花粉で喉が痛い・咳が止まらない時の対処法|インフルエンザとの違いは?
スギ花粉症は日本人の40%がもつ国民病です。
花粉症はくしゃみ、鼻水など鼻炎症状だけでなく、のどの違和感や咳、頭痛など、さまざまな症状を引き起こします。
今回は花粉症のメカニズムとともに、花粉症によるのど、咳症状をメインに対策や治療法について解説していこうと思います。
目次
花粉による喉の痛みや咳が止まらなくなる原因
花粉ってどういうもの?
まず、皆さんは花粉がどんなものかご存じでしょうか?
スギ花粉が花粉症の原因となりやすいということはなんとなく聞いたことがあるかと思います。
しかし、実際にどの木がスギの木で・・なんてピンときませんよね。
私が勤務する病院の近くには神社がありますが、ここにはスギの木とヒノキの木が群生しています。
スギ、ヒノキの木の写真を参考に載せます。
スギの木は皮が縦に剥がれる荒くゴツゴツした感じで、葉はトゲトゲしいです。
先端に雌花があり、これが花粉を飛ばす袋となります。
なんと、この雌花一個に約40万個の花粉が入っています。
この写真は1月に撮影したものなのでまだ雌花が熟れていない状態で若いです。
もう少しすると以下の写真のように雌花は茶色くなってきます。
一方で、ヒノキの木も皮は縦に剥がれますが、やや綺麗な感じです。
葉は、スギとは異なり平たく広がるような形をしています。
これも撮影した時期が1月だったため、雌花はついていませんでした。
この写真だけでも、スギ花粉は実際に1月ごろから飛散が始まるということが、考えられますね。
家の周りの散歩をしてみると、昔からある公園や神社にはスギやヒノキが存在しているので、観察してみるといいでしょう。
では、花粉はどんなものでしょうか?
一般的に言われるスギ花粉症の花粉のサイズは30μm(マイクロメーター)です。
だいたい髪の毛の太さの半分くらいと言われています。
文献1)より引用
よく、天気予報などでPM2.5という名前を耳にするかもしれませんが、これは2.5μm以下というサイズの粒子状物質という意味です。
花粉はこれよりだいぶ大きい粒子ということになります(下図)。
また、花粉にはスギやヒノキだけではなく様々な種類があります。
そして、花粉飛散の仕方で分類すると、樹木花粉と雑草花粉に分かれます。
樹木花粉 | スギ、ヒノキ、シラカバ、ハンノキなどの高い木 |
雑草花粉 | ブタクサ、ヨモギ、イネなどの雑草 |
それぞれの特徴として、樹木花粉は県をまたぐくらい遠くまで飛散します。
雑草花粉は近くまでしか飛散しません。
例)家の近くに川の土手があり、そこにブタクサがたくさん生えている場合、症状が発症する可能性が高いが、家の近くから離れると症状がでない。
また花粉が飛散する時期には季節性があります。
代表的なスギ花粉は2月くらいから本格的な飛散が始まり、ゴールデンウィークくらいまで続きます。
その頃にヒノキ花粉の飛散が増え始め、バトンタッチします。
早い年ではスギ花粉は12月くらいから飛散します。
以下の表は花粉飛散時期がわかるカレンダーとなります。
あまり知られていませんが、秋や夏の花粉もあり、これらは雑草で近所の公園や川沿いの土手などに生息しています。
近くにこのような植物が生えているようでしたら、これらのシーズンも注意しましょう。
文献2)より引用
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花粉症に悩む人たちへ:花粉症の原因と症状について
気道について
これらの粒子が人間の呼吸(特に鼻呼吸)で気道に取り込まれます。
気道とは、鼻から入った空気が肺に届くまでの経路です。
肺は体内で発生した二酸化炭素と外から吸入した酸素を交換する役割の臓器です。
人間の気道は大きく以下に分かれます。
- 上気道
- 下気道
簡単にいうと、上気道とは鼻やのどまで、下気道とは気管から肺にかけてと分類されます。
人間が呼吸をする上で、できるだけきれいな空気を外から取り入れたいところですが、外界にはウイルスや細菌、花粉など様々な異物が存在しています。
これをフィルターする機能が気道には備わっています。
PM2.5程度の粒子は吸入されると下気道の気管の末梢まで到達しやすいです。
花粉は、まず鼻の入口で鼻毛によって、もう少し入って、鼻やのどの表面に存在する線毛(*1)や粘液(*2)でトラップされやすく、末梢まで到達しにくいです。
そのかわりに鼻やのどに付着しやすいと言われています。
線毛(*1)=異物が体内に入らないようにブロックする毛の構造 粘液(*2)=粘膜表面に分泌される接着のりのようなもの |
花粉症とアレルギー
花粉症は鼻の中のアレルギー反応の一つです。
アレルギー性鼻炎は、以下に分類されます。
- 一年中症状を起こす通年性アレルギー性鼻炎
- 特定の時期だけに症状を起こす季節性アレルギー性鼻炎
花粉症はその花粉が飛散するシーズンのみのアレルギーです。
花粉症は季節性に分類されます。
季節性アレルギー性鼻炎の特徴としては、常に抗原(アレルギー反応の原因となる物質)に暴露しているわけではありません。
突然そのシーズンになって発症するので、突然風邪を引いたような鋭い症状を呈します。
一方で、通年性アレルギー性鼻炎は症状に慣れてしまっている方も多く、症状が出ない人も多いです。
アレルギーとは、体に入ってきた異物を排除する仕組みが過剰に起こり、それがかえって人の生活の質を下げてしまう現象です。
アレルギー(I型アレルギー)反応は、ウイルスや細菌といった危険な異物と異なります。
花粉のような特に危険ではない異物に暴露され続けることで、身体の免疫細胞が反応することがきっかけになります。
一方で、ウイルスや細菌など危険な異物が侵入してきた際には、感染が成立しないように、一般的な免疫反応によって侵入者を撃退します。
危険でない異物に暴露され続けると、免疫反応によって、その異物に特異的なIgEという抗体を産生します(これを感作とよびます)。
これは、その特定の異物にのみ作用し、他の異物には反応しません(これを抗原特異的反応と呼びます)。
このIgEが粘膜や皮膚に存在する肥満細胞(マスト細胞)という免疫細胞に結合し、ヒスタミンをはじめとする、さまざまな化学物質を産生することで発症します。
花粉症の症状について
花粉症の三大症状というと、『くしゃみ』『鼻汁』『鼻づまり』が一般的です。
この他に目、鼻、のどの『かゆみ』も起こります。
これらのかゆみ症状は以下のように場所によって様々な症状となります。
目 | しょぼしょぼする感じ |
鼻 | むずむずする感じ |
のど | いがいがする感じ |
この症状の原因としては、鼻や目の粘膜における過敏性が高まっている状態(*1)と捉えることができます。
この過敏性亢進には先述した肥満細胞(マスト細胞)が産生するヒスタミンが主に関与しています。
花粉症は鼻の症状だけではありません。
全身の粘膜や皮膚の多くには肥満細胞が存在しているため、皮膚、気管やのどの粘膜の過敏性が高まると、皮膚の痒み、のどの違和感、咳を誘発します。
過敏性が高まっている状態(*1)=普通の状態よりも敏感になっている状態=過敏性亢進 |
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なかなかよくならない咳
では、なかなかよくならない咳とはどのようなものでしょうか?
咳は持続期間による分類として以下に分かれます。
急性咳嗽(きゅうせいがいそう) | 3週間未満でよくなる咳 |
遷延性咳嗽(せんえんせいまんせいがいそう) | 3〜8週間持続する咳 |
慢性咳嗽(まんせいがいそう) | 8週間以上持続する咳 |
慢性咳嗽の原因を以下に列挙します。
下気道の疾患(肺や気管に原因があるもの)
- 気管支喘息
- 咳喘息
- 慢性気管支炎
- 気管支拡張症
- 間質性肺炎
- 肺結核や非定型抗酸菌症
- 肺がんなど気管支・肺の悪性腫瘍
上気道の疾患(鼻やのどに原因があるもの)
- 感冒後遷延性咳嗽
- アトピー咳嗽
- 後鼻漏咳嗽
- 慢性副鼻腔炎
- 喉頭アレルギー
- アレルギー性鼻炎
- 咽喉頭酸逆流症(逆流性食道炎)
慢性咳嗽では、多くの疾患が鑑別として挙げられます。
また、アレルギー性鼻炎に伴う咳はアトピー咳嗽や喉頭アレルギーといった疾患と併存していることが多いです。
スギ花粉症のシーズン(1月くらい)に入ってから、なぜか咳が出てきて止まらなくなってしまったという患者さんは案外多く、慢性咳嗽の原因としては見逃せません。
次に、花粉症におけるのどの症状や咳について深堀りしてみましょう。
>>花粉症に悩む人たちへ:花粉症の原因と症状について
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花粉症によりのどに症状が出る原因
花粉症のシーズンになってから突然、のどの違和感や咳症状といった咽喉頭症状を呈する患者さんが多数います。
鼻水やくしゃみといった鼻炎症状がないために、風邪かな?って思って来院される患者さんもいらっしゃいます。
花粉症によるのどの症状は、なんで起こるのでしょうか?原因は主に以下の3つが考えられます。
- 鼻汁がのどに回り込むこと(後鼻漏)による、のどの粘膜損傷
- 鼻呼吸障害(鼻呼吸がうまくできない)による、口呼吸による弊害
- 1.2に付随するウイルス、細菌感染による咽頭炎
1.【後鼻漏による粘膜損傷について】
アレルギー性鼻炎で分泌される鼻水には、さまざまなタンパク質が含まれています。
それとともに好酸球(こうさんきゅう)という血球が含まれます。
好酸球は本来は寄生虫をやっつける血球でしたが、今の日本人で寄生虫を保有している人はごく少数です。
好酸球はアレルギー反応において組織中に誘導される血球です。
何らかのアレルギーを2人に1人はもっているこのご時世ですので、好酸球の今の活躍の場はアレルギー反応と言えます。
Q:好酸球はどのようにして寄生虫をやっつけるのでしょうか??
A:好酸球の中に含まれる顆粒タンパクです。
これらの顆粒タンパクは強力で、寄生虫にとっては生息しづらい環境をつくります。
アレルギー反応においても、好酸球はこの顆粒タンパクを放出します。
しかし、この顆粒タンパクが働く部位は、粘膜上皮(表面)になります。
鼻やのどの粘膜表面に付着したこの顆粒タンパクは、表面の上皮細胞を障害し、焼け野原にしてしまいます。
本来は体を守るために存在している好酸球ですが、体を壊す原因となってしまいます。
この好酸球や顆粒タンパクが含まれる鼻水がのどに流れ込むと、のどの粘膜を障害する原因となります。
障害された粘膜は神経が過敏となり、のどの痛みを引き起こします。
2.【口呼吸による弊害について】
アレルギー性鼻炎の患者さんは、潜在的に口呼吸となっていることが多いです。
鼻には外の環境から入ってきた空気を、クリーンで害のない状態にする空気清浄機のようなシステムがあります。
先程、鼻毛や線毛、粘液によってウイルスや花粉などを捕えて異物の侵入を防ぐと言いました。
それ以外に双璧をなす鼻の大切な以下の機能があります。
- 入ってきた空気を保温する機能
- 入ってきた空気を加湿する機能
まさに鼻は寒い寝室の加湿器と暖房の2つの役割をもつジェネレーターとしての機能があります。
アレルギー性鼻炎の患者さんの鼻は、粘膜が腫れぼったくなっています。
そのため、鼻水の分泌が多く、鼻呼吸によって空気が入っていくスペースがあまりないことが多いです。
下の図は、右鼻の入口から見た鼻の中の見え方です。
アレルギー性鼻炎の鼻では、粘膜がぶよぶよで、鼻水の分泌も多く、鼻の通りが悪くなります。
そうなると、人間は鼻呼吸を諦め、口呼吸に切り替え始めます。
残念ながら口には、鼻のような加温、加湿機能はほとんどなく、冷たく乾燥した空気が直接、のどや気管、肺に入ってきてしまいます。
このような空気は、のどや気管の機能を低下させます。
のどの粘膜はカピカピに乾燥するだけでなく、冷たい空気は線毛機能を低下させます(文献3より)。
関連記事:喉の痛みや咳が止まらない方必見、風邪を早く治す方法や風邪に効く薬の選び方
3.【粘膜上皮障害および口呼吸に付随するウイルス、細菌感染について】
鼻やのどの粘膜の表面には、線毛や粘膜だけでなく、ウイルスや細菌の侵入を防止する粘膜バリア機能が存在しています。
しかし、1や2の原因によってバリア機能の破綻がおこると、ウイルスや細菌感染が成立し、咽頭炎や喉頭炎を引き起こしやすくなります。
花粉症によるのどの痛み
先ほどの冒頭で示した原因によって、花粉症では咽頭炎が起こります。
これは風邪をひいたような痛みを引き起こします。
また、鼻呼吸の障害により、口呼吸が長引くと、口の中の環境が悪くなります。
すると、咽頭の中にある扁桃組織の感染もおこり急性扁桃炎を起こすこともあります。
急性扁桃炎では、高熱と食事摂取が困難なくらいの、のどの痛みを引き起こします。
余談ですが、口呼吸による口腔環境の悪化は、虫歯の原因ともなりますので、お子さんなどでも要注意です。
花粉症による咳
咳に関しては、先ほどの冒頭で示した花粉症による喉頭炎が原因となることが多いです。
花粉はサイズの問題で、気管に到達することが少なく、喘息の誘発因子とはなりにくいと言われていました。
しかし、最近では上気道症状の悪化は下気道病変の悪化をきたすとも言われており、喘息をもつ患者さんが、花粉症で悪化するとの報告もされています。
また、咳の原因の項でお示ししたアトピー咳嗽、咳喘息、喉頭アレルギーは病態が混在していることも多く、鑑別は難しいです。
一般的には喉頭アレルギーは喉頭粘膜におけるアレルギー反応(感作)が成立している状態で、それにより喉頭が敏感になってしまった状態。
アトピー咳嗽、咳喘息ともに気管における病態ですが、その鑑別は気管支拡張薬への反応性で鑑別します。
咳喘息は、気管支拡張薬で症状の改善がみられますが、アトピー咳嗽では改善しません。
もともと、喉頭とは敏感な臓器です。
何故かというと、食べた食事が気管に入ってはいけないという、誤嚥防止機能(ごえんぼうしきのう)が喉頭にはあるからです。
耳鼻咽喉科でよく使う喉頭ファイバーで喉頭の組織を、ほんの少しでも触ってしまうと、患者さんは強く咳込みます。
このように喉頭には密に知覚神経が張り巡らされており、異物が喉頭に付着しようものなら、咳で侵入を阻む機能があり、これを咳嗽反射と呼びます。
喉頭炎においては、喉頭の神経過敏がおきています。
これは、今まで10の刺激を与えないと、咳嗽反射が起こらなかったものが、5くらいの刺激で、反射が起きてしまうということです。
このような喉頭知覚過敏の状態では、周囲の温度変化や、ストレスなどでも咳を誘発する原因となります。
1、2月くらいから、なんとなく咳が多いなと思ったら、花粉症による咳も一つの原因と考えておくべきです。
>>風邪をひいて病院に行くべきタイミングはいつ?風邪と症状が似ている病気の見分け方
風邪やインフルエンザ・コロナとの見分け方
花粉症とウイルス感染
先述のように花粉症は、咽頭炎、喉頭炎を起こします。
また、花粉症ではバリア機能障害があることでウイルス感染を二次的に起こしやすいことを述べました。
ウイルスは気道の粘膜に付着すると、細胞の中に入り込み、細菌の中から破壊し、それを繰り返します。
その結果としてのどの粘膜を焼け野原にします。
イメージとしては、花粉症による喉頭炎で、ウイルスが付着しやすい状態をつくり、実際にウイルス感染がおこると、ボロボロの粘膜になるといったところでしょうか。
花粉症?風邪?見分け方
前述でお伝えしたのは、かなり悪化してしまった状態ですが、花粉症と風邪の見分け方を説明します。
以下の4点がポイントかと思います。
- 花粉症単独では高熱は出ない
- 花粉症では、鼻や目のかゆみ(むずむず)が出るが、風邪では出にくい。
- 花粉症によるのどの痛みは、夜から朝にかけて症状が強く、日中はあまり気にならない。
- 花粉症では、アレルギーの薬を使っている期間は症状がないが、薬をやめると症状が出る。
花粉症でのどの痛みがある場合に、3.はよい判断材料になります。
これは、花粉症などアレルギー性鼻炎では、副交感神経が優位になる夜から朝にかけて、鼻の粘膜の腫れが強くなり、症状が悪くなります。
それにより口呼吸の悪化が夜寝ているうちにおこります。
就寝中の体位は後鼻漏が多く、構造的にも狭くなりやすいため、のどの炎症も起こりやすくなります。
日中になると、自律神経が調整されるのと、体位の問題で症状が起こりにくくなります。
インフルエンザやコロナウイルス感染は倦怠感や38℃以上の発熱をきたすことが多く、やはり感染症としては強い症状をきたすことが多いです。
花粉症では、軽度な咽頭炎であり、37.5℃以上の発熱は起こりにくいです。
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花粉症に対するお薬
アレルギーに対するお薬のタイプ
アレルギーの薬は内服と点鼻薬があります。
一般的に処方されるお薬の種類を一つづつ解説します。
内服薬
抗ヒスタミン薬
アレルギー性鼻炎において最も処方されるお薬です。
アレルギー反応において肥満細胞などから産生される神経過敏を引き起こすヒスタミンという物質が、生体に作用するのをブロックするお薬です。
第一世代から第三世代まであり、かなり歴史のあるお薬ですが、いまだに進化して新しい薬が販売され続けています。
抗ヒスタミン薬は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりにバランスよく効くお薬です。
抗ヒスタミン薬の問題点は、脳内移行性であり、この移行性が高いお薬ほど眠くなります。
また、第一世代の抗ヒスタミン薬は、抗コリン作用という副作用が強く、前立腺肥大症や緑内障の患者さんは、悪化するリスクがあるため注意しましょう。
第二世代抗ヒスタミン薬は、脳内移行性や抗コリン作用に関しては改善がみられます。
また、ここ数年で発売されるようになった第三世代は、新しい抗ヒスタミン薬で、脳内移行性はだいぶ低くなります。
病院で処方される薬は、第二世代、第三世代が主流です。
以下に第一世代から第三世代の薬をお示しします。
第一世代:ポララミン®︎、タベジール®︎など
文献4)より引用
第二世代:ザイザル®︎、クラリチン®︎、アレロック®︎、アレグラ®︎、タリオン®︎、アレジオン®︎、エバステル®︎、ザジテン®︎、アゼプチン®︎、ゼスラン®︎、レミカット®︎など
文献4)より引用
第三世代:ビラノア®︎、ルパフィン®︎、デザレックス®︎
抗ヒスタミン薬とステロイド薬の合剤
代表的なものとしては、セレスタミン®︎があります。
抗炎症薬の代表格となるステロイド薬が含まれる薬です。
効果は鋭いですが、ステロイド薬は副作用がおおいので、短期的な使用が望ましいです。
また、ここに含まれる抗ヒスタミン薬は第一世代抗ヒスタミン薬であり、眠気が強いという特徴があります。
文献4)より引用
抗ヒスタミン薬と血管収縮薬の合剤
代表的なものとして、ディレグラ®︎があります。
鼻づまりに対して鋭い効果があります。
抗ヒスタミン薬は第二世代のアレグラ(フェキソフェナジン)が使用され、血管収縮薬であるプソイドエフェドリンが混合されています。
眠気は少ないですが、血管収縮薬は注意すべきです。
交感神経を刺激する作用があるので、高血圧や心疾患の方、緑内障、前立腺肥大の方は悪化するリスクがあるため控えましょう。
またコーヒーを飲んでいるような覚醒作用もあり、夜間の中途覚醒などを起こすことがあります。
これも、短期使用に限定することが推奨されており、症状のコントロールがみられたら普通の抗ヒスタミン薬へシフトする必要があります。
文献4)より引用
抗ロイコトリエン薬(キプレス®︎、シングレア®︎、オノン®︎)
市販薬にはありませんが、病院で処方される薬になります。
主に鼻づまりに効果があります。
また、アレルギーに関連する血球である好酸球による炎症を抑制する効果もあり、鼻やのどの過敏性を落とす効果も期待できます。
文献4)より引用
点鼻薬
鼻噴霧ステロイド薬
鼻内に噴霧するステロイド薬です。(アラミスト®︎、ナゾネックス®︎、フルナーゼ®︎、エリザス®︎など)
非常に有効性の高い薬です。
毎日使用することで、鼻粘膜におけるアレルギーのベースを持続的に抑制する作用があります。
刺激の少ないパウダー製剤やミスト状に噴射する製剤などもあります。
毎日使用すると有効であり、使用感はとても大切になります。
文献4)より引用
点鼻血管収縮薬
鼻づまりに有効な点鼻薬剤です。
血管収縮薬が含まれており、2時間程度の鼻閉の改善が期待できます。
鼻粘膜の交感神経に作用する薬ですので、使用しすぎると鼻粘膜の収縮拡張機能に異常をきたし、それによる点鼻性鼻炎を起こします。
(鼻は通っているのに、詰まっている感じがでたりする)
就寝前など1日1、2回程度の使用にしましょう。
その他、舌下免疫療法や先進医療として、花粉症に対する抗体治療などもありますが、一般的な処方薬剤を提示しますので、今回は割愛します。
のどの症状に対するお薬のタイプ
気道粘液調整薬
ムコダイン®︎(カルボシステイン)やムコソルバン®︎が一般的です。
気道の線毛の運動を促したり、粘液の分泌を調整する作用があります。
あまり副作用がなく、使いやすいお薬です。
副鼻腔炎など併発している際に有効です。
抗炎症薬
トランサミン®︎(トラネキサム酸)がよく処方されます。
咽頭や扁桃に作用して抗炎症効果を発揮します。
弱いながら血液を固める作用があるので、脳梗塞や狭心症など血栓症の方は注意が必要です。
鎮咳薬
いわゆる咳止めです。
メジコン®︎やアスベリン®︎がよく処方されます。
これらはあまり副作用は心配しなくてよい咳止めです。
しかし、強い咳止めとして、処方されるリン酸コデイン®︎は、ふらつき、眠気、めまいなどの副作用があり、連用には注意が必要です。
咳止めは安易な使用の前に、まずは咳の原因に対する治療が大切となります。
その他の処方薬
漢方薬
アレルギー性鼻炎に対して処方される漢方薬として、小青竜湯®︎(ショウセイリュウトウ)があります。
これはエビデンスのある治療薬として、鼻アレルギー診療ガイドラインにも記載されています(文献4)。
くしゃみ、鼻汁、鼻閉において有用と報告されています。
小青竜湯には麻黄という有効成分が含有されています。
これは、血管収縮薬と同様の効果があり、特に鼻閉に有用ですが、長期連用は控えるべきです。
文献4)より引用
その他の漢方薬として、麦門冬湯®︎(バクモンドウトウ)があります。
これはのどの違和感を伴うような咳に対して処方されます。
『麦門冬』という有効成分は、のどを潤す作用があり、のどの乾燥感のある患者さんにもしばしば処方される漢方薬です。
含嗽薬(うがい薬)
処方薬としては、アズノールうがい薬®︎や、イソジン®︎うがい薬があります。
花粉症によるバリア機能が低下したのどの粘膜に対して、ウイルスや細菌の感染予防となります。
また、のどに付着した花粉を洗い流す効果も期待できます。
市販薬について
市販薬には、多数の有効成分が混合されているお薬と、病院で処方されるお薬と同一の成分のお薬があります。
よくテレビCMなどでも耳にする、クラリチン®︎、アレグラ®︎、アレジオン®︎は病院で処方されるものと同様の成分が含まれる抗ヒスタミン薬です。
すべて第二世代抗ヒスタミン薬であり、脳内移行性が低く、眠くなりにくいお薬です。
その他の多数の有効成分が混合されているお薬には、第一世代の抗ヒスタミン薬が配合されていることもあります。
そのため、眠気が強く出る可能性があり注意が必要です。
また、病院で処方されたお薬と、市販の合剤を併用で内服すると、同一成分を多量に内服する可能性があります。
ご自身が内服しているお薬を薬剤師さんに提示し、相談の上で購入しましょう。
病院やクリニックでの処方について
病院やクリニックにおける処方は、患者さんの症状をトータルに改善させるための処方となります。
そのために多数の処方薬となることが多いです。
以下のように処方薬が分類されます。
- 現在起きている病態(原因)に対する処方
- 付随する所見や症状を緩和するための処方
以下のような患者さんを例に処方を考えてみます。
例)花粉症による、咽頭喉頭炎があり、咳や痰がきれないような症状のある患者さん。
処方例)
aのお薬 | ビラノア、キプレス、アラミスト点鼻薬(花粉症の期間継続) |
bのお薬 | ムコダイン、トランサミン、メジコン、アズノールうがい薬 (短期的に使用) |
この患者さんは鼻汁、くしゃみ、鼻づまりの三大症状すべて強い症状を呈する花粉症患者さんだったため、aのお薬として、アレルギーの薬だけでも3剤併用しています。
鼻アレルギー診療ガイドラインでは、症状の強さで重症度を評価し、鼻汁、くしゃみ型か鼻閉型か、その両方の充全型かで推奨される治療法が異なります(文献5)。
そして、bのお薬として、二次的に生じたのどの症状に対して、ムコダインやトランサミンを使用し、咳症状に対してメジコンを使用しています。
また、ウイルス、細菌感染予防にうがい薬も使用しています。
基本的にアレルギーがコントロールできて入れば、のどの症状は二次的に起こることはないと考え、bのお薬は短期的な内服のみとなっています。
よく患者さんから『市販の咳止めを使っているけど、ぜんぜんよくならないよ!』と相談を受けますが、これはaの原因を絶っていないからと考えます。
日常生活での予防法
環境調整
花粉症は、まずは発症しないように準備をしておくことも大切です。
そのためには、次の認識が大切になります。
- 自分が花粉症であることを知る
- 花粉情報をテレビの天気予報やインターネット情報で知る
- 花粉が多いときの外出は控える
- 花粉の多いときは窓は開けない
- 外出時はメガネ、マスクを使う
- できるだけ表面が毛羽だった服装をしない
- 外出から帰宅したら、洗顔、うがい、鼻かみをする
- 床の拭き掃除をする
まずは、自己(花粉症があるかどうか)と敵(花粉の飛散状況)を知ること。
そして、外出時はできるだけ花粉を浴びないように注意し、花粉を家に持ちこないことが大切になります。
生活習慣
ストレス、疲れ
アレルギー反応は疲れていたり、睡眠不足など自律神経機能が乱れていると、起こりやすいと言われています。
鼻の粘膜は交感神経と副交感神経により反応が起こり、鼻汁分泌や粘膜の変化などをおこします。生活習慣の乱れは、鼻炎の増悪する因子とも考えられています。
喫煙
喫煙はのどの粘膜や気管のバリア機能を低下させ、のどの違和感や咳を誘発する因子となるため、花粉症によるのどの炎症を悪化させる因子となるため控えましょう。
飲酒
飲酒は血管を広げる作用があり、鼻の粘膜においても血管拡張が起こり、鼻の粘膜が腫れる原因となります。
それによって、鼻つまりの悪化、二次的に口呼吸のリスクとなります。
西春内科在宅クリニックができる対応
花粉症は、生活環境調整とお薬で多くの患者さんがコントロール可能な疾患です。
西春内科在宅クリニックでは症状に合わせた内服処方および、適切な指導が可能となります。
原因不明の咳の場合は、重篤な肺疾患などの可能性も考えられます。
そのような場合は、高次医療機関への紹介をさせていただくこともあります。
>>風邪に対する豆知識のまとめ!食事やお風呂、睡眠など自宅での過ごし方について
まとめ
今回は花粉症のメカニズムとともに、花粉症によるのど、咳症状をメインに対策や治療法について解説しました。
花粉症は日本人の多くが罹患している国民病です。
ご自身が花粉症と認識していなくても、スギ花粉に対するアレルギー感作が成立している患者さんは多数存在しています。
1月中旬くらいから、他にかぜ症状がなく、原因不明の咳が出ている中には花粉症が原因の咳ということもあります。
本コラムを参考して、花粉症かも…?と思われる方は是非、お近くのクリニック・病院へ受診していただけたら幸いです。
参考文献
1 )龔秀民 スギ花粉アレルゲンCry j 1、Cry j 2の室外 および室内の飛散挙動に関する研究 2016
2 )花粉症ナビ
3 )粘膜線毛機能の最適化:加湿について 人工呼吸 2002
4 )アレルギー性鼻炎の主な治療薬 日本アレルギー協会
5 )鼻アレルギー診療ガイドライン -通年性鼻炎と花粉症- 2020年版
監修医師: 耳鼻咽喉科専門医/アレルギー専門医 永田 善之
専門分野
耳鼻咽喉科全般 アレルギー・鼻副鼻腔疾患
専門分野
日本耳鼻咽喉科学会専門医・指導医
日本アレルギー学会専門医