風邪で病院へ行くべきか?受診する目安や行くタイミングを解説

公開日:2022.11.07 更新日:2024.2.26




風邪とは正式には「風邪症候群」という名称です。

鼻水や喉の痛み、軽い咳などを代表的な症状とする急性上気道炎の総称です。

原因微生物の80~90%がウイルスとされており、ライノウイルスやコロナウイルス、RSウイルスなどが原因となることが多いです。

ウイルスには抗生剤は効きませんが、そのほとんどは安静にして水分や栄養をしっかりと取ることで数日~1週間程度で改善されます。

そのため、風邪症候群では医療機関の受診は不要です。

しかし、鼻水や咳などの風邪症候群に似た症状であっても、一部のウイルス(新型コロナウイルスやインフルエンザなど)や細菌(肺炎球菌やマイコプラズマなど)による感染症であった場合、肺炎を併発するなど症状が悪化してしまうこともあります


悪化を防ぐためには、早期の治療が重要となります。

数日たっても風邪が治らない場合や、風邪にしては症状がひどいなど、気になることがあれば、早めに病院を受診してください。

初期症状のみで見分けることは困難ですが、医療機関を受診することで発症からの経過や各種検査(抗原検査・血液検査・胸部X-p(レントゲン)・CTなど)をすることができます。

検査を受けることによって、風邪症候群なのか、悪化する可能性のあるその他の病気なのかを診断して早期に治療を開始することが可能です。

今回は、そんな風邪をひいたときに病院へ行くべきかなどについて詳しく解説していきます。


風邪で病院に行くべき目安とは?




風邪の初期症状は主に鼻水や喉の違和感です。

そのため、喉の痛みや咳嗽(がいそう)*がひどい場合や高熱が出る場合、数日しても症状が改善してこない場合には病院への受診が望ましいでしょう。


さらに症状が悪化すると、喉の痛みや発熱、咳嗽*が出現します。

風邪症候群では、鼻水や喉の違和感が症状の中心です。

喉の痛みや咳嗽、発熱は軽度にとどまることが多く、数日で症状は改善しはじめて、1週間~10日後には症状がなくなることが多いでしょう。


ただし近年の新型コロナウイルス感染症の蔓延後(2019年3月頃)以降、蔓延防止のために軽微な症状でも新型コロナウイルス感染症の検査が必要になりました。

昨今(2022年10月現在)では、withコロナに向けた政策が進み、無症候患者や濃厚接触者は十分な感染対策を行ったうえであれば買い物などの必要最低限の外出は許容されるようになりました。

国によっては行動制限を解除していたりと、新型コロナウイルス感染症に対しての制限が緩みつつある一方で、定期的な感染の拡大が続いています。

ワクチンの効果もあってか重症化率は少なくなってきたものの、重症化したり後遺症が残ったりする人が一定数みられ、また感染力がより強い株が出現するなど予断を許さない状況のままです。

感染経路がわからない陽性者も多く、周囲に陽性者がいなくても罹患している可能性があるため、現段階では軽微な症状でも病院に受診して検査を受けることを推奨します。

*咳嗽(がいそう):簡単にいうと咳のことです。気道に炎症が起きていたり、痰を吐き出そうとしたりするときに咳嗽が出やすくなります。




熱がなくても病院に行くべき?


 

熱がない場合でも喉の痛みや咳などの症状が強い場合には病院を受診をしましょう

例えば百日咳では発熱はあまりありませんが、激しい咳嗽が続き、一歳以下の乳児、とくに生後6ヵ月以下の子どもでは亡くなってしまうこともあります。

新型コロナウイルス感染症蔓延後は発熱がなくても、喉の違和感や咳嗽などの上気道症状があれば、受診をして新型コロナウイルス感染症の検査(抗原検査やPCR検査)を受けましょう。





風邪をひきはじめたときの自宅でできる対処法




風邪の引き初めには水分や栄養をしっかりと摂取して安静に過ごすことが重要です。

市販薬を含めて症状を抑える薬剤も使用しながら、しっかりと休息をとるようにしてください。

症状がひどい場合には栄養不足や睡眠不足などになりやすいため、ゼリーや栄養補助食品などの摂取や薬剤を用いて症状をしっかりと抑えることが大切になります。

また、ウイルスの多くは空気が乾いているときに拡散しやすく、乾燥は気道内の防御機能を低下させるため、加湿器などを用いて室内の湿度を保つことも有用です。

発症後の対処も重要ですが、風邪は予防をすることが非常に重要です。

マスクの着用や手洗い・うがいを積極的に行い、人の密集地を避ける、くしゃみをするときには口元を袖などでカバーするなどの咳エチケットを守るなど風邪にかからない、うつさないような生活を心かけてください。

 

関連記事:風邪に対する豆知識のまとめ!食事やお風呂、睡眠など自宅での過ごし方について

 

 

風邪と症状が似ている病気の見分け方

 


風邪症候群に症状が似ていて注意しなければならないもので代表されるものは以下の通りです。

溶連菌感染症

正式には溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌で、α溶血とβ溶血を呈する2種類があり、後者でヒトに病原性を有するものは、A群、B群、C群、G群などです。溶連菌感染症の90%以上がA群によるものです。
一般にはA群溶血性連鎖球菌(A群β溶血性連鎖球菌)による感染症を溶連菌感染症として理解されているといってもよいでしょう。主にのどに感染して、咽頭炎や扁桃炎、それに小さく紅い発疹を伴う場合があります。

 

急性肺炎

主に細菌やウイルスに感染することにより、肺の中を通る気管支のさらに先にある肺胞という部位が炎症を起こす病気です。
風邪と似た症状だが、呼吸困難や入院が必要になるほど重症化することもあるので、注意が必要です。

 

急性喉頭蓋炎

気管の入り口にある喉頭蓋(こうとうがい)は、嚥下時に食物が気管に行かないようにふたをして、食道に導く役割をしています。急性喉頭蓋炎は、喉頭蓋が細菌感染により腫れる病気です。悪化すると呼吸ができなくなり、直ちに命に関わる可能性があります。


小児では、百日咳やクループ症候群などにも注意が必要
です。

これらの疾患では風邪症候群とは異なり、強い喉の痛みもしくはひどい咳嗽があり、症状も自然経過ではなかなか改善しません。

特に急性喉頭蓋炎や百日咳などは窒息や呼吸不全をきっかけに死亡してしまうこともある病気です。

強い喉の痛み(声を出したり食事を食べたりするのがつらいほど)やひどい咳嗽(息苦しさを感じるほど)がある場合や喘鳴がある場合にはすぐに病院の受診をしてください。

また、数日経過しても症状が改善してこない場合にも、治療が必要な病気である可能性があるため、早めに病院を受診をしましょう。

 

関連記事:急性腸炎ってなに?ストレスが関係する?原因や症状について

 

 

西春内科在宅クリニックができる対応

 

西春内科在宅クリニックでは院長が内科、副院長が耳鼻咽喉科の医師であり、気道の詳細な診察に加えて、溶連菌やインフルエンザなどの迅速検査、血液検査、画像検査(レントゲン、CT)を受けることができます。

また新型コロナウイルス感染症に対しても、発熱外来を設置しています。

抗原検査キットに加えて、迅速に検査が可能なPCR検査(NEAR法)の装置も導入しており、新型コロナウイルス感染症も迅速に診断が可能です。


まとめ

 

風邪という用語は主にウイルス感染を主体とし、自然経過で改善する「風邪症候群」の通称です。

しかし、世間一般では鼻水、喉の痛み、咳嗽、発熱などの上気道症状のある病気全般を指して使われることも多く、その中には溶連菌感染症や急性肺炎、急性喉頭蓋炎などの薬物治療が必要な疾患も隠れています。

病気によっては治療の遅れにより命にかかわるものや後遺症を残してしまうものもあるため、高熱がある場合や喉の痛みが強い場合、咳嗽が強い場合、症状がなかなか治らない場合には病院への受診が必要です。


特に喉の痛みで食事を食べるのが困難であったり、息苦しさを感じるほどの咳嗽がある場合などは、窒息や低換気で命にかかわることがあるため、すぐに病院に受診しましょう。

 

 参考文献

・日本呼吸器学会「呼吸器の病気」
つばさ在宅クリニック「風邪の治りかけの症状~鼻水・下痢・痰・咳~」
戸田ファミリア耳鼻咽喉科「風邪(かぜ)症候群について」
渋谷区医師会「百日咳~長引く咳に要注意~」
厚生労働省「百日せき」

この記事の監修医師

監修医師: 福井 康大