悪性腫瘍ってなに?がんも含まれる?それぞれの症状や種類、特徴について

公開日:2022.3.23 更新日:2024.3.06

悪性腫瘍は放置しておくと進行し命に関わる疾患です。もし悪性腫瘍を疑う場合は、医療機関での早期発見・早期治療が大切になってきます



悪性腫瘍とは

 

医学的に腫瘍というのは、体の中にできた何かしらの細胞のかたまりのことです。そして、腫瘍には悪性腫瘍と良性腫瘍があります。

本来、人間の正常な細胞は体の中でバランスよく保たれています。例えばけがをしたとき、多少の傷跡は残るにしろ元通りになるように再生しますが、過剰に細胞が増殖していくことはありません。

しかし、何らかの原因でできた異常な細胞が、体の中で無秩序に増殖して細胞のかたまりを作ることがあります。これを腫瘍と呼びます。

その腫瘍の中でも、悪性腫瘍とは、増殖した細胞が周囲組織まで侵入し悪性影響を及ぼしたり(浸潤といいます)、体の中の他臓器に飛んで行って別の場所でも増殖する能力(転移といいます)を持つものを指します。

一方で良性腫瘍は、悪性腫瘍にみられるような浸潤や転移をせず、周囲組織を押しのけるようにしてゆっくりと増えます。


がんは悪性腫瘍に含まれるのか

 

「がん」は悪性腫瘍全体を指す

 

では“癌”と“がん”はどのように使い分けられているのでしょうか。ひらがなで書く“がん”は先ほど説明した悪性腫瘍とほぼ同義で使われます。漢字で書く“癌”は悪性腫瘍の中の上皮性腫瘍を指します。

 

がんは、大きく以下の3つに分類されます。

 

まず1つ目は上皮細胞から発生するがんです。これは皆さんが一般的にイメージするがんであると思います。例えば、肺がん・乳がん・胃がん・大腸がん・子宮がん・卵巣がんなどです。

2つ目は非上皮性細胞から発生するがんで、医学的には肉腫と呼ばれるものです。筋肉・線維・骨・脂肪・血管・神経など非上皮性細胞から発生した悪性腫瘍をさし、例えば骨肉腫・横紋筋肉腫・脂肪肉腫・血管肉腫などが挙げられます。


3つ目は血液のがんと呼ばれるものです。白血病・悪性リンパ腫・骨髄腫などが挙げられます。

 

胃にできる悪性腫瘍は胃癌だけかというと、そうではありません。胃癌も胃肉腫もあります。その理由は、胃がどのように構成されているかというところにあります。

実は胃壁は内側から外側へ向かって粘膜、粘膜下組織、筋肉(平滑筋)、漿膜下組織、漿膜と層構造をなしています。胃の一番内側にある粘膜から発生する悪性腫瘍を胃癌と呼び、粘膜以外から発生するものに胃肉腫やGISTというのがあります。

しかし、骨は非上皮性のみで上皮性成分がないため発生する悪性腫瘍は骨肉腫のみで、骨癌は存在しません。また、まれに1つの腫瘍の中に両者が混在する癌肉腫というものも発生します。

 

「癌」はその一部の上皮性腫瘍だけ

 

悪性腫瘍のうち、癌と呼ばれるのは上皮性腫瘍のみです。上皮とは、体の内側を覆う組織をさし、専門的には上皮には扁平上皮および腺上皮があります。

どの部位の悪性腫瘍を癌と呼ぶかは解剖学的な知識が必要になりますが、簡単に言うと消化管や気道などの内側から発生するものか、体の表面を構成するもの、臓器などをおおうものです。

肺癌、乳癌、胃癌、大腸癌、子宮癌、卵巣癌、舌癌、前立腺癌などが挙げられます。


悪性腫瘍の種類と主な症状

 


 

癌の種類は多数ありますので、代表的なものを記載します。

大腸癌

 

大腸癌は、大腸(結腸・直腸)に発生する悪性腫瘍で、腺腫という良性のポリープががん化するものと、正常粘膜から直接発生するものがあります。

早期癌の段階ではほとんど自覚症状はなく、進行してから症状が出現します。代表的な症状としては血便がでる、下血する、便が細くなる、おなかが張るなどです。

早期癌の段階で発見するためには、健診や人間ドックを欠かさず便潜血検査を行うか、定期的な大腸内視鏡検査を行うことをお勧めします。

肺癌

 

肺癌は肺組織にできる悪性腫瘍です。発生する場所にもよりますが早期がんの段階では自覚症状が乏しいことが多く、進行してくると頑固な咳、胸痛、血痰、声枯れなどが出てきます。

肺癌は、喫煙や受動喫煙によって発症リスクが高まることが知られていますが、たばこに関係なく発症する肺がんもありますので注意が必要です。喫煙者は禁煙をすることが大事な予防策になり、胸部レントゲンや低線量CT撮影を行うことなどが早期発見につながります。 

膵臓癌

 

膵組織(膵管や膵実質)にできる悪性腫瘍を指します。早期の段階ではほとんど自覚症状がなく、早期発見が極めて難しい癌としてしられています。

進行した際に現れる主な症状は、腹痛・背部痛・食欲不振で、皮膚や白目が黄色くなる黄疸なども出現します。
突然糖尿病を発症したり、糖尿病患者さんの血糖のコントロールが急激に悪化するなどで気が付かれることもあります。

肉腫

 

骨の肉腫:体全体にできる肉腫のうち、骨にできる肉腫は全体の約25%を占めます。ただし骨の肉腫自体も非常に珍しく、日本全体でも患者数は年間500人~800人程度と報告されています。

骨にできる肉腫の中に、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、骨巨細胞腫などが挙げられます。その中の骨肉腫は、10~20代の若年者の膝周囲や肩周囲に発生することが多いとされています。

主な症状は肉腫ができた部位の痛みですが、レントゲン検査で骨に変化があらわれるまで症状が出ないことも珍しくありません。

悪性リンパ腫

 

悪性リンパ腫は、血液細胞の白血球の中の、成熟したリンパ球ががん化したものです。癌化したリンパ細胞が、リンパ節内などで無秩序に増えていきます。

リンパ節メインに腫瘍が発生した場合は、首や腋、足の付け根などにしこりを触れることで気が付く場合もあります。また、腹腔内臓器に現れる変化では脾臓が腫れることが多く、おなかが張った感じがすることもあります。

リンパ節以外にも、皮膚や消化管、肺、肝臓、脳など様々な臓器にリンパ腫ができることがあり、できた部位の臓器に特有な症状が出現するため、症状はさまざまです。その中でも、悪性リンパ腫に特徴的な症状として、長く続く微熱や、寝汗、体重減少などがあります。

白血病

 

白血病は誰しも聞いたことがある病名だと思いますが、実は急性白血病と慢性白血病に分かれ、またそれぞれのなかに細分化された病名があります。

急性白血病

 

その名の通り病状の進行経過が早く、放置すれば必ず命を落としてしまう病気です。

血液は骨髄の中にある造血幹細胞から赤血球、白血球、血小板などに分化成熟していきますが、急性白血病はその造血幹細胞から、成熟した細胞に分化する途中の段階で成熟が止まり、機能をほとんどもたない細胞が無秩序に増えてしまう病気です。

その結果、貧血になったり、白血球が減少し感染症にかかりやすくなったり、血小板の数が低下して出血が止まらなくなるという症状が起こります。

慢性白血病

 

慢性白血病は急性白血病と違い、細胞としての機能をもった細胞が無秩序に増えすぎてしまう病気です。慢性期という症状が緩やかに進む段階ではあまり自覚症状はなく、あっても軽い倦怠感や体重減少などです。

徐々に進行して移行期になると、貧血や持続的な発熱などがみられるようになります。

最終的には急性転化と呼ばれる時期になり、急性転化になると機能をもたない白血病細胞が際限なく増え続ける状態となり、急性白血病のような状態になります。

その結果、貧血、血が止まりにくく出血する、感染症に対する免疫力が落ちて高熱をだすなどの症状が見られます。

少しでも違和感を感じたらすぐに病院へ

 

がんは少しずつ大きくなる

 

悪性腫瘍は自覚症状がない間に発生し、徐々に進行しています。がんの種類によっても様々ですが、大腸がんを例にとって説明させていただきます。

大腸がんは若い人に少なく中高年から徐々に患者数が増えてきます。これからわかるよう、日々の生活習慣などが原因で年齢を増すごとに細胞DNAなどに障害が起きやすくなり、その結果癌化しやすくなると言われています。

また、早期がんが発生したとしても、気が付いていないだけで、症状が出現する進行がんになるまでには1年以上かかるとされています。

つまり、癌は突拍子もなくできることは少なく、少しずつ変化しながら発生してきます。がんは早期の段階で発見し治療するのと、進行がんになってから治療するのではその後の経過が大きく変わります。

早期発見、早期治療をするためにも、少しでも違和感があれば早めに医療機関を受診しましょう。

症状がなかなか治らない

 

悪性腫瘍の中には、全く症状がなかったり、見た目ではどこが異常なのか分からないことも多いです。

しかし、例えば、胃に腫瘍ができ徐々に進行してくるにつれて、食欲不振が続く、薬ではなかなか治らない腹痛や嘔吐が出現する、徐々に体重減少が進むなどの持続的な症状が認められます。

また腹痛などの症状がなくとも、最近少し元気がない、といったことが悪性腫瘍の症状である場合もあります。
悪性腫瘍に伴う症状は、悪性腫瘍を治療しないかぎり治らないため、軽い症状だとしてもなかなか治らない症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。

出血しやすい

 

悪性腫瘍が発生した場合は、いろいろな症状とともに出血しやすくなります。いくつか例を挙げて説明させていただきます。咽頭・気管・肺などの呼吸器関連の臓器に悪性腫瘍ができ、症状が進行すると血が混じった痰がでることがあります。

悪性腫瘍から出た新鮮な赤色の出血が痰に交じってでてくる場合や、肺の中にたまった血が時間をおいてから黒色血痰となって出てくる場合もあります。

食道・胃・十二指腸など上部消化管に悪性腫瘍ができた場合も同様に、悪性腫瘍から出血吐血などとして出血しやすくなります。上部消化管の出血は、腫瘍から出血したものが胃にたまり、血液中の鉄分が胃酸により酸化されるため嘔吐・吐血した場合赤黒い色となります。出血量が多いときは黒色便として排泄されることもあります。

血液がんなどでは、血小板減少によって出血しやすくなることもあります。血小板は血液中の止血作用を有する細胞の一種です。

血液がんなどで血液中の血小板数が減少すると、容易に出血が起こりやすく血が止まりにくくなります。その主な症状としては、どこにぶつけたかも覚えていなけど青あざができる、指先に点状出血がみられる、鼻血や歯肉出血がでやすくなるなどです。

出血しやすい症状は、通常の疾患では起こり得ず、詳しく精査が必要です。気になることがあれば早めに医療機関を受診しましょう。

 

CT検査やMRI検査で早期発見につなげる

 

悪性腫瘍の早期発見には、CTやMRIのような検査はとても有用です。どちらの検査がより有用ということはなく、それぞれの検査の得意不得意があるため、どちらも適応が正しければとても有用な検査です。

 

CTとは「Computed Tomography(コンピューテッド・トモグラフィ/コンピュータ断層撮影)」の略で、X線を用いて人体の内部の正確な輪切り画像を作り出す機器です。体の周り360度方向から円周状にX線を照射し、集めた情報をコンピュータが映像化します。

 

近年は技術の進歩により被ばく量は少ないが解像度もとても高くなったため、小さい負担で小さい腫瘍も見つけることが可能になっています。レントゲンと並ぶ一般的な画像診断方法として、多くのクリニック・病院に普及しています。

CTの得意分野は、臓器の形態が崩れたときなどです。具体的には、胸部レントゲンでは判別できない早期肺癌の検出が可能であったり、肝臓や腎臓、膵臓などの実質臓器の腫瘍を見つけることが可能です。

しかし胃、大腸という管腔臓器の早期がんの発見は苦手で、これらの臓器の早期がんには内視鏡検査が適しています。
MRIは「Magnetic Resonance Imaging(マグネティック・レゾナンス・イメージング/磁気共鳴画像診断)」の略で、磁力を使って得た体からの信号をとらえて映像化します。

CTの方が解像度は高いですが、CTでは見つけられない変化を描出できることも多く、被ばくの心配がないなどのメリットもあります。腹部や骨盤内の腫瘍のがんの検出度は高く、また脳梗塞や脳腫瘍といった脳疾患に対してはMRIの方が適しています。

悪性腫瘍が心配な人はCT検査をおすすめ

 

悪性腫瘍が心配な人がどのような対応ができるのかというと、予防と早期発見です。普段の食事・運動・ストレスなどの生活習慣を見直すことで予防をし、健診などを受けて早期発見をすることがとても大切です。

特に、自覚症状がない人は、がん検診などをする意欲がわかないかもしれません。ただ日本人の2人1人ががんになると言われている時代です。
少しでも違和感や心配事があれば早めに医療機関を受診し、CT検査などの必要性を主治医と相談してください。

西春内科在宅クリニックができる対応

 

西春内科在宅クリニックにはCT機器を導入しており、常勤医にはレントゲンやCT画像の読影の専門家である放射線科専門医がおります。

頭部CT検査により悪性腫瘍を含む治療が必要な病変が見つかった場合には、脳神経外科の診療が可能な病院をご紹介させていただきます。

 


まとめ

 

悪性腫瘍に対して大切なのは、予防することと、早期発見・早期治療につなげることです。

普段から自分の体の状態を知っておくことが大切で、その時には身近なかかりつけ医は力強いパートナーになってくれます。少しでも心配事があれば早めに医療機関を受診し相談しましょう。
 

 

参考文献:

・国立がん研究センター 

https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/bone_sarcomas/index.html

 

・愛知県がんセンター

https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/12knowledge/iroirona_gan/18akuseirinpa.html

 

・愛知県がんセンター

https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/12knowledge/iroirona_gan/20hakketsu.html

 

監修医師:

外科専門医 Dr.梅村 将成

 

この記事の監修医師

監修医師: 外科専門医 梅村 将成

資格

外科専門医/腹部救急認定医

監修医師: 福井 康大