めまいはストレスが原因?何科に行けばいい?合併しやすい症状について解説
何かショックなことがあった時に、「めまいがする」と表現されることがあります。
比較的なじみのある言葉だと思います。
そもそもめまいとは、体の平衡、つまりバランスを保てなくなることを指すのです。
原因によってその症状の出方は様々で、「ぐるぐる回る」、「ふらふらする」、「ふわっと気が遠くなるような」などの感覚が該当します。
しかしながら、医者がめまいと言う用語から想像する症状や原因となる病気と、患者さんが訴えるめまいにはすれ違いがある事もしばしばで、これがめまい診療を難しくしています。
めまいを起こす原因は耳であったり脳や心臓であったり、ときに精神的な問題であったりと様々です。
本日は、めまいについて詳しく解説したいと思います。
私は精神科医ですので、やや内容が偏る可能性がございますが、あらかじめご了承ください。
目次
めまいが起こる原因
2008年に発表された、アメリカの救急科受診のデータによると、めまいがすると言って受診した患者で最も多い原因は耳性/前庭性疾患でした。
簡単に言えば、耳に何らかの原因があるという事で、約33%の患者が該当し、3人に1人の割合になります。
これらは、正確には「めまい」ではなかった場合も含むデータです。
しかし、実際に「めまい」であった場合に限ると、約7割~8割が耳の病気によって起こるとされています。
「耳の仕事は聴力しか知らない」と言う方も数多くいらっしゃると思いますが、耳は実は複雑な役割をしています。
耳は解剖すると、外耳、中耳、内耳に分けられます。
外耳で集めた空気の振動(音)という物理的なエネルギーを中耳で増強して内耳に伝え、内耳で電気的エネルギーに変換することで、音を聞くことが出来ます。
それとは別に、内耳には体の平衡感覚を保つ働きがあります。
三半規管ならびに前庭と言う組織がその役割を担っており、これらの臓器に不調が起こることでめまいを生じることになります。
内耳の異常によってめまいの原因となる疾患としては、以下が挙げられます。
- 良性発作性頭位めまい症
- メニエール病
- 前庭神経炎
- 突発性難聴
- 聴神経腫瘍
その他にも、めまいを生じる原因は複数あります。
代表的なのは脳卒中(脳血管障害)ですが、循環器疾患や呼吸器疾患、感染症に精神疾患、薬の副作用など多岐に渡るため、自己判断は危険です。
めまいと自律神経の関係性
精神科外来においても、めまいを理由に受診されることは少なくありません。
「内科や耳鼻科を受診し、異常が無いと言われたけれども、めまいがして日常生活に困っている」とご相談を受けます。
これはあくまで個人的な感覚ですが、「頭の中がなんとなく変」と言った感覚を、「めまい」と表現される方が多い印象を受けます。
実際に、なんと表現していいかわからないけれど、一番近いのが「めまい」だったと話される方もいます。
めまいの定義に戻れば平衡感覚の異常という事になるのですが、そういった事を意識してめまいと言う言葉を使う患者さんは当然いらっしゃいません。
そのため「めまい」を理由に内科や耳鼻科で異常が見つからないことも起こりえます。
そういった症状を感じやすい精神疾患としては、うつ病や神経症(ストレスが体の症状として現れた状態)が一般的です。
特に精神疾患により不眠の状態が続くと、そういった感覚は増悪します。
適切に治療を行うことで症状の改善が期待できるので、耳鼻科や内科で異常が無いと言われたとしても、一度最寄りの精神科へ受診してみてはいかがでしょうか。
ただし、重大な体の病気が隠れていてはいけないので、いきなり精神科を受診することは推奨しません。
関連記事:自律神経失調症のセルフチェック26項目!こんな兆候は危険かも?
めまいの種類
ここではめまいの種類について見ていきましょう。
回転性めまい
回転性めまいとは、その名の通り自分自身がグルグル回転している感じがする、もしくは、周囲がグルグル回転する感じを訴える方が多いです。
教科書的には「天井が回っている」と書かれています。
回転性めまいの多くは内耳の異常が原因で起こりますが、脳梗塞や脳出血などの脳の病気が原因で起こることも。
回転性めまいを訴える方の中には、耳鳴りや耳がつまった感じ、ときに難聴を同時に感じる方もいます。
浮動性めまい
浮動性とは、体がフワフワするといった感覚で、教科書的には「雲の上を歩いているような感じ」と表現されるものです。
浮動性めまいは、主に脳の病気によって生じることが多いとされます。
さらに、浮動性めまいに加えて頭痛、顔や手足のしびれ、体の力が入りにくいといった麻痺症状を伴う場合には、十分な検査が必要です。
失神型めまい
失神型めまいとは、ふわっと気が遠くなる感覚を覚えるめまいです。
その他にも、目の前が真っ暗になる(眼前暗黒感)や、立ちくらみがすると表現される場合もあります。
失神型めまいの多くは血圧の変動が原因で起こり、心臓や血管に問題があるとされます。
その他のめまい
精神科的な問題で生じるめまいで、訴えは代表的な訴えというのはありません。
前述の様に「頭の中がなんとなく変」といったことを伝えたいが、自分の知っている言葉で最も近かったのが「めまい」だったというケースが多い印象を持っています。
関連記事:五月病の症状やなりやすい人の特徴|うつ病との違いなども解説
めまいと同時に起こりやすい症状
めまい診療では歴史的に、前述のように4つのタイプに分類して鑑別診断を進めていく方法が行われていました。
具体的には、以下のような症状を聴取し、鑑別する方法です。
- 「ぐるぐる回る」→回転性めまい(内耳性)
- 「ふらふらする」→浮動性めまい(神経性)
- 「ふわっと気が遠くなるような」→失神型めまい(心血管系)
- 「それ以外」→精神系の問題
私が医学生や研修医で当直をしていた頃も、そのようにしてめまい診療を行っていました。
しかし、近年ではこの方法は必ずしも推奨されてはいないようです。
先ほどもお話したように、めまいという言葉は実に曖昧で、患者さんの中にはこれらの4つの中から選ぶことが出来なかったり、後から変わってしまったりする方もたくさんいらっしゃいます。
また、「ぐるぐる回るような」と訴えた方が、実は心臓に原因があったり、実際は内耳性なのに「ふわっと気が遠くなるような」と答えたりと、めまいの性状を詳しく問診しても診療の質には結び付かないという事がわかってきました。
ではどのようにめまいとその原因を見つけていくかというと、めまいと同時に起こる症状(随伴症状)に注目します。
めまいだけでなく、「頭や頸部の痛みはないか」「胸痛や背部痛はないか」「呼吸困難はないか」「動機はないか」「発熱はないか」などです。
また、現在飲んでいるお薬も確認します。
それらの情報をもとに病気を探し当てていく、必要であれば検査を加えます。
仮にめまいを理由に病院を受診したとしても、めまい以外にも症状がある場合は、「これは関係ないかも」と自己判断はせずに、すべて診察する医師に伝えるようにしましょう。
さらにいえば、随伴症状以外にもどういったときにめまいがしやすいか、きっかけや誘因となるものはあるかなども重要な情報ですので、併せてお伝えするようにお願いします。
関連記事:【治る認知症】高齢者がなりやすい水頭症の症状から原因、治療について解説
めまいで考えられる危険な病気のサイン
めまいを診察する上では、危険な病気の除外を重要視します。
頻度は多くありませんが、なかでも最も危険な病気は脳卒中です。
脳卒中は突然生じた脳の血管の血流障害によって言葉が離せなくなったり、急に手足に力が入らなくなったり、ときに意識を失ったりする発作を指します。
具体的には脳梗塞や脳出血といった病気が該当します。
ショック(なんらかの理由で重要臓器の血流が維持できなくなり、生命の危機にいたる急性の症候群のこと)や失神のことをめまいと訴える方もいるため、まずは血圧の測定がとても重要です。
低血圧ではショックを、高血圧では脳卒中を疑う一つのサインになります。
その他、脳卒中の可能性を確認するために目の動きや呂律が回っているか、顔や手足の感覚は正常か、動きに問題がないかなどを細かく診察することも必要でしょう。
必要に応じて、頭部CTや頭部MRIなどの画像検査を追加することもあります。
関連記事:知ってほしい脳卒中の危険な前兆・症状や脳梗塞との違いは?
めまいが起きたときの対処法
これまで解説してきたように、めまいの原因となる病気には重大なものも含まれます。
特に脳や心臓が原因で生じるめまいは命の危険もあるため、まずは一度最寄りの医療機関に相談するようにしましょう。
あまり脅かすようなことばかりでも良くないので、客観的なデータをお示しすると、めまいの原因の中で、脳が原因であると診断される場合は約5%程度とされています。
実際には耳が原因で起こる場合が7~8割を占め、その中でも「良性発作性頭位めまい症」や「メニエール病」でその半分を占めます。
どちらも安静にしていれば、自然におさまることもあるので、まずは自宅で横になりリラックスを心がけましょう。
それでも症状が強い場合や、再発を繰り返すようであれば、耳鼻科にご相談ください。
めまいが起きたら何科に行けばいい?
めまいの原因の7~8割が耳鼻科疾患とされています。
特にめまい以外の症状が無い場合や、めまいによって気分不良があるというだけであれば、耳鼻科を受診することをおすすめします。
しかし、めまいには重大な命に関わる病気が隠れています。
言葉が話せなくなったり急に手足に力が入らなくなったり、意識を失ったりするようなことがあれば、最寄りの内科を受診するのが良いでしょう。
特に血管を痛めやすい持病がある方(糖尿病、高血圧、高脂血症など)や、喫煙をされる方は注意が必要です。
場合によっては119番への救急要請も必要になります。
色々受診したけれども原因が良くわからない、もしくは精神的な要因ではないかと言われた、などあれば、是非精神科を受診してみて下さい。
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科在宅クリニックでは、常勤の内科医がめまいに対して適切な診療を行います。
また、頭部CTなども完備しており、めまいの詳しい検査も可能です。
また、必要に応じて精神科とも連携をとって対応させていただきます。
まとめ
「めまいがする」とは、一見良く聞かれるセリフではありますが、めまいの診療と言うのは実に医師泣かせのところがあります。多くが耳鼻科疾患であり、比較的緊急性は低い病気な一方で、脳卒中や心臓疾患など、死に至る病気が隠れていたり、精神科疾患に伴う場合は検査では原因がわからなかったりするからです。
「たかがめまい、されどめまい」
この記事を読まれた皆さんには、自分で大丈夫と判断することなく、一度最寄りの医療機関にご相談することをお勧めします。