肺気腫とは?COPDとの違いや治療方法などを解説
息切れや咳が続く、そんな症状でお悩みの方は少なくありません。
特に喫煙習慣のある方や長年喫煙されていた方の中には、「もしかして肺気腫?」と心配される方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、肺気腫について、症状から治療法まで、分かりやすく解説していきます。
目次
肺気腫とは?
肺気腫は、肺の組織が徐々に壊れていく病気です。
私たちの肺には「肺胞」と呼ばれる、酸素を取り込むための小さな袋がたくさんあります。
肺気腫ではこの肺胞が壊れ、次第に大きな空洞になっていきます。
その結果、十分な酸素を取り込めなくなり、様々な症状が現れるのです。
さらに症状が進行すると以下のような合併症を引き起こす可能性があります。
- 肺がん
- 心臓病
- 不整脈
- 骨粗鬆症
- うつ病
関連記事:COPD(慢性閉塞性肺疾患)はタバコが原因?症状や治療を解説
肺気腫の原因
肺気腫の最大の原因は喫煙です。
タバコの煙に含まれる有害物質が、長期間にわたって肺を傷つけることで発症します。
ただし、喫煙以外にも以下のような要因が関係します。
- 大気汚染物質への長期的な暴露
- 加齢による肺機能の低下
- 職業上の粉塵や化学物質への暴露
- 遺伝的な要因(アルファ1アンチトリプシン欠損症など)
肺気腫の症状
息切れ
肺気腫の最も特徴的な症状が息切れです。
初期では階段の上り下りや運動時にのみ感じる程度です。
ですが、病気が進行すると、歩行や日常的な動作でも息切れを感じるようになります。
咳・痰
慢性的な咳が出ることがあります。
ただし、他の呼吸器疾患と比べると、咳や痰の症状は比較的軽い傾向にあります。
朝方に咳が出やすく、痰は少量の白色や透明なものが一般的です。
体重減少
以下の理由で徐々に体重が減少することがあります。
- 呼吸のために余分なエネルギーを使う
- 食事量減少により十分な栄養が取れなくなる
肺気腫では、呼吸に通常の3~10倍ものエネルギーを消費するため、少量を頻回に分けて食べるなどの工夫が必要です。
関連記事:肺がんの気をつけてほしい初期症状や原因、ステージ(進行度)について
肺気腫とCOPDの違いは?
肺気腫はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の一種です。
COPDは、肺気腫と慢性気管支炎という2つの病態を含む総称を指します。
肺気腫が肺胞の破壊を特徴とするのに対し、慢性気管支炎は気道の炎症が主な特徴です。
肺気腫の診断方法
肺機能検査
呼吸機能検査(スパイロメトリー)を使って、肺活量や息を吐き出す速さを測定します。
特に「1秒間に思い切り吐き出せる空気の量」は、診断の重要な指標となります。
胸部レントゲンやCT検査
胸部レントゲンやCT検査で、肺の形や状態を詳しく調べます。
特にCT検査では、肺気腫に特徴的な肺の変化を詳細に確認することができます。
血液検査
酸素や二酸化炭素の量を測定し、肺の機能がどの程度低下しているかを調べます。
通常は手首の動脈から少量の血液を採取します。
この結果により、酸素療法が必要かどうかの判断も可能です。
その他
問診や聴診なども重要な診断方法です。
特に喫煙歴や職業歴、普段の生活での息切れの程度などを詳しく確認します。
関連記事:血栓とは?原因・症状・予防法・できやすい人の特徴を紹介
肺気腫の治療方法
禁煙
肺気腫の治療で最も重要なのが禁煙です。
これは単なる予防ではなく、積極的な治療の一つです。
禁煙により病気の進行を大幅に遅らせることができます。
禁煙が難しい場合は、禁煙外来の利用や禁煙補助薬の使用を検討しましょう。
薬物療法
肺気腫の薬物治療の中心となるのが吸入薬です。
呼吸の通り道である気管支を広げる薬(気管支拡張薬)を使用することで、息苦しさを軽減します。
特に効果が長く続く長時間作用型の吸入薬は、1日1~2回の使用で症状を和らげることが可能です。
病状が悪化して呼吸が特につらくなったときには、炎症を抑えるステロイド薬を追加することもあります。
理学療法
呼吸リハビリテーションと呼ばれる運動療法が効果的です。
正しい呼吸法を学び、効率よく酸素を取り入れる方法や、体力を維持・向上させる運動を行います。
また、日常生活での動作の工夫についても指導を受けられます。
酸素療法
病気が進行して血液中の酸素が不足するようになった場合、酸素吸入が必要となります。
在宅酸素療法として、自宅で酸素濃縮装置を使用することが一般的です。
外出時は携帯用の小型ボンベを使用できます。
外科療法
一部の患者さんでは手術が検討されます。
大きな空洞になった肺の部分を切除したり、胸腔鏡を使って肺を縮小したりする手術があります。
ただし、手術を行うには、以下の条件を満たすことが必要です。
- 65歳以下の方
- 禁煙を6ヶ月以上継続できている
- 病気の範囲が肺の一部に限られている
- 心臓など他の重要な臓器に重い病気がない
- 手術後のリハビリに意欲的に取り組める体力がある
特に、肺全体に病変が広がっている場合や、年齢が高めの方は手術のリスクが高くなるため、慎重に検討する必要があります。
肺気腫は治る?寿命は?
一度破壊された肺胞は元の状態に戻らないため、肺気腫は完治が難しい病気です。
しかし、適切な治療を継続することで、症状の進行を大幅に遅らせることができます。
寿命は、禁煙や適切な治療を行うかどうかで大きく変わってきます。
早期に発見し、禁煙したうえで適切な治療を続けると、多くの方が普通の生活を送ることが可能です。
ただし、重症化すると日常生活に支障が出たり、感染症などの合併症のリスクが高まったりします。
そのため、定期的な通院と治療の継続が欠かせません。
関連記事:咳喘息は喘息ではない?違いや症状のチェック項目をご紹介
西春内科・在宅クリニックでできること
西春内科・在宅クリニックでは、COPDを含む呼吸器系の疾患に対して、対応可能です。
医師による診察やレントゲン、CT検査を行い、検査結果に応じて適切な治療を行います。
また、オンライン診療にも対応しています。
心配なことがあれば当日に予約をして、受診することも可能です。
受診方法がわからない場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
肺気腫は、主に喫煙が原因で起こる肺の病気です。
完全な治癒は難しいものの、早期発見と適切な治療で進行を抑えることができます。
禁煙を基本に、薬物療法や呼吸リハビリテーションなどの治療を継続的に行うことで、多くの方が日常生活を送ることができます。
気になる症状がある方は、早めに病院を受診しましょう。
参考文献
肺気腫(COPD)の検査・治療|名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック|荒畑駅・御器所駅
肺気腫|症状や治療、ct検査について。健診会東京メディカルクリニック
肺気腫 | しおや消化器内科クリニック | さいたま市中央区 与野本町駅
肺気腫とCOPDの違いとは ~肺気腫でなくてもCOPDを発症することがある? 原因・症状・予防法などを解説~
監修医師: 西春内科・在宅クリニック 院長 島原 立樹
▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。
経歴
名古屋市立大学 医学部 医学科 卒業三重県立志摩病院
総合病院水戸協同病院 総合診療科
公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科