狭心症の原因や症状、治療について|心筋梗塞との違いは何?前兆がある?

公開日:2022.5.26 更新日:2024.4.18

「最近すぐに息があがって胸が苦しくなる」

「急に胸が痛くなることがある」


このような症状に心当たりはありませんか?


それ、もしかして狭心症かもしれません。


放っていると、心筋梗塞で命を落としてしまったり心不全に陥ってしまう危険があることをご存じですか?


今回はそんな怖い心臓の病気、狭心症について解説していきます。


心筋梗塞との違いなどについても触れていきますので、是非最後までご覧ください。



 狭心症とは

 

狭心症とは、心臓自体に血液を届ける血管である冠動脈が狭くなることで、心臓の筋肉が血流不足に陥る病気のことです。

 

そもそも心臓というのは、全身の臓器に血液を送り届けるためのポンプの役割を果たしている臓器です。

 

心臓がドックン、ドックン、と規則正しく動くことにより全身に血流が行きわたり、そして筋肉を動かしたり食べ物を消化吸収出来たりするのです。


ただその心臓自体にも血液が行きわたらないと心臓が動くことができなくなってしまいます。

 

そのための血管が冠動脈という血管で心臓をぐるっと取り囲むように表面を走っています。


この冠動脈がさまざまな原因で狭くなったり、最終的には詰まったりすることがあります。

 

このようにして冠動脈の血流が不足することで一時的に痛みを生じるのが狭心症という病気です。

 

動脈硬化が原因

 

では、このような狭心症はなぜ起こってしまうのでしょうか。

 

繰り返しになりますが、狭心症は冠動脈という血管が狭くなることが問題です。

いわゆる
「パイプのトラブル」です。

 

血管というだけあって、中には絶えず血液が流れています。

体の隅々まで張り巡らされた血管は、さながら水道の配管と同じようなものなのです。

 

そして水道管と同じように、経年変化で硬くなってヒビが入ったり、どろどろしたものが流れたことで内部にぬめりなどが生じます。

このように
血管が硬く脆くなることを動脈硬化といいます。

 

動脈硬化の初期には血管の内側の膜が分厚くなったり脂肪分などが沈着したりすることでプラーク(粥腫とも言います)と呼ばれるものが発生します。

プラークが成長して血管の中を狭めてしまうのです。

 

 動脈硬化は全身のあらゆる血管に起こりますが、冠動脈が硬化することで狭心症や心筋梗塞の原因になります。

 

心筋梗塞に関しては、日本人の危険因子は、高血圧、糖尿病、喫煙、家族歴、脂質異常症(高コレステロール血症)と報告されており 、狭心症も共通すると考えられます。

 

このような「パイプのトラブル」の原因となる要素をさらっとご紹介していきます。

 

高血圧や脂質異常症 


血圧が高いと、
血管に負担がかかることはご想像いただけると思います。

 

医学的には血管内皮細胞が障害されやすく、動脈硬化の原因になります。

 

また血液中の脂肪分が増えることでプラークの生成が促進され、これも粥状硬化症という動脈硬化の一つのパターンになります。

 

高血圧、脂質異常症に関してはこちらの記事に詳しくまとめていますので、ご参照ください。

 

糖尿病


糖尿病においても、
末梢の細い血管において血管内皮細胞が障害されやすいことが知られています。

 

また血液の粘性が高くなり、より閉塞しやすい状態になるとも考えられます。

 

糖尿病についてはこちら記事に詳しくまとめていますので、ご参照ください。

 

高尿酸血症 


高尿酸血症が
動脈硬化性疾患の危険因子であるかどうかは長年議論されており、現在のところは十分な結論は得られていない状況です。

 

ただ最近の報告では、高血圧や冠動脈疾患の危険因子である可能性が高まっています。

 

高尿酸血症についてはこちらの記事に詳しくまとめていますので、ご参照ください。

 

その他(喫煙や腎臓病、ストレス、肥満、遺伝など)


目に見えるもので注意していただきやすいのが、
肥満です。

 

体重が増えると、血圧が高くなりやすくなり動脈硬化のリスクが増えます。


また、肥満の原因には
食生活の乱れや運動不足が背景にあると想像されます。

塩分、糖分、脂肪分の多い食事をしていると、高血圧や糖尿病、脂質異常症の原因になります。

 

また生活習慣病と並んで、心筋梗塞のリスクが高くなるのが喫煙です。


特に現在吸っていることが危険で、
やめるのが早ければ早いほど良いです。

欧米諸国では禁煙により心筋梗塞などが激減していると報告されています。

 

そして意外に侮れないのが、ストレスです。

慢性的なストレスにより緊張状態が続いたりすることで自律神経がバランスをとりにくくなることがあります。

血圧の上下が激しくなったりすることが考えられます。

 

あと一点、狭心症自体が遺伝するわけではないですが、家族歴は非常に重要な要素の一つです。


特に若くして発症した心筋梗塞などは生活習慣病だけでなく、血管それ自体になんらかの遺伝的異常が隠れている可能性があります。

 

Marfan症候群では血管が裂けやすいため大動脈解離などの血管の病気を発症しやすくなります。

 

また、家族性高コレステロール血症という病気もあり、調べてみると実は遺伝的要素が隠れていたということがありえるのです。

 

狭心症の種類と症状

 

狭心症の種類

 

少し専門的な話になりますが、古典的には狭心症を3つのパターンに分けます。

 

労作性狭心症、不安定狭心症、異形狭心症(冠攣縮性狭心症)の3つです。

 

労作性狭心症は不安定狭心症との対比で安定狭心症と呼ばれることもあります。

病変の安定具合や治療の内容などの点で違いがあります。1つずつ詳しく見ていきましょう。


労作性狭心症

 

労作性狭心症とは、最も古典的な狭心症です。

プラークなどにより冠動脈が徐々に徐々に狭くなっていき、労作時に相対的に血流が足りなくなるため一時的に痛みが生じる病気です。

 

走ったり、重いものを持ち上げたりする際には全身の組織と同じように心臓も酸素をたくさん欲しがります。

安静にしているだけなら多少血流が遅くても問題ないですが、狭くなった血管ではフルパワーの血流が得られないため症状が生じるのです。

 

プラークの形成は1日2日の問題ではなく、何か月、何年といったスパンで進みますので病状としては安定している状態です。

 

不安定狭心症

 

労作性狭心症が徐々に徐々に進行していくのに対して、急激に進行していくものを不安定狭心症といいます。

 

徐々にできていたプラークにあるとき亀裂が入ったりすることで、その断面に血液が塊(血栓)を生じます。

この血栓の形成はプラーク形成とは
違い数分や数時間などのスピードで進みます

 

鼻血が出ても抑えていれば数分で止まりますよね。

そのような速度で血栓が形成される、すなわち進行するため非常に不安定な状態です。

 

狭心症といっても不安定狭心症は(ST上昇型)心筋梗塞と並んで急性冠症候群という概念に含まれます。


心筋梗塞についての記事を別に作成しておりますので、不安定狭心症についてもっと知りたいという方は
こちらの記事をご参照ください。

 

異形狭心症(冠攣縮性狭心症)

 

これは上2つと違って、冠動脈の攣縮が原因です。

攣縮と書くとわかりにくいですが、ズバリ
「血管が攣(ツ)っている」状態です。

 

夏場にスポーツをしていると足がツったりした経験をお持ちの方も多いと思います。

足がツると痛くてうまく動けないですよね。

あれと同じで血管がツってうまく血液が流れることができず、痛みも生じるというわけです。

 

そして夜中に寝ているときに急に足がツった経験もないでしょうか。

そうなんです、血管がツる病気なので、夜中から早朝にかけての安静時にも起こることが多いんです。

 

 明け方に急に胸が痛くなって数分でよくなったとなれば冠攣縮性狭心症の可能性が非常に高いです。 

 

どんな症状がある?

 

「せんせー、そんな教科書みたいなのはいいからさ!どんな症状がやばいのか教えてよ!」という方もいらっしゃると思います。

 

こまごまとした分類なんかはさておき、どのような症状がでると狭心症の可能性があるのでしょうか。

動脈カテーテル検査や冠動脈CT検査など、いろいろな検査が開発されてきた現代でも、病歴というのは最も重要な情報の一つです。

 

診断を左右する、症状について掘り下げていきます。

 

息切れや胸の痛み、締め付けられるような圧迫感

 

典型的な狭心症の症状は、なんと250年も前から言及されています。


運動などの負荷がかかった際に
胸の真ん中あたりの絞扼感・痛みです。

肩や腕などに放散して、
冷や汗なども伴います。

そして安静にしていると数分から十数分程度で軽快するのが典型的な
狭心症状です。


胸痛や圧迫感は、ある程度の広さであることが多く、
指1本でココといえる痛みは狭心症ではない可能性が高いです。

 

心筋梗塞との違いは? 

 

「うーん、狭心症が怖い病気だってことはわかったけど、よく耳にする心筋梗塞とも違うの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

狭心症と心筋梗塞という分け方は少し古い言い方であり説明が難しいのです。

 

語弊を恐れずにざっくりと言うならば、血管が狭くなってきていて運動したときなどに一時的にギューッと痛むものが狭心症、完全に詰まったり急激に細くなったりすることで長時間痛みが生じたり心臓の筋肉が壊死したりするものが心筋梗塞と思っていただいてよいと思います。

 

狭心症は心臓の筋肉に障害がない、あっても少ない

 

狭心症は一時的な虚血により痛みが生じるものであり、基本的には心臓の筋肉には障害はないと言ってもよいでしょう。

 

対して心筋梗塞は虚血時間が長いためどんどん心筋細胞が壊死していきます。

結果、心臓の働きが悪くなることが多いです。

 

もちろん狭心症の発作を繰り返していたり、慢性的な血流不足によって徐々に心臓の筋肉がへばってくることはありますので油断は禁物です。

 

狭心症は胸の痛みが一時的なもの

 

痛みは主観的な指標であり断言はできませんが、狭心症に比べて心筋梗塞の方が痛みが強く、長い傾向にあります。

 

また、顎、肩、背中などにも痛みが広がることがあります。

中にはモルヒネを必要とするような激しい痛みを生じることもあります。

 

先述の通り、狭心症であれば胸痛は長くは続きません。

数分程度が多く、長くても
15~20分程度です。

胸痛が20分以上続く場合には心筋梗塞の可能性が高いです。

 

狭心症を放置すれば、心筋梗塞につながる

 

先ほども少し触れましたが、狭心症・心筋梗塞は「パイプのトラブル」です。

 

多くは時間をかけて徐々に硬く、狭くなっていきます。

この時点で心
臓が血流不足のサインを出してくれれば狭心症と診断することができるのですが、

 

不運にもSOSが出ず、最終的に急激に進行したり詰まったりしたときに心筋梗塞になってしまいます。

 

心筋梗塞になると命を落とす危険性も

 

心筋梗塞が怖いのは、死亡率が高いということです。

 

厚生労働省の2020年の集計では、がんに次いで2番目に多い死因(15%)と報告されています。

 

 そして我が国における様々な研究で、典型的な心筋梗塞の患者のうち7~10%が入院中に亡くなってしまうと報告されています。 

 

さらに初回の治療を乗り切って退院した後も油断できないのが心筋梗塞の怖いところです。

 

血流が不足して壊死してしまった心臓の筋肉は多少は回復するものの、元通りにはなりません。

全身に血流を送るポンプの機能が弱くなってしまい、
さまざまな合併症を引き起こしてしまう恐れがあります。

 

典型的な心筋梗塞を患った患者において、退院後6か月以内の死亡率は4.8%  、退院後2年での死亡率は6.3% と報告されており、20人に1人以上が亡くなってしまう恐ろしい病気なのです。

 

心筋梗塞についてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ合わせてご参照ください。   

 

どんな検査・治療をするのか 

さて、そのような怖い狭心症はどうやって見つけることができるのでしょうか。

 

近年は検査機器の発達によってますます負担の少ない検査で精度の高い検査が受けられるようになってきています。

 

また、治療方法も年々進化を重ねており、昔は開胸手術しかありませんでしたが、カテーテル治療などの発展はめざましいです。

 

ここからは狭心症の診断や治療について解説していきます。

 

主な検査方法

 

主な検査方法として

  • 12誘導心電図
  • 運動負荷心電図
  • ホルター心電図
  • 心エコー
  • 薬物負荷心エコー
  • 心筋シンチグラフィ(SPECT)
  • 冠動脈CT
  • カテーテル検査(CAG:冠動脈造影) 

 

などが挙げられます。特にカテーテル検査がゴールデン・スタンダードです。

 

冠動脈に直接造影剤を注入し、レントゲンで透かして見ることで狭くなっている部分が一目瞭然です。

ただ、穿刺部位の痛みがあったり、造影剤の負担、被爆、などの問題から気軽に日帰りで行うのは難しい検査です。

多くの施設では1泊2日などのパスを使用しています。


そんな検査の負担をなるべく減らしながら診断を補助するために様々な検査を組み合わせます。

心電図は全く体に負担をかけずに数分でできる検査にも関わらず、得られる情報が非常に多い良い検査です。

 

また最近の報告では、血管の半分以上狭くなっている病変では冠動脈CTもカテーテル検査に匹敵すると言われています。

 

主な治療法

 

治療法も日進月歩で進化しています。

狭心症は「パイプのトラブル」ですから、これ以上
ぬめり詰まりなどを起こさないようにコントロールしていくことが大事になります。

 

またパイプを広げてやれば血流は良くなり症状も改善します。

柱は、
生活習慣改善、薬物療法、カテーテル治療、手術です。

 

具体的には、

  • 禁煙
  • 体重管理
  • 運動療法
  • 血圧、コレステロール、糖尿などの生活習慣病への投薬
  • 硝酸薬
  • β遮断薬
  • Ca拮抗薬
  • ニコランジル
  • カテーテル治療(PCI:経皮的冠動脈インターベンション)
  • 冠動脈バイパス術


などが挙げられます。

 

こまごまと列挙してしまい分かりにくいかもしれませんが、何よりも生活習慣改善と、生活習慣病の是正です。

 

カテーテル治療は1泊2日や2泊3日などでできる点が、開胸手術よりも良い点です。

 

ただ複数箇所の狭心症や、不安定な状態、その他の弁膜症などの合併もある場合には開胸手術が依然として素晴らしい成績を収めています。

 

胸の圧迫感などがあれば早めの診断を

 

色々な検査、治療をずらーっと書いてしまったので、頭がパンクしそうな方もいらっしゃるかもしれません。

 

一番大事なのは、個人個人の状態、状況に合わせてベストな検査・治療を選択できることだと思います。

 

施設の設備によって行える検査にも違いがありますし、病気の状態によって手術が必要かどうかも変わってきます。

その時々でできることをしっかりと行い、心臓発作を起こさないのが良いと思います。

 

早期発見・早期治療が大事ですので、気になることがあれば一度ご相談に来られてはいかがでしょうか。

早めの受診をおすすめします。

 

西春内科在宅クリニックができる対応

上で少し触れましたが、当院では様々な生活習慣病の早期発見・早期治療に努めています。

 

健康診断も実施しており、血圧やコレステロール、血糖値などを検査することができます。

 

また、心電図検査や胸部レントゲン検査も行っております。CTや超音波検査の設備もあり、様々な角度から検査を行うことができます。

 

まとめ

今回は恐ろしい心臓の病気、狭心症についてまとめてみました。

 

不安定狭心症であったり心筋梗塞に至ってしまうと、がんや脳卒中などと並んで死亡率の高い非常に怖い病気です。

 

予防と早期発見がとても大事ですので、この機会に生活習慣病の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

 

血圧、コレステロール、糖尿などに関して不安をお持ちの方は一度健康診断を受けてみるのがよいかもしれません。

 

それ以外にも「息が上がりやすい」とか「胸が痛くなることがある」といった症状をお持ちの方は一度受診してみることをお勧めします。

 

この記事が皆様のお役に立てれば嬉しく思います。最後までご覧くださりありがとうございました。

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この記事の監修医師

監修医師: 福井 康大