胃ろうとは?後悔する人はいる?食事や費用について解説
胃ろうという言葉をご存知でしょうか?
私たちは歳をとるにつれて、以下などの状態になることがあります。
- 食欲が湧かない
- 食事を取るとむせこんでしまう
- 病気により口から食事をすることが困難
ただ、栄養を摂取しないとどんどん体調は悪くなってしまうため、そういった場合に検討されるのが、『胃ろう』です。
胃ろうは医療用語ですから、よくわからないという方も少なくないでしょう。
今回は、そういった方に向けて、胃ろうとは何なのか、メリット・デメリットや費用、在宅で胃ろうは可能かどうかなどについて解説していきます。
目次
胃ろうとは
胃ろうとは、お腹に開ける小さな口です。
口から水分や栄養が取れなくなったときに、衰弱しないように胃から直接、水分や栄養を補給する方法のひとつです。
栄養剤の行き先が、胃になるので『胃ろう』と呼ばれます。
胃ろうの対象となる方は、以下です。
- 口から食事を摂ることが難しくなった方
- 病気の関係で一時的に十分な水分量や栄養が不足する方
胃ろうには、栄養剤の入り口と出口それぞれで各2つずつ、組み合わせで計4タイプあります。
栄養剤の入口(皮膚側)の形状が2タイプ(ボタン型/チューブ型)
栄養剤の出口(胃内部)の形状が2タイプ(バルーン型/バンパー型)

主治医の先生や、施設(デイサービス、ショートステイ、ナーシングホームなど)の意向でどのタイプにするかが決まります。
胃ろうのメリット・デメリット
メリット
- 鼻や喉をチューブが通らないため、不快感や違和感が少なく、身体への負担が少ない
- 鼻からのチューブに比べ顔回りがすっきりする
- 違和感が少ないため、患者さん自身が自分で引き抜く心配が少ない
- 口から食事ができるため、食事再開に向けた訓練を行うことも可能
- 移動や入浴もできるため生活の質を下げない
デメリット
- 造設の際に入院が必要
- 定期的なメンテナンス(1~2か月に1回の交換)が必要
- 誤嚥性肺炎のリスクを軽減するが、栄養剤が逆流した場合咽頭や器官に入ってしまうことがある
- 咀嚼(そしゃく)および唾液の分泌が減り、口腔内が不潔になりやすい
- 対応していない施設の入居を断られることがある
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胃ろうができない人とは
胃ろうは胃に穴を開け、栄養を投与する方法なので、胃に穴を開けられる状態であるかが、重要です。
以下に当て嵌まる方は、胃ろうの造設が出来ません。
- 胃が無い方(胃癌などでの手術により)
- 進行胃癌
- 胃や内臓の高度の変位変形
胃ろうが出来ない場合は、以下が選択されることになります。
- 鼻からの栄養投与(経鼻栄養)
- 腸ろう
- 栄養点滴
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胃ろうで後悔する理由
患者様本人の判断力や理解力が低下している状態での胃ろうの造設が行われてしまうことが多く、回復を目指した医療行為ではなく延命治療の一種だと言われることがあります。
家族が胃ろうを行うかの判断を特に急性期にするのは心理的なストレスも強いです。
本人の意志を事前に確認しておくことをお勧めいたします。
胃ろうの食事について
胃ろうから栄養を投与する場合は、栄養剤を投与することになります。
こちらの栄養剤は、患者様の容態や基礎疾患、必要なカロリー・栄養バランスを考え、医師から処方、もしくは患者様自身が購入することになります。
また、胃ろうを造った後でも、食事するのに問題が無い場合や、本人に食べる意思や喜びがあり口からの食事を希望される場合は、口から食事を摂ることも可能です。
つまり、胃ろうは鼻からの栄養(経鼻栄養)などに比べると、口からの食事のリハビリに適しているということです。
胃ろうにかかる費用について
造設
胃ろうの造設は、内視鏡手術で行います。
手術時間は15~30分程度のことが多いですが、一般的には1~2週間程度の短期間の入院が必要となります。
入院費や手術代が必要です。
維持
栄養剤の出口である胃の内部側の形状で異なりますが、
交換にかかる料金は、材料費と手技料と合わせて
- バルーン型:おおむね1万円/回程度
- バンパー型:おおむね2万円/回程度
胃ろうの交換頻度について
胃ろうは食べ物を通すことになることもあり、定期的に交換を行う必要があります。
交換の頻度は胃ろうの形状によって変わります。
- バルーン型:おおむね1~2ヶ月に1回の交換
- バンパー型:おおむね4~6ヶ月に1回の交換
主治医の先生の考え方や、管理する施設(デイサービス、ショートステイ、ナーシングホームなど)の意向で交換頻度が決定されます。
胃ろうをやめることは可能なのか
一時的な胃ろうを考え、造設した患者様の場合、
口から十分な水分や栄養が取れるようになれば胃ろうは終了です。
抜去するとお腹の穴は数時間で塞がります。
将来的な胃ろうの再利用を考え、残しておくこともあります。
病気や認知機能の状況次第で、十分な水分や栄養をとることが難しい場合は胃ろうを終了することが難しくなります。
在宅で胃ろうは可能?
在宅での胃ろうでの栄養の投与は可能です。
胃ろうの交換や胃ろうの造設に関しては、クリニック毎で対応が異なります。
ご自宅の場合、ご家族や訪問看護師、ヘルパーさんに経腸栄養剤を入れて頂き、毎日栄養補給をすることになります。
施設の場合は、胃ろうに対応できる看護師やヘルパーさんがいない場合があるので、注意が必要です。
施設を選択される場合は、胃ろうを使用していることを最初に伝えた上で、施設選びをして頂くと良いかもしれません。
関連記事:腎ろうとは?どんな人が対象になるのか?在宅における注意点を解説
西春内科在宅クリニックが出来る対応
西春内科・在宅クリニックでは、胃ろうの造設対応は行っておりません。
在宅で胃ろうを使用している患者様への栄養剤の投与が可能です。
胃ろう造設をご希望の場合は、造設可能な医療機関をご紹介します。
まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、胃ろうのメリット・デメリットや費用、在宅で胃ろうは可能かどうかなどについて解説しました。
口から食事をとることが出来ない方・リスクが高い方にとって、胃ろうは非常に有用な栄養摂取方法です。
ただし、良い面もあれば、悪い面もあります。
胃ろうにより栄養は投与されるため、身体としては何とか生命活動が可能です。
しかし、その状態が続くことになります。
その形が患者様ご本人・ご家族様が望むものであるかどうかをよくご検討頂いた上で、胃ろう造設を行って頂ければと思います。
【参考文献】
・NPO法人PDN(Patient Doctors Network)様 HP
監修医師: 救急科医 山口 裕二
監修医師: 西春内科・在宅クリニック 院長 島原 立樹
▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。
経歴
名古屋市立大学 医学部 医学科 卒業三重県立志摩病院
総合病院水戸協同病院 総合診療科
公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科






