猫に引っかかれたときの対処法とは?死亡した例もある?

公開日:2024.8.06 更新日:2024.10.08

猫引っかかれ

 

近年コロナウイルスの影響でペットとして猫を飼うご家庭が増えています。

 

それに比例して猫に噛まれた、ひっかかれたというご相談も増えました。

 

また、野良猫と遊ぼうとしたときに自己防衛のために攻撃されるケースも耳にします。

 

あの可愛い口や手には牙や爪が潜んでいます。

 

そこで今回は猫に嚙まれた際のリスクや応急処置についてお話しします!



猫に引っかかれることによるリスク

 

猫引っかかれ

 

出血・裂傷・化膿

 

猫の爪や牙は細く鋭い傾向にあります。

 

そのため傷が浅ければミミズ腫れなったり、皮膚が裂かれたり、それに伴い出血を起こす場合もあります。

 

また、爪や牙に付着している細菌に感染して化膿したり、発熱を起こします。

 

アレルギー反応

 

元々猫や動物アレルギーを持っている方も多いと思います。

 

それによってアレルギー反応が出て痒みや蕁麻疹などの症状が出る場合もあります。

 

また、ミミズ腫れは「機械性蕁麻疹」となるため、アレルギー薬などの治療が必要な場合もあります。

 

※機械性蕁麻疹(きかいせいじんましん)…圧迫や摩擦でできる蕁麻疹、重い鞄を持った後に赤くなったり、ズボンのゴムで圧迫されて赤くなったりするもの。

 

感染症

 

ほぼ全ての猫には常在菌が存在し、それらが傷口から感染すると感染症を引き起こします。

 

また野良猫の場合はワクチンを打っていない場合もあるので後述する破傷風などに注意が必要です。

 

詳しい感染症は次の項目で解説してまいります。


関連記事:アレルギー性蕁麻疹の症状が出た時の適切な対応方法とは?

猫に引っかかれたことによって発症する可能性のある感染症

 

猫引っかかれ

 

猫引っかき病(バルトネラ・ヘンセラ)

 

ほぼ全ての猫に常在菌として存在している「バルトネラ・ヘンセラ」という細菌が傷口に侵入することで発症する感染症です。

 

猫に引っかかれて発症するため、このような名前が付けられました。

 

2週間ほどの潜伏期間を経て、傷跡の腫れ、痛み、発熱を初期症状として数週間~数か月の長期間に渡り、リンパ節の腫れが現れます。

 

基本的には軽症で済む場合が多いですが、およそ0.25%の割合で脳症を併発することがあります。

 

リンパ節が腫れ上がった1~3週間後に痙攣や発作、意識障害が突然現れます。

 

このように受傷後症状が現れるまで、数日かかります。

 

その為、猫に引っかかれたことが原因と認識できないことも多く、血液検査などをして発覚することがほとんどです。

 

自然治癒することもありますが、主に抗生剤での投薬治療を行います。

 

パスツレラ感染症

 

こちらも常在菌である「パスツレラ菌」が原因となる感染症です。

 

感染経路も多くは傷口からの侵入、そして食器の共有や接吻で感染することもあります。

 

受傷後数時間から2日程度で発赤、腫れ、疼痛の症状が現れます。

 

基本的には軽症で済みますが、傷が深かった場合や悪化すると「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」「骨髄炎(こつずいえん)」になるケースもあります。

 

また、免疫機能が低下している方が感染すると呼吸器系の症状が現れます。

 

その為、早期の抗生剤での治療をメインに行います。

 

カプノサイトフォーガ感染症

 

猫の口腔内に常在している「カプノサイトフォーガ・カニモルサス菌」を病原菌とする感染症です。

 

猫ひっかき病やパスツレラ症に比べると、発症率は少なく症状も発熱や頭痛などの風邪症状と軽く済むことが多いです。

 

しかし、高齢者や免疫機能が低下している方は敗血症や髄膜炎など重症化することもあるので注意が必要です。

 

破傷風

 

土の中に存在している「破傷風菌」が体の中に入ることで発症する病気で、死亡率が非常に高い病気です。

 

猫が舐めた土に破傷風菌が含まれており、舌に付着し、噛んだ際に人に感染する可能性があります。

 

症状の経過としては、口が開きにくい、顎が疲れるといった初期症状が現れ、歩行、排尿、排便に障害と進行していきます。

 

最終的に全身の筋肉が固まり、呼吸困難になります。

 

破傷風菌は土の中にいるため、屋外でケガをした際に感染する場合もあります。

 

なので人間は幼少期に破傷風を含む4種混合ワクチンを接種することが多いです。

 

およそ10年の免疫が獲得でき、正しく接種すれば20歳前半まで感染のリスクはかなり低くすることが出来ます。

 

最終接種から10年以上経過した場合も、追加でワクチンを接種できるので、ペットを飼う際にはご検討ください。

 

大人の場合、100%の免疫を得るには合計3回のワクチン接種が必要です。




猫に引っかかれたミミズ腫れの治し方は?

 

嚙まれたりひっかかれたりした際の応急処置として、流水で傷口を良く洗い流すことが大切です。

 

刺激の少ない石鹸があれば使用しましょう。

 

こするように洗うのではなく、撫でるように優しく洗うことを心掛けましょう。

 

最低でも5分ほど洗ったら清潔なガーゼやタオルなどで傷を覆い、病院へ受診しましょう。

 

出血がある場合は傷口を圧迫して止血しながら病院へ受診してください。


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感染症にかからないようにするためには?

 

 

猫引っかかれ

 

まずは噛まれたり、引っかかれたりしないように予防することが大切です。

 

過度なスキンシップを避ける

 

猫が嫌がるような過度なスキンシップを避け、野良猫であれば触らないようにしましょう。

 

猫の口腔内にいる常在菌が原因となる事が多いので食器の共有、接吻もできるだけ避けましょう。

 

ペットの手入れやお世話を行う

 

爪を切ったり歯磨きを行うことで菌の数を減らし、感染症のリスクを抑えましょう。

 

また、ダニやノミを媒介として感染することもあるので猫のケアも定期的に行いましょう。

 

触れ合った後は手を洗う

 

触れ合う前はもちろんですが触れ合った後も手を洗いましょう。

 

手に唾液が付いていたり、自覚はなくても小さな傷が出来ていることもあります。




猫に引っかかれたら何科を受診すればいい?

 

猫引っかかれ

 

まずは「内科」か「皮膚科」もしくは「形成外科」に受診しましょう。

 

そこで傷の深さや広さ、状態を見て処置をします。

 

基本的には傷口の消毒処置、抗生剤の処方などの治療を行います。

 

抗生剤で症状が落ち着いても油断はできません。

 

傷が深いようであれば縫合やレントゲン、感染症のリスクがあればワクチンの投与をする場合もあります。


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猫に引っかかれた死亡例がある?

 

猫引っかかれ

 

子猫に噛まれたことが原因で死に至ったケースも実際にあるので1つ紹介いたします。

 

子猫に指を嚙まれ様子見をしていたのですが、数時間後には患部が大きく腫れてしまったそうです。

 

後日病院へ受診したところ1か月ほど入院、その間に15回程手術を行い回復の兆しはあったものの、結局4か月後指を切断することになりました。

 

切断後も痛風や糖尿病など免疫力が低下し、経過が思わしくなく、4年後に亡くなってしまいました。

 

これは細菌が傷の奥に残ったまま傷口が塞がってしまい、体中に細菌が広がってしまったことが原因で、重篤化してしまいました。

 

このような事を防ぐためにも傷口をしっかりと洗い流し、小さな傷だからと油断せずに病院へ受診することが大切です。




西春内科・在宅クリニックでできる対応

 

当院では傷の状態を診て処置を行うことが可能です。

 

状態によってはより専門的な病院への紹介も行います。

 

お近くに皮膚科や整形外科がなく受診できない場合はぜひご来院ください。




まとめ

 

いかがでしょうか?

 

ついつい触りたくなる猫ですが、このようなリスクがあることを知っておく必要があります。

 

猫が噛んだり引っかいたりする場合は基本的に自分の身を守るために行います。

 

もちろん、遊んでいて勢い余って、という事もあるでしょう。

 

ですが、猫が嫌がることや過度なスキンシップを避け、適切な距離を保つことも自分にとって、ひいては猫の為になります。

 

また、引っかかれたりした時は速やかに傷口を洗い流しましょう!

 

参考文献

ある男性が死亡。理由は4年前に猫に噛まれたことだった? | ギズモード・ジャパン

【獣医師監修】猫ひっかき病ってどんな病気?症状や治療法は?

猫ひっかき病とは?初期症状と治療法について【医師監修】

この記事の監修医師

監修医師: 福井 康大