圧迫骨折でやってはいけないこと4選!自宅療養のポイントについて解説
圧迫骨折とは尻もちなどのケガで背中の骨(椎体)がつぶれて扁平になってしまう骨折です。
高齢の女性に起こりやすく、骨粗しょう症(こつそしょうしょう)によって骨が弱くなっていることが大きな原因です。
今回は、圧迫骨折が高齢者に多い理由や、放置した際のリスク、治療方法などについて詳しく解説していきます!
ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の治療に役立ててください。
目次
圧迫骨折が高齢者に多い理由
圧迫骨折が高齢者に多い原因として、骨粗しょう症と背中の曲がりが挙げられます。
それぞれについて解説していきます。
骨粗しょう症とは
骨の量(骨量)が減ってしまい骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。
日本では約1000万人以上の患者さんがいるといわれており、高齢化に伴ってその数は増加傾向にあります。
骨が弱くなってしまうと背中の圧迫骨折の他に、手首や上腕骨の付け根、股関節の骨折を起こしやすくなってしまいます。
骨粗しょう症になる原因として、老化と女性ホルモンの減少が挙げられています。
骨は皮膚や髪の毛と同じように新たに作られること(骨形成)と溶かして壊される(骨吸収)新陳代謝を繰り返しています。
骨粗しょう症は、このバランスが崩れることで起こり、閉経によって女性ホルモンが減少することが大きな原因です。
背中の曲がりとの関連
背中の骨は椎体といって、首、胸、腰の部分で頚椎、胸椎、腰椎の3つに大きく分かれています。
背骨は進化の過程において、立った姿勢を保てるようにS字のカーブを描いています。
そのため、カーブの曲がっている部分で負担が大きくなりやすく、胸椎の下の部分と腰椎の部分で圧迫骨折が起こりやすくなります。
また、1箇所で骨折が起きてしまうと、背骨の前方の高さが減ってしまうことで姿勢が悪くなっていきます。
そうすると、重心が前に移動して、てこの原理により背骨の負担が増加してしまい、次々と骨折を起こしてしまう可能性が高くなります。
そのため、初めの骨折を起こさないようにすること、初めの骨折の段階で骨粗しょう症の治療を始めることが大切になってきます。
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圧迫骨折は気づきにくい?放置するリスクについて
通常の圧迫骨折は尻もちをつくなどのケガが原因で起こり、寝返りや起き上がりなどの動作ができないくらいの腰痛があるので気づくことが多いです。
しかし、特に背中が痛くなった経験がないのに、レントゲン検査をして背骨が骨折をしていたということがわかる「いつのまにか骨折」が多いのも圧迫骨折の特徴です。
ほとんどの圧迫骨折は保存治療といって手術をせずに安静や腰のバンド、コルセットなどで治療をしていきます。
しかし、手術が不要だからといって放置することは禁物です。
稀に圧迫骨折で潰れた骨が神経を圧迫して、足の麻痺や排尿・排便の感覚がわからなくなることがあります。
また、圧迫骨折の原因として骨粗しょう症が隠れていることが大半なので、放置することによって、さらなる骨折を起こしてしまう可能性があります。
そのため、圧迫骨折と診断されたら、放置をせずに医師の指示に従い治療を始めることが必要です。
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圧迫骨折でやってはいけないこと4選
圧迫骨折では背骨に負担がかかる動作をすることで痛みが悪化したり、背骨がより潰れてしまうことがあるので、控えるべき動作があります。
圧迫骨折で控えるべき動作について解説していきます。
仰向けに寝る
背骨への負担を避けるためには横向きで寝るのがお勧めです。
仰向けの姿勢は背骨への負担が大きいことがわかっているので、できるだけ控えるようにしてください。
前かがみになる
前かがみの姿勢は骨折部を上下から圧迫する力がかかるので、避けることが必要です。
日常動作で多く行う姿勢ですが、痛みが強くできないことがほとんどですし、やりすぎると背骨がつぶれてしまう原因になります。
できるだけ家族に介助してもらったり、ハンドキャッチャーを使用して前かがみはしないようにしましょう。
重いものを持つ
重いものを持つ時には力学的に腰に大きな負担がかかっています。
そのため、痛みが悪化する原因になるのでしないようにしてください。
体をひねる
体をひねる動作も痛みの悪化の原因になります。
特に骨折をして初めのうちは寝返りもできないくらいの痛みとなります。
そのため、悪化しないように、できるだけ体をひねらないようにして過ごすようにしてください。
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圧迫骨折の治療について
治療の基本は安静や腰のバンド、コルセットを使った保存治療と、骨粗しょう症の検査・治療です。
保存治療では痛みが和らぐまで安静にして、腰のバンドやコルセットで腰を保護します。
特に骨折をしてから1ヶ月の間は骨折している部分が不安定で潰れる可能性があるので、注意が必要です。
可能であれば病院でコルセットを作成してもらい、背中を曲げる動作は控えるようにしましょう。
痛みの期間ですが、早い人では2週間から、多くの人では3~4週から骨が形成されてきて痛みが楽になります。
しかし骨が硬くなるまでは数ヶ月かかるので、骨折がしっかり治るまでは無理をしないようにすることが大切です。
ご高齢の方の圧迫骨折はほとんどの場合、骨粗しょう症が原因です。
病院で血液検査や骨密度検査を行い、今後の骨折予防のために治療を始めることが勧められます。
骨粗しょう症の予防にはカルシウム、ビタミンD、ビタミンK、たんぱく質を摂取して、禁煙し、アルコールを控えめにして運動、日光浴をすることが有効です。
カルシウムやビタミンDは骨を強くする成分ですが、日本人では不足しがちなのでサプリメントも併用して十分に取るようにしてください。
またタバコ、アルコールは骨を弱くしてしまうので控えるようにし、逆に運動は骨を強める作用があるので積極的に行うようにしましょう。
また、日光浴をすることで体内でビタミンDが作られるので1日20〜30分程度行うことが勧められます。
またお薬での治療もあります。
健康な骨は作られる(骨形成)のと壊される(骨吸収)ことのバランスが保たれていますが、骨粗鬆症では骨吸収の作用が強くなっています。
そのため、骨吸収を抑制させたり、骨形成を強めることで骨を強くすることができます。
お薬はたくさんの種類があり、患者さんの年齢や状態によって選択されます。詳しくは担当の医師とよく相談することが大切です。
圧迫骨折になったら入院が必要?自宅療養のポイントについて
圧迫骨折になってしまっても必ず入院が必要なわけではありません。
痛みの程度が強く、自宅で生活ができない場合には入院が必要ですが、痛みが軽度で家族が介助できる時にはご自宅で治療することもできます。
自宅療養の際のポイントについて解説します。
安静にする
骨折部に骨が作られて痛みがやわらいでくる2-3週間まではできるだけ安静にするようにします。
姿勢に注意する
前かがみや腰をねじる動作は痛みの悪化の原因になるのでしないようにしましょう。
コルセットを使用する
病院でコルセットを処方してもらい、できるだけつけておくようにしましょう。
コルセットを使うことで、腰が保護されて痛みが軽減します。
痛みや骨折の状態にもよりますが、およそ2-3ヶ月程度の装着が目安です。
あまり長期間の使用は背中の筋肉が衰える原因になるのでおすすめできません。
医師からの指導を守ることが大切です。
薬を使用する
痛みが強い場合には市販薬や病院で処方された鎮痛薬を使用しましょう。
鎮痛薬は飲み薬、坐薬、湿布など色々あるので組み合わせて使うことがおすすめです。
関連記事:高齢者に多い骨折の部位を解説|治癒期間や手術ができない場合について
病院やクリニックでの処方について
病院やクリニックでは鎮痛薬、コルセットを処方してもらうことができます。
また必要に応じてブロック注射やリハビリを行うこともあります。
鎮痛薬はロキソニンやアセトアミノフェンなどの成分があり、これらを組み合わせて処方されます。
また飲み薬、坐薬、湿布などの種類があります。
コルセットはご自分で購入すると高額ですが、圧迫骨折に対するコルセットは健康保険が適応されるので実費の1〜3割の負担で購入することができます。
さらに、痛みを軽減させるブロック注射や筋力が低下している時にはリハビリが行われる場合もあります。
骨折によって寝たきりになってしまわないようにしっかりと治療を受けることが大切です。
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科・在宅クリニックでは、丁寧な問診と診察を行い、レントゲンなどを用いて診断をします。
痛みがある場合、鎮痛剤などの処方を行えますのでまずはお気軽にご相談ください。
当院だけでは症状が悪化していると判断した場合には近隣の病院へ紹介することもできます。
また、当クリニックはオンライン診療も行っております。
ご自宅にいながら診察からお薬の処方まで受けることが出来ます。
予約の仕方や費用など詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
今回は、圧迫骨折が高齢者に多い理由や、放置した際のリスク、治療方法などについて詳しく解説しました。
圧迫骨折は高齢の方によく起こる背骨の骨折です。
痛みがよくなるまで数週間、治るまで数ヶ月かかります。
また、ほとんどの場合で骨粗しょう症が原因です。
放置しておくことで痛みが長引いたり、さらに骨折を起こしてしまうことがあります。
そのため、初期の段階からしっかりと治療をすることが大切です。
お困りの症状がありましたらいつでもご相談ください。
参考文献
‣日本整形外科学会.脊椎椎体骨折
‣日本骨折治療学会.骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折
‣日本整形外科学会.骨粗鬆症(骨粗しょう症)
‣腰椎圧迫骨折の原因・症状・治療法などについて解説
‣圧迫骨折でやってはいけないことは?正しい動作とリハビリを解説
‣圧迫骨折とは?自宅療養のポイントや痛みを和らげるコツを解説
監修医師: 整形外科医 三浦 隆徳
専門領域
股・膝関節資格・業績
日本整形外科学会整形外科専門医医学博士
2017年 第66回東日本整形災害外科学会 学術奨励賞受賞
2019年 第68回東日本整形災害外科学会 学術奨励賞受賞