子供が頭をぶつけた場合の対処方法
今回は、休日や夜間に大切なお子様が、「頭をぶつけた場合」すなわち「頭部外傷」の対処方法についてお話します。
小さなお子さんが頭をぶつけてしまう時期は、ちょうど歩き始めたり、何かによじ登ったりする頃が多いです。
この時期はまだうまく言葉が話せず、親御さんに分かりやすく症状を伝えることはできません。
診察する医師も、親御さん以上にコミュニケーションを取れません。
また症状が現れにくいというのも頭を悩ませる原因になります。
そんなとき、医師が大切なお子さんのどこを見ながら緊急度が高いかどうかを判断しているのか、休日診療あるいは夜間診療に行くべきかについて解説したいと思います。
目次
頭を打ったときに気をつけるべき症状
まずは意識を見る
- ぼんやりしている
- 意識がない
- 元気がない
- 話しかけても反応が乏しい
- 顔色が悪い
- 元気よく泣かない
- けいれんがある
これらは、頭をぶつけたあとに脳にダメージがあるかどうかを簡単に見分けられる方法です。
私たちが診療に当たるときも、このような症状がないか親御さんによく質問します。
普段いつも一緒に過ごしている親御さんからみて、お子さんの様子や受け答えに【いつもと違う様子】がないかよく観察してください。
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意識以外の症状
- 吐いている
- ご飯を食べない、ミルクをあまり飲まない
- 呼吸が乱れている、苦しそう
- 手足の動きがいつもと違う
これらも脳にダメージがあった場合に出現する症状です。
重症の頭部打撲かどうかを分かりやすく判定できる指標です。
上記のような症状がある場合、救急病院へ受診し適切な診察、検査を受けたほうがよいでしょう。
ちなみに、大人においてもこれらの症状は多くが共通しています。
難しいのはこれらの症状が出なかった場合です。
小さなお子さんでは、症状が現れにくく、診療を難しくする要因となっています。
したがって、頭部打撲後は、上記のような症状がなくても、少なくとも一日は注意してお子さんの様子を観察する必要があります。
なかには時間が経ってから、重い症状が出現したというケースもあります。
CT検査について
CTとは?
CTはComputed Tomographyの略で、日本語で、コンピューター断層撮影と訳されます。
皆さんのよく言うCTというのはX 線を使ったもので、正式にはX線CTと言います。
これはX線を体に当てて、X線吸収を画像化する手法です。
言葉にすると難しいですね。
さて、頭部外傷におけるCTでの大きな役割は、以下を診断することです。
- 骨折
- 出血(脳挫傷、くも膜下出血、硬膜下血腫、硬膜外血腫など)
- その他
CTでは必ずしも全ての頭部外傷の診断を網羅できるわけではありません。
しかし、その簡便さから好まれる検査です。
どんなときにCTを撮るの?
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、CTは放射線の被ばくを伴う検査です。
したがって、不要な放射線被ばくは避けるべきです。
実は、小児の頭部外傷については、欧米からガイドライン[1-3]がいくつか提言されています。
小児の頭部外傷においてCTを撮るかどうか悩ましい事が多く、これらのガイドラインではCTを受けるべきかどうかを議論しています。
多くの病院の先生はこれらに沿ってCTが必要かどうかを判断されていることが多いようです。
これらのガイドラインは、ぱっと見ると内容は難しいです。
しかし簡単に言えば、
重い症状が現れている場合には、その症状がない子供よりも頭の中で異常をきたしている可能性が高く、とくにその簡便さや、頭蓋内の観察に優れているCTを撮ったほうが良い
ということなのです。
また診断結果によって行うべき治療も変わりますので、CTの重要性は非常に高いと言えます。
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検査はいくら掛かるの?
3割負担と想定した場合、緊急で撮影されたCTは、造影剤という薬を使わないもので約5,000円です。
ここに緊急で救急病院を受診した際の加算として、約3,500円〜7,500円が上乗せされます。
さらに診療費やその他もろもろの処置費が加わり最終的に20,000円近くかかります。
小児の場合は、未就学時は2割の自己負担であるため、この値段よりは安くなります。
※各自治体によって医療費負担を軽減する策が講じられているため、負担額は一律ではなく、この場で詳しくお答えできないことをご了承ください。
またCTは高度医療機器であるため、訪問にて診療を行う家来るドクターではその場でCT検査を行うことはできません。
検査の必要性について往診にて判断し、重症と判断されれば然るべき医療機関にご紹介いたします。
おわりに
今回、小さなお子さんで悩ましい「頭をぶつけた」「頭部外傷」についてお話しました。
症状の重さによって、休日診療、夜間診療、救急病院に行くべきかを判断するのが良いでしょう。
参考文献
1.Kuppermann N, et al. Lancet 2009; 374: 1160–70.
2.Bialy L, et al. Pediatr Emerg Care. 2018 Feb;34(2) 138-144.
3.Dunning. J, et al. Arch. Dis. Child., 2006.
監修医師: 横浜内科・在宅クリニック 院長 朝岡 龍博

経歴
2016 名古屋市立大学 卒業、 豊橋市民病院 初期研修医勤務
2018 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
2020 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
2021 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
2022 西春内科・在宅クリニック 副院長
2023 横浜内科・在宅クリニック 院長
資格
舌下免疫療法講習会修了
厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
緩和ケア研修会修了
難病指定医
麻薬施用者
監修医師: 西春内科・在宅クリニック 院長 島原 立樹

▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。
経歴
名古屋市立大学 医学部 医学科 卒業三重県立志摩病院
総合病院水戸協同病院 総合診療科
公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科