ロコモティブシンドロームとは?|予防や症状、原因について解説
ロコモティブシンドロームという言葉をご存知でしょうか。
ロコモティブシンドロームとは「骨や筋肉・神経が障害され、動けなくなった(身体機能が低下した)状態」をいいます。
ロコモティブシンドロームが長期間続くと、将来的に動けなくなり介護が必要になる可能性が上昇するとされています。
今回は、ロコモティブシンドロームのリスクや症状、治療法などについて詳しく解説していきます。
ロコモティブシンドロームとはどんな状態?
ロコモティブシンドロームは「骨や筋肉・神経(運動器)の障害によって日常生活制限をきたし、介護・介助が必要な状態になっていたり、そうなるリスクが高くなっていたりする状態」と2007年に日本整形外科学会が提唱した概念になります。
定義だけではわかりにくいので具体例を挙げると、「骨折や骨粗鬆症、筋力低下などで十分に動けなくなり介助を必要とする状況」です。
2012年の報告では、ロコモティブシンドロームに当てはまる人が予備軍を含め4700万人を超えると言われています。
昨今の高齢社会ではさらにこの人数は増えると予想されます。
ロコモティブシンドロームになる原因
主に下記が原因となって、ロコモティブシンドロームが引き起こされます。
- 加齢による筋力低下
- 運動不足による筋力低下
- 骨粗鬆症や骨折、変形性関節症などの整形外科的な疾患
◆高齢者の介護保険が適用になる特定疾病16種類とは?|申請方法やサービスについて
サルコペニア・フレイルとの違いは?
ロコモティブシンドロームと似た概念に「サルコペニア」と「フレイル」があります。
「サルコペニア」は、加齢によって筋肉量が減少し筋力が低下した状態を指します。
「ロコモティブシンドローム」が筋肉だけでなく骨・神経の障害を含むのに対し、「サルコペニア」は筋力低下のみに焦点を絞っています。
次に、「フレイル」は加齢によって心身ともに衰えた状態を指し、以下の3つの側面で成り立つものとされています。
- 身体的側面
- 心理的側面
- 社会的側面
「ロコモティブシンドローム」は身体的側面のみ注目しています。
そのため、心理的・社会的側面を含んでいる「フレイル」の方がより幅広い概念となります。
少々ややこしいですが、まとめると下の図のようになります。
「サルコペニア」→「ロコモティブシンドローム」→「フレイル」と意味の幅が広がっていくようなイメージです。
◆【加齢による筋肉量の低下】サルコペニアとは?症状やフレイルとの違い、診断基準について
◆介護が必要になる原因で多いフレイル(高齢による衰弱)とはどんな状態なのか?
認知症や骨粗鬆症を引き起こすリスク
ロコモティブシンドロームになると、運動量が低下して寝たきりの状態が続くようになります。
寝たきりの状態になると、認知症および骨粗鬆症は悪化します。
認知症や骨粗鬆症が悪化するとさらに身体機能が低下し、より重篤なフレイルの状態へと進行していきます。
フレイルへと至る負のスパイラルになる前に、ロコモティブシンドロームを予防することが重要です。
◆【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
ロコモティブシンドロームの症状
ロコモティブシンドロームの症状としては、四肢の関節や背部の疼痛、機能低下(可動域制限・変形・筋力低下・バランス力の低下)があります。
具体的には、「膝や腰が痛い」「姿勢が悪くなった」「膝の変形がある」「歩きが遅くなった」「つまづきやすい」などです。
ここでは自宅でできる7つのチェック項目をご紹介します。
①片足立ちで靴下が履けない ②家の中で滑ったりつまづいたりする ③階段を登るのに手すりが必要 ④家のやや重い仕事が困難 ⑤2kgの荷物の買い物をして持ち帰るのが困難 ⑥15分以上続けて歩くことができない ⑦横断歩道を青信号で渡りきれない |
以上の7項目のうち1項目でも当てはまればロコモティブシンドロームの可能性があります。
参考記事:ロコモティブシンドロームについて|イノルト整形外科
ロコモティブシンドロームになりやすい人の特徴
ロコモティブシンドロームになりやすい人の特徴として、以下の2点が挙げられます。
- 女性
- 肥満もしくは痩せ過ぎ
①に関しては、女性は閉経前後で骨密度が低下しやすくなっています。
そのため、ロコモティブシンドロームになるリスクが男性より高いとされています。
②に関しては、肥満による関節への負担の増大はロコモティブシンドロームの原因になります。
また、逆に痩せ過ぎも骨粗鬆症やサルコペニアの原因になり最終的にロコモティブシンドロームへと繋がります。
◆パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説
ロコモティブシンドロームの予防法・治療
まず予防ですが、以下の3点が重要になります。
- 毎日無理のない範囲内で運動を行う
- 生活習慣病を予防し適切な体重を維持する
- バランスの良い食事を心がける
①は特に「ロコトレ」と言われ、「片足立ち」や「スクワット」が推奨されています。
無理のない範囲内で毎日継続して行うことが大切です。
次にロコモティブシンドロームの治療です。
※予防と重複している部分があります。
- 毎日無理のない範囲で運動を行う
- 生活習慣病を予防し適切な体重を維持する
- バランスの良い食事を心がける
- 骨粗鬆症や変形性関節症などの整形外科疾患の治療を行う
予防と異なるのは④の「骨粗鬆症や変形性関節症などの整形外科疾患の治療を行う」です。
関節痛や腰痛に対しては鎮痛薬の内服や外用を行い、時には装具を使用します。
骨粗鬆症に対しては、ビタミンD、ビタミンKやカルシウムをしっかりと摂取し、適度な日光浴と運動が有効です。
また、骨の形成を促進するような薬の内服も行います。
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科・在宅クリニックでは、主に腰痛や痺れに対して薬を使った治療を行うことができます。
また、ロコモティブシンドロームに間接的に影響のある生活習慣病に対して、健康診断による予防や早期治療も行っています。
まとめ
今回はロコモティブシンドロームについて解説しました。
筋力低下や骨折などは脳卒中・認知症に次ぐ介護原因第3位であり、事前に防ぐことが重要です。
ストレッチや筋トレなどの運動を行い、痛みに対しては治療を行うことが大切です。
ぜひ、積極的にロコモティブシンドローム予防をしていきましょう。
参考文献
・Nakamura K. A “super-aged” society and the “locomotive syndrome”. J Orthop Sci. 2008 Jan;13(1):1-2. doi: 10.1007/s00776-007-1202-6. ・Epub 2008 Feb 16. PMID: 18274847; PMCID: PMC2779431.
・中村耕三:超高齢社会とロコモティブシンドローム。日本整形外科学会誌(J. Jpn. Orthop. Assoc.) (2009) 82:1-2
・内閣府平成30年版高齢社会白書(全体版)
・ロコモonline
・健康長寿ネット