膀胱ろうとは?在宅でのカテーテル交換時の注意点を解説
公開日:2023.5.01 更新日:2024.10.08
自力で排尿ができないときの治療では長期的にカテーテルという管を留置(*1)する方法があります。
長期的にカテーテルを留置する方法は、カテーテル挿入経路により呼び方が変わります。
その一つとして、お腹から膀胱に直接カテーテルを留置する方法を膀胱ろうと呼びます。
今回は膀胱ろうについて、必要となる原因や在宅で管理する上での注意点について解説していきます。
*1留置=一時的にカテーテルを固定しておくこと |
目次
膀胱ろうとは?原因について
膀胱ろうとは、自力で排尿ができない場合に、カテーテルをお腹から膀胱へ直接留置して尿を排出させる方法です。
尿は腎臓で血液から不要な老廃物をろ過して作られ、膀胱に貯められてから尿道を通じて排出されます。
自力で排尿ができなくなった場合には膀胱に尿が多量にたまって、お腹の張りを感じたり、
膀胱内の圧力が高まって腎臓へ逆流していまい、腎臓の機能の悪化や感染症の原因となってしまう場合があります。
これらの合併症を防ぐために、膀胱ろうを利用して排尿を行います。
「ろう」とは瘻孔(ろうこう)のことを意味し、体内の臓器と体外の皮膚や粘膜に交通する穴ができることを指します。
膀胱ろうは、人工的に膀胱と体表面の間に穴をあけて、尿を排出するカテーテルを挿入して排尿させます。
その他の方法には間欠的自己導尿・尿道カテーテル留置・腎瘻があります。
ご自分や介護をする方が適切に処置できるのであれば自己導尿が標準的な方法です。
しかし、導尿ができない方では尿道カテーテル留置や膀胱ろう・腎ろうが選択されます。
長期間の尿道カテーテル留置では尿路感染症などの合併症も多くあります。
尿道の狭窄、膀胱結石などの合併症で尿道カテーテル留置が難しい場合には膀胱ろうがよい適応です。
膀胱ろうが必要となる原因はさまざまです。
最も多い原因が神経因性膀胱(*1)による排尿障害です。
脊髄に存在する膀胱に尿をためたり、排尿をする神経の機能が障害されてしまい排尿障害を生じます。
次に多いのが尿道狭窄や前立腺肥大、外傷性の尿道の損傷などで尿道からカテーテルを挿入できない場合です。
その他には疼痛や違和感のため尿道カテーテルが留置できない場合や骨盤内臓器の手術後、乳幼児・小児の先天的な尿路の障害などがあります。
*1神経因性膀胱=脳・脊髄の中枢神経、あるいは脊髄から膀胱に至るまでの末梢神経の様々な病気により、膀胱や尿道の働きが障害され、排尿障害をきたす病気の総称 |
膀胱ろうと腎ろうの違い
尿は腎臓で生成された後、尿管を通り膀胱へ貯められ、尿道を通過して体外へ排出されます。
膀胱ろうと腎ろうは両方とも尿の排出障害を改善させる方法です。
病気の部位によって適応が異なります。
ふたつの「瘻孔(ろうこう)」の違いは以下です。
膀胱ろう
下腹部の皮膚と膀胱とを交通させた穴からカテーテルを挿入して排尿させる方法です。
病気の原因が、膀胱や尿道の周りにある前立腺の場合には、膀胱ろうが選択されます。
腎ろう
背中から腎臓にまで到達する穴を作成し、カテーテルを挿入して排尿させる方法です。
病気の原因が尿管にあり尿が排出できない場合には腎ろうが適応となります。
>>腎ろうとは?どんな人が対象になるのか?在宅における注意点を解説
膀胱ろうに痛みはある?
膀胱ろうの造設・交換時と留置時にわけて解説します。
膀胱ろうの造設は、経皮的(皮膚の上から処置を行うこと)に膀胱を穿刺・穴を作成した後に、カテーテルを挿入します。
局所麻酔や全身麻酔で処置を行いますが、針を刺す行為ですので術後も含めて痛みを伴います。
また、交換時・留置時も軽度ですが、痛みを感じます。
しかし、尿道カテーテルと比較して交換時の痛みや留置時の違和感が少ないことが特徴です。
在宅における膀胱ろうの管理について
在宅での膀胱ろうの管理には以下の点に気を付けることが必要です。
カテーテル周囲の皮膚の清潔を保つ
カテーテル周囲の皮膚は汚れがつきやすい部分ですので、定期的にシャワーや入浴で清潔に保ってください。
シャワー、入浴の際には、石鹸などでカテーテル周囲の皮膚を優しく洗って、十分に洗い流すようにしましょう。
挿入部の観察・カテーテルの固定
その後、皮膚をきれいにふき、カテーテル挿入部の観察を行います。
挿入部に赤みや痛みがないか、抜けかけていないか、尿漏れや滲出液がないかなどを観察します。
観察後は挿入部、カテーテルをテープで固定します。
カテーテル挿入部はできるだけ毎日観察して清潔に保つことがおすすめです。
また、それ以外の場合でもカテーテルや集尿袋のチューブの曲がりやねじれがないか確認するようにしてください。
尿の管理については集尿袋に尿がある程度貯まったら、排泄口を開いて尿を廃棄します。
また、以下にも注意が必要です。
- 集尿袋いっぱいに尿が貯まらないにようにする
- 集尿袋は腰の位置より低い位置において尿が逆流しないようにする
その他、感染やカテーテルの自己抜去がないように注意することが必要になります。
>>自己導尿の目的とは?カテーテルとの違いや男女別の手順を解説
在宅でのカテーテル交換時の注意点
カテーテル交換は原則としてかかりつけの病院か往診で医師に対応してもらうことが必要です。
交換時の注意点として、以下が重要です。
- 交換までカテーテルが抜けないようにする
- 痛みや赤みなどの皮膚のトラブルが生じないように清潔に保っておく
カテーテルが抜けてしまった場合には、放置しておくと穴が塞がってしまう場合もあります。
抜けてしまったときにはガーゼを当てて、かかりつけの病院に連絡し受診をすることをお勧めします。
また、かかりつけの病院で抜けた場合に自分でカテーテルを挿入してよいか確認することもよい方法です。
>>自己導尿の目的とは?カテーテルとの違いや男女別の手順を解説
カテーテルの交換頻度
カテーテルはかかりつけの病院、もしくは往診で3-4週間に1回程度の頻度で交換します。
ただし、尿路感染症のリスクが高い場合や、瘻管の詰まりや外れが起こりやすい場合などは、交換頻度を短くする必要があることもあります。
カテーテルの交換は、医療スタッフと相談し患者さんにとって最適な交換頻度を決定することが重要です。
>>自己導尿の目的とは?カテーテルとの違いや男女別の手順を解説
膀胱ろうのときの入浴時の対応について
挿入部の皮膚に赤みや痛み、尿漏れ、滲出液などの問題がなければ膀胱ろうを作成した2週間後から入浴が可能です。
集尿袋は接続したまま、浴槽の外に出して入浴し、最後に挿入部周囲を石鹸などで優しく洗い、シャワーで洗い流しましょう。
入浴後は挿入部を保護し、カテーテルを皮膚に固定します。
膀胱ろうで尿漏れがあるときは
膀胱ろうで尿漏れがあるときには、以下の可能性があります。
- カテーテルの閉塞やカテーテルの抜けなどのカテーテルの問題
- カテーテルとカテーテルと排液バッグを繋ぐランニングチューブのトラブル
膀胱ろうによる尿漏れがあった際は、カテーテル挿入部の皮膚や、カテーテル・ランニングチューブのねじれや曲がり、閉塞がないか確認をして医師に相談するようにしましょう。
一般的に膀胱ろうでの尿もれでは短期間ではあまり見られませんが、長期間経過して対処が難しい場合にはパウチの有効性も報告されています。
詳しくは医師に相談するようにしましょう。
>>訪問診療と在宅診療(往診)の違いとは|利用基準や診療内容について
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科在宅クリニックでは、訪問診療で膀胱ろうの適切な管理を行っています。
対応可能な処置は以下の通りです。
- 膀胱ろうのカテーテル交換
- カテーテル周囲の皮膚トラブルの対応
- 尿漏れ
- 尿路感染症に対する抗生剤処方
また、尿の濁りがひどい場合やカテーテルがつまりやすい場合などに、膀胱洗浄などの処置を行うことも可能です。
更に、膀胱ろうの他にも導尿、尿道カテーテル留置、腎ろうカテーテルの交換が可能です。
膀胱ろうのご自宅・ご施設での管理はご不安が多いと思います。
西春内科・在宅クリニックでは皆様のご不安を取り除き、安心してご自宅でも生活ができるよう丁寧な対応を心がけています。
お困りの時にはクリニックへお気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、膀胱ろうについて内容や管理における注意点について解説してきました。
チューブの管理など適切に行っていただければ負担の少ない治療方法です。
そのため、ご自宅で過ごすのに適している方法と考えられます。
しかし、何らかの症状がある時にはひどくなる前のサインの可能性もあります。
いつもと違う状態の時にはかかりつけ医や当院にご相談してください。
【参考文献】
‣県立広島病院泌尿器科「膀胱ろう増設術」
‣長崎県看護教会「在宅における腎ろう・膀胱ろう管理の手引き」
‣千田基宏. 膀胱瘻留置中なのに、(1)尿道口から尿が漏れる!、(2)刺入部脇から尿が漏れる!. 泌尿器ケア. 2008; 13(1): 90-92.
‣西村泰司ほか. 膀胱瘻の現状 特に合併症と患者ケアについて. 日本外科系連合学会誌. 2017; 42(2): 145-153.
‣日本排尿機能学会/日本脊髄障害医学会/日本泌尿器科学会, 脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン作成委員会編. 脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン, 中外医学社, 2019
この記事の監修医師
監修医師: 整形外科医 三浦 隆徳
専門領域
股・膝関節資格・業績
日本整形外科学会整形外科専門医医学博士
2017年 第66回東日本整形災害外科学会 学術奨励賞受賞
2019年 第68回東日本整形災害外科学会 学術奨励賞受賞