腸ろうとは?チューブが詰まったときの対処やメリット・デメリット

公開日:2023.5.17 更新日:2024.10.16



腸ろうとは、お腹に開ける小さなお口です。

口から水分や栄養が取れなくなったときに、口以外から水分や栄養を補給する方法のひとつです。

栄養剤の行き先が小腸になるので『腸ろう』と呼ばれます。

身体機能の低下や重度の認知機能の低下に伴って、

  • 口から食事をとることが難しくなった方
  • 病気の関係で一時的に十分な水分や栄養が不足する方


が対象となります。

今回は、腸ろうのメリットや胃ろうとの違い、チューブが詰まったときの対処法などについて解説していきます。

 

 

腸ろうのメリット・デメリット




メリット
  • 胃ろうと比べて逆流することが少ない
  • 経口摂取や胃ろうと比べて誤嚥(*1)による肺炎のリスクが減る
  • 必要な栄養を確保しやすい
  • 腸ろうの穴は衣服で隠しやすいため、生活がしやすく不快感が少ない
デメリット
  • 胃ろうと比べて、注入時間が長くなる(栄養剤を貯める胃がないため)
  • 腸ろう周囲の皮膚トラブルが起こりやすい
  • 腸ろうの交換には、病院の受診が必要
  • カテーテルが細長いため、詰まりやすい
  • 腸に直接栄養剤を入れるため、下痢が起こりやすい
  • また、血糖値の急激な変化を起こすことがある
  • 胃ろうよりもさらに受け入れてくれる施設(*2)が少ない

誤嚥(ごえん)(*1)=食物などが、なんらかの理由で、誤って喉頭と気管に入ってしまう状態

施設(*2)=デイサービス、ショートステイ、ナーシングホームなど

 

 

腸ろうと胃ろうの違い




胃ろうは胃を使いますので、栄養剤を一時的に貯めることができます

半固形の栄養剤を短時間(15分)で注入することが可能です。

胃は胃酸を分泌しますので、胃ろうはご家族と同じものをミキサーにかけた食事も可能です。

胃の方が腸よりも、口に近いところにあります。

そのため、栄養剤の逆流は胃ろうの方が起きやすいです

注入の速度は、胃ろうに比べ腸ろうの方がゆっくり入れる必要があります

カテーテルの交換は、胃ろうの場合は自宅もしくは施設(デイサービス、ショートステイ、ナーシングホームなど)で可能です。

腸ろうは通院となります。

腸ろうは腸に栄養剤を直接入れますので、下痢が起こりやすく、血糖値の急激な変動が起こることがあります

腸ろうと胃ろうの違い早見表


 腸ろう胃ろう
栄養剤の逆流少ない起きやすい
食事の注入できないできる
カテーテルの交換通院が必要自宅もしくは施設で可能
下痢や血糖値の変動起きやすい少ない

 

 

腸ろうでの食事について(栄養剤の種類、選び方)




腸ろうの栄養剤の種類には医薬品食品があります。

医薬品は医療保険が適応され、医師の処方が必要です

食品は、医療保険の適応になりません

そのため、処方箋が必要ありませんのでドラッグストアや通販で購入できます。

選び方としては、栄養剤だけで1日の必要栄養量をまかなえる、汎用性(*1)の高い栄養剤を選びましょう。

病状が急性期の場合、タンパク質が必要と考えます。

タンパク含有量の多い汎用栄養剤を使いましょう

腸の状態が悪く、吸収不良や下痢が心配なら、半消化態ではないものがいいでしょう。

病状が安定し、栄養剤の注入時間を短くしたい場合、高濃度の栄養剤を選びます。

注入時間を短くできますし、水分量の制限にもなります

また、逆流が気になったり、もっと注入時間を短くしたい場合、半固形栄養剤を選ぶといいでしょう。

半固形栄養剤は粘りがあるため、逆流が起こりにくいことや、短時間で注入しても下痢になりにくいことが取り柄です

汎用性(*1)=ある物事について、幅広く適用したり、一般的に活用したりすることができる性質

 

 

腸ろうのチューブが詰まったときの対処法や交換時期




チューブが詰まった場合は、病院を受診する必要があります

バルーン型は、バルーンが破裂することがあるため、概ね1~2ヶ月に1回の交換となります。

バンパー型は、カテーテルが抜けにくいため、概ね4~6ヶ月に1回の交換になりますが、主治医の先生の判断になりますので、よくご相談ください

一番緊急性が高いのは、チューブの自己抜去です。

不快感から無意識に抜いてしまうこともあります。

抜いてしまうと数時間で穴が塞がります

抜けていることを確認した場合、早急に病院を受診してください

チューブが詰まってしまった場合、付属の針金(ガイドワイヤー)や注射器で水を流し込むことで再開通が可能です。

しかし、再開通が出来ない場合は、チューブの交換が必要となります。

 

関連記事:膀胱ろうとは?在宅でのカテーテル交換時の注意点を解説

 

 

在宅介護における腸ろうの注意点




チューブの自己抜去


前述したように、不快感から無意識にチューブを抜いてしまうことがあります。

チューブが抜けていることが確認できた時点で、早急に病院で再挿入する必要があります

チューブを固定した際にマジック等で目印を付けることで、チューブの動きを目視できます。

また、チューブを動きにくくするため、弾性テープで皮膚に固定する方法も有効です。

頻発するしゃっくり


栄養剤を注入した際に、栄養剤の温度や注入速度が刺激となったり、

消化器官が活発に動くことでしゃっくりが出ることが稀にあります

しゃっくりが出ることで胃腸の内容物が逆流し、誤嚥につながり肺炎の原因となります

しゃっくりが出たら、すぐに栄養剤の注入をやめ、医師や看護師に対応を仰ぎましょう

チューブの閉塞


腸ろうの際に使用されるチューブの多くは、カテーテルが使用され細くなっています。

そのため、栄養剤を注入し続けると栄養剤のカス等が溜まり、チューブが閉塞することがあります

チューブが閉塞した場合、付属の針金(ガイドワイヤー)や注射器で水を流し込むことで再開通が可能です。

しかし、再開通が出来ない場合は、チューブの交換が必要となります。

下痢、腹痛、嘔吐の場合


栄養剤の注入速度や温度、濃度、水分量で下痢や腹痛を起こすことがあります

また、栄養剤を注入する際の姿勢等が原因で嘔吐の症状が見られることがあります。

皮膚トラブル


腸ろうでは、チューブから垂れた栄養剤の影響で、

皮膚の感染症が起こる、

固定テープでかぶれる

といった皮膚トラブルも多いです。

皮膚トラブルを防ぐためにも、石鹸などで丁寧に洗い、清潔に保ちましょう

 

関連記事:自己導尿の目的とは?カテーテルとの違いや男女別の手順を解説

 

 

腸ろうをやめることはできるのか




十分な水分量および栄養を、口から取れる状況となれば腸ろうは必要ありません

口の中のものを飲み込み、胃に送ることが難しくなった場合や、

認知機能に問題があって腸ろうとなった方は、少し難しいかもしれません

 

関連記事:腎ろうとは?どんな人が対象になるのか?在宅における注意点を解説

 

 

西春内科在宅クリニックが出来る対応


西春内科在宅クリニックでは、在宅診療患者様の腸ろうによる栄養剤の注入に対応しております。

腸ろうの造設・交換には対応しておりませんが、腸ろうの造設・交換の可能な医療機関をご紹介します

まずは、お気軽にご相談ください。

 

 

まとめ


今回は、腸ろうのメリットや胃ろうとの違い、チューブが詰まったときの対処法などについて解説しました。

口から食事を摂ることが出来ない方・リスクが高い方にとって、腸ろうは非常に有用な栄養摂取方法です。

ただし、良い側面もあれば、悪い側面もあります。

意識が無い状態の方の場合、腸ろうにより栄養は投与されるため、身体としては何とか生命活動が可能です。

しかし、その状態が続くことになります

その形が患者様ご本人・ご家族様が望むものであるかどうかをよくご検討頂いた上で、腸ろう造設を行って頂ければと思います


【参考文献】

NPO法人PDN(Patient Doctors Network) HP

フランスベッド HP

健達ねっと HP

この記事の監修医師

監修医師: 救急科医 山口 裕二

監修医師: 福井 康大