過食嘔吐になる原因|顔がむくんでしまう理由や治療方法を解説
食べ過ぎて吐いてしまったと言う経験はありますか?
本日のテーマである「過食嘔吐」と言うのは、「大好きな食べ物を意図せず食べ過ぎてしまい、その結果吐いてしまった」ということではありません。
頭の中が食べることに支配されてしまうため、食べることを自分では止められない状態になってしまい、また食べた後には体重が増えることが怖くなって、自ら嘔吐してしまう一連の行動を指します。
精神医学では摂食障害と呼ばれ、特に若い女性に多く見られる疾患です。
特に過食嘔吐によって、体重がどんどん減ってしまう場合、徐々に体調を崩し、最終的に死亡する場合もあるため、決して油断することはできません。
今回は、そんな過食嘔吐について原因や、症状、繰り返すことの危険性などについて詳しく解説していきます。
目次
過食嘔吐になる疾患とその原因
過食すること、嘔吐することは、食べ物の本来の扱い方ではありません。これらの行為を食行動の異常と表現し、精神医学では摂食障害と言う疾患に当たります。
摂食障害は、拒食症と過食症の2つに大別されます。
拒食症であっても過食症であっても、過食嘔吐を伴う場合がありますし、拒食症から過食症へ移行する場合もあります。
拒食症とは?
拒食症の有病率は、研究により差が認められますが、思春期の女子の約0.5%から1%で発症すると推定されています。
また、少なくとも男性の10倍以上の割合で女性に多く発生することが確認されています。
拒食症の病因については、諸説が提示されていますが、確定的なものはなく、現時点では、特定の要因のみで発症するのではなく、生物学的、心理的、社会的な要因が複雑に絡んで発症すると考えられています。
また、摂食障害ではASDやADHDといった発達障害を合併しているケースも多く関連性が疑われています。
拒食症では、食事の量や回数を著しく制限し、太りやすい食物を避けます。
極端なやせ願望と肥満恐怖があります。
また、精神科では「ボディーイメージの歪み」と表現されますが、実際はやせているのに太っていると感じてしまったり、少しでも体重が増えると際限なく増えると恐れてしまいます。
これには、自己評価に対する体重・体型の過剰な影響があります。
すなわち、自分の価値が体重によって与えられていると考えてしまい、体重が減ることが自信となる一方で、体重が増えることは自分の存在価値の喪失と考えてしまうのです。
低体重の深刻さを否認し、活発に動きまわり、周囲が食事や休養を勧めても従いません。
上記特徴に加えて「期待される体重の85%以下の体重」かつ「無月経」の場合に拒食症と診断します。
徐々に栄養状態が悪化していく過程において、飢餓に耐えかねてむちゃ喰いを始め、その結果生じる体重増加を防ぐために自己誘発性の嘔吐をしたり、下剤・利尿剤・浣腸の乱用などの代償行動を行い習慣化する場合があります。
過食症とは?
過食症は、拒食症と同様に、男性よりも圧倒的に女性に多く発症する傾向にあります。
拒食症の発生と比較してみると、やや好発年齢は遅く、10代後半から20代前半に発症することが多いと推定されています。
過食症の原因も、生物学的、社会的、心理的要因が複合的に絡み合っていると考えられています。
過食嘔吐はなぜ女性に多い?
摂食障害患者の90~95%が女性と言われています。
さらに拒食症は思春期に、過食症は20歳前後に発症することが多く、若い女性に特徴的な疾患と言えます。
明らかな原因は分かっていませんが、瘦せていることが価値に繋がりやすい現代の風潮が背景にある印象を受けます。
様々な悩みを抱えやすい時期に、
「痩せたら褒められた」
「体重が減ることで達成感を得られた」
などをきっかけに、体重計の数字を自分自身の価値だと思ってしまうケースも見受けられます。
しかしながら、ダイエット経験者の皆が摂食障害に罹患するわけではありません。
やはり原因は、生物学的、社会的、心理的要因が複合的に絡み合っていると思われます。
過食嘔吐で顔がむくんでしまう理由
過食嘔吐を繰り返していると起きてくる変化に、全身のむくみがあります。
特に顔は変化が分かりやすい部分なので、相談を受けることが多いです。
なぜ過食嘔吐を繰り返すと、徐々にむくむようになってしまうのでしょうか。
アフリカの子供たちが飢餓で苦しむ映像などを見たことがある方も多いと思います。
彼らのお腹をみると、ポコッと出ていて、
「何故食料に苦しんでいるのに、お腹が出ているんだろう」
と疑問に思ったことはありませんか?
確かに、日本の様に食事にある程度困らない生活が出来る国では、お腹が出ていると言うのは栄養過多である場合がほとんどです。
しかし、栄養が足りず、血液中のたんぱく質が少なくなると、血管の中に水分をとどめておくことができなくなります。
結果として、水分が体のいたるところに漏れていってしまいます。
お腹に漏れたのもを腹水と呼び、飢餓に苦しむ子たちは、腹水が溜まってしまったために、あのような体型をしているのです。
つまり、過食嘔吐により栄養状態が悪化すると、体は徐々に飢餓状態となり、むくみやすくなります。
さらに、過食や嘔吐をすると、食べ物を咀嚼消化しようと唾液がたくさん分泌されます。
この唾液の過剰な分泌が続くと、耳や顎の後ろの耳下腺や顎下腺が、むくんで腫れ上がってしまいます。
結果として、特にあごや首の周りが腫れあがったように見えるようになります。
過食嘔吐でむくみ以外の症状
繰り返す過食嘔吐によって、最も傷つくのは「歯」です。
過食のために用いられる食材は、パンやおにぎり、お菓子といった糖分を多く含むものが多く、糖分の過剰摂取によって、虫歯が非常に発生しやすくなります。
また、胃酸はとても強い酸であるため、容易に歯を溶かしてしまいます。
嘔吐時の胃酸や嘔吐物、さらには過食の際に口にした酸性の食べ物などが原因で歯が溶けてしまう病気を「酸蝕症(さんしょくしょう)」と呼びます。
その他にも、歯周病や知覚過敏にもなりやすく、過食や嘔吐を繰り返すことは、口腔内の環境を破壊し、歯に重大な影響を与えてしまいます。
摂食障害ポータルサイトより、「もしも嘔吐をしてしまったら」の対応を引用致しました。
是非参考にしていただけたらと思います。
◎嘔吐直後の歯磨きは避けましょう
◎嘔吐直後は酸を含まない液体(水など)で口をすすぎましょう
◎嘔吐後に1時間以上たってから、フッ素を含み、知覚過敏を和らげる歯磨き粉で、1日2~3回、歯と歯肉をブラッシングしましょう。
◎酸性の飲み物(フルーツジュース、炭酸飲料など)を減らしましょう。
特に、就寝直前にとるのはやめましょう。
酸性の飲み物を飲むときはストローを使用して飲みましょう。
◎砂糖を含まないガムを噛みましょう。
◎定期的に歯科を受診しましょう(少なくとも年2回)
過食嘔吐によるむくみを解消する方法
過食嘔吐によって生じたむくみを解消する方法は、やはり過食嘔吐の回数や頻度を少しでも減らしていくことになります。
しかし、疾患の特徴上なかなか簡単ではありません。
アルコール依存症の方にお酒を控えろ、自傷行為をしている方に、リストカットや大量服薬を控えろと言っても難しいのと似ているところがあります。
過食嘔吐をする理由に、もちろんストレスなどの心理的な負担と言う側面はあるのですが、近年では「質的な栄養失調」と言った概念も精神科では広まりつつあります。
体重は平均的であったとしても、鉄分やたんぱく質といった栄養素が足りず、体がエネルギー不足となり、すぐにエネルギーとして利用できる糖分を過度に求めてしまうというものです。
受診される患者さんに対して血液検査を行うと、それらが不足しており、鉄分の補充や、高たんぱくの食事指導(特にプロテインの飲用)などを勧めると、過食症状が緩和することがあります。
もちろん、たんぱく質の不足がむくみの原因となりますから、過食が減ることやたんぱく質が増えることは、むくみの改善につながります。
過食嘔吐を繰り返すことの危険性
過食嘔吐を伴う摂食障害の予後をみてみましょう。
まず、過食症(過食嘔吐はするものの、体重は標準体重にとどまっている)の場合は、
5~10年間で約半数が回復している一方で、30%の方は一時的に良くなるも再発するが、20%の方は症状が変わらなかったという報告があります。
また、0.3%で死亡例も見られます。
さらに拒食症(過食嘔吐をしながら、どんとん低体重になる)の場合はより深刻となり、回復するのが約3割程度、また死亡率も同様に3割にのぼると言う報告まであります。
いずれにせよ、摂食障害は看過できないとても重大な疾患と言えます。
過食嘔吐をやめたい方へ
過食嘔吐をやめられない方を含め、摂食障害全般を診療していると、
「好きな人に太っていると言われた」
「ダイエットで自信をつけたかった」
など、きっかけは特別なものでないことも多く、若い女性にとっては身近な病気と言えます。
「ちょっとくらいの食べ吐きなら、みんなやっているから大丈夫」と、過小評価する人も散見されます。
しかしながら、摂食障害は平成27年までは、国から難病に指定され、今でも長期間の治療を必要としている方は大勢おられます。
自分で過食嘔吐をやめられずに悩んでいる方は、できるだけ早めに最寄りの病院へ受診することをお勧めします。
西春内科在宅クリニックができる対応
摂食障害の診療は、基本的には精神科が中心になって行いますが、過食嘔吐によって体重が著しく減少してしまうと、体にも様々な変化を来します。
重症化すればするほど、内科の医師と連携して治療を行うことが多い疾患です。
西春内科在宅クリニックでは、十分な知識を持った内科医が、過食嘔吐によって生じた体の異変や不調に対して適切に対応します。
また、必要に応じて精神科や歯科との連携を行います。
精神科へいきなり通院はしづらいという場合も、まずはお気軽にご相談いただけたらと思います。
まとめ
摂食障害は若い女性にとっては大変身近な疾患である一方で、亡くなる可能性もあるとても恐ろしい疾患です。
摂食障害に限らず全ての疾患について言えることですが、早期に治療する方が改善も良好であるケースが多いとされます。
過食嘔吐で悩んでいるが、なかなか周囲に相談できないと言う方も多いと思いますが、是非一度最寄りの医療機関に相談してみて下さい。
また、若くて体力があるうちは、過食嘔吐による体力の消耗や、歯や食道といった臓器への負担に耐えられても、長期化し年齢を重ねると確実に身体的には危険な状態となります。
ダイエット自体は健康増進のために否定されるべきではありませんが、そのために嘔吐をする、下剤などを使うといった行為は行わないようにしましょう。
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参考文献
摂食障害:神経性食欲不振症と神経性過食症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
摂食障害と歯 | 摂食障害について | 摂食障害情報 ポータルサイト(一般の方)
食べることを止められない!過食症(過食・過食嘔吐)とは?