自己導尿の目的とは?カテーテルとの違いや男女別の手順を解説

公開日:2023.4.17 更新日:2024.10.16



自己導尿
とは自力で排尿をできなくなってしまった場合に、尿を出す手段の一つです。

尿が膀胱(ぼうこう)にたまった時に、カテーテルと呼ばれる管を尿道から膀胱に入れて尿を排出します。

排尿の度にカテーテルを挿入する手間はあります。

しかし、衛生面に気をつけて行えば、カテーテルを入れたままにするよりも合併症が少ない優れた方法です

この記事では、自己導尿を行う目的、やり方、どんな人に適用されるのかなどについて解説していきます。



自己導尿を行う目的




尿は、腎臓で血液から不要な老廃物をろ過して作られます

そして、膀胱に貯められてから尿道を通じて排出されます。

通常、膀胱に一定量の尿が貯まると尿意を感じることで排尿することが可能です。

しかし、以下の場合には膀胱が尿で一杯になってしまいます。

  • 何らかの病気で尿意を感じなくなった
  • 尿を出す機能が低下した
  • 尿道が狭くなってしまった

その結果、膀胱が膨らんでお腹の張りを感じたり、膀胱内の圧力が高まって、腎臓へ逆流してしまうこともあります

そのため、腎臓の機能の悪化や感染症の原因となってしまう場合があります

これらの合併症を防ぐために、尿を適切な間隔で排出することが必要です。

自己導尿はその中の有効な方法の1つです



自己導尿のメリット・デメリット




自力で尿を排出できなくなった際の対応として、自己導尿、尿道留置カテーテル、膀胱ろうがあります。

以下、順にメリット・デメリットを解説しています。

自己導尿


メリット
尿路感染症の可能性が低い
・腎機能障害の発生頻度を減らすことができる
・社会生活にも大きな支障がない
デメリット
・本人もしくは介護する方が処置を覚える必要がある
1日複数回の処置が必要となりコストがかかる

尿道留置カテーテル


メリット
管を尿道に留め、尿をバッグ内に貯めておくことができる
・本人や介護する方の負担が少ない
デメリット
長期にわたり留めておくことは推奨されない
・日常生活が制限される
・カテーテル周囲からの尿漏れ
・血尿
尿路感染症などの合併症

膀胱ろう


メリット
カテーテル留置に比べ、合併症が少ない
・排尿の自由度が向上する
・睡眠の質が向上する
デメリット
・手術で膀胱ろうを造設することが必要
手術自体の身体への負担や合併症が懸念される
・膀胱が小さくなることがある
・皮膚トラブルが生じる場合がある


関連記事:腎ろうとは?どんな人が対象になるのか?在宅における注意点を解説

どんな人が自己導尿をするのか




自己導尿は以下の場合の方に対して使用されることが多いです。

  • 脳血管障害
  • 脊髄損傷(せきずいそんしょう)
  • パーキンソン病などの神経疾患
  • 糖尿病
  • 神経因性膀胱(*1)
  • 前立腺肥大症(*2)
  • 排尿障害
    (尿道狭窄(*3)などによる)

神経因性膀胱(*1)=脳・脊髄の中枢神経や脊髄から膀胱に至るまでの末梢神経の様々な病気により、膀胱や尿道の働きが障害され、排尿の障害をきたしてしまう病気の総称

前立腺肥大症(*2)=前立腺が肥大して、様々な排尿の症状を引き起こす病気


尿道狭窄
(*3)(にょうどうきょうさく)=外傷や炎症により、尿道が狭くなること

▶︎パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説

尿道留置カテーテルとの違い




尿道留置カテーテルは、膀胱内にカテーテルを挿入し、先端の風船を膨らませて尿道から抜けない様に固定します。

そのことから、バルーンカテーテルとも呼ばれます。

尿は自然とカテーテルを通り、膀胱に溜まらず専用の袋の中に溜まる仕組みです。

カテーテルは2~4週間で入れ替えをします。

カテーテルの交換までは基本的に挿入したままです。

自己導尿のように1日に数回の処置が不要です

バッグ(尿をためる袋)を持ち運びして外出もできます。

ご自分や周囲の方が排尿の管理をでき、自己導尿と尿道留置カテーテルのどちらかを選べる場合、まずは自己導尿を受けるのがおすすめです

また、以下のような方の場合は、尿道留置カテーテルが勧められます

自己導尿がご本人と介護者の負担になってしまうことが多いからです。

  • 足腰が弱ってしまった方
  • 認知症が進行してしまい、1日の大半をベッド上で過ごしている方

男女別の自己導尿のやり方・注意点




1日に導尿する回数は1日の尿量、膀胱の容量、残尿の程度によります。

しかし、基本的には膀胱に尿をためすぎないことが必要です。

一般的には、尿は400ml以上ためないように1日に4-6回程度が適切であるとされています。

またカテーテル挿入に伴い、尿道を傷つけたり、雑菌が入らないように適切に行う必要があります

以下は男女別の手順です。

男性の場合

手を洗う


手を洗う場所がない場合はウェットティッシュやアルコールなどで手を消毒する。

消毒綿で拭く


片手で陰茎をもち、もう一方の手で尿道の中心から周囲にかけて消毒綿で拭く。

挿入する


カテーテルをケースから取り出して、尿道口に挿入する。

排出する


尿が出る位置までカテーテルを挿入したら、下腹部を軽く圧迫したり、カテーテルの位置を調整して尿が残らないように排出する。

ゆっくり引き出す


尿を出し終えたらカテーテルをゆっくり引き出す。

廃棄または洗浄する


カテーテルが使い捨てであれば指定の容器に廃棄、再度使うタイプは洗浄、消毒を行う。

女性の場合


女性の場合、尿道口の位置がご自分ではわかりにくいです。

そのため、慣れるまでは鏡を用いて外尿道口を確認しながら行うことがおすすめです。

手を洗う


手を洗う場所がない場合はウェットティッシュやアルコールなどで手を消毒する。

消毒綿で拭く


片手で陰唇(いんしん)を広げ、もう一方の手で尿道を中心として消毒綿で尿道口を拭く。

挿入する


カテーテルをケースから取り出して、片手で陰唇を広げたまま、尿道口に挿入する。

排出する


尿が出る位置までカテーテルを挿入したら、下腹部を軽く圧迫したり、カテーテルの位置を調整して尿が残らないように排出する。

ゆっくり引き出す


尿を出し終えたらカテーテルをゆっくり引き出す。

廃棄または洗浄する


カテーテルが使い捨てであれば指定の容器に廃棄、再度使うタイプは洗浄、消毒を行う。

自己導尿はいつまで続ける必要がある?




自力で排尿ができる状態に治るか、一生続ける必要があるかは原因となった病気の状態に応じて変わってきます

例えば、以下などで神経の機能が損なわれてしまった場合には回復が難しい場合が多いです

  • 脊髄損傷
  • 骨盤手術

脊髄損傷患者で自力で排尿ができる割合は約20%と報告されています。

しかし、病気の治療や自己導尿を行うことによって、膀胱の定期的な伸び縮みを促し、再び排尿機能を取り戻すことができる場合もあります

前立腺肥大症では内服や手術で治療ができるため、改善できる可能性が高い疾患
です。

ご自分の状態と今後の見通しについては医師とよく相談して理解することが重要です。

自己導尿による痛みがつらいときは




自己導尿の副作用には、以下などがあります。

  • カテーテル挿入時の痛みや不快感
  • 尿路感染症

まだ慣れていない導入初期に起こりやすく、徐々に症状は減っていきます

しかし、痛みが続く場合には尿道が狭かったり、前立腺肥大症が合併している場合もあります

原因自体の治療や、尿道留置カテーテル、膀胱ろうなどの他の方法への変更も検討することが必要です。

そのため、痛みがつらいときには早めに医師に相談するようにしましょう。

訪問診療での対応




訪問診療では在宅で自己導尿を行っている方を対象に自己導尿のやり方の確認や適切に行えているかの指導を行います

対象となる疾患は以下の通りです。

  • 神経因性膀胱
  • 前立腺肥大症
  • 排尿困難
    (尿道狭窄などによる)

自己導尿では痛みや血尿、尿路感染などを起こすことがあります

そのため、定期的に医師の診察を受けることが必要です



西春内科在宅クリニックができる対応


西春内科在宅クリニックでは、自己導尿を行っている方で体力が低下して病院への通院が難しい方向けに訪問診療を行っています。

自己導尿のやり方の確認や適切にできているかの指導を行うことが可能です。

また、尿路感染症を起こした時の抗生物質の処方など合併症に対する治療も行えます

導尿の回数、やり方が適切か、合併症の有無など心配なことは多いかと思います。

まずはお気軽にご相談ください。



まとめ


今回は、自己導尿を行う目的、やり方、どんな人に適用されるのかなどについて解説しました。

排尿の障害や症状はご高齢になるほど多くなります

症状が強い場合には日常生活にも支障をきたしてしまうことがあります

自力で尿が出せなくなることに不安を感じる方も多いと思いますが、自己導尿は合併症が少なく、社会生活にも大きな支障がないです

定期的に医師の診察を受けることが必要ですので、お困りの症状がある際にはご相談ください。


参考文献

・日本泌尿器科学会編「男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン」 

・日本排尿機能学会/日本脊髄障害医学会/日本泌尿器科学会/脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン作成委員会編「脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン」

・吉田正貴「下部尿路機能障害(排尿障害)に対するガイドラインを踏まえた高齢者診療」

この記事の監修医師

監修医師: 福井 康大