MRSAとは?感染経路や症状を解説|高齢者がなりやすい理由も

公開日:2023.8.14 更新日:2024.10.01

MRSA

MRSAという細菌を聞いたことはありますか?

あまり聞いたことのない方がほとんどだと思います。

MRSAという細菌は、体の中に入ると病気になることがあります。

この細菌は、普通の薬ではなかなか治らないので、注意が必要です。

特に高齢者は、重篤な症状となる可能性があります

ただMRSAは、専門の医者に診てもらって、適切な薬を飲むことで、きちんと治すことができます。

今回は、MRSAの症状や、感染対策、治療薬などについて解説していきます。

 

 

MRSAとは


MRSA

MRSAとは何か


まずMRSAとは、正式名称をMethicillin‐Resistant Staphylococcus Aureus といい、略語でMRSAといいます。

日本語ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌といい、細菌の一種です。

このMRSAに感染することをMRSA感染症といい、感染する部位によって様々な症状をきたします。

簡単に言うと普通の抗菌薬(抗生物質)が効かない細菌のことをMRSAといいます。

黄色ブドウ球菌というのは、人間の皮膚や鼻の中などに普通に住んでいる細菌の一種です。

MRSAの種類


MRSAには、以下の3つの種類があります。

  • 院内感染型MRSA(HA-MRSA)
  • 市中感染型MRSA(CAーMRSA)
  • 家畜関連型MRSA(LAーMRSA)

家畜関連型MRSAは、豚などの家畜に関わる仕事または獣医師などに関連するMRSAであり、一般的には問題となることがほとんどありません

問題になることが多いのは、院内感染型MRSA市中感染型MRSAです。

院内感染型MRSAは、たくさんの種類の抗生剤に強い(多剤耐性といいます)ので、治すのが難しいことが多いです。

特に高齢者は、院内感染型MRSAにかかることが多いのです。

MRSAとMSSAの違い


MRSAの日本語の正式名称をメチシリン耐性黄色ブドウ球菌と言うと説明しました。

メチシリンと言う抗生物質に対して耐性を持つ黄色ブドウ球菌と言う意味です。

すなわちMRSAとMSSAの違いは、その黄色ブドウ球菌(SA)がメチシリン(M)に対して、耐性 (R) なのか感性 (S) なのかという違いのことを意味しています。

では黄色ブドウ球菌とはどのような細菌なのでしょうか?

黄色ブドウ球菌は人間の皮膚や鼻腔などに健常な人でも存在することがあり、そのままでは悪影響を認めません。

ただし傷口に感染することで皮膚を化膿させたり、傷口から血液に感染することで体内に菌の塊を作ったりすることで発症することがあります。

また、感染が全身に広がることで毒素が広がり発熱などの全身症状を起こすこともあります

MSSAの場合は、抗生剤への耐性は持っていないため、早期に診断し適切な抗生剤による治療を行うことで完治することは十分に可能です。

一方でMRSAの場合はその細菌が耐性のある抗生剤を使用してしまうと、治療効果がないです。

MSSAとは別の抗生剤を選択して治療を行う必要があります

 

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MRSAの感染経路とうつる確率について


MRSA

ここでは主に院内感染型MRSAに関して説明します。

院内感染型MRSAは、病院や老人ホームなどに多く存在しています

また、入院していなくても病院によく行く人にもうつる可能性があります。

感染経路としては基本的にはMRSAを持っている人や、物を触ったことによる接触感染です。

誰しもがその感染源になり得ます

 

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MRSAの症状


MRSA

MRSAは感染した部位によって症状が異なります。

肺に感染した場合はMRSA肺炎といって、熱やせき・痰(たん)から始まり、重症化すると呼吸困難などになります。

MRSAが血液に入って体中にMRSAが広がることをMRSA菌血症といいます。

このMRSA菌血症は、点滴の針や心臓のペースメーカーなどの体の中に入れる機械が感染経路となることが多いです。

症状としては、長期間熱が出て、熱の原因がわからず診断が遅れることが多いです

また、MRSA菌血症となりMRSAが全身に広がることで心臓内に菌の塊ができることがあります。

これをMRSAによる感染性心内膜炎といいます。

発熱に加え、心臓機能の低下による下肢のむくみや呼吸困難が出現することがあり、注意が必要です。

MRSAが皮膚の傷口に感染した場合は皮膚軟部組織感染症といい、傷口が化膿する症状が現れます。

その他のMRSA感染症として手術後の腹腔内感染関節内感染がありますが、手術後に発症することから診断は比較的容易です。

上記のようにMRSAは感染する部位によって様々な症状をきたします。

ただし、症状からだけでは、MRSAの感染を疑うことは困難です。

 

 

高齢者がMRSAになりやすい理由


MRSA

それでは、なぜ高齢者はMRSA感染症になりやすいのでしょうか?

高齢者が感染するMRSAは、上述した院内感染型MRSAです。

この院内感染型MRSAは、抗生剤をたくさん使う病院や老人ホームなどで多く存在しています。

そのため、高齢者は若い人よりも院内感染型MRSAに触れる機会が多くなります

また、院内感染型MRSAは感染力はあまり強くありません

体力のある若い人にはあまり感染することはありませんが、高齢者や免疫の弱った人に感染しやすい特徴があります。

 

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MRSAになったときの病院の対応


MRSA

MRSAの検査方法


MRSAに感染しているかどうか検査する方法は、感染を疑う部位から痰や血液、膿などを採取し、培養と抗菌薬に対する感受性を調べることで診断します。

そのため、診断に比較的時間がかかり、発症からMRSA感染症の診断まで数日かかることがあります。

MRSAの抗菌薬・治療薬


MRSA感染症の診断がついた場合は、抗MRSA薬という特別な抗生剤を治療に用います。

通常の抗生剤はMRSAに効果がなく、通常の抗生剤を継続しても症状の改善は見られません

抗MRSA薬は、MRSAの細胞を壊したり増えないようにしますが、副作用もあるので注意が必要です。

副作用としては、腎臓や骨髄や筋肉に悪影響を与えることがあります

そのため、医師の指示に従って使用する必要があります。

MRSAは自然治癒する?


MRSA感染症は、自然治癒することは不可能ではありません。

しかし、これまでに説明した通り、MRSA感染症にかかるのは高齢者や免疫の低下した人が多いので、基本的には抗MRSA薬による治療が必要となります。

医師の指示のもと、しっかりと薬を飲み続けることが治療に向けての最短ルートになります。

 

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MRSAにならないための感染対策


MRSA

MRSAは高齢者にかかりやすく、その治療も難しいことが多いです。

MRSAにならないためには感染予防が重要になります。

具体的には、接触感染予防が大事です。

MRSAは空気を通して感染することはありませんが、MRSA感染者が触ったものや唾液などを経由して感染します。

そのため、病院や介護施設に行く際はこまめに手洗いや手指消毒を行うことが重要です。

また、マスクも効果的です。

在宅で高齢者の介護を行っているご家族などは、ケアの前後に手洗いをしっかりと行うことも重要となります。

 

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西春内科在宅クリニックができる対応


西春内科在宅クリニックでは、MRSA感染症に対して抗生剤治療が可能です。

MRSA感染症は診断が難しく適切な治療が必要です。

MRSAを疑った場合は、採血検査などで細菌培養検査を行い、原因菌を特定して有効な抗菌薬投与を行います。

高齢者が数日続く発熱などを認めた場合は、MRSA感染症を疑う必要がありますが、受診が困難である場合もあると思います。

当院では、家来るドクターと連携して、ご自宅に医師が伺う救急往診を行っております。

移動が困難な患者様や夜間や休日の急な症状などの場合、電話一本で当院の医師の判断のもと適切な対処方法をご案内いたします。

 

◆家来るドクターホームページ◆

 

 

まとめ


今回は、MRSAの症状や、感染対策、治療薬などについて解説しました。

MRSAは、高齢者や体力の弱った人にかかりやすく、治すのが難しい感染症です。

MRSAにかかると様々な症状が出て、普通の薬では効きません。

そのため、MRSAに効く抗MRSA薬という特別な薬を使って治療する必要があります。

またMRSAは人や物から感染することがあるので、予防するためには手洗いや消毒などをしっかり行うことが大切です

もしMRSAを心配される方がいらっしゃれば、お気軽にご相談ください。

この記事の監修医師

監修医師: 福井 康大