高齢者における慢性疼痛とは?痛みの特徴や治療について解説

公開日:2023.10.16 更新日:2024.9.30

慢性疼痛

「疼痛(とうつう)」とは、身体の一部に生じる不快な感覚や痛みを表します。

内の組織や神経に何らかのダメージや刺激が加わった際に体からのシグナルとして痛みが自覚されます。

このように、痛みは体の防御メカニズムの一つですが、起こってしまった時にはとても辛い症状です。

この記事では疼痛について原因や特徴、治療などについて解説していきます。

痛みについて理解を深めていき、日常生活に役立ててください。

 

 

慢性疼痛とは


慢性疼痛

痛みは患者さんが医療機関を受診するきっかけとして、非常に頻度が高い症状です。

痛みが出始めてからすぐの時期は急性疼痛と言われ、その痛みが長引いた場合を慢性疼痛と言います。

慢性疼痛の定義は痛みの部位にかかわらず3カ月以上痛みが続いた状態とされています。

慢性疼痛は全身の様々な部分で起こりえますが、癌による痛みを除いた場合には腰痛や膝関節痛などの筋骨格系の痛みが最も多い原因です。

 

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慢性疼痛になる原因

慢性疼痛

慢性疼痛は全身の様々な部分に起こる可能性があります。

部位としては、以下などが挙げられます。

  • 腰痛
  • 頭痛
  • 関節の痛み
  • 外傷や手術後に遷延する痛み
  • 神経の障害による疼痛
  • 原因の特定が困難な痛み(線維筋痛症、舌痛症、骨盤内慢性疼痛 他)


そのため、原因となる病気も多数存在します。

国民生活基礎調査によると、腰痛は慢性疼痛の中でも最も頻度が高い症状ですが、原因を特定することは困難なことが多いと報告されています。

実際に腰痛に関しては整形外科専門医が診察をして、画像検査を行なっても3割は原因が特定できないと言われています。

また、神経の損傷による慢性疼痛の場合には帯状疱疹後の神経痛、糖尿病による神経障害性の痛み、脊髄損傷や脳卒中後遺症としての疼痛などがあります。

 

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慢性疼痛はどんな痛み?特徴や種類について


慢性疼痛

痛みはメカニズムの違いから侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心理社会的疼痛の3種類に分けられています。


侵害受容性疼痛

(しんがいじゅようせいとうつう)

切り傷、打撲、骨折などのケガにって、末梢神経の侵害受容器が刺激されることによって痛みを起こします。
 
神経障害性疼痛

(しんけいしょうがいせいとうつう)
腰椎ヘルニアや帯状疱疹、脳卒中などで感覚神経が障害されることによって起こるビリビリ、ジンジンとした神経の痛みです。

心理社会的疼痛

(しんりしゃかいてきとうつう)
心因性疼痛とも言われますが、慢性的もしくは強いストレスを蓄積することで身体に痛みを生じてしまう病気です。


これらのどの原因によっても慢性疼痛になる可能性があります。

慢性疼痛の場合には複数の要因が絡み合って悪化してしまっていると考えられます。

また、慢性疼痛では痛みだけではなく不眠や疲労感、抑うつなどの様々な症状を伴うこともあります。

 

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慢性疼痛を訴えない高齢者が多い?


慢性疼痛

高齢者において慢性疼痛はよくある症状ですが、痛みを訴えない場合には痛みがないという誤った理解がされていることがあります。

高齢者においては慢性疼痛の頻度が非常に多くなっています。

平成25年の国民生活基礎調査において高齢者の方では「腰痛・肩こり・手足の関節の痛み」が多いと報告されています。

そのため、慢性疼痛を抱えながら生活している高齢者が多く存在することが推測されています。

しかし、高齢者に関わる側の問題として、

  • 「痛みは加齢におけるごく普通のこと」
  • 「患者が痛みを報告しないときには痛みは存在しない」

などの誤った理解がなされていることが指摘されています。

そのため、高齢者に関わる場合には、痛みを訴えていなくても、慢性疼痛によって生活が障害されてしまっている可能性を考えて向き合う必要があります。

 

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慢性疼痛の治療について


慢性疼痛

慢性疼痛の原因は多くあるので、痛みの原因が特定されている場合には根本的な治療が有効な場合があります。

しかし、根本的な治療が難しい場合や、原因がはっきりとしない場合には痛みのコントロールと予防が重要になってきます。

これは、慢性疼痛の痛みをゼロにすることは困難で、痛みの軽減と患者さんの生活の質(QOL)と日常生活動作(ADL)を改善することを目標にしています。

痛みのコントロールについては様々なお薬が使用できます。

ロキソプロフェンなどの消炎鎮痛薬、アセトアミノフェン、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤、プレガバリンやミロガバリン(神経障害性疼痛治療薬)、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗不安薬、筋弛緩薬、オピオイドチンつ薬などがあります。

これらのお薬を病気の内容に応じて使い分けていきます。

お薬以外の侵襲的治療としてはブロック注射や電気刺激法などが挙げられますが、適応となる病気が決まっているので、詳しくは担当医とよく相談することが必要です。

そのほかの非侵襲的治療としては運動療法や心理療法などがあり、いずれも効果があると報告されています。

 

 

西春内科在宅クリニックができる対応


慢性疼痛は長期に続き、完治することが非常に難しい症状の1つです。

そのため、いくつかのお薬を使用してコントロールしていく必要がありますが、痛みのため通院が難しいことも多く在宅医療のメリットは非常に大きいと言えます。

痛みの治療においてはまず原因をしっかりと調べることが大切です。

背中や関節の痛みであれば整形外科、神経の痛みであれば神経内科、お腹の痛みであれば消化器内科など専門医の診察を受けて診断をしっかりつけるようにしましょう。

その上で、痛みの根本的な治療が難しく、お薬でコントロールしていくという場合には、ぜひ当院にご相談ください。

がんによる痛みであればモルヒネなどの医療用麻薬を使用する場合もありますが、基本的には通常の鎮痛薬から使用していき、副作用がないか確認しながら量を増やしていきます。

その上で痛みのコントロールが難しい時には弱オピオイドという弱い医療用の麻薬から使用していき、徐々にお薬を強くしていきます。

それぞれのお薬にはいい面だけではなく、副作用をあるので、用法用量をしっかり守るようにしてください。

痛みが少しでも和らぐように、治療や、場合によっては専門医への紹介も行っていますので、心配な症状がある時にはぜひお気軽にご相談ください。

 

 

まとめ


慢性疼痛は様々な原因、病態が組み合わさることで、3ヶ月以上痛みが続く症状のことを言います。

治療にはまず、原因をしっかりと調べて根本的な治療を行うことが大切です。

しかし、中には原因がわからない場合や、根本的な治療がない、もしくはできないという場合もあることと思います。

そのような場合には、お薬で痛みをコントロールしていく治療になります。

しかし、痛みのため通院が難しいという場合も多いかと思います。

当院では、外来診療のみでなく訪問診療も行っています。

慢性の痛みで通院が困難等、相談したいことがありましたらいつでもご相談ください。

参考文献

慢性疼痛診療ガイドライン
平松万由子.「高齢者の慢性疼痛と生活への影響」

この記事の監修医師

監修医師: 整形外科医 三浦 隆徳

専門領域

股・膝関節

資格・業績

日本整形外科学会整形外科専門医
医学博士
2017年 第66回東日本整形災害外科学会 学術奨励賞受賞
2019年 第68回東日本整形災害外科学会 学術奨励賞受賞

監修医師: 福井 康大