高齢者がなりやすい肺炎の症状|急変したときの対応や治療について
肺炎とは、呼吸器系の疾患の1つです。
一般的には肺組織の感染や炎症を指します。
私たちが日常的に行っている呼吸活動は、酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するという重要な働きを担っています。
肺炎はこの呼吸機能を妨げる病気です。
肺炎の主な原因は細菌やウイルス、真菌などの病原体です。
これらの病原体が呼吸器に感染し、炎症が起こることで肺組織が傷つきます。
その結果、肺の気腫(気を溜める袋)や肺胞(酸素と二酸化炭素の交換を行う小さな袋)などが炎症によって充血し、液体や痰がたまることがあります。
高齢者は免疫機能の低下や基礎疾患の存在などから、肺炎にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります。
また、高齢者の場合、症状がほかの病気と重なることもあり、早期の診断や適切な治療が重要となります。
今回は、肺炎になる原因や、症状、風邪との違いについて解説していきます。
健康を守るために、肺炎に関する正しい知識を身につけましょう。
目次
肺炎になる原因とは
肺炎になる原因はさまざまです。
肺炎を引き起こす主な原因を順に解説していきます。
細菌感染
細菌による感染が最も一般的です。
肺に侵入した細菌が炎症を引き起こし、肺組織にダメージを与えます。
肺炎球菌やインフルエンザ菌、クレブシエラなどが主な細菌感染の原因として挙げられます。
ウイルス感染
ウイルスによる感染も肺炎の原因となります。
特にインフルエンザウイルスやRSウイルスなどが一般的です。
ウイルスは肺組織に感染し、炎症や細胞の破壊を引き起こすことがあります。
真菌感染
真菌による感染は比較的まれですが、免疫機能の低下した高齢者や免疫抑制を受けている患者にとっては重要な要素です。
カンジダやアスペルギルスなどが主な真菌感染の原因として挙げられます。
院内感染
病院や介護施設などの医療機関内での感染も肺炎の原因となります。
院内感染は、免疫力の低下した高齢者や重篤な基礎疾患を持つ患者にとって特に危険です。
気管挿管や人工呼吸器の使用など、医療行為によってリスクが高まります。
誤嚥性肺炎
食道からの逆流やのみこんだ食べ物や飲み物が気管に入ること(誤嚥)によって、口腔内や胃から細菌が気道に入り、肺炎を引き起こすことがあります。
高齢者やのみ込み(嚥下)機能が低下している人、意識障害のある患者にとってリスクが高まります。
これらが、必ずしもすべての肺炎がこれらの要因によって引き起こされるわけではありません。
他にも、喫煙や慢性呼吸器疾患、免疫力の低下、高齢などの要素が肺炎のリスクを高める可能性があります。
高齢者は、免疫機能の低下や基礎疾患の存在などから感染症に対する免疫力が低下しています。
また、高齢者は呼吸器系の筋力や気道の構造の変化が起こることがあり、咳や痰の排出が困難になる傾向があります。
これによって肺炎の発症リスクが増加します。
また、喫煙は肺の防御機能を低下させるため、肺炎にかかりやすくなる要因とされています。
喫煙者は喫煙によって気道が刺激され、粘液や痰の産生が増えるため、細菌やウイルスが付着しやすくなります。
さらに、慢性呼吸器疾患(COPDや喘息など)を持つ患者も肺炎のリスクが高まります。
慢性呼吸器疾患は肺の機能が低下し、気道の炎症が続くことで感染が容易に起こりやすくなるためです。
最後に、免疫力の低下や基礎疾患以外の要素として、高齢に伴う身体の衰えや抵抗力の低下も肺炎の発症に関与します。
高齢者は一般的に身体機能の低下や慢性疾患の合併症が多く、これらが肺炎を引き起こす要因となります。
肺炎の予防と早期発見は重要です。
関連記事:高齢者の便秘は危険?主な原因や解消方法、病院での治療を解説
肺炎の症状について
肺炎による一般的な症状は以下のようなものがあります。
発熱
肺炎によって体温が上昇し、発熱が現れることがあります。
一般的には38度以上の発熱が見られます。
咳と痰
咳が主な症状であり、最初は乾いた咳から始まり、次第に痰(たん)が絡んだ咳に変化することがあります。
痰は黄色や緑色を帯びることがあります。
呼吸困難
肺炎によって肺の炎症が起こると、呼吸困難が現れることがあります。
呼吸が浅くなったり、息苦しさを感じることがあります。
胸痛
肺炎による胸痛は、病原体や炎症によって引き起こされることがあります。
痛みは一側に限定されることが多く、深呼吸や咳をすると増悪することがあります。
全身症状
肺炎は全身に影響を及ぼすことがあります。
倦怠感、食欲不振、体重減少、筋肉の痛みや関節の痛みなどの全身症状が現れることがあります。
高齢者は症状がぼんやりしていたり、一般的な症状が現れなかったりする場合があります。
また、発熱がない場合でも肺炎を発症することがありますので、異常な体調の変化には注意が必要です。
肺炎の症状が現れた場合は、早期に医師の診察を受けることが重要です。
医師は症状や身体検査、必要に応じて画像検査や血液検査などを行い、肺炎の診断を確定します。
高齢者が肺炎になりやすい理由
以下の項目に当てはまるものがある場合は、早急に医療機関を受診することが必要です。
【高齢者の肺炎の疑いがあるチェックリストの一部】
気力や活動量の変化
- いつもより元気がない
- 活動量が減少している
- 体力や体調がいつもと比べて低下している
- 食欲や摂食の変化
- 食欲が減退している
- 食事量が減っている
- 嚥下(飲み込むこと)に困難がある
言葉やコミュニケーションの変化
- 口数が少なくなった
- 話す速度が遅くなった
- 混乱や理解力の低下が見られる
呼吸に関する症状
- 呼吸が浅くなっている
- 息苦しさや苦しみを感じる
- 呼吸時に咳やゼーゼー音がする
上記の特徴が見られた場合、肺炎の可能性があることを指し示します。
正確な診断は医療専門家による評価が必要です。
早期に医療機関を受診し、医師の診断を受けることが重要です。
また、高齢者の肺炎の症状は個人によって異なる場合があります。
症状が気になる場合は医療専門家に相談することをおすすめします。
関連記事:高齢者に多い誤嚥性肺炎は治るのか|急変したときの対応法について
肺炎と風邪の違い
高齢者の場合、肺炎と風邪の症状は類似していることがあります。
しかし、実際には異なる点があります。
肺炎と風邪の違いについて以下で解説していきます。
高齢者の肺炎と風邪の違い
症状の重症度 | |
肺炎 | 高齢者の場合、肺炎は重篤な病状を引き起こす可能性があります。 発熱、呼吸困難、混乱などの症状が強く出現することがあります。 |
風邪 | 一般的な風邪の症状は比較的軽度であり、発熱や鼻水、咳などが主な症状として現れます。 |
症状の発症速度 | |
肺炎 | 肺炎の症状は急速に進行することがあります。特に高齢者の場合、数日のうちに重篤な状態に進展することがあります。 |
風邪 | 風邪の症状は徐々に現れ、通常数日から1週間で回復する傾向があります。 |
呼吸に関する症状 | |
肺炎 | 肺炎では呼吸困難や息苦しさがより強く現れます。 深呼吸が困難であったり、呼吸時に咳やゼーゼー音が聞こえることがあります。 |
風邪 | 風邪の場合、呼吸困難や息苦しさは軽度で、通常は鼻づまりや鼻水が主な呼吸器系の症状として現れます。 |
全身的な症状 | |
肺炎 | 肺炎では全身的な症状が現れることがあります。 倦怠感、食欲不振、体力の低下、意識の混乱などが見られることがあります。 |
風邪 | 風邪の場合、全身的な症状は比較的軽度で、倦怠感や食欲不振などが一時的に現れることがあります。 |
肺炎と風邪は、症状や進行の速さなどの違いがありますが、両方とも呼吸器系の感染症です。
高齢者の場合、免疫機能の低下や基礎疾患の存在などから、肺炎に罹患しやすくなります。
肺炎と風邪を区別するためには、症状だけでなく医療専門家の診断が必要です。
高齢者の場合、肺炎の早期発見と治療は非常に重要です。
症状が気になる場合は、適切な医療機関への受診をおすすめします。
肺炎を放置する危険性
肺炎を放置すると重篤な合併症や命に関わるリスクが存在します。
肺炎を放置する危険性について以下で詳しく解説していきます。
感染の悪化
肺炎は通常、細菌やウイルスによる感染が原因で起こります。
放置すると感染が進行し、肺の状態が悪化する可能性があります。
感染が進むと、肺胞や肺組織に炎症が広がり、呼吸機能の低下や酸素不足が生じることがあります。
合併症のリスク
肺炎を放置すると、さまざまな合併症が生じる可能性があります。
例えば、以下などが起こる可能性があります。
- 肺膿瘍:肺組織内の膿のたまり
- 気胸:肺が気体で満たされる状態
- 敗血症:全身的な感染症
これらの合併症は重篤で命に関わる場合もあります。
呼吸不全や循環不全
肺炎が放置されると、呼吸機能や酸素供給が低下し、重度の呼吸不全が起こる可能性があります。
また、肺炎が体内の血液循環に影響を及ぼし、循環不全や心不全の発症リスクが高まることもあります。
高齢者のリスク増加
高齢者は免疫機能の低下や基礎疾患の存在などから、肺炎に罹患しやすくなります。
高齢者の場合、肺炎を放置すると重症化しやすく、回復に時間がかかることがあります。
肺炎は早期に診断され、適切な治療が行われることが重要です。
疑わしい症状がある場合は、医師に相談し、適切な検査や治療を受けることが必要です。
放置すると合併症や重篤な状態に進行する可能性が高めます。
そのため、早めの対応が命を守る上で重要になります。
関連記事:健康寿命を伸ばすためのポイントや気をつけるべき病気や疾患とは
肺炎はうつる可能性があるのか?
肺炎は感染症であるため、一部の肺炎は他の人にうつる可能性があります。
具体的には、細菌やウイルスによる感染が原因の肺炎が他人にうつる可能性があります。
細菌性肺炎は、主に空気中の飛沫や近距離での咳やくしゃみによって感染が広がります。
感染した人が咳をすると、微小な飛沫が放出され、周囲の人がそれを吸い込むことで感染のリスクが生じます。
また、唾液や鼻水、くしゃみの飛沫を介しても感染が広がることがあります。
飛沫が飛んだ物品や手に触れた後、口や鼻を触ることで細菌が体内に入り、感染が起こる可能性があります。
ウイルス性肺炎も、主に飛沫感染や接触感染によって広がります。
感染した人がくしゃみや咳をすると、ウイルスが含まれる飛沫が放出され、周囲の人がそれを吸い込むことで感染が広がります。
接触感染では、感染した人が触れた物品や表面にウイルスが付着している場合、他の人がそれに触れた手や指で、口や鼻に触れることで感染が広がる可能性があります。
肺炎のうつり方や感染リスクは、具体的な原因と病原体によって異なる場合があります。
感染を予防するためには、以下の予防策が重要です。
- 手洗いやアルコールでの手指消毒を頻繁に行う。
- 咳やくしゃみの際には口や鼻をティッシュや袖で覆う。
- 人混みや密集場所を避け、適切な換気を確保する。
- 病気の症状がある場合は、他の人との接触を避ける。
肺炎の感染リスクを最小限に抑えるためには、予防策の実施が重要です。
また、感染した場合は早期の診断と適切な治療を受けることも大切になります。
肺炎に感染した場合、感染源となる細菌やウイルスを排出する期間があります。
そのため、感染者は他の人に感染させるリスクがあるため、十分な注意が必要です。
特に高齢者や免疫力の低下した人、基礎疾患を持つ人は感染に対するリスクが高いため、十分な予防策の実施が求められます。
肺炎を予防するためには、以下のポイントに気をつけましょう。
基本的な感染対策の徹底
手洗いや咳エチケット(咳やくしゃみの際に口や鼻を手で覆う)、適切な換気などの基本的な感染対策を実施しましょう。
予防接種の受ける
特定のウイルスや細菌による肺炎に対する予防接種があります。医師の指示に従って、予防接種を受けることで感染リスクを低減させることができます。
免疫力の向上
バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠などを心がけ、免疫力を高めましょう。また、喫煙や過度の飲酒は免疫力を低下させるため、控えることが重要です。
高リスクグループへの配慮
高齢者や基礎疾患を持つ人々は感染に対するリスクが高いため、自身の健康管理や感染対策に特に配慮しましょう。
また、喫煙や過度の飲酒は免疫力を低下させるため、控えることが重要です。
高齢者や基礎疾患を持つ人々は感染に対するリスクが高いため、自身の健康管理や感染対策に特に注意しましょう。
肺炎の感染リスクについては、具体的な原因や病原体によって異なる場合があります。
医師や専門家の指導に従い、個別の状況に応じた予防策を実施することが重要です。
また、肺炎に感染した場合は速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
早期の診断と治療は合併症や重篤化を防ぐ上で重要な要素となります。
肺炎が急変したときの対応
肺炎の症状が急に悪化した場合、以下の症状に留意しましょう。
- 呼吸困難や息切れの増加
- 激しい胸の痛みや圧迫感
- 意識の混乱や錯乱
- 発熱が高くなるなどの異常な発熱
- 頻繁な咳が続く
- 痰が変色し、血や膿が混じる
- 食欲不振や水分摂取量の減少
- 体の倦怠感や強いだるさ
急変した場合は、迅速な医療対応が必要です。
直ちに緊急医療サービス(救急車や医療機関)に連絡し、状況を伝えましょう。
症状の悪化や呼吸困難の程度によっては、早急に救急医療を受ける必要があります。
医療機関での診断や治療指示には必ず従いましょう。
医師や看護師からの指導に従い、必要な検査や治療を受けることが重要です。
また、家族や介護者に状況を連絡し、サポートを求めることも大切です。
周囲の支援を受けながら、適切な医療ケアを受けることができます。
症状の変化に敏感になり、適切な医療機関の支援を受けながら、早期に治療を開始することが大切です。
肺炎の治療について
肺炎の治療は、感染の原因や病原体や、個々の状況によって治療方針が異なる場合があります。
医師の指示に従い、適切な治療を受けることが重要です。
細菌による肺炎の場合、抗生物質が一般的に使用されます。
適切な抗生物質は、感染症の原因となる細菌に対して効果的であり、症状の改善や感染の制御に役立ちます。
ただし、抗生物質の使用は医師の判断に基づきます。
適切な種類や投与量、治療期間を指示された通りに守りましょう。
熱や咳、胸の痛みなどの症状を軽減するため、解熱剤や咳止め薬などが処方される場合があります。
これらの薬は症状の緩和を図るものであり、根本的な治療ではありません。
しかし、快適な状態で治癒に向かうために役立ちます。
重症の肺炎や呼吸困難のある患者には、酸素療法が必要な場合があります。
酸素供給によって体内の酸素濃度を補充し、呼吸機能の改善や組織の酸素化を促します。
重症の肺炎や合併症がある場合、入院治療が必要となることがあります。
入院治療では、経口または静脈投与による抗生物質の投与や酸素療法、モニタリング、症状管理などが行われます。
また、治療中も感染の広がりを防ぐために、予防策の徹底が重要です。
前述しましたが、手洗いや咳エチケットの実施、適切な感染対策の指導を受け、自身と周囲の家族や介護者の感染リスクを最小限に抑えるための配慮も必要です。
肺炎の治療後は、経過観察とフォローアップも重要になります。
治療の効果や症状の改善を確認し、必要に応じて追加の検査や治療を行います。
また、リハビリテーションや予防接種などの措置も検討される場合があります。
充分な休養や健康管理も必要です。
栄養バランスの良い食事、十分な水分摂取、適度な運動、充足な睡眠などが肺炎の回復と免疫力の向上に役立ちます。
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科・在宅クリニックは、肺炎の患者さんへの適切な対応を行っています。
当クリニックでは、病状が安定している患者さんに対して在宅医療を行っています。
医師がご自宅へ訪問し、診察や治療、薬物療法の管理を行います。
患者様がご自宅で治療を受けながら、ご家族様のサポートのもとで快適な環境で過ごすことができます。
肺炎の患者さんの症状管理に重点を置いています。
痛みや呼吸困難の緩和を図るために、適切な薬物療法や酸素療法を行います。
患者さんや家族への情報提供やサポートも行っているため、不安や疑問などあればお気軽にご相談ください。
西春内科・在宅クリニックは、肺炎患者さんの安心と快適な在宅医療を提供するために努めています。
患者様と家族の様の気持ちを理解し、個別に適した治療方針を提供することで、肺炎の治療を行っていきます。
まとめ
肺炎は、肺組織の感染や炎症を引き起こす疾患であり、重篤な合併症や死亡リスクがあるため、早期の対応が重要です。
高齢者は免疫力の低下や基礎疾患の存在などから肺炎になりやすく、注意が必要です。
症状は発熱や咳、胸痛などで現れます。
特に高齢者では「いつもより元気がない」「いつもより口数が少ない」といった変化にも注意が必要です。
肺炎の治療には抗生物質や酸素療法が一般的であり、適切なケアと経過観察が重要です。
【参考文献】
‣「高齢者の肺炎に関するガイドライン」 日本呼吸器学会
‣「肺炎の診断と治療に関するガイドライン」日本感染症学会
‣「高齢者の肺炎予防と対策に関する報告書」厚生労働省
‣「Atypical Pneumonia in the Elderly: Diagnosis and Management」American Family Physician
‣「Pneumonia in the Elderly: A Review of Diagnostic, Therapeutic, and Preventive Interventions」American Journal of Med関連記事: