高齢者の足のむくみの原因とは|放っておくと危険な理由も解説

公開日:2023.8.21 更新日:2024.2.27

足のむくみ

多くの高齢者の困りごとのひとつに、足のむくみがあります。

足のむくみは、生活習慣からくるものや、特定の病気からきているものなど、その原因は様々です。

たとえば、高齢者の場合、筋肉量の低下や血管の老化のために足がむくみやすくなっています。

また、むくみの背後に怖い病気が隠れている場合もあるのです

そのため、原因を見極め、それぞれの状態に応じた対応やケアをしていくことが大切です!

今回は、むくみの原因やむくみが引き起こす様々な問題、ケア方法などについてお話します。

では早速、足のむくみの原因から見ていきましょう!

 

 

足のむくみの原因とは?


足のむくみ

私たちの体は、各部位それぞれに合った水分量を保つようにできています。

ところが、なんらかの原因でその水分バランスが崩れると、特定の部位に水分が溜まりやすくなるのです

足のむくみも、体の中に水分が溜まり過ぎたり、水分の分布がアンバランスになったりすることで起こります。

自覚症状としては、以下などがあります。

  • 足が重たく感じる
  • 靴がきつく感じる
  • 皮膚に圧をかけるとその跡が残る

では、さらに詳しく原因を見ていきましょう。

循環器系の問題


足のむくみが起こる原因のひとつに、循環器系の問題があります。

循環器とは、血液やリンパ液などの体液を身体に循環させるためのシステムのことです。

このシステムには、体内で酸素や栄養素を運んだり、老廃物の回収を行ったりする役割があります

たとえば、血液は、心臓のポンプ機能によって全身に運ばれます。

特に下半身の血液は、重力のために頭の方に戻りにくく、このようなポンプ機能が重要です

ところが、なんらかの理由で、心臓のポンプの力が弱くなると、血液は下半身に滞りやすくなります

そのため、足がむくむのです。

こうした循環器系の問題による足のむくみは、心不全や心筋梗塞などの心臓の病気の症状としてよく見られます。

また、心臓のポンプ機能が低下すると、上半身だけでなく、体の末端にも血液が十分に行き渡りにくくなります。

これは、深部静脈血栓症(DVT)と呼ばれる状態にあります。

深部静脈血栓症は、足の深いところにある静脈内で血液が固まり、血栓ができることで起こる病気です。

血栓ができると、静脈の血液が妨げられ、血液が足に滞り、むくむようになります。

 

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腎臓の問題


腎臓には、体の中の老廃物を排出する役割があります。

また、体内の水分や塩分のバランスを調節する役割もあります。

高血圧症や糖尿病から起こる腎臓病では、腎臓が血液をきちんとろ過できなくなります

そうなると、体内の塩分や水分がうまく排出されなくなり、余分な水分が体内に溜まってしまいます

そして、足がむくんでしまうのです。

 

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食生活や生活習慣の問題


日頃の食生活や、生活習慣も、足のむくみの原因です。

特に以下などは、体の水分バランスを崩し、血液やリンパ液の流れを悪くするため、足のむくみの原因になります。

  • 塩分が多すぎる食事
  • 長時間の立ちっぱなしや座りっぱなし
  • 運動不足

これについてもう少し詳しく説明します。

塩分過多塩分は体内で水分を引きつける性質を持っています。
塩分を摂りすぎると、体内の水分バランスが崩れてしまい、むくむようになります。
運動不足運動不足が続くと、筋肉のポンプ機能が弱くなってしまいます。
そのため、血液やリンパ液の流れが滞り、下半身に水分が溜まりやすくなります。

薬の影響


薬の中には、体内の水分バランスに影響を与えるものもあり、これが足のむくみにつながることがあります。

特に、以下などの薬です。

  • 高血圧の治療によく使われる薬(カルシウムチャネル拮抗薬)
  • 痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)
  • 女性ホルモン剤(エストロゲン)

カルシウムチャネル拮抗薬は、血管を拡げることで血圧を下げてくれます。

しかし、同時に体内の水分バランスを崩すこともあるのです

また、NSAIDsには炎症を抑える作用がありますが、腎臓の働きを悪くし、体内の水分と塩分のバランスを崩してしまうというデメリットもあります

エストロゲンは、女性ホルモンで、体内の水分と塩分のバランスを調節する役目を持っています

しかし、そのバランスが変わることで、むくむリスクがあります。

妊娠


女性の場合、妊娠が足のむくみの原因となることがあります。

妊娠中は、体内の血液量が増え、子宮が成長して骨盤内の血液やリンパ液の流れを圧迫します

これにより、下半身への血流が悪くなって足に血液が滞り、むくんでしまうのです。

また、妊娠中は、プロゲステロンというホルモンの分泌が増えます

このホルモンが血管を拡げるため、体内の水分と塩分のバランスが崩れがちになります

これにより、体内の水分が足に溜まり、むくむようになります。

 

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高齢者が足のむくみになりやすい理由


足のむくみ

高齢者は、体の各部位の機能が低下しているために、足がむくみやすい状態にあります。

機能低下とは、筋肉量の低下や血管の老化などです。

また、薬の副作用も、高齢者のむくみの原因としてよくみられるものの一つです。

これらについて詳しく見ていきます。

筋肉量の低下


普通、筋肉は、収縮することで血液を送り出しています。

特に脚の筋肉は「下肢静脈ポンプ」とも呼ばれており、歩行などで動かすことで、血液を心臓へと送り返しています。

しかし、筋肉量は加齢とともに減っていきます

筋肉量が低下すると、このポンプのはたらきも弱まり、足元に血液が滞りやすいです。

これが、足のむくみの原因となります。

 

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血管の老化


年を重ねるにつれ、血管も老化します。

加齢により血管壁(*1)は硬くなり、弾力性を失います。

その結果、特に下半身への血流が滞りやすいです。

さらに、血管壁が硬いと、血圧が上がりやすくなります

これがさらなるむくみの原因となります。

そして、この状態が進むと、静脈性浮腫静脈弁不全といった症状が起こる可能性があります。

これらは、本来、上半身に一方通行でかえっていくはずの静脈の血液が逆流して足に滞り、むくみが起こる症状です。

血管壁(*1)=血管の周囲を構成する管状の組織

 

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薬の副作用


高齢者は、高血圧症や糖尿病、筋骨格系の痛みなど慢性的な病気を抱えておられることが多く、薬の量も増えがちです。

そのため、薬の副作用からくる足のむくみも考えられます。

特に、カルシウムチャネル拮抗薬やα遮断薬、ステロイドなどの薬は、その副作用で体内の水分バランスが崩れやすく、むくみやすくなります

カルシウムチャネル拮抗薬/α遮断薬これらは、高血圧の治療に使われます。
しかし、これらのお薬の血管を拡げる作用により、血液の流れが滞り、むくみやすくなります。
ステロイドステロイドは、様々な炎症を抑えるために使われます。
しかし同時に、体内の水分と塩分のバランスを崩してしまう作用もあるのです。

 

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運動不足


加齢による体力の低下や、関節痛、慢性疾患などのために、高齢者は運動不足になりがちです。

運動不足になると、特に下半身への血液循環が滞りやすく、これが足のむくみにつながるのです

また、運動不足は筋肉量の低下につながり、さらにむくみやすくなります。

運動は血液の流れを良くし、筋肉のポンプ機能を活性化させます

定期的に運動して血液の流れを良くし、足のむくみを予防することが大切です。

立ち仕事や座りっぱなしの生活


高齢者の場合、読書やテレビ鑑賞などで座りっぱなしの生活をしている方も多いのではないでしょうか。

長時間座ったままでいると、足とお尻の接触部において血液が悪くなります

逆に、家事やガーデニング、ボランティア活動など長時間立ちっぱなしで作業をされている方もおられると思います。

長時間立ったままでいると、血液が重力の影響で下半身に溜まりやすいです

どちらも、脚の筋肉量が落ちている高齢の方にとって、足のむくみのリスクになります

 

 

足のむくみを放っておくと危険な理由


足のむくみ

足のむくみは、単なる見た目の問題として扱われ、あまり深刻な問題とは思われないこともあるようです。

しかし、放っておくと、思っていた以上に重大な問題を引き起こすこともあり、注意が必要です

ここでは、放置がどうして危険なのか、その理由を詳しく解説します。

血流障害による合併症のリスク


足のむくみの根本原因には、血液のめぐりの悪化があります。

むくみを放っておくと、血液が悪化し、様々な合併症を引き起こす可能性があり、注意が必要です。

たとえば、足の血管に血液が留まると、血管が拡がったり、血管壁が弱くなったりします。

これは、静脈血栓症深部静脈血栓症といった病気につながりやすくなります。

これらは、血栓(血液のかたまり)が血流に乗って肺に運ばれ、肺塞栓症(*1)を起こす可能性がある、とても危険な病気です。

肺塞栓症(*1)=血栓などが、血液の流れに乗って肺の動脈に運ばれ、そこをふさいでしまう病気

日常生活に支障をきたす可能性


足のむくみが進むと、肌が張った感じや、だるさ、動かしにくさを感じるようになります

そして、歩きにくくなったり、立つ・座るといった動きもとりにくくなったりします。

また、長い間足のむくみが続くと、

  • 皮膚に色素沈着が起きる
  • 皮膚が硬くなる
  • 皮膚が割れて潰瘍ができる

などの可能性もあります。

このような症状は日々の過ごしやすさに影響するだけでなく、感染症リスクも高めるので、注意が必要です

病気の重症化の可能性


足のむくみが、心臓や腎臓などの病気のサインである場合もあります。

むくみを放置しておくと、その病気が重症化してしまう危険があり、注意が必要です。

たとえば、心臓の働きが悪くなると、体の血液の循環も悪くなり、その結果足がむくんでしまいます。

この状態を放っておくと、心不全の症状が進み、他の臓器にも影響が出て、命に関わる事態を引き起こす危険もあるのです

先程もふれたように、腎臓の問題も足のむくみを起こすことがあります。

放っておくと、腎疾患が進んで、透析が必要となるような命に関わる状況になることがあります

ストレス


足がむくむと、見た目の変化の大きさから、自分に自信が持ちにくくなってしまう方もおられます

特に、靴が合わなくなる、パンツがきつくなるなどの変化は余計にそう感じやすくさせます。

落ち込みがちになると、運動する意欲も持ちにくいです。

運動不足となり、さらに健康を損なう悪循環にもなりかねません

 

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足のむくみの解消方法


足のむくみ

では、足のむくみを解消するには、どうすればよいのでしょうか。

まずは、生活習慣の見直しや、むくみへのケアがあります。

これについてご説明していきたいと思います。

マッサージ

足のむくみにはマッサージが効果的です。

血液やリンパの流れを良くすると、むくみが解消されやすくなります

特に、足裏を刺激すると全身の血行が良くなると言われています。

ご自身で行う場合は、足の指や足裏、ふくらはぎを中心に揉みほぐすとよいでしょう。

ただし、強く揉みすぎると逆効果にもなりうるので、優しく行うようにしましょう。


ツボ押し

足のむくみには、ツボ押しも有効です。

「三陰交(さんいんこう)」「太衝(たいしょう)」などのツボが、血流改善や、足のむくみ解消に効くとされています。

これらのツボは足の内側にあります。

マッサージや温湿布などで適度に刺激してあげましょう。


ストレッチ

定期的なストレッチも足のむくみ解消に役立ちます。

特に、ふくらはぎの筋肉を伸ばすストレッチは、血流改善に効果的です。

ストレスも、マッサージと同様、無理をしすぎると逆効果にもなりえます。

適度さを心がけましょう。


食生活の見直し

食生活も足のむくみに大きく関わっています。

塩分の多すぎる食事は、体内に水分が溜まりやすくなるために、むくみやすいです。

むくみ解消には、カリウムを多く含む食品を摂ると良いとされています。

カリウムには余分な塩分を排出する働きがあるからです。

バナナやほうれん草、さつまいもなど、カリウムが豊富な食品を積極的に摂りましょう。


適度な運動

運動不足も足のむくみの原因となります。

日々の生活に適度な運動を取り入れましょう。

特にウォーキングや水泳などの有酸素運動は、全身の血流を良くするので、むくみ解消に効果的です。

 

 

病院やクリニックでの治療について


足のむくみ

足のむくみが続いたり、急にひどくなったりしたケースでは、循環器系や腎臓の問題など、深刻な病気が隠れていることもあります。

このような場合には、専門の病院での治療が必要です

足のむくみが気になる場合、まずは循環器系や腎臓の問題がないかを確認するため内科を受診しましょう。

足が赤くなったり傷があったりなど、感染を疑う症状がある場合には、皮膚科の受診もすすめられます。

さらに詳しい検査が必要な場合には、地域の基幹病院の循環器科や腎臓内科などの診療科を紹介されることもあります

病院では、足のむくみの原因に応じた様々な治療を行います。

一般的には、食事や運動習慣の改善、塩分の摂取調整などの生活習慣の指導です。

また、利尿剤(*1)を処方し、体内の余分な水分や塩分を排出させることで、むくみ軽減を目指すこともあります

腎臓や心臓、血管疾患が原因の場合は、それぞれの病気に対する治療が行われます。

たとえば、心不全の場合は、利尿剤や心臓の働きを改善する薬が処方されます。

腎臓病の場合は、血圧をコントロールする薬や、腎臓の働きを保つための薬です。

また、病院ではリハビリテーション物理療法も行われます。

リンパマッサージは、リンパの流れを良くし、むくみを軽減する効果があります

圧迫療法として弾性ストッキングを使うこともあります。

これらの療法は、医師や理学療法士の指導のもとで行われます。

むくみは隠れた病気のサインのこともあります。

自覚症状がある場合は、早めの医療機関への相談が大切です。

また、一旦改善しても再発もありえる症状です。

定期的に病院でチェックするようにしましょう。

利尿剤(*1)=尿量を増やし、体内の余分な水分を減らす

 

 

西春内科在宅クリニックにできる対応


西春内科在宅クリニックでは、足のむくみに対して様々なアプローチを行っております。

足のむくみのある患者様に対して、まず最初にすることは、問診検査です。

むくみの程度や原因を見極め、最適な治療法を決めていきます

必要に応じて、画像診断や血液検査も行います。

治療法は、患者様一人ひとりの健康状態、生活習慣、症状に応じたものになります。

主に薬物療法、生活習慣の改善指導、リハビリテーションなどです。

高齢の患者様の場合、外出が難しい場合もあると思います。

このような方のために、当クリニックでは在宅医療を行っております。

お気軽にご相談ください。

 

 

まとめ


今回は、むくみの原因やむくみが引き起こすさまざまな問題、ケア方法などについてお話しました。

足のむくみの予防や解消のためには、エクササイズ、食事の工夫など生活習慣の改善も大切です。

また、むくみは、単なる老化現象というだけでなく、深刻な病気のサインのこともあるため、早めの病院へのご相談が大切です。

足のむくみにお困りの方は、ぜひ当クリニックまでご相談ください。

【参考文献】

Mayo Clinic. (2020). Edema. 

・WebMD. (2020). What’s Causing My Feet to Swell?. 

・Heald, C. L., Fowkes, F. G., Murray, G. D., & Price, J. F. (2006). Risk of mortality and cardiovascular disease associated with the ankle-brachial index: Systematic review. Atherosclerosis, 189(1), 61-69.

この記事の監修医師

監修医師: 循環器内科 小正 晃裕

  • 関西電力病院 循環器内科

監修医師: 西春内科・在宅クリニック 院長 福井 康大


▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

経歴

三重大学医学部医学科 卒業
三重県立総合医療センター 
N2 clinic