、早期治療が重要です。

 

内科または循環器科の受診を

 

医療機関にはそれぞれ専門科があります。可能であれば内科、循環器科を選びましょう。

 

心不全にならないためにできること

 

生活習慣の見直し(運動、食事、塩分制限、禁煙、節酒など)、持病のコントロール(高血圧症、脂質代謝異常症、糖尿病、高尿酸血症など)、ストレスを溜め込まない、定期的な健診を心掛けましょう。

 

西春内科在宅クリニックができる対応

 

心不全の早期発見には、様々な検査(採血検査・尿検査・超音波検査・胸部レントゲン・胸部CTなど)が必要です。
当院では上記全ての検査が可能ですので、お気軽にご相談ください。

専門的な治療が必要と判断した場合は、直ちに専門医療機関へご紹介します。




まとめ

 

心不全は生活習慣の見直しや前兆を早く掴むことで予防できる可能性があります。気になる症状はかかりつけ医に相談してみましょう。

この記事の監修医師

監修医師: 福井 康大