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健康寿命を伸ばすためのポイントや気をつけるべき病気や疾患とは

健康寿命

皆さんは、「健康寿命」と「平均寿命」の違いをご存知でしょうか?

健康で長生きすることは、誰もが望むことですが、その実現には「健康寿命」という概念が重要になってきます。

一方で、「平均寿命」という言葉もよく耳にしますが、これとは何が異なるのでしょうか?

今回は、健康寿命と平均寿命の違いや、健康寿命を延ばすためのポイント、健康寿命を縮めてしまうかもしれない病気や疾患について解説していきます。

健康で長生きするためのヒントが満載ですので、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

健康寿命の定義

健康寿命

健康寿命とは、一般的な健康状態で生活できる期間のことを指します。

つまり、病気や障害などによる制限がなく、自分の意思で日常生活を営むことができる期間です。

健康寿命には、肉体的、精神的、社会的な健康状態が含まれます。

ただし、高齢化によって機能が低下することは避けられないため、年齢に応じた生活の制限はあるものと考えられます。

 

関連記事:訪問診療と在宅診療(往診)の違いとは|利用基準や診療内容について

 

 

健康寿命の推移

 

健康寿命

日本の健康寿命は、近年、延び続けています。

日常生活に制限のない期間(健康寿命)は、令和元年時点で男性が72.68年、女性が75.38年となっています。

それぞれ平成22年と比べて延びています(平成22年→令和元年:男性2.26年、女性1.76年)。

同期間における健康寿命の延びは、平均寿命の延び(平成22年→令和元年:男性1.86年、女性1.15年)を上回っています。

高齢化が進む中、高齢者における障害や疾患の発生率が高くなっています。

そのため、健康寿命が延びても、介護が必要な状況に陥る人が増えていることにも注意が必要です。

 

関連記事:心筋梗塞の危険な前兆と症状|後の生活や後遺症について

関連記事:老人性うつとは?|原因や特徴・認知症との違いを解説

 

 

健康寿命と平均寿命の違い

 

健康寿命

健康寿命と平均寿命は、どちらも人間の寿命に関する指標ですが、異なる意味を持ちます。

平均寿命とは、生まれた人たちが平均的に何歳まで生きるかを表す指標です。

つまり、あくまでも生きる期間を表します。

例えば、日本の男性の平均寿命は約81歳、女性の平均寿命は約87歳です。

これは、日本で生まれた男性が平均的に81歳まで生きることを意味し、

女性は平均的に87歳まで生きることができるということです。

一方、健康寿命は、「健康な状態で生きられる期間」を表す指標です。

つまり、あくまでも「健康で生きられる期間」を表します。

健康寿命は、健康な状態で日常生活を送ることができる期間を示すため、

平均寿命よりも人々の生活に密着した指標と言えます。

つまり、平均寿命は「生きる期間」を、健康寿命は「健康で生きる期間」を示す指標となります。

 

関連記事:脳卒中の原因、どんな人がなりやすいか、脳卒中の症状や前兆症状、予防対策をご紹介

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健康寿命を伸ばすメリット

 

健康寿命

介護費用が減る

健康寿命を伸ばすことで、高齢期における介護の必要性を低減できます。

介護費用の軽減により、経済的な負担を軽くすることができます。


保険料が安くなる

健康寿命を伸ばすことで、健康保険や介護保険の保険料が安くなる場合があります。

長期にわたって健康を維持することで、保険料の支払い負担が軽減されます。


生活の質が向上する

健康寿命を伸ばすことにより、健康状態が良好な状態が続きます。

健康な状態で生活を続けることで、精神的なストレスや不安感が軽減され、生活の質が向上することが期待できます。


疾患リスクが低下する

健康寿命を伸ばすことで、疾患発症のリスクが低下する可能性があります

健康的な生活習慣を維持することで、生活習慣病やがんなどの疾患発症のリスクが低減されます。


以上のように、健康寿命を延ばすことには、家計面や社会貢献面でのメリットがあります。

また、健康的な老後生活を送ることで、自分自身の人生においても大きなメリットがあると言えます。

 

関連記事:高脂血症になりやすい原因とは?脂質異常症との違いや治療について

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健康寿命を伸ばすためのポイント


健康寿命

運動


運動は健康的な体を維持するために重要
です。

適度な運動は心臓や肺、筋肉を強化し、骨密度を増やすことができます。

また、運動によって血糖値や血圧を下げることができ、肥満や生活習慣病のリスクを減らすことができます。

毎日の生活に少し運動を取り入れることが大切です。

具体的には、ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳、筋力トレーニングなどがおすすめです。

食事


健康的な食生活を送ることは
、健康寿命を延ばす上でも重要です。

バランスのとれた食事を心がけることで、栄養素を適切に摂取し、

肥満や生活習慣病のリスクを減らすことができます。

食事には、野菜や果物、豆類、全粒穀物、魚、肉、卵、乳製品など、

様々な栄養素を含む食品をバランスよく取り入れるようにしましょう。

また、食事の回数や量にも注意が必要です。

過度な食事制限は健康に悪影響を与えることがあるため、無理なく健康的な食事を続けることが大切です。

定期的な検診


健康寿命を伸ばすためには、定期的な健康診断が欠かせません。

検診を受けることで、早期発見・早期治療ができ、病気や疾患の進行を防ぐことができます。

定期的な検診を受けることで、健康的な生活を送るためのアドバイスをもらうこともできます。

 

関連記事:高血圧の原因になりやすい食事や食べてはいけないものとは?

関連記事:【認知症外来監修】高齢者に多いせん妄とは?認知症との違いや症状、原因について解説

 

 

健康寿命を縮めてしまうかもしれない病気や疾患

 

健康寿命

全ての病気や疾患は心身共に負荷がかかります。

そういった意味では全ての病気や疾患が健康寿命を縮めてしまうのですが、特に健康寿命を縮めやすい疾患が以下になります

生活習慣病

生活習慣病とは、運動不足や不規則な食生活、ストレスなど、生活習慣が原因となって発症する病気の総称です。

糖尿病や高血圧、脂質異常症、肥満症などが含まれます。

これらの病気は、予防に取り組むことが重要です。


がん

がんは、正常な細胞ががん細胞に変異して増殖し、周囲の組織を侵食する病気です。

普段の食生活、喫煙や過剰な飲酒、過度の紫外線への曝露などが原因とされています。

早期発見、早期治療が重要です。


認知症

認知症は、脳の機能が低下して記憶力や判断力、言語能力などが障害される病気です。

加齢や遺伝、生活習慣などが原因とされています。

予防には、適度な運動や認知症予防トレーニング、バランスのとれた食生活などが重要です。


脳血管・心血管疾患

脳梗塞や脳出血、心筋梗塞や心不全などの重大な疾患の総称です。

喫煙や高血圧、高脂血症、糖尿病などが原因とされています。

予防には、適度な運動やバランスのとれた食生活、禁煙などが重要です。


これらの病気や疾患は、予防や早期発見が重要です。

健康的な生活習慣を心がけ、定期的な健康診断や検診を受けることが、健康寿命を延ばすために必要なことです。

 

関連記事:動脈硬化で起きる症状とは|改善方法や治すことはできる?

 

 

西春内科在宅クリニックができる対応

 

健康寿命

西春内科・在宅クリニックでは、健康寿命を延長させるための生活習慣のアドバイスや、

健康寿命を短縮させないための健康診断・二次検診

健康寿命を短縮させ得る生活習慣病・認知症などの治療が行えます。

『少しでも健康で長生きしたい』そういった患者様のお声に寄り添うように診療を行っております。

ぜひ、お気軽にご相談下さい。

 

 

まとめ


今回は、健康寿命と平均寿命の違いや、健康寿命を延ばすためのポイント、健康寿命を縮めてしまうかもしれない病気や疾患について解説しました。

健康寿命を伸ばすことのメリットは、介護費用の削減や保険料の安価化、

個人の人生を充実・豊かにすることなど、個人や社会にとって多岐にわたります。

健康寿命を伸ばすためには、適度な運動やバランスのとれた食事、定期的な検診などが重要です。

また、健康寿命を縮めてしまう可能性のある病気や疾患を予防するためにも、適切な予防策を取ることが必要です。

健康寿命を大切にし、健康的なライフスタイルを維持することが、より充実した人生を送るための重要なポイントとなります。

参考文献

内閣府「健康・福祉」

アトピー咳嗽の原因はストレス?症状のチェック項目や治し方を紹介

アトピー咳嗽

咳は多くの人々が経験するとても一般的な症状の一つです。


しかし、その背後にはさまざまな原因が隠れていることがあります。

特に、咳が長引き、特定の時期や状況で症状が顕著になる場合、単なる風邪や環境の変化だけでなく、アトピー咳嗽の可能性も考える必要が出てきます。

アトピー咳嗽(がいそう)とは、アトピー性皮膚炎やアトピー性鼻炎と同じく、アトピーの一部として分類される疾患です。

主な症状は咳であり、特に夜間や早朝に症状が増強することが多いとされています。

さらに、アトピー咳嗽の特徴として、咳が数週間以上にわたり持続することが指摘されています。

この症状は一般的な風邪の咳や季節性のアレルギーによる咳とは異なります。

アトピー咳嗽は、体内の免疫反応や炎症が関与していると考えられており、特定の刺激やストレスが症状を悪化させることがあります。

また、このアトピー咳嗽は、一般的な認知度はまだ高くないかもしれませんが、適切な知識や対応があれば、日常生活の質を大きく向上させることが可能です。

この記事では、アトピー咳嗽の詳しい原因や症状、そしてその対処法について詳しく解説していきます。

 

 

アトピー咳嗽の原因


アトピー咳嗽

アトピー咳嗽は、その名称からも伺える通り、アトピー性の疾患の一つです。

しかし、アトピー咳嗽の特性や原因について、詳しく知っている人はまだ少ないかもしれません。

以下、この疾患の原因や簡単な概要について解説します。

疾患の概要


アトピー咳嗽は、アトピー性の免疫反応が原因となる、気道の炎症を主症状とする疾患です。

一般的にアトピーとは、体が過敏に反応することで、炎症や症状が生じる状態を指します。

アトピー咳嗽では、この過敏反応が気道において生じ、持続的な咳という症状が現れます。

ストレスとの関係


ストレスはアトピー咳嗽の原因や悪化要因の一つとして知られています。

ストレスが加わることで、体の免疫バランスが乱れることがあり、これがアトピー性の反応を引き起こす要因となり得ます。

特に、持続的なストレスや過度な緊張は、気道の炎症を引き起こす可能性が高まります。

日常生活の中でのストレス管理は、アトピー咳嗽の予防や治療において非常に重要な要素となります。

その他の原因


アトピー咳嗽の原因は、ストレスのみならず、様々な要因が絡み合っています。

アトピー咳嗽では咳が出やすくなっており、通常では反応しないような様々な環境要因(タバコの煙や会話など)や遺伝、乾燥した空気や冷たい空気への暴露、そして一部の食物や薬物も引き金となって頑固な咳を引き起こします。

 

アトピー咳嗽は、多様な原因が絡み合った結果、気道の過敏反応としての咳が主な症状として現れる疾患です。

ストレスもその重要な要因の一つとして位置づけられ、日常生活の中での適切なストレス管理が病状のコントロールに寄与すると考えられます。

また多様な原因で増悪することもあり、アトピー咳嗽の原因や概要を理解することは、その治療や予防、そして日常生活の質の向上に繋がります。

 

関連記事:乾燥で咳が止まらないのはなぜ?咳の特徴や悪化させないための方法を紹介

 

 

アトピー咳嗽かもしれない症状チェック項目


アトピー咳嗽

アトピー咳嗽は、一見すると通常の風邪や他の疾患に起因する咳と区別が難しいことがあります。

しかし、アトピー咳嗽には特有の症状や咳の特徴があります。

以下に、アトピー咳嗽である可能性が高まる症状のチェック項目の特徴を一つづつ解説します。

持続するドライな咳


アトピー咳嗽の最も一般的な特徴は、持続する乾いた咳です。

この咳は、痰が伴わないことが多いのですが、症状が進行すると痰がからむこともあります。

痰の特徴


アトピー咳嗽の場合、痰が絡むときは、その痰は粘性が高く、透明または白色のことが多いです。

このような痰の特徴は、気道の炎症や過敏反応の結果として現れるものです。

夜間や早朝の咳


夜間や早朝、特に寝起きの時間帯に咳が強くなることもアトピー咳嗽の典型的な症状の一つです。

これは、横になることで気道の状態が変わり、炎症が強まることが原因とされています。

特定の刺激による咳の悪化


強い香りや冷たい空気、乾燥した環境、またはタバコの煙など特定のアレルゲンに触れた際に咳が悪化することがあります。

これは、アトピーの過敏反応が気道で生じていることを示唆しています。

声のかすれや喉の痒み


咳だけでなく、声のかすれや喉の痒みもアトピー咳嗽の症状として現れることがあります。

これは、気道の炎症が声帯や喉の周辺にも影響を及ぼしていることを示しています。

過去のアトピー歴


アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎など、他のアトピー性疾患の既往歴がある場合、アトピー咳嗽のリスクが高まることが知られています。

効果的な治療の反応


アトピー咳嗽の疑いがある場合、アトピー性の炎症を抑制する治療が効果的であることが多いです。

例えば、ステロイド薬の吸入などが効果的である場合、アトピー咳嗽である可能性が高まります。

以上のチェック項目を通じて、自分の咳がアトピー咳嗽に起因するものなのか、一般的な咳とは異なる特性や症状があるのかを把握することができます。

もし複数の項目に該当する症状がある場合には、早めに専門医の診断を受けることをおすすめします。

 

 

アトピー咳嗽はうつる可能性があるの?


アトピー咳嗽

アトピー咳嗽についての理解が深まってくると、多くの人々が次に抱く疑問は「この疾患は他人にうつるのか?」ということでしょう。

ここでは、アトピー咳嗽が他人に感染する可能性について、科学的な背景とともに詳しく解説します。

アトピー咳嗽の本質


まず基本的に理解すべきことは、アトピー咳嗽は感染性の疾患ではないということです。

アトピーは体の免疫システムが過敏に反応することで起こる疾患であり、特定のウイルスや細菌によって引き起こされるものではありません。

感染とアトピーの違い


一般的な感染症は、ウイルスや細菌などの病原体が体に侵入することで症状が現れます。

これに対して、アトピー性の疾患は、外部の刺激やアレルゲンに対する体の過敏な反応が原因となっています。

したがって、他人からの感染によってアトピー咳嗽が発症することは考えられません。

遺伝的要因


アトピー性疾患の背後には遺伝的な要因が関与していることが知られています。

つまり、家族内でアトピー性疾患を持つ人がいると、同じ家族内でアトピーが発症するリスクは高まるとされています。

これは「感染」ではなく、遺伝的な素因の結果です。

環境要因の影響


アトピー咳嗽の発症には、遺伝的要因以外にも環境的な要因が影響していることが指摘されています。

一定のアレルゲンにさらされること、生活環境の変化、ストレスなどがアトピーの症状を引き起こすトリガーとなることがあります。

他の疾患との混同


アトピー咳嗽の症状は、他の感染症の症状と似ていることがあります。

しかし、これは症状の類似性に過ぎず、アトピー咳嗽自体が感染するわけではありません。

上記のことを考慮し、疾患の理解を深め、正確な情報を得ることが重要です。

また、アトピー咳嗽を疑う症状が現れた場合には、早めに専門医の診断を受けることをおすすめします。

 

関連記事:免疫力を高める方法や食べ物について|低下してしまう原因も解説

 

 

咳喘息やコロナとの違いは?


アトピー咳嗽

咳や呼吸に関する症状をもたらす疾患や状態は多岐にわたります。

特にアトピー咳嗽、咳喘息、そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、一般の人々の間でも大きな関心を集めています。

それぞれの疾患や状態が持つ特徴や違いを知ることで、適切な対応や治療方法を選択する手助けとなります。

アトピー咳嗽

原因

アトピー性疾患の一つで、体の免疫システムが過敏に反応し、炎症を引き起こす。

主な症状や特徴

長期間持続する乾いた咳、咽頭違和感、夜間から明け方の増悪、会話や喫煙、冷気など特定の状況で増悪しやすい、咳止めや気管支拡張薬が効かない、など

感染性

アトピー咳嗽自体は感染しない。


咳喘息

原因

喘息の一形態であり、気道が炎症を起こし狭くなることによって引き起こされる。

主な症状

咳が主な症状で、夜間や早朝に悪化することが多い。
喘息の典型的な「ゼーゼー」する呼吸音は少ない。女性に多い傾向。

感染

咳喘息自体は感染しない。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

原因

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症。

主な症状

発熱、乾いた咳、息切れ、筋肉痛、疲労感など。
肺炎を引き起こすと重症化に至るケースもある。
味覚や嗅覚障害をもたらすこともある。

感染

他人に感染する可能性がある。
感染経路は主に飛沫感染。


疾患の違いのポイント

発症のメカニズム

アトピー咳嗽や咳喘息は、体内の免疫システムや気道の炎症反応が関与するが、COVID-19はウイルス感染によるもの。

感染性

アトピー咳嗽や咳喘息は感染症ではないため、他人に感染するリスクはない。
一方、COVID-19は感染症であるため、飛沫を介して他人に感染する可能性がある。

治療方法

アトピー咳嗽や咳喘息の治療は、主に症状を和らげるための薬や、ステロイド薬、原因となるアレルギー物質を避けることなどが中心となる。
COVID-19の場合は、ウイルスに対する薬や症状を和らげる治療が一般的に行われる。


咳や呼吸に関する症状が現れたとき、それが何によるものか正確に判断することは難しいことが多いです。

しかし、その症状の背後にある疾患や状態を理解することで、適切な診断や治療を受けることができます。

何か症状が気になる場合は、必ず医師に相談し、適切な指導を受けるようにしましょう。

 

 

アトピー咳嗽は自然治癒する?


アトピー咳嗽

アトピー咳嗽の患者さんやそのご家族からよく受ける質問の一つに、「アトピー咳嗽は自然治癒するのか?」というものがあります。

この質問の背景には、患者さんたちの強い願望があるのは間違いありません。

誰しも、薬や治療を行わずに自然に治ることを望むものです。

では、アトピー咳嗽は実際に自然治癒するのでしょうか。

アトピー咳嗽の特徴と成り立ち


アトピー咳嗽は、体の免疫反応が過敏になることで発症する疾患の一つです。

乾いた咳が長期にわたり持続し、夜間や明け方に増悪することが主な症状として現れることが多いです。

自然治癒する可能性


一般的に、ある疾患や症状が自然治癒するかどうかは、その疾患の原因や成り立ち、患者の体質や生活環境など多くの要因が関係してきます。

アトピー咳嗽についても、完全に自然治癒するかは一概には言えません。

しかし、以下のようなケースでは自然治癒の可能性が考えられます。

初期段階や軽度の症状


初期段階や軽度の症状の場合、体の自然な免疫反応や生活習慣の改善、ストレスの軽減などで症状が改善されることがあります。

原因となる刺激物の除去


アトピー咳嗽の原因となる刺激物(例: アレルギー物質、タバコ、寒暖差など)を適切に避けることで、症状が改善されることが期待されます。

成長とともに


お子さんの場合、成長とともに体質が変わることでアレルゲンに対する過敏性が変化しアトピー咳嗽の症状が改善されることもあります。

自然治癒を待つリスク


アトピー咳嗽の症状が強い場合や非常に長期間続く場合、自然治癒を待つだけではなく、適切な治療を受けることが重要です。

長期間症状が放置されると、日常生活に影響を及ぼすだけでなく、他の疾患の症状に気付かなかったり、他の疾患を起こすリスクも高まることが考えられます。

アトピー咳嗽が自然治癒するかどうかは、個人の体質や症状の程度、生活環境の変化など多くの要因によって異なります。

自然治癒を期待することはできますが、症状が長期化している場合には適切な診断や治療を受けることで、より早く症状の改善を目指すことが最善の策と言えるでしょう。

 

関連記事:新型コロナの後遺症の一覧と症状が長引くときの対処法

 

 

アトピー咳嗽の治し方


アトピー咳嗽

アトピー咳嗽は、その名の通りアトピー性の反応が原因となる咳の一種です。

こちらでは、アトピー咳嗽の治し方として、市販薬からクリニックでの治療方法までを詳しく解説します。

市販薬による対処法


アレグラ、アレジオンなどアトピー症状を和らげる抗アレルギー薬を内服することで過剰なアレルギー反応を抑制し、症状緩和に繋がることが期待できます。

アトピー咳嗽の症状が軽度の場合には、このような市販薬での対処も一つの選択肢です。

ただし、効果の現れ方は個人差があるため、内服していても症状が続く場合には医師の診断を受けることが推奨されます。

また、薬局では様々な抗アレルギー薬が市販されています。

効果や内服後の眠気の程度などそれぞれの薬の特徴や効果、副作用などを理解した上で選択することが重要です。

分からない場合には医師や薬剤師に相談してみましょう。

クリニックでの治療方法

アレルギー検査


アトピー咳嗽の原因となるアレルギー物質を特定するための検査を受けることが可能です。

原因となる物質を特定することで、それを避ける生活習慣の指導や、特定の治療法の選択が可能となります。

吸入ステロイド薬


重度のアトピー咳嗽の場合、吸入ステロイドの使用が推奨されることがあります。

炎症を抑制する効果があり、咳の症状を和らげることが期待されます。

免疫療法


アレルギーの原因となる物質に対する体の反応を緩和させる治療法。

アトピー咳嗽の原因となるアレルギー物質を微量から徐々に増やして接種し、体の過敏な反応を抑制することを目的としています。

長期にわたって治療が必要なケースもあるため、適応や注意点など医療機関でしっかりと説明を受けるようにしましょう。

生活習慣の指導


アレルギー物質を避けるための生活習慣の指導や、ストレスを軽減するためのアドバイスなどが含まれます。

日常生活の中での工夫や改善点を見つけ出すことで、症状の軽減や再発の予防に繋がります。

アトピー咳嗽の治し方は、症状の重度や個人の体質、生活環境などに応じて異なります。

市販薬での対処から、専門のクリニックでの治療まで、様々な選択肢がありますので、自身の症状や状況に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。

症状が続く場合や重度の場合には、早めに専門医の診察を受けることをおすすめします。

 

 

西春内科在宅クリニックができる対応

 

アトピー咳嗽は、一般的な風邪の咳とは異なり、アトピー性の反応が原因となる特殊な咳です。

西春内科・在宅クリニックでは、手寧な問診・診察を行い、原因特定のための検査を行います。

アレルギー性の反応だった場合、吸入ステロイドの処方やアレルギー薬の投与など、具体的な治療方法を実施

生活環境などをお伺いし、掃除の方法や、ペットとのかかわり方の指導など必要に応じた指導を行います。

また、当院ではアレルギーの原因物質に少しずつ身体を慣らしていく舌下免疫療法を行うことが出来ます。

咳が長く続いている場合原因が様々ですので、まずはお気軽にご相談ください。

舌下免疫療法について詳しくは以下をご確認下さい。

 

関連記事:花粉症に効く舌下免疫療法(アレルゲン免疫療法)って?費用・期間・効果は?

 

 

まとめ

 

アトピー咳嗽という疾患は、多くの人々の生活の中で注目されるべきトピックとなっています。

本記事を通じて、少しでも理解の手助けになったのであれば幸いです。

アトピー咳嗽は、特有の症状や原因を持つ疾患ですが、最も注目すべきはその原因と治療法の多様性です。

ストレスや環境要因がその発症に関与しているとされ、特に現代社会においては、日常の生活の中での対応が求められます。

痰がからむ症状や持続的な咳は、我々の日常における健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。

一方で、販薬やクリニックでの治療、生活習慣の見直しといった多岐にわたる治療法が存在します。

市販薬を使用する際は、効果・副作用を理解して使用することが大切です。

また、市販薬を使用していても症状が長引く場合は医療機関に相談しましょう。

参考文献

‣Irwin RS, Baumann MH, Bolser DC, et al. Diagnosis and management of cough executive summary: ACCP evidence-based clinical practice guidelines. Chest. 2006;129(1_suppl):1S-23S.
‣Fujimura M, Ogawa H, Nishizawa Y, Nishi K. Comparison of atopic cough with cough variant asthma: is atopic cough a precursor of asthma? Thorax. 2003;58(1):14-18.
‣Fujimura M. Pathophysiology, diagnosis and treatment of cough in atopic bronchial asthma and atopic cough. Allergology International. 2008;57(3):265-270.

ワキガ・汗の臭いの原因は?効果的な対策をご紹介

ワキガ

 


まだまだ日中は暑い日が続いており、外出中は特に汗がじんわり出てきますね。

 

汗は皮膚から直接出ているわけではなく、汗腺という器官から分泌されています。

 

汗には体温の調節という重要な役割があり、蒸発するときに熱を奪うことで、体温を下げることが出来ます。

 

人が生きていくうえで必要な汗を出す過程で、なぜ臭いが強く出るのか、その原因と効果的な対策、治療方について詳しく解説します。

 

ワキガや汗の臭いに悩む方は必見の情報です!




ワキガと汗の臭いの原因

 

ワキガの原因

 

ワキガ

 

ワキガの原因は、アポクリン汗腺(特定の部位にある汗腺)から分泌される、脂肪やたんぱく質、鉄分、アンモニアなどを含む汗です。


その汗を、皮膚の常在菌が分解する際にため、ワキガ特有の臭いが生じます。

 

「特有の臭い」とは硫黄・温泉のような臭い、鉛筆の芯の臭い、カレースパイスの臭いと例えられます。

 

アポクリン汗腺は脇の下や乳首、陰部など蒸れやすい部位に多いです。

 

ワキガが強い人は、体質的にアポクリン汗腺が大きい、または数が多いなどの特徴があります。

 

また、脂質の多い食生活だと、汗に脂肪分が含まれやすくなり、臭いの原因となります。

 

汗の臭いの原因

 

ワキガ

 

エクリン汗腺(体全体にある汗腺)から分泌される汗の99%は水分で無臭です。

 

しかし、汗が皮脂や垢と混ざり、それを皮膚の常在菌が分解することで臭いが発生します。

 

また、エクリン汗腺から大量に汗が出る症状が多汗症と呼ばれます。


関連記事:汗が臭い原因と対策を男女別にわけて解説|匂いの特徴についても

ワキガのセルフチェック

 

ワキガ

 

ここ最近の暑さでは特に臭いが気になる方も多くいらっしゃると思います。

 

以下の手順に従って、自分がワキガの可能性があるかチェックしてみてください。

 

ガーゼテストで臭いをチェック

 

清潔なコットンやガーゼを脇の下に挟み、5分後に臭いをチェックする方法です。

 

コットンやガーゼがない場合は、清潔な白いTシャツでも構いません。

 

多くの病院で使用されている5段階評価を使って、以下のようにチェックします。

 

レベル.1ガーゼから臭いがしない問題なし
制汗剤や消臭剤で対処可能
レベル.2ガーゼから少し臭いがする
レベル.3ガーゼに鼻を近づけると特有の臭いがする軽度のワキガ
レベル.4ガーゼの1m以内であれば特有の臭いがする中度のワキガ
レベル.5ガーゼから1m以上離れても特有の臭いがする重度のワキガ

 

レベル.3以上からは手術適応になる場合もあるので、医師と相談してみましょう。

 

他にも、ワキガになりやすい人の特徴として以下のようなものがあります。

 

  • □耳垢が湿っている
  • □家族にワキガの人がいる
  • □洋服の脇の部分が黄ばむ
  • □脇毛の量が多い
  • □周囲の人に臭いを指摘されたことがある
  • □お肉や乳製品を食べることが多い
  • □ストレスが多い
  • □不規則な生活習慣




ワキガ・汗の臭い対策5選

 

ワキガ

 

汗をこまめにふき取る

 

汗をこまめにふき取ることで、皮膚の常在菌による汗の分解を防ぎ、臭いを軽減できます。

 

自宅や職場では、小さなタオルや汗拭きシートを持ち歩き、汗をかいたらすぐにふき取る習慣をつけましょう。

 

制汗剤と消臭剤の活用

 

制汗剤や消臭剤をで、汗の分泌を抑えて臭いを防げます。

 

アルコールフリーや敏感肌用の製品を選ぶと、肌への負担を軽減できます。

 

最近ではスプレータイプ、ロールオンタイプ、クリームタイプなど多くの種類があるので、シチュエーションに合わせて日常的に使用しましょう。

 

脇毛の処理

 

脇には常在菌が多く存在し、脇毛によって汗がたまり、臭いが発生しやすくなります。

 

定期的な脱毛やシェービングを行うことで、臭いを抑えられます。

 

衣服の選び方で臭いをカット

 

吸湿性や通気性の良い素材の衣服は、汗を素早く蒸発させ、臭いの原因となる湿気を防ぎます。

 

特に綿やリネンなどの天然素材がおすすめです。

 

他にも、防臭加工が施された衣類も、汗の臭いを抑えることができます。

 

ワキガの汗臭さを軽減する食事法

 

食事内容も臭いに影響します。

 

脂肪分や動物性たんぱく質の多い食事は臭いを強くするため、控えることが大切です。

 

特に、以下のようなビタミンB群やビタミンCを多く含む野菜や果物を多く摂ることで、体臭を軽減できます。

 

ビタミンB群

  • アボカド
  • 玄米
  • アーモンド
  • かつお

ビタミンC

  • キウイフルーツ
  • パプリカ
  • みかん


関連記事:足の臭いが洗っても取れないのはなぜ?|内臓が原因?治し方を紹介

ワキガ・汗の臭いに治療は必要?

 

ワキガ

 

ワキガや汗の臭いで病院を受診する目安として、以下を参考にしてください。

 

  • 上述した対策では効果が無かった
  • 本人が臭いを気にしている
  • 家族や周囲の人も臭いを気にしている
  • 横にいて分かる程度の臭いがする
  • 電車などで人を間に挟んでいても分かる程度

 

ご本人だけの判断では、臭いがしていると思い込んでいる可能性があるため、家族や周囲の方の意見が重要です。




ワキガ・汗の臭いの治療法

 

ワキガ

 

外用薬

 

外用薬は、ワキガや汗の臭いを軽減する一般的な治療法です。

 

抗菌作用や制汗作用のあるクリームやローションを処方し、臭いの原因となる常在菌の繁殖を防ぎます。

 

以下の項目に当てはまる方には外用薬がおすすめです。

 

  • 軽度から中程度のワキガの人
  • 手軽に治療を始めたい人
  • 敏感肌やアレルギー体質の人

 

副作用でかゆみが出ることもあるので、自分に合うものを探しましょう。

 

内服薬

 

抗コリン薬や抗不安薬を用いて、汗の分泌を抑えます。

 

特に、精神的なストレスが原因で汗をかきやすい人には効果的です。

 

以下の項目に当てはまる方には内服薬がおすすめです。

 

  • 中程度から重度のワキガの人
  • ストレスや緊張が原因で汗をかきやすい人
  • 外用薬で改善傾向が見られない人

 

ただ、全身の発汗が抑えられるので、熱中症には気を付けてください。

 

注射

 

ボトックス注射は、汗腺の働きを一時的に抑える効果があります。

 

即効性があり、注射後数日以内に効果が現れ、数ヶ月間臭いを抑えることができます。

 

以下の項目に当てはまる方はボトックス注射がおすすめです。

 

  • 中等度から重症のワキガの人
  • 短期間で効果を実感したい人
  • 手術に抵抗がある人

 

手術

 

医師が手術が必要と判断した場合には、保険適用で手術が出来ます。

 

一般的な手術方法は、皮弁法(反転剪除法)でアポクリン汗腺を取り除く方法です。

 

シワに沿って切開し、ハサミで汗腺を切り取ります。

 

日帰りが可能な場合も多いですが、術後2~3週間後は安静にする必要があります。

 

しっかり医師と相談しながら検討してください。

 

以下の項目に当てはまる方には手術がおすすめです。

 

  • 重度のワキガの人
  • 根本的な解決を望む人
  • 他の治療で改善傾向が見られない人


関連記事:加齢臭がする原因と対策を解説|どんな匂い?何歳から匂う?

西春内科・在宅クリニックでできる対応

 

ワキガの臭いに対して悩みを抱えている人は実際多くおり、日本人の約10%はワキガの体質を持っていると言われています。

 

当院では、まずは食事や衣服などの自己対策と外用薬・内服薬での治療をメインに行っています。

 

改善傾向が見られない場合は、手術が行える皮膚科や形成外科をご紹介が可能です。

 

少しでも臭いが気になる方はお気軽にご相談ください。




まとめ

 

ワキガの原因をしっかりと理解し、セルフチェックで自分の状態を把握することから始めましょう。

 

日常生活でのケアや効果的な対策を取ることで、臭いを軽減できます。

 

また、自己対策で十分な効果が得られない場合は、医師の診断を受け、正しい治療法を選ぶことが重要です。

 

最後に、日常生活の工夫や食事の見直しも忘れずに行い、快適な生活を手に入れましょう。

 

参考文献

 

日本形成外科学会 腋臭症診療ガイドライン

ワキ汗・ワキガの内服薬・外用薬など各治療の特徴を解説!

ワキガになる原因とは|どんな匂い?治療法や治し方について解説 | 横浜内科・在宅クリニック

アルツハイマーになりやすい人の特徴は?認知症との違いや原因、初期症状について

アルツハイマー型認知症は、認知症の中では最も多い疾患です。


アルツハイマー型認知症の特徴的な初期症状に「物忘れ」がある一方で、物忘れがあったからと言って、必ずしもアルツハイマー型認知症とは限りません。


偽性認知症といって、偽物の認知症が隠れていることがあります。


2022年6月時点の日本において、アルツハイマー型認知症を完治させるための有効な治療法はありません。


そう聞くと、発症してしまった時に、ショックを受けてしまうかもしれませんが、早期に適切な対策を行うことでアルツハイマー型認知症の発症を遅らせることも可能です。


また、物忘れの原因が、その他の体の病気によって引き起こされている可能性もありますし、一見認知症のように見えても、適切に治療することで改善する場合もあります。


今回は、最近物忘れが気になるという方のために「アルツハイマー型認知症」について詳しく紹介いたします。

 


アルツハイマー型認知症とは



日本における65歳以上の認知症の人の数は、約600万人(2020年現在)と推計され、
2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)が認知症になると予測されております。


アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳の神経が変性(形が壊れて本来の働きができなくなること)し、その結果少しずつ脳が萎縮していく過程でおこる認知症です。


特に、海馬と呼ばれる記憶をつかさどる部分から萎縮が始まることが多いため、物忘れが有名な症状ですが、進行していく過程で様々な症状がみられます。

 

アルツハイマー型認知症になる原因


アルツハイマー型認知症は、
アミロイドβやタウタンパクというタンパク質が脳に異常に溜まることにより発症します。


脳に溜まったタンパク質が、脳神経の変性を引き起こすことで、脳のなかでも記憶に関わる海馬という器官から萎縮が始まり、徐々に脳全体に広がっていきます。


少し分かりにくいので、たとえ話をします。


脳の細胞1つ1つが家で、その中に人が住んでいたとします。人が毎日生活していれば、当然そこからゴミがでます。それが、上述したタンパク質です。


若いころはちゃんとゴミ捨てに行くため、ゴミが溜まることは無いのですが、高齢になるにつれてゴミ捨てをサボるようになります。


そうすると、少しずつゴミが溜まっていき、いつしか自宅はゴミ屋敷になってしまいます。自分が出したゴミが長年に渡って溜まりに溜まり、いよいよゴミに埋もれて家主が死んでしまった、特にこういった現象は記憶をつかさどる場所で起きやすい、これがアルツハイマー型認知症のイメージです。


つまり、アルツハイマー型認知症は、症状が出るずいぶん前から進行が開始しており、発症した時には、既にゴミ屋敷が完成してしまっているため、治療が困難という現状があります。


ちなみに、なぜ脳にたんぱく質が溜まってしまうのか(なぜゴミ出しをサボるようになるのか)は、現段階でははっきりとした原因は解明されていません。


現在、この溜まったゴミを処理できるような薬の開発が、世界各国で行われています。

 

アルツハイマー型認知症の初期症状について


アルツハイマー
型認知症の代表的な初期症状は、記憶障害、いわゆる「物忘れ」です。

 

昔のことはしっかりと覚えているのですが、新しい情報を記憶するのが困難になってきます。

 

そのため、何度も同じ話をしてしまったり、片付けたことを忘れて探し物をしていることが増えたりします。

 

正確には記憶の障害では無いのですが、見当識障害といって、初期では特に時間の感覚がなくなることがあります。

 

また、実行機能障害も気を付けなければならない症状です。

 

いつもは出来ていたことが出来なくなる、段取りが悪くなることを指します。

 

良く例に挙げられるのは、料理好きのお母さんの料理の味が変わった、調理に時間がかかるようになったなどです。

 

記憶障害や実行機能障害のことを、認知症の中核症状と呼びます。


中核症状は、脳の神経細胞の障害によって起こる認知機能障害です。


しかし、認知症では、その中核症状に加えて、環境要因や心理要因などが加わり、結果として様々な精神症状や行動障害が出現し、それをBPSD(Behavioral and psychological symptoms of dementia)と呼びます。


アルツハイマー型認知症の初期に見られるBPSDとしては、次の2つがあります。


アパシー(apathy)と呼ばれる、日常生活において、さまざまな場面で、やる気や関心が失われていく状態です。


周囲からは、無気力に感じられたり、だらしなくなったなどと言われることがあります。


はっきりと目に見えて現れるものではありません。そのため、周囲の人たちも症状の進行に気づくのが遅れてしまいがちです。


もう一つが、物取られ妄想です。短期の記憶が失われやすいために、自分で片づけたにも関わらず、片づけたことを忘れてしまうため、無くなってしまったと誤解してしまいます。


結果として、誰かに取られてしまったという妄想(明らかに間違った内容を信じてしまい、周囲が訂正しようとしても受け入れられない考え)に繋がっていきます。

 

アルツハイマー型認知症になりやすい人の特徴


厚生労働省の統計では、アルツハイマー型認知症の男女比は1:1.4と、やや女性が多くなっています。

しかし、日本における平均寿命は女性の方が長く、高齢になればなるほど認知症になりやすいことを考えると、この比率は正確では無いのかもしれません。

閉経後の女性ホルモンの低下が、アルツハイマー型認知症の誘因になるという考え方もあります。

また、生活習慣の観点からも、アルツハイマー型認知症の研究は進んでいます。高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症・食生活・運動不足、アルコールなど、さまざま指摘があります。
 

アルツハイマー型認知症と遺伝の関係性


アルツハイマー型認知症の遺伝については、2つの側面があります。

家族間の遺伝の問題と、個人が持つ遺伝子の問題です。

まず、家族間の遺伝が関係するとされる
家族性アルツハイマー型認知症と、遺伝は関係しない孤発性アルツハイマー型認知症についてです。

アルツハイマー型認知症の約90%は、遺伝と関係のない孤発性アルツハイマー型認知症で、全体の約5%が遺伝と関係するアルツハイマー型認知症と言われています。

それとは別に、症状の出現をより高めてしまう性質を持つ遺伝子があり、それを感受性遺伝子と呼びます。

現在では、アルツハイマー型認知症の発症に関係する感受性遺伝子が多く見つかっていますが、その中でも特に関係性が深く、危険性が高いとされているのが、アポリポタンパクE4遺伝子(APOE4)です。

この遺伝子は日本人の約10~15%が保有しています。この感受性遺伝子があると
3~5倍アルツハイマー型認知症を発症しやすいとされています。

感受性遺伝子そのものが発症の原因になるわけではありません。感受性遺伝子を持っている人が、生活習慣やほかの病気などと複合的に関係して認知症の発症に至ります。

そのため、発症のリスクを高める1つの要因と考えるべきです。

>>認知症における顔つきの特徴と症状や種類について

アルツハイマーと認知症の違いは?




アルツハイマーと認知症は違うものと思われがちですが、先述した通り、
アルツハイマー型認知症とは認知症の中のひとつです。


アルツハイマー型認知症と加齢に伴う物忘れの違いは?


アルツハイマー
型認知症による記憶障害は、加齢による物忘れと異なり、体験を丸ごと忘れる点が特徴です。


例えば、昨日財布をどこにしまったかを忘れてしまったと言うのと、財布をしまったこと自体を忘れてしまうのでは、大きな違いがあります。


アルツハイマー型認知症でみられるのは後者です。


結果的に、財布が見当たらなくなってしまった状況に陥り、混乱した結果、「財布は誰かに盗まれたに違いない」と自分を納得させる理解をし、ものとられ妄想という症状が出現します。

>>認知症が一気に進む原因や知っておきたい予防と対策について

 

アルツハイマー患者の寿命について


アルツハイマー患者は、
発症してから約10年が平均余命とされますが、進行速度には個人差が大きく、あくまで平均であるというのが、実際に診療していての印象です。

 

また、実際には誤嚥性肺炎など、認知症に伴う合併症によって亡くなることもしばしばです。

 

アルツハイマー型認知症の診断基準


アルツハイマー型認知症の診断基準について見てみましょう。


詳細は下記の通りなのですが、注目してほしいのは、「特定の検査で引っかかったら」という項目は見当たりません。


アルツハイマー型認知症の検査はあくまで診断の補助であって、診断において最も重要なのは、「今までできていたこと(若いころには問題なくできたこと)が、明らかに出来なくなってきている」ということ、そしてそのために「日常生活に支障が出てきている」ということです。


 アルツハイマー型認知症の診断基準【ICD-10】


G1.以下の各項目を示す証拠が存在する.

(1)   記憶力の低下

新しい事象に関する著しい記憶力の減退.重症の例では過去に学習した情報の想起も障害され,記憶力の低下は客観的に確認されるべきである.

(2)   認知能力の低下

判断と思考に関する低下や情報処理全般の悪化であり,従来の遂行能力水準からの低下を確認する.


(1)(2)により、日常生活活動や遂行能力に支障をきたす.

 

 G2. 周囲に対する認識(すなわち,意識混濁がないこと)が, 基準 G1 の症状をはっきりと証明するのに十分な期間, 保たれていること.せん妄のエピソードが重なっている場合には認知症の診断は保留.

 

G3.次の 1 項目以上を認める.

(1)情緒易変性

(2)易刺激性

(3)無感情

(4)社会的行動の粗雑化

 

G4. 基準 G1 の症状が明らかに 6 か月以上存在していて確定診断される.

アルツハイマー型認知症の病院での検査


アルツハイマー型認知症の検査は、大きく分けて「
神経心理学的検査」と「画像検査」に分かれます。

神経心理学検査


「神経心理学検査」は、
簡単な質問や作業によって行われる検査です。

 

最も広く行われているのは、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)ではないでしょうか。HDS-Rは、記憶を中心とした大まかな認知機能障害を調べる検査です。

 

日付や場所、単語の記憶や、単純な計算などを行います。

 

30点満点中20点以下だった場合、認知症の疑いが高いとされていますが、点数が悪くても、すぐに認知症と診断されるわけではありません。

 

その他にも、MMSEや時計描画テストなども、比較的行われることが多いです。

 

画像検査


「画像検査」では、
頭部CTや頭部MRIが多く実施されています。

 

両者とも、脳の形をみる検査になります。アルツハイマー型認知症によって脳が萎縮していきますが、その萎縮の仕方などを診断の補助としています。

 

また、これらの検査は、その他の病気によって、認知症のような状態になってしまった病気を発見するのに有用です。

 

代表的な疾患に、特発性正常圧水頭症慢性硬膜下血腫があります。

 

それぞれの病気についての詳細は割愛しますが、これらの病気は正しく治療することで回復する可能性があります。

アルツハイマー型認知症の病院で治療ついて


現在、日本で使用されているアルツハイマー型認知症の治療薬は、全部で
4種類あります。

 

2018年8月より、フランスでは、これらの薬の使用が保険適用外となりました。

 

有効性の面で、これらの薬の投与が、行動の障害やQOL(生活の質)、施設入所までの期間などに与える影響が十分に確立されていないと指摘しています。

 

簡潔に言えば、アルツハイマー型認知症に対して効果があったと十分に立証できていないのです。

 

さらに、安全性の面においても、色々な持病を持っていることが多い高齢者にとって、特に消化器や循環器などに対して、副作用のリスクがあると追記しています。

 

こうした有効性・安全性の評価を踏まえ、公的医療保険を適用するのは適切ではないという結論に至りました。

 

日本でも、もちろんこういった議論は継続しています。

 

日本神経学会のガイドラインでは、認知症の治療薬の処方を強く推奨していますが、奥村泰之氏(東京都医学総合研究所)など、推奨を弱めるか、強く推奨する年齢層を限定する必要があると提言している研究者もいます。

 

少し大雑把な説明になるかもしれませんが、現在使用されている抗認知症薬は、「効果があるかもしれないし、無いかもしれない」といったレベルの薬であり、副作用のことも考慮すると、使用は慎重に行うべきということです。

 

しかし、アルツハイマー型認知症に対する新薬開発は、世界中で行われています。


そして、2022年6月にアメリカにてアデュカヌマブ」が承認されました。


世界初の治療薬として期待される中、同月22日に日本での承認について審議が行われました。厚生労働省の専門部会は、現時点ではアルツハイマー病の治療薬として承認するべきではないと判断し、継続審議となりました。

 

日頃からできるアルツハイマー予防対策




アルツハイマー型認知症の予防に効果的な方法はいくつかありますが、
明らかに効果が実証されたものはありません。


しかし、実証されてないからと言って、効果がないということでもありません。


アルツハイマー型認知症は、糖尿病や高血圧、脂質代謝異常といった生活習慣病と深い関わりがあります。


そのため、生活習慣病を予防することが認知症の原因疾患及び認知症の予防に繋がるということです。


そのためには、適度な運動や、食生活の見直しなど、当たり前のようで実際には難しいことに、取り組んでいくことが大切になります。


特に筆者は糖尿病との関連について注目しています。


具体的には、糖尿病の方はそうでない方と比べると、アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすいとの報告があります。


また、糖尿病のコントロールが悪い(糖尿病が未治療もしくは上手くいっていない)アルツハイマー型認知症患者さんは、抑制を欠いた言動が目立つなど、BPSDの症状が強くでる印象を持っています。


いずれにせよ、若いころから健康に留意し、病気があってもきちんと治療しておくことが、結果的にアルツハイマー型認知症の予防に繋がっていく可能性があるということです。

>>物忘れがひどくなる原因は?|認知症との違いや物忘れ対策について

 

家族がアルツハイマー患者になったときの向き合い方





家族がアルツハイマー型認知症になった時、どのように関われば良いのか、具体的に解説する前に、アルツハイマー型認知症になったらどんな風につらいのか想像してみましょう。


アルツハイマー型認知症では、今まで出来ていたこと、分かっていたことが、少しずつできなくなる、わからなくなっていきます。


例えば、みなさん友人と話しているのは、とても楽しい時間だと思いますが、もしその友人が急にドイツ語を交えるようになったらどうでしょう。友人はあなたがドイツ語を分かっているものと思って話しています。


そうすると、多くの人がわかったふりをしたり、とりつくろったりするのではないでしょうか。さらに進んで、ほとんどドイツ語で話しかけられたらどうでしょう。だんだんイライラしてきませんか?人間は、分からないという状況をとても不快に感じます。


この例え話は、やや正確性に欠けるので恐縮ですが、大雑把に言うと、こんなイメージで問題ないと思います。


家族の方は、特に自分のご両親であればなおさら、元気なころの印象が強く残っているため、「できる」「わかる」と言う前提で関わってしまいがちです。


しかし、認知症患者さんの中では、確実にできること、わかることが減っているのです。その立場になって接することで、関わり方は変わってくると思っています。


以下に、公益社団法人認知症の人と家族の会が提唱する「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条を掲載します。


アルツハイマー型認知症に特化したものでは無いですが、是非参考にしていただけたらと思います。

 

  • 見逃すな「あれ、何かおかしい?」は、大事なサイン。


認知症の始まりは、ちょっとしたもの忘れであることが多いもの。単なる老化現象とまぎらわしく、周囲の人にはわかりにくいものです。あれっ、もしかして?と気づくことができるのは、身近な家族だからこそです。

  • 早めに受診を。治る認知症もある。


認知症が疑われたら、まず専門医に受診すること。認知症に似た病気や、早く治療すれば治る認知症もあるのです。また、適切な治療や介護を受けるには、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症などをきちんと診断してもらうのは不可欠です。

  • 知は力。認知症の正しい知識を身につけよう。


アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症では、症状の出方や進行、対応が違います。特徴をよく知って、快適に生活できるよう、その後の家族の生活や介護計画づくりに役立てましょう。

  • 介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。


介護保険など、サービスを利用するのは当然のこと。家族だけで認知症の人を介護することはできません。サービスは「家族の息抜き」だけでなく、本人がプロの介護を受けたり社会に接したりする大事な機会です。

  • サービスの質を見分ける目を持とう。


介護保険サービスは、利用者や家族が選択できるのが利点。質の高いサービスを選択する目が必要です。また、トラブルがあったときは、泣き寝入りせず、冷静に訴える姿勢を持ちましょう。

  • 経験者は知恵の宝庫。いつでも気軽に相談を。


介護経験者が培ってきた知識や経験は、社会資源の一つ。一人で抱え込まずに経験者に相談し、共感し合い、情報を交換することが、大きな支えとなります。

  • 今できることを知り、それを大切に。


知的機能が低下し、進行していくのが多くの認知症です。しかし、すべてが失われたわけではありません。失われた能力の回復を求めるより、残された能力を大切にしましょう。

  • 恥じず、隠さず、ネットワークを広げよう。


認知症の人の実態をオープンにすれば、どこかで理解者、協力者が手をあげてくれるはず。公的な相談機関や私的なつながり、地域社会、インターネットなどのさまざまな情報を上手に使い、介護家族の思いを訴えていきましょう。

  • 自分も大切に、介護以外の時間を持とう。


介護者にも自分の生活や生甲斐があるはず、「介護で自分の人生を犠牲にされた」と思わないように自分自身の時間を大切にしてください。介護者の気持ちの安定は、認知症の人にも伝わるのです。

  • 往年のその人らしい日々を。


認知症になっても、その人の人生が否定されるわけではありません。やがて来る人生の幕引きも考えながら、その人らしい生活を続けられるよう、家族で話し合いましょう。

出典元:「認知症」の人のために家族が出来る10ヵ条


西春内科在宅クリニックができる対応


西春クリニックでは認知症外来を行っております。

常勤の医師が、認知症の診療にあたり、CTなどの精密検査を行うことも可能です。



 

まとめ


2022年6月時点の日本において、
アルツハイマー型認知症を完治させるための有効な治療法はありません。


アメリカでの新薬を皮切りに、さらなる治療の進展が待たれます。


また、アルツハイマー型認知症は早期発見が回復のカギとなることもあります。


物忘れが気になったら、お気軽に当院または最寄りのクリニックへ相談する様にしましょう。

参考資料


認知症|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

アルツハイマー病と認知症支援 | 日本 | Alzheimer’s Association

種類別認知症の原因と症状 | 認知症ねっと (ninchisho.net)

【医師監修】認知症の検査方法とは?種類や診断の流れ・注意点まで詳しく解説|サービス付き高齢者向け住宅の学研ココファン (cocofump.co.jp)

エーザイ共同開発の世界初「アルツハイマー病治療薬」欧米で評価二分…日本での承認は<WBS>|テレ東プラス (tv-tokyo.co.jp)

認知症は遺伝する?原因やリスクを正しく理解しましょう。 | 健達ねっと (mcsg.co.jp)

もし、家族や自分が認知症になったら 知っておきたい認知症のキホン | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)

物忘れがひどくなる原因は?|認知症との違いや物忘れ対策について



・ついさっき話したことを思い出せない

・同じ話を何度も繰り返す


など、年齢が上がるにつれ、物忘れやそれに伴った症状に悩まさせれる人は多いのではないでしょうか。


自分だけでなく、ご家族の物忘れに悩まされている人もいるかと思います。


そこで今回は、物忘れについて詳しく解説していきます。



物忘れがひどくなる原因

 



物忘れがひどくなる原因については様々です。


1つずつ詳しくみていきましょう。


加齢


物忘れの原因が、特に重い病気などではなく加齢による物忘れということもあります。


加齢による物忘れの特徴として、「うっかり」物忘れであることが挙げられます。


  1. 物忘れについて周りの人に指摘されたときに「そうだった!」と思い出せること
  2. 指摘されても怒ったりせず、受け入れることができること

こういった場合は加齢によるものの可能性が高いです。


他にも以下のような特徴がありますので、実際の症状と比べてみてください。

加齢による物忘れの他の特徴

  • 物忘れを指摘されても素直に受け入れて、怒ったり、隠したりしない
  • 自分が忘れっぽくなっていることを認識している
  • 家事や趣味など普段の生活で繰り返しおこなっていることはいつも通りにできる

 

認知症


物忘れの原因として、加齢以外で考えられる最も可能性が高いものは認知症です。


認知症は、脳の機能が低下することで記憶力だけでなく、計算ができなくなったり、家事ができなくなったりと様々な症状が出てきます。


また、それを本人が自覚できないことも特徴の一つです。

 

認知症による物忘れの特徴

  • 自分で物忘れを自覚できない
  • 人に指摘されると、取り繕ったり、隠したりしようとする
  • 怒りっぽくなる
  • 家事や趣味など普段の生活で繰り返しおこなっていることでも出来なくなる場合がある

  

   

その他の病気

  

物忘れは、加齢や認知症以外に、様々な脳の病気でおこる場合があります。


慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、水頭症など原因となる病気はいくつかあります。


これらの病気にはそれぞれ特徴的な症状があったり、頭のCTやMRIなどの検査でわかることがあります。

慢性硬膜下血腫

 

慢性硬膜下血腫は、転倒して頭を打ったあとに起きてくることが多いです。 

 

転倒した直後ではなく、1週間から2週間かけて脳の隙間に血がたまることで、認知症のような症状がでたり、他にも様々な症状が出てくることが考えられます。


脳腫瘍

 

脳腫瘍は、いわゆる脳のできものです。


一般的にいう「がん」と良性の腫瘍の2種類にわけられますが、脳腫瘍の場合は良性であっても大きくなると、脳の組織を圧迫して症状が出ることもあり、早めの医療機関の受診が重要です。


症状としては、頭痛や吐き気、普段と様子が違うなど、腫瘍の部位によって症状が異なります。

水頭症

 

脳の中を巡っている水分がつまってしまい、脳の機能に影響が出る病気です。


症状としては、認知症のような症状が出ることに加え、歩いているときに転びやすくなったり、尿の失禁をしやすくなるなどの特徴があります。


場合によっては手術が必要なこともありますので、こちらも早めの医療機関の受診が必要となります。

>>認知症における顔つきの特徴と症状や種類について


加齢による物忘れと認知症の違いは?

 

加齢による物忘れと認知症は症状が異なります。


加齢による物忘れは「記憶を思い出す能力が衰える」のに対して、認知症では「物事を記憶すること自体が難しくなる」という違いがあります。


たとえば、人と約束をしたときに、約束をしたことは覚えているが、どこで何時にという詳しい内容を忘れてしまうのが加齢による物忘れの特徴です。


それに対し、認知症の場合は、そもそも約束をしたこと自体を忘れてしまうのです。

 

このように新しく何かを記憶することが難しくなるのが認知症の特徴で、本人もそれを自覚できません。

>>認知症が一気に進む原因や知っておきたい予防と対策について


物忘れがひどくなってきた時にできる対策法

 

 

物忘れがひどくなってきたとき、日常生活でできる対策をご紹介します。


睡眠時間を伸ばす

 

記憶の処理は寝ている時間に脳が海馬という部位を働かせておこなっています。


海外の研究で、睡眠時間が短くなると脳の老化が早く進む、という研究もありますので、睡眠不足にならないようにすることは、物忘れの進行を少しでも防ぐ可能性があります。


運動習慣をつける

 

運動をすることは、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の改善に重要なことは聞いたことがあるかと思います。


メタボリックシンドローム自体が物忘れのリスクを高くするとも言われており、動でこれを改善することは物忘れには効果的です。


さらに、運動自体が、体だけでなく脳の健康にも良い影響があることが最新の研究で多く報告されています。


1日10分の運動は身体と脳のどちらにもいい影響があり、これが物忘れを防ぐことに繋がります。


食生活を見直す

 

食事も物忘れの対策として非常に重要です。


私たちが普段口にする食品の中でも、イワシやサバなどの青魚、ナッツ類、肉類などは体を健康に保ち、さらに物忘れになりにくい成分が入っており、物忘れ対策になることが期待できます。

  

もちろん、何かの食品に偏ることなく、バランスの良い食事というのが頭と体両方の健康には非常に重要です。

>>アルツハイマーと認知症の違いは?原因や初期症状、なりやすい人の特徴について

 

物忘れ外来について


当院では、認知症・物忘れ外来を行っております。


詳しくは別ページを参照ください。


西春内科在宅クリニックができる対応


当院の物忘れ外来では、当院の医師による問診と心理検査など物忘れ・認知症に関する専門的な検査を受けることができます。


さらに詳しい検査が必要な場合には、頭部CTなど画像検査を使っての検査も行うことができます。


検査の結果を確認し、医師による総合的な診断が行われます。


>>当院のCT検査について


まとめ

 

物忘れや認知症について、症状の特徴やその違いがお分かりいただけたでしょうか。


物忘れが進行しているとき、認知症や、その他の頭の病気がある可能性がありますので、早めに一度医療機関を受診することをお勧めします。

 

参考文献:認知症疾患診療ガイドライン2017

認知症における顔つきの特徴と症状や種類について

はじめに

 

認知症とは、加齢とともに伴う脳の障害により、これまで出来ていた仕事や社会生活に支障をきたした状態を指します。

 

年齢とともに増加し、発症原因の違いに様々な症状を生じます。

 

症状としては、中核症状と周辺症状に大別されます。

 

中核症状は、脳の神経細胞の障害によって直接的に起こる認知機能障害です。

具体的には「最近、忘れっぽくなった」「日付や場所などを間違えることが多くなった」といった訴えになります。 

 

一方、周辺症状は、中核症状と患者様の性格や置かれている周囲の状況などが関連して、それらの相互作用の結果として起こる様々な行動障害や精神的な症状を指します。

具体的には、

  • 周囲に攻撃的になって暴言や暴力を振るう
  • 家に閉じこもって周囲のことに無関心になる
  • 実際に見えないものが見える(幻覚)
  • お金を取られたと思い込む(ものとられ妄想
  • 睡眠障害
  • 食行動異常
  • 多動・徘徊


など多岐の症状を認めることがあります。

この記事では認知症の顔つきの特徴についてや症状・初期症状についてをご紹介させて頂きます。

 

認知症になる原因

 
認知症 原因


認知症は、
加齢に伴い、さまざまな原因により脳における神経細胞の働きが低下して起こる認知機能能低下一連の状態をいいます。

 

認知症の原因になりうる病気としては、もっとも頻度の高いもので、アルツハイマー型認知症が最もよく知られておりますが、ほかに代表的な認知症の原因疾患としては、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、血管性認知症が挙げられます。

  

認知症の代表的な4種類について

 

認知症はそれぞれの病気によって、症状の現れ方が異なり、治療法・対応方法が変わることもありますので、下記で、それぞれの病気について詳しくみていきます。

 

レビー小体型認知症

 

レビー小体型認知症は、物忘れを主体とした認知機能障害に加えて、実際には見えないものが見えるという「幻視」をよく認めることがあります。

 

特徴的な幻視を疑わせる訴えとしては、”地面に虫が這っている“、“知らない人がそこに座っている” などがあります。

 

そういった症状に加えて、パーキンソン症状に関連した運動の症状(体が固くなり動きにくくなり、手の震え・歩行時に急に止まれないなど)、自律神経障害(起立性低血圧、便秘、尿失禁など)を認めることもあります。

これらの症状により転倒する危険が高くなりますので、十分に歩行や移動には注意する必要があります。

>>認知症かな?と思った方は認知症外来・もの忘れ外来へ 

アルツハイマー型認知症

 

アルツハイマー型認知症は、認知症の原因では最も頻度が高く、患者数の多い病気です。

 

脳の側頭葉という部分のうち記憶に関わる海馬という部分が初期からが萎縮することを特徴とするため、症状としては、物忘れや記憶障害といった認知機能障害から始まり、徐々に進行していきます。

 

症状の進行とともに、上述のような周辺症状といわれる症状を認めることがあります。

 

血管性認知症

 

加齢とともに脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、破れたりして出血(脳出血)するリスクが上昇します。

 

そういった脳血管の障害に伴って、脳の血流が悪くなり血流が不足している脳の部位において脳の機能が低下することによって生じる認知症血管性認知症といいます。

 

ですので、血流障害の部位によって臨床症状に差があり、物忘れなどの認知機能障害のほか、手足の震えや麻痺、歩行障害などの運動障害を合併することがあります。

 

そのほか、意欲の低下や抑うつ、情動失禁といった感情面の症状も認めることもあります。

 

前頭側頭型認知症

 

前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉と側頭葉という部分が障害されること、物忘れよりも性格の変化、社会性の欠如、同じことを繰り返していうといった症状が主体として初期から認めます。

 

そして、他の認知症よりも発症年齢が比較的若いことが多いため、初期症状として物忘れよりも性格の変化をメインとするため、精神疾患などと混同することがしばしばあります。

 

具体的には、前頭葉の機能が低下することで行動を自分で抑制して調整することが難しくなり、判断力、集中力が低下し人格・性格が変化することがあります。

 

具体的には、窃盗、多動、徘徊といった社会性が失われる行動をすることを特徴とします。

 

また、側頭葉の機能が低下することにより、言葉を正確にしゃべったり、理解したりする機能が低下しますので、言葉の理解が困難になることがあります。

>>アルツハイマーと認知症の違いは?原因や初期症状、なりやすい人の特徴について

気をつけてほしい認知症の初期症状


認知症 初期症状
 

高齢化社会で高齢者の人口比率が多くなっている今日では、認知症は誰にとっても起こりうる状態で、他人事ではない時代と考えてください。

 

ですので、

「毎日の出来事を忘れっぽくなってきた」

「物を置いた場所を忘れるようになった」

「毎日飲んでいる薬などの管理することが苦手になってきた」


などといった症状が出てきたら、
中核症状である認知機能の障害を考える必要があります。

 

また、家族の方で以下のような変化を認められたら、中核症状と環境因子・性格などが相互作用して生じる周辺症状が疑われます。

  • 怒りっぽくなった
  • 趣味への興味を失って周囲のことに無関心になってきた
  • 自分の外見を気にしなくなった
  • 徘徊するようになった
  • 以前よりも多弁・多動になった(おしゃべりが多くなった)

 

上記のような症状が現れましたら、認知症の初期症状の可能性がありますので、一度病院受診も検討してみてくださいね。


もの忘れ外来
 

認知症になると顔つきが変わる理由と特徴


認知症 顔つき
 

認知症によって、物忘れなどの認知機能が低下すると、以前よりも外からの刺激へ反応が乏しくなり、抑うつ傾向になることがあるため、顔つきが変化することがあります。

 

具体的には、目つきで生気が失ったように眼瞼が下がり、元気がなくなり、全体的に表情が乏しく抑うつ状態になることなることがあります。

 

以前よりもぼんやりとしている、無表情が多い、悲しそうな暗い表情多いなどに気が付いたら危険信号だと考えてください。

>>認知症が一気に進む原因や知っておきたい予防と対策について

 

もし家族や身内が認知症かと疑ったときの対応

 

認知症は、早期診断して、早期介入により、生活環境を整えて、早期治療を行うことが重要になってきます。

 

症状が軽度の段階で、適切な治療・生活リズムへの介入をすることにより、認知症の症状を改善できることが期待できます。

 

ですので、自分自身だけでなく家族、友人など周りの人の方で「もしかして認知症ではないか」と思われる症状に気づいたら、まず、かかりつけの医師または、お住まいの地域の医療機関の「もの忘れ外来」に受診しましょう。

 

そこで、問診・診察・検査(認知機能検査・血液検査・尿検査・画像検査)で総合的に評価することによって、早期診断・早期治療につながります。

>>物忘れがひどくなる原因は?|認知症との違いや物忘れ対策について

西春内科在宅クリニックができる認知症への対応

 

当院では、認知症が疑われる患者様の診断・治療に早期から介入して、患者様・ご家族がより良く暮らしていける生活環境を整えることに全力で取り組みたいと考えております。

 

上記に説明しましたような物忘れや性格の変化を疑われる症状を見ましたら、まずはお気軽にご相談ください。

 

認知症は、クリニック・病院での治療のみで治すことが難しい病気です。生活環境を整えて最善のケアをすることが重要となってきます。

 

当院は、認知症患者様を地域全体で支える体制を構築し、ご家族・介護者様と協力しながら適切なサポートをいたします。

 

まとめ

 

繰り返しにはなりますが、認知症は早期診断・早期介入により、生活環境を整えて、早期治療を行うことが重要です。

 

患者様・ご家族様の気持ちを受け止めて、それぞれの症状・状況を考慮したオーダーメイドの治療・ケアを心がけたいと考えておりますので、気になる方はぜひ一度ご相談くださいね。

参考文献

認知症疾患診療ガイドライン2017 (医学書院)

狭心症の原因や症状、治療について|心筋梗塞との違いは何?前兆がある?

「最近すぐに息があがって胸が苦しくなる」

「急に胸が痛くなることがある」


このような症状に心当たりはありませんか?


それ、もしかして狭心症かもしれません。


放っていると、心筋梗塞で命を落としてしまったり心不全に陥ってしまう危険があることをご存じですか?


今回はそんな怖い心臓の病気、狭心症について解説していきます。


心筋梗塞との違いなどについても触れていきますので、是非最後までご覧ください。



 狭心症とは

 

狭心症とは、心臓自体に血液を届ける血管である冠動脈が狭くなることで、心臓の筋肉が血流不足に陥る病気のことです。

 

そもそも心臓というのは、全身の臓器に血液を送り届けるためのポンプの役割を果たしている臓器です。

 

心臓がドックン、ドックン、と規則正しく動くことにより全身に血流が行きわたり、そして筋肉を動かしたり食べ物を消化吸収出来たりするのです。


ただその心臓自体にも血液が行きわたらないと心臓が動くことができなくなってしまいます。

 

そのための血管が冠動脈という血管で心臓をぐるっと取り囲むように表面を走っています。


この冠動脈がさまざまな原因で狭くなったり、最終的には詰まったりすることがあります。

 

このようにして冠動脈の血流が不足することで一時的に痛みを生じるのが狭心症という病気です。

 

動脈硬化が原因

 

では、このような狭心症はなぜ起こってしまうのでしょうか。

 

繰り返しになりますが、狭心症は冠動脈という血管が狭くなることが問題です。

いわゆる
「パイプのトラブル」です。

 

血管というだけあって、中には絶えず血液が流れています。

体の隅々まで張り巡らされた血管は、さながら水道の配管と同じようなものなのです。

 

そして水道管と同じように、経年変化で硬くなってヒビが入ったり、どろどろしたものが流れたことで内部にぬめりなどが生じます。

このように
血管が硬く脆くなることを動脈硬化といいます。

 

動脈硬化の初期には血管の内側の膜が分厚くなったり脂肪分などが沈着したりすることでプラーク(粥腫とも言います)と呼ばれるものが発生します。

プラークが成長して血管の中を狭めてしまうのです。

 

 動脈硬化は全身のあらゆる血管に起こりますが、冠動脈が硬化することで狭心症や心筋梗塞の原因になります。

 

心筋梗塞に関しては、日本人の危険因子は、高血圧、糖尿病、喫煙、家族歴、脂質異常症(高コレステロール血症)と報告されており 、狭心症も共通すると考えられます。

 

このような「パイプのトラブル」の原因となる要素をさらっとご紹介していきます。

 

高血圧や脂質異常症 


血圧が高いと、
血管に負担がかかることはご想像いただけると思います。

 

医学的には血管内皮細胞が障害されやすく、動脈硬化の原因になります。

 

また血液中の脂肪分が増えることでプラークの生成が促進され、これも粥状硬化症という動脈硬化の一つのパターンになります。

 

高血圧、脂質異常症に関してはこちらの記事に詳しくまとめていますので、ご参照ください。

 

糖尿病


糖尿病においても、
末梢の細い血管において血管内皮細胞が障害されやすいことが知られています。

 

また血液の粘性が高くなり、より閉塞しやすい状態になるとも考えられます。

 

糖尿病についてはこちら記事に詳しくまとめていますので、ご参照ください。

 

高尿酸血症 


高尿酸血症が
動脈硬化性疾患の危険因子であるかどうかは長年議論されており、現在のところは十分な結論は得られていない状況です。

 

ただ最近の報告では、高血圧や冠動脈疾患の危険因子である可能性が高まっています。

 

高尿酸血症についてはこちらの記事に詳しくまとめていますので、ご参照ください。

 

その他(喫煙や腎臓病、ストレス、肥満、遺伝など)


目に見えるもので注意していただきやすいのが、
肥満です。

 

体重が増えると、血圧が高くなりやすくなり動脈硬化のリスクが増えます。


また、肥満の原因には
食生活の乱れや運動不足が背景にあると想像されます。

塩分、糖分、脂肪分の多い食事をしていると、高血圧や糖尿病、脂質異常症の原因になります。

 

また生活習慣病と並んで、心筋梗塞のリスクが高くなるのが喫煙です。


特に現在吸っていることが危険で、
やめるのが早ければ早いほど良いです。

欧米諸国では禁煙により心筋梗塞などが激減していると報告されています。

 

そして意外に侮れないのが、ストレスです。

慢性的なストレスにより緊張状態が続いたりすることで自律神経がバランスをとりにくくなることがあります。

血圧の上下が激しくなったりすることが考えられます。

 

あと一点、狭心症自体が遺伝するわけではないですが、家族歴は非常に重要な要素の一つです。


特に若くして発症した心筋梗塞などは生活習慣病だけでなく、血管それ自体になんらかの遺伝的異常が隠れている可能性があります。

 

Marfan症候群では血管が裂けやすいため大動脈解離などの血管の病気を発症しやすくなります。

 

また、家族性高コレステロール血症という病気もあり、調べてみると実は遺伝的要素が隠れていたということがありえるのです。

 

狭心症の種類と症状

 

狭心症の種類

 

少し専門的な話になりますが、古典的には狭心症を3つのパターンに分けます。

 

労作性狭心症、不安定狭心症、異形狭心症(冠攣縮性狭心症)の3つです。

 

労作性狭心症は不安定狭心症との対比で安定狭心症と呼ばれることもあります。

病変の安定具合や治療の内容などの点で違いがあります。1つずつ詳しく見ていきましょう。


労作性狭心症

 

労作性狭心症とは、最も古典的な狭心症です。

プラークなどにより冠動脈が徐々に徐々に狭くなっていき、労作時に相対的に血流が足りなくなるため一時的に痛みが生じる病気です。

 

走ったり、重いものを持ち上げたりする際には全身の組織と同じように心臓も酸素をたくさん欲しがります。

安静にしているだけなら多少血流が遅くても問題ないですが、狭くなった血管ではフルパワーの血流が得られないため症状が生じるのです。

 

プラークの形成は1日2日の問題ではなく、何か月、何年といったスパンで進みますので病状としては安定している状態です。

 

不安定狭心症

 

労作性狭心症が徐々に徐々に進行していくのに対して、急激に進行していくものを不安定狭心症といいます。

 

徐々にできていたプラークにあるとき亀裂が入ったりすることで、その断面に血液が塊(血栓)を生じます。

この血栓の形成はプラーク形成とは
違い数分や数時間などのスピードで進みます

 

鼻血が出ても抑えていれば数分で止まりますよね。

そのような速度で血栓が形成される、すなわち進行するため非常に不安定な状態です。

 

狭心症といっても不安定狭心症は(ST上昇型)心筋梗塞と並んで急性冠症候群という概念に含まれます。


心筋梗塞についての記事を別に作成しておりますので、不安定狭心症についてもっと知りたいという方は
こちらの記事をご参照ください。

 

異形狭心症(冠攣縮性狭心症)

 

これは上2つと違って、冠動脈の攣縮が原因です。

攣縮と書くとわかりにくいですが、ズバリ
「血管が攣(ツ)っている」状態です。

 

夏場にスポーツをしていると足がツったりした経験をお持ちの方も多いと思います。

足がツると痛くてうまく動けないですよね。

あれと同じで血管がツってうまく血液が流れることができず、痛みも生じるというわけです。

 

そして夜中に寝ているときに急に足がツった経験もないでしょうか。

そうなんです、血管がツる病気なので、夜中から早朝にかけての安静時にも起こることが多いんです。

 

 明け方に急に胸が痛くなって数分でよくなったとなれば冠攣縮性狭心症の可能性が非常に高いです。 

 

どんな症状がある?

 

「せんせー、そんな教科書みたいなのはいいからさ!どんな症状がやばいのか教えてよ!」という方もいらっしゃると思います。

 

こまごまとした分類なんかはさておき、どのような症状がでると狭心症の可能性があるのでしょうか。

動脈カテーテル検査や冠動脈CT検査など、いろいろな検査が開発されてきた現代でも、病歴というのは最も重要な情報の一つです。

 

診断を左右する、症状について掘り下げていきます。

 

息切れや胸の痛み、締め付けられるような圧迫感

 

典型的な狭心症の症状は、なんと250年も前から言及されています。


運動などの負荷がかかった際に
胸の真ん中あたりの絞扼感・痛みです。

肩や腕などに放散して、
冷や汗なども伴います。

そして安静にしていると数分から十数分程度で軽快するのが典型的な
狭心症状です。


胸痛や圧迫感は、ある程度の広さであることが多く、
指1本でココといえる痛みは狭心症ではない可能性が高いです。

 

心筋梗塞との違いは? 

 

「うーん、狭心症が怖い病気だってことはわかったけど、よく耳にする心筋梗塞とも違うの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

狭心症と心筋梗塞という分け方は少し古い言い方であり説明が難しいのです。

 

語弊を恐れずにざっくりと言うならば、血管が狭くなってきていて運動したときなどに一時的にギューッと痛むものが狭心症、完全に詰まったり急激に細くなったりすることで長時間痛みが生じたり心臓の筋肉が壊死したりするものが心筋梗塞と思っていただいてよいと思います。

 

狭心症は心臓の筋肉に障害がない、あっても少ない

 

狭心症は一時的な虚血により痛みが生じるものであり、基本的には心臓の筋肉には障害はないと言ってもよいでしょう。

 

対して心筋梗塞は虚血時間が長いためどんどん心筋細胞が壊死していきます。

結果、心臓の働きが悪くなることが多いです。

 

もちろん狭心症の発作を繰り返していたり、慢性的な血流不足によって徐々に心臓の筋肉がへばってくることはありますので油断は禁物です。

 

狭心症は胸の痛みが一時的なもの

 

痛みは主観的な指標であり断言はできませんが、狭心症に比べて心筋梗塞の方が痛みが強く、長い傾向にあります。

 

また、顎、肩、背中などにも痛みが広がることがあります。

中にはモルヒネを必要とするような激しい痛みを生じることもあります。

 

先述の通り、狭心症であれば胸痛は長くは続きません。

数分程度が多く、長くても
15~20分程度です。

胸痛が20分以上続く場合には心筋梗塞の可能性が高いです。

 

狭心症を放置すれば、心筋梗塞につながる

 

先ほども少し触れましたが、狭心症・心筋梗塞は「パイプのトラブル」です。

 

多くは時間をかけて徐々に硬く、狭くなっていきます。

この時点で心
臓が血流不足のサインを出してくれれば狭心症と診断することができるのですが、

 

不運にもSOSが出ず、最終的に急激に進行したり詰まったりしたときに心筋梗塞になってしまいます。

 

心筋梗塞になると命を落とす危険性も

 

心筋梗塞が怖いのは、死亡率が高いということです。

 

厚生労働省の2020年の集計では、がんに次いで2番目に多い死因(15%)と報告されています。

 

 そして我が国における様々な研究で、典型的な心筋梗塞の患者のうち7~10%が入院中に亡くなってしまうと報告されています。 

 

さらに初回の治療を乗り切って退院した後も油断できないのが心筋梗塞の怖いところです。

 

血流が不足して壊死してしまった心臓の筋肉は多少は回復するものの、元通りにはなりません。

全身に血流を送るポンプの機能が弱くなってしまい、
さまざまな合併症を引き起こしてしまう恐れがあります。

 

典型的な心筋梗塞を患った患者において、退院後6か月以内の死亡率は4.8%  、退院後2年での死亡率は6.3% と報告されており、20人に1人以上が亡くなってしまう恐ろしい病気なのです。

 

心筋梗塞についてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひ合わせてご参照ください。   

 

どんな検査・治療をするのか 

さて、そのような怖い狭心症はどうやって見つけることができるのでしょうか。

 

近年は検査機器の発達によってますます負担の少ない検査で精度の高い検査が受けられるようになってきています。

 

また、治療方法も年々進化を重ねており、昔は開胸手術しかありませんでしたが、カテーテル治療などの発展はめざましいです。

 

ここからは狭心症の診断や治療について解説していきます。

 

主な検査方法

 

主な検査方法として

  • 12誘導心電図
  • 運動負荷心電図
  • ホルター心電図
  • 心エコー
  • 薬物負荷心エコー
  • 心筋シンチグラフィ(SPECT)
  • 冠動脈CT
  • カテーテル検査(CAG:冠動脈造影) 

 

などが挙げられます。特にカテーテル検査がゴールデン・スタンダードです。

 

冠動脈に直接造影剤を注入し、レントゲンで透かして見ることで狭くなっている部分が一目瞭然です。

ただ、穿刺部位の痛みがあったり、造影剤の負担、被爆、などの問題から気軽に日帰りで行うのは難しい検査です。

多くの施設では1泊2日などのパスを使用しています。


そんな検査の負担をなるべく減らしながら診断を補助するために様々な検査を組み合わせます。

心電図は全く体に負担をかけずに数分でできる検査にも関わらず、得られる情報が非常に多い良い検査です。

 

また最近の報告では、血管の半分以上狭くなっている病変では冠動脈CTもカテーテル検査に匹敵すると言われています。

 

主な治療法

 

治療法も日進月歩で進化しています。

狭心症は「パイプのトラブル」ですから、これ以上
ぬめり詰まりなどを起こさないようにコントロールしていくことが大事になります。

 

またパイプを広げてやれば血流は良くなり症状も改善します。

柱は、
生活習慣改善、薬物療法、カテーテル治療、手術です。

 

具体的には、

  • 禁煙
  • 体重管理
  • 運動療法
  • 血圧、コレステロール、糖尿などの生活習慣病への投薬
  • 硝酸薬
  • β遮断薬
  • Ca拮抗薬
  • ニコランジル
  • カテーテル治療(PCI:経皮的冠動脈インターベンション)
  • 冠動脈バイパス術


などが挙げられます。

 

こまごまと列挙してしまい分かりにくいかもしれませんが、何よりも生活習慣改善と、生活習慣病の是正です。

 

カテーテル治療は1泊2日や2泊3日などでできる点が、開胸手術よりも良い点です。

 

ただ複数箇所の狭心症や、不安定な状態、その他の弁膜症などの合併もある場合には開胸手術が依然として素晴らしい成績を収めています。

 

胸の圧迫感などがあれば早めの診断を

 

色々な検査、治療をずらーっと書いてしまったので、頭がパンクしそうな方もいらっしゃるかもしれません。

 

一番大事なのは、個人個人の状態、状況に合わせてベストな検査・治療を選択できることだと思います。

 

施設の設備によって行える検査にも違いがありますし、病気の状態によって手術が必要かどうかも変わってきます。

その時々でできることをしっかりと行い、心臓発作を起こさないのが良いと思います。

 

早期発見・早期治療が大事ですので、気になることがあれば一度ご相談に来られてはいかがでしょうか。

早めの受診をおすすめします。

 

西春内科在宅クリニックができる対応

上で少し触れましたが、当院では様々な生活習慣病の早期発見・早期治療に努めています。

 

健康診断も実施しており、血圧やコレステロール、血糖値などを検査することができます。

 

また、心電図検査や胸部レントゲン検査も行っております。CTや超音波検査の設備もあり、様々な角度から検査を行うことができます。

 

まとめ

今回は恐ろしい心臓の病気、狭心症についてまとめてみました。

 

不安定狭心症であったり心筋梗塞に至ってしまうと、がんや脳卒中などと並んで死亡率の高い非常に怖い病気です。

 

予防と早期発見がとても大事ですので、この機会に生活習慣病の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

 

血圧、コレステロール、糖尿などに関して不安をお持ちの方は一度健康診断を受けてみるのがよいかもしれません。

 

それ以外にも「息が上がりやすい」とか「胸が痛くなることがある」といった症状をお持ちの方は一度受診してみることをお勧めします。

 

この記事が皆様のお役に立てれば嬉しく思います。最後までご覧くださりありがとうございました。

参考文献

 

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10) Masaharu Ishihara, et al. Clinical Presentation, Management and Outcome of Japanese Patients With Acute Myocardial Infarction in the Troponin Era – Japanese Registry of Acute Myocardial Infarction Diagnosed by Universal Definition (J-MINUET) -. Circ J. 2015;79(6):1255-62.

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12) Robert J Goldberg, et al. Six-month outcomes in a multinational registry of patients hospitalized with an acute coronary syndrome (the Global Registry of Acute Coronary Events [GRACE]). Am J Cardiol. 2004 Feb 1;93(3):288-93.

13) Hiroyuki Daida, et al. Management and two-year long-term clinical outcome of acute coronary syndrome in Japan: prevention of atherothrombotic incidents following ischemic coronary attack (PACIFI8) registry. Circ J. 2013;77(4):934-43.

14) 慢性冠動脈疾患診断ガイドライン. 日本循環器学会 編. 2019

15) Deepak L Bhatt, et al. Diagnosis and Treatment of Acute Coronary Syndromes: A Review. JAMA. 2022 Feb 15;327(7):662-675.

16) 安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン. 日本循環器学会 編. 2019

知らないと危ない糖尿病の症状と合併症について

糖尿病

厚生労働省の平成28年(2016)「国民健康・栄養調査」
によると、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病患者)が約1000万人、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病の予備群)まで含めると、推計で2000万人いると推計されており、日本人にとってたいへん身近な病気と言えます。

糖尿病では、喉が渇く、疲れやすい、頻繁にトイレに行くようになった、肥満だったのに急にやせた、などの症状がみられますが、初期の段階では症状に乏しく、健康診断や、ほかの病気の検査をしている時に偶然見つかるということもしばしばです。また糖尿病予備軍であっても、心筋梗塞や脳梗塞のリスクになるとも言われているので、なるべく早く治療を開始することが大切です。


 

糖尿病とは


糖分(正確にはブドウ糖)は、生きていくのに大切なエネルギーになるので、通常であれば尿から捨てられることはありません。糖尿病は、文字通り、大事なブドウ糖が尿から出てしまう病気です。
そのメカニズムを簡単にまとめてみます。

みなさんが摂取したお米やパンなどの炭水化物や砂糖は、ブドウ糖に分解され、血液の中へ吸収されます。血液に溶けているブドウ糖の量を測定したものが血糖値です。


私たちの細胞の一つ一つ、みな血液に流れるブドウを取り込むことでエネルギーを作り出し生きています。血糖値が著しく低くなれば、細胞が生きていけない、つまり人間は死んでしまいます。また血糖値が高すぎる状態が続くと、神経や血管を傷つけてしまうことが分かっています。そのため、血糖値は、高過ぎず、低すぎず、一定の範囲におさまるような仕組みが体にはあります。


尚、血液からブドウ糖を細胞に取り込むときに必要なのが、すい臓で作られるインスリンというホルモンです。食事によって血糖値が上がると、インスリンが分泌され、ブドウ糖が細胞内に取り込こまれエネルギーに変わり、余ったものは肝臓や筋肉、脂肪組織などの細胞に取り込まれ貯蔵されます。インスリンによって血糖値は下がり、また一定の範囲内におさまります。


炭水化物や砂糖を多く摂取すれば、その分インスリンもたくさん出さなければなりません。その状態が長く続けば、すい臓は疲弊し、インスリンを出す力が弱まってしまいます。また、肝臓や筋肉、脂肪といった貯蔵庫もいっぱいとなり、ブドウ糖を貯めておく本来の役割を果たせなくなります。

インスリンが出ない、貯蔵庫に貯められないという結果、血液の中は行き場を失ったブドウ糖で溢れかえり、最終的には尿からも捨てられることになるのです。これが糖尿病(正確には2型糖尿病)のメカニズムです。

 

糖尿病の考えられる原因


糖尿病の原因は、すい臓が疲れてしまって、インスリンを十分に出すことができなくなることにあります。
また、繰り返し大量のインスリンが出ることで、肝臓や筋肉、脂肪組織といった貯蔵庫に蓄えられなくなってしまうことも重要な原因です。

加齢や偏った食事、運動不足、肥満、遺伝が関係する
当然炭水化物や砂糖のようなものばかり食べていると、インスリンの出動機会が増えてしまいます。
また、当然人間は加齢より臓器の力は衰えていくので、若いころと同じような食生活では、すい臓はついてこれなくなります。また、筋肉は重要なブドウ糖の貯蔵庫であり、適度な運動によって筋肉を維持しなければなりません。狭い貯蔵庫だとすぐにいっぱいとなり、余ったブドウ糖が血液の中に残り血糖値は上昇してしまいます。さらに、内臓脂肪が過剰に蓄積すると、インスリンの働きを邪魔することがわかっています。


遺伝には先天的、後天的と2つの側面があります。

すい臓の働きが弱い家系に生まれた人は、少しすい臓に負担がかかった場合であっても、すい臓が疲弊してしまいます(先天的)。

すい臓が丈夫な家系に生まれた人でも、食生活は家族で共有されていることも多く、親子で似た体形の家庭も多いのではないでしょうか。
その場合、糖尿病が子供へ引き継がれていくケースがみられます(後天的)。

1型と2型にわかれる 


糖尿病は1型と2型の2種類に分けられます。

1型糖尿病は、外敵から身を守るはずの免疫システムが、誤って自分自身を攻撃してしまい、その際にすい臓が破壊されてインスリンがでなくなってしまったために、細胞にブドウ糖を取り込むことができなくなったという糖尿病です。

生活習慣病と言われ、一般的に身近なのが2型糖尿病です。

1型糖尿病


1型糖尿病の90%が、前述したように、免疫システムの誤作動(自己免疫性)ですが、10%は原因不明(特発性)です。甲状腺の病気を併発することもあります。

また、1型糖尿病の発症に、ムンプスウイルス(おたふくかぜ)や麻疹ウイルス(はしか)などの感染が関係しているのでは、という報告もあります。

1型糖尿病の多くは小児期から思春期にかけて発症することが多いですが、成人でも発症することはあります。2型糖尿病とは異なり、生活習慣とは無関係であり、通常遺伝することはありません。

2型糖尿病


2型糖尿病は前述のように、すい臓の疲弊によるインスリン分泌の低下が原因です。

一般的に40歳以上から増加傾向にはありますが、近年は若年化も進んでいます。パンやおにぎり、カップラーメンなど、炭水化物は安価で入手できることもあって、貧困が2型糖尿病を助長していると指摘する人もいます。

一般的な糖尿病は2型を指す


糖尿病の90から95%が2型になり、一般的に糖尿病というと2型を指すことが多いです。

男性の割合が高い

2型糖尿病は女性よりも男性の割合が高いことが知られています。内臓脂肪が過剰に蓄積すると、インスリンの働きの邪魔をすることがわかっていますが、閉経前の女性は、女性ホルモンの働きによって内臓脂肪が蓄積しにくくなっているためです。
(内臓脂肪と皮下脂肪は異なり、女性は皮下脂肪がつきやすい特徴があります。)

 

糖尿病はどんな症状があるか


糖尿病は、血液中にブドウ糖が溢れかえり、血がドロドロになることによって、様々な症状を引き起こします。血液は全身に流れているため、身体のいたるところで病気の影響が出ます。ブドウ糖で血液がドロドロにならない様に、すい臓はインスリンを出して、限界まで頑張りますが、徐々に無理が効かなくなってきた頃から少しずつ症状がで始めるため、初期の症状には気づきにくいことも多いです。

喉が乾く


細胞達にとってブドウ糖は、大切なエネルギーとなる物質なので、本来は体の外に捨てることはありません。しかし、糖尿病になると、インスリンの欠乏によって、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込むことができなくなります。血糖値が高すぎても低すぎても体に毒になります。

そのため、ブドウ糖を尿として体の外に排出することになるのですが、当然ながら尿を作るには水分が必要です。小学生の頃の理科の実験を覚えていますでしょうか。水に角砂糖を溶かす際に、砂糖の量が増えれば増えるほど、溶かすのに必要な水の量も増えます。

同様に、血液中に溢れかえったブドウ糖を尿に溶かして体外へ捨てるために、水分を大量に利用してしまいます。結果として体は脱水状態となり、喉が渇きます。

頻尿


続きになります。糖尿病の主症状として喉が渇く理由について解説しました。のどが渇けば、当然水分をたくさん取るようになります。結果としておしっこに行く回数が増えることになります。

糖尿病では「口喝」「多飲」「多尿」が3つで1セットであると、私が学生時代には習ったものです。


ここで気を付けて頂きたいのは、そもそもブドウ糖を尿として捨てるために、ブドウ糖を溶かす水分が必要となり、喉が渇くというメカニズムでした。もし糖尿病の患者さんが、喉が渇いた時に甘いジュースを飲んでしまったらどうなるでしょう。体の中のブドウ糖はますます増えて、増えたブドウ糖を捨てるための水分はさらに必要となり、悪循環に陥ります。

体重減少


糖尿病の患者さんのイメージと言えば、太っているイメージをお持ちの方は多いと思います。炭水化物や砂糖の過剰摂取により、血糖値が高い状態が続くと、インスリンの分泌量が増え、一生懸命体内に取り込み、余ったものは脂肪組織などにため込むため、肥満となります。

しかし、病状が進行し、すい臓が疲弊してしまうと、インスリンを出すことができなくなり、人間は血液中のブドウ糖を体内に取り込む術(すべ)を失います。細胞達は、ブドウ糖を取り込むことで、エネルギーを作って体を動かしたり、細胞を修復したり、作ったりなどしています。もし取り込むことができなくなったら、どこからかブドウ糖に変わるエネルギーを調達してこなくてはなりません。その時は、自らの筋肉や脂肪を分解して補います。

結果としてどんどん体重は落ちていくことになります。痩せてきたと言って焦って食べたとしても、食物中にある糖分(ブドウ糖)を細胞の中に取り込むために必要なインスリンが無ければ、もはや栄養に変わることはありません。

手足の麻痺や鈍化


高血糖状態が続くと、血管や神経を傷つけてしまうことが分かっています。

糖尿病では特に、「靴下手袋型」と呼ばれ、左右両方の手先足先の神経のしびれや、感覚麻痺などの症状がみられます。

眼がかすむ


人は物を見る際に、網膜という目の奥の組織に映し出し、視神経を通して脳で読み取るという作業をしています。

この網膜という組織で、溢れかえったブドウ糖によって血流が阻害されると、栄養や酸素が網膜の細胞内に十分に行きわたらずに、目がかすむようになります。

ED


EDの原因にはさまざまありますが、糖尿病も代表的な原因の一つです。
血糖値が高い状態が続くと、神経や血管を傷つけてしまうことが分かっています。

糖尿病では、陰茎にある血管が傷つき、血流が悪くなります。さらに、陰茎に張り巡らされている神経にも障害が起き、脳へ刺激の伝達が悪くなり、勃起が困難となります。


米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)の調査によると、糖尿病のある男性は、糖尿病のない男性に比べ、EDを発症する割合が2〜3倍高いことが報告されています。とくに45歳以下の男性については、EDが糖尿病を早期発見するための指標になる可能性があるのではと指摘されています。

 

悪化すれば嘔吐や全身倦怠感も


糖尿病は細胞達のエネルギーとなるブドウ糖を体内に取り込めず、血液中に溢れかえったブドウ糖を尿から捨ててしまう病気です。言い換えると、常にエネルギー不足に陥った状態で、すぐに疲れを感じるようになります。

糖尿病のその他の合併症として、胃の運動障害、胃酸の分泌障害があります。そのため、吐き気や嘔吐がみられることがあります。

危険な合併症を引き起こすことも


糖尿病は、溢れかえったブドウ糖によって、血管や神経を傷つけてしまう病気です。血管や神経は全身に張り巡らされているので、体のいたるところで糖尿病の影響が出ることになります。

大量のブドウとで血液がドロドロしていると、特に細い血管では、簡単に詰まる、破れるなどして、傷ついてしまいます。また、神経では、体の末端部で障害を受けやすい特徴があります。

糖尿病網膜症


人は物を見る際に、網膜という目の奥の組織に映し出し、視神経を通して脳で読み取るという作業をしています。網膜では、詳細な映像を映し出すために、細胞が密集しているため、それに伴い血管も豊富です。

糖尿病で溢れかえったブドウ糖により、血液の流れが邪魔されると、網膜の細胞に栄養や酸素が十分に届かず、細胞が本来の仕事ができず、目がかすむなどの症状が出ます。

さらに、網膜を栄養している血管が傷つき、破れてしまうと、網膜出血を起こすなどし、重症化すると失明する可能性があります。

糖尿病神経障害


糖尿病によっておこる神経障害では、「靴下手袋型」と呼ばれ、左右両方の手先足先の神経のしびれや、感覚麻痺などの症状がみられるという特徴があります。また、足が良くつるようになったというのも、糖尿病の症状であることがあります。

糖尿病性腎症


あまりなじみが無いかもしれませんが、腎臓内には、「糸球体」と呼ばれる毛細血管(とても細い血管)の塊があります。細い血管というのは、血液中に溢れかえったブドウ糖によって、破れたり、詰まったりしやすいので、どうしても障害を受けやすくなります。障害を受けた閣下、腎臓の機能が低下した病気を糖尿病性腎症と呼びます。

全身の細胞一つ一つ、みな生きているので、当然老廃物が出ます。老廃物は血液中に流され、腎臓によって処理され、尿として体の外に排泄されます。腎臓が機能しないと、私たちのからだは、ゴミを捨てられないゴミ屋敷状態となり、放置すれば死に至ります。

そのため、糖尿病によって腎臓が使えなくなってしまった方は、血液透析と言って、腎臓の代わりになる機械で、血液をきれいにしてもらう必要が出てきます。

関連記事:気づきにくい高血圧と脂質異常症は定期的な健診が大切です


心筋梗塞


糖尿病によって、網膜や腎臓といった細い血管がある臓器が傷つきやすいのですが、ブドウ糖でドロドロした血液は全身の血管のいたるところを傷つけます。

心臓に栄養や酸素を送っている血管が傷つき、完全に血管が詰まってしまうと、心筋梗塞を引き起こします。

関連記事:心不全について!知っておきたい心不全の症状や治療

関連記事:【生活習慣病の方に知ってほしい】心筋梗塞の症状や前兆について



狭心症


狭心症とは、心筋梗塞になる一歩手前の段階です。

脳梗塞・脳卒中


脳の周囲にはたくさんの血管が張り巡らされています。大量のブドウ糖でドロドロした血液は、血流の流れを悪くし、細い血管は詰まったり、破けたりします。脳の血管が詰まった病気を脳梗塞、脳の血管が破れた病気を脳出血と言います。

脳梗塞や脳出血など、脳の血管の障害が原因でおこる病気の総称を脳卒中と呼びます。

関連記事:脳梗塞後遺症について知りたい|どんな症状やリハビリがある?

 

高尿酸血症


尿酸値が高い状態を高尿酸血症と呼び、痛風の原因となります。尿酸値が上がりやすい生活習慣とは、過食、大量飲酒、運動不足、肥満などであり、糖尿病を招く生活習慣とほとんど変わらないためです。

関連記事:気づきにくい高血圧と脂質異常症は定期的な健診が大切です

 

足えそ


えそ(壊疽)とは、皮膚や筋肉といった組織が壊死する、大雑把に言うと腐るということです。糖尿病では、足先から徐々に壊疽していく現象が見られます。上述した合併症のすべての要素が詰まっています。


まず、糖尿病では足先の神経の感覚麻痺がおこります。感覚が麻痺したために、怪我をしたことに気づくことができません。特に足裏などは、普段から気に留める機会が少ないので、なおさらです。


また、足先は心臓から最も遠く、ただでさえ血流が滞りがちです。そこにブドウ糖によってドロドロになった血液によって、さらに血流が滞ることで、足先の細胞達は生きていくことが難しくなります。


それらに追い打ちをかけるように、糖尿病になると、白血球などばい菌と戦う免疫の働きが弱まることが分かっており、怪我の傷が治らなくなってしまいます。
そのようにして足が壊疽してしまうと、足を切断しなければならなくなります。

認知症


糖尿病の方はそうでない方と比べると、アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすく、脳血管性認知症に約2.5倍なりやすいと報告されています。

 

病院での検査と予防法


血液の中に溶けているブドウ糖の値を血糖値と呼びます。血糖値は高すぎても、低すぎても、体に毒であるため、一定の範囲内におさまるように調節されています。

しかし、血糖値を下げる(血液中のブドウ糖を細胞内に取り込む)ホルモンであるインスリンが、製造元のすい臓が疲弊したために作られなくなると、血糖値を下げることができなくなり、血糖値が高い状態が続いてしまいます。

病院での検査では血糖値をさまざまな方法で測定し、糖尿病かどうかを確認していくことになります。

随時血糖検査


血糖値は食事をすれば当然上昇し、お腹が空く頃には低くなるなど、常に一定の値を示すわけではありません。随時血糖検査とは、「食事をとった」「さっきおやつたべた」など関係なく、とりあえず血液をとったタイミングでの血糖値を調べる検査です。


この随時血糖値が200㎎/dl以上の場合、糖尿病の疑いがあります。

早朝空腹時血糖検査


朝起きた時は、多くの人にとってお腹が空いている状態と言えます。正確には、8時間以上食事をしていない、糖分が入った飲み物を飲んでいない状態が必要です。

糖分(正確には分解されたブドウ糖)が新たに血液中に入ってこなければ、基本的に血糖値が高い状態で保たれることはありません。つまり、早朝空腹時に血糖値を測定し、その値が高いということは、糖尿病の疑いがあります。


具体的には、早朝空腹時血糖が126㎎/dl以上は糖尿病の疑いがあります。逆に110mg/dl未満であれば正常です。

75gOGTT


75gOGTTとは、75g経口ブドウ糖負荷試験のことを指します。早朝空腹時の血糖値を測定したのちに、
ブドウ糖液(ブドウ糖75gを水に溶かしたもの)を飲み、30分、1時間と2時間後にそれぞれ採血し、血糖値を測るという検査です。

糖尿病でない方は、30分から1時間後に血糖値がピークに達したあと、2時間後には早朝空腹時血糖に近い値まで、血糖値は下がります。しかし、糖尿病になると、2時間たっても血糖値の下がりが不十分だったり、高いままであったりします。

具体的には、75gOGTTの2時間値が200㎎/dl以上であった場合は糖尿病の疑いがあります。また、この検査で140mg/dl未満まで血糖値が下がっていれば正常です。

症状が見られた場合は検査を勧めます


喉が渇く、トイレが近くなる(頻尿)、体重が減る、手足がしびれる、目がかすむ、ED、吐き気、体がだるい、などの症状を説明してきました。糖尿病は血液の中でブドウ糖が溢れかえり、その結果、血管や神経を傷つけてしまう病気です。

血管や神経は全身に張り巡らされていることもあり、その症状は多岐に渡ります。食生活が乱れている方、飲酒や喫煙が多い方、運動不足な方、年齢とともに体重が増えてきた方などは、思い当たる症状があれば早めの受診をお勧めします。

また、症状に気が付きにくい病気でもあるので、健康診断は毎年受けられることが望ましいでしょう。

診断されたらまずは食事療法と運動療法


糖尿病は、血液中に溢れかえったブドウ糖が血管や神経を傷つけてしまう病気です。なぜ、ブドウ糖が血液中に溢れかえってしまうのか。それは、摂取する糖分(分解されるとブドウ糖)が多すぎて、インスリンを製造する工場であるすい臓が疲弊し、インスリンが分泌されなくなってしまうからです。

血液中のブドウ糖を細胞内に取り込むためのホルモンであるインスリンでした。
つまり、摂取する糖分を減らし、すい臓を休ませてあげることが一番の治療になります。

また、インスリンでブドウ糖を細胞内に取り込む際に、余ったブドウ糖は肝臓、筋肉、脂肪組織などに蓄えるのでした。

つまり、適度な運動によって筋肉を維持すること、そして脂肪を燃焼させて貯蔵庫を開けておくことは、とても大切です。特に内臓脂肪が蓄積してしまうと、インスリンの働きを邪魔してしまいます。

 

西春内科在宅クリニックができる対応


糖尿病は血管や神経を傷つけるため、全身にさまざまな病気を引き起こすきっかけとなる病気と言えます。健康診断で糖尿病の可能性を指摘された方はもちろん、日常生活の乱れを自覚していて、糖尿病の症状かもと気づかれた方は、早めに受診することをお勧めします。

 

西春内科クリニックでは、内科医常勤医の診察のもと、適切な検査を行い、糖尿病の診断が可能です。

糖尿病の診断があった場合は、生活指導や、必要に応じてお薬の治療を行います。定期的な通院を行うことで、糖尿病の状態を確認しつつ、合併症の発症を予防していくことも大切です。

人は自分に甘く、誰かに見られている(医師に定期的に血糖値を確認される)と言うことが、治療へのモチベーションとなることもあります。


 

まとめ


糖尿病は、放置すれば、失明、血液透析、下肢の切断などにつながる恐ろしい病気です。さらに、脳梗塞、心筋梗塞、アルツハイマー型認知症など、さまざまな病気の原因や、それらの病気自体を悪化させる可能性もあります。「ちょっと血糖値が高かっただけ」などと、油断しないようにしましょう。

 

参考資料

糖尿病|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

糖尿病に関する統計・調査と社会的な取組み | 糖尿病情報センター (ncgm.go.jp)

糖尿病の診断基準 | 糖尿病 | バリューHR (sageru.jp)

糖尿病ネットワーク Diabetes Net. (dm-net.co.jp)

インスリン抵抗性とインスリンの分泌低下とは? 血糖値が高くなる2つの原因 | NHK健康チャンネル

1型糖尿病|一般の皆様へ|日本内分泌学会 (j-endo.jp)

1型糖尿病 概要 – 小児慢性特定疾病情報センター (shouman.jp)

認知症 | 糖尿病情報センター (ncgm.go.jp)

高尿酸血症ってどんな病気?合併症や痛風について


はじめに


高尿酸血症について知っていますか?

様々な原因により血液中の尿酸が異常に高くなった状態が続くことにより、
尿酸が足の指などの関節などに沈着して腫れ上がり、激痛を生じることもある病気です。


かつてはお金持ちの病気と考えられ「贅沢病」といわれていましたが、現代においても
生活習慣(環境要因)が深く関係する生活習慣病のひとつです。


ただし、生活習慣のみならず、遺伝要因が関与している病型や併存する他や、使用している薬物に起因する
二次性高尿酸血症もあります。


 

高尿酸血症とは


高尿酸血症とは様々な原因により
血液中の尿酸が異常に高くなった状態のことを指し、後述するいくつかの合併症の引き金となります。

 

尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態が「高尿酸血症」


高尿酸血症は、尿酸塩沈着症(痛風関節炎、腎障害など)の病因であり、性別、年齢を問わず、
「血清尿酸値が7.0mg/dlを超えるもの」と定義されます。*

*出典:2019年改訂高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会 編

 

高尿酸血症は産生過剰型と排泄低下型に分けられる


高尿酸血症には下記の2つの病型があります。

さらに双方を併せ持った
「混合型」もあります。

排泄低下型


排泄低下型とは、高尿酸血症全体の
約60%を占める多数派です。

尿検査により
クリアランスというものを測定することで診断をすることができます。

産生過剰型


産生過剰型とは、高尿酸血症全体の
約10%を占めます。

尿酸の産生量そのものが増加しているものを指しますが、最近までは腸管からの排泄が低下する腎外排泄低下型の病型もここに含められていました。


これらを区別するのは一般的な検査では困難であり、最近ではこれらをまとめて「腎負荷型高尿酸血症」という呼び方をするようになってきています。

 

高尿酸血症は食事や飲酒などの生活習慣が原因


食事・飲酒といった
生活習慣(環境要因)が大きく関係しています。肥満、アルコール、特定の食品の過剰摂取がリスクとなります。

疫学的には
女性よりも男性の方が多くなっており、高尿酸血症により引き起こされる痛風の発生率は、30歳以上の男性では1%を超えています。

 

尿酸値が高くても痛みなどの自覚症状がない


痛風のイメージが強い高尿酸血症ですが、痛風は尿酸ナトリウム1水和物(MSU)結晶による
急性関節炎を起こした状態のことを指します。

尿酸値が高くても無症候性高尿酸血症もあり、
必ずしも痛みを感じるとは限りません。

 

尿酸値が高いとさまざまな疾患のリスクが高まる


値が高いと無症候性高尿酸血症もありますが、逆に言いますと、
高尿酸血症は痛風発作の必須条件であり、高尿酸血症を来たす種々の要因が痛風のリスクとなります。


そして、尿酸値が高いことは、痛風だけに限らず、
尿路結石、腎障害、メタボリックシンドローム、高血圧・心血管疾患のリスクにもなります。

 

高尿酸血症が引き起こす病気や合併症


高尿酸血症はさまざまな病気や合併症を引き起こします。1つずつ詳しく解説していきます。 

痛風


「尿酸ナトリウム1水和物(MSU)結晶」
という尿酸の結晶が関節に沈着することにより、足の親指の付け根や足首などに激痛を伴う腫脹を起こします。

関節炎の一種であり、正確にはこの関節炎のことを痛風発作、痛風発作を起こすしたあとのことを痛風と呼びます。

 

尿路結石


尿中の尿酸濃度が高まり、結晶化した尿酸が尿路(尿管・膀胱・尿道)の内部で石を作る
「尿路結石」になりやすくなり、激しい痛みを引き起こします。


結石は特に酸性環境下でより固まる性質を持つことから、尿が酸性に寄っている高尿酸血症の患者さんは
再発にも注意が必要です。

 

腎障害


高尿酸血症は慢性腎臓病の発症に関連しており、また、
血清尿酸値高値はその腎障害の進展に関連することがわかっています。


さらに、
尿酸の70%は腎臓から排泄されるため、慢性腎臓病があると、高尿酸血症の悪化に拍車をかけて悪循環となってしまいます。

 

メタボリックシンドローム


メタボリックシンドロームの定義や詳しい説明はここでは割愛しますが、
高尿酸血症そのものはメタボリックシンドロームの診断基準には含まれていません。


しかしながら、血清尿酸値が高いほどメタボリックシンドロームの割合が高まり、逆に、メ
タボリックシンドロームの構成因子(内臓脂肪、高血圧、血清中性脂肪高値、インスリン抵抗性)が多いほど血清尿酸値が高いことがわかっています。


メタボリックシンドロームは、動脈硬化を通じて脳血管疾患や心血管疾患の危険因子となるため、
高尿酸血症を放置するとこれらの発症リスクを高めることとなります。

 

高尿酸血症は高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を合併しやすい


血清尿酸値が高い人の中でも特に若年者や肥満者、女性に置いては、
高血圧の割合が高いとされています。


血清尿酸値を上昇させる原因としてプリン体を多く含む食品が注目されがちですが、食事全体の量が多いだけでも上昇します。

このため、必然的に、脂質異常症や糖尿病を引き起こす生活習慣と重複することが多くなります。

 

高血圧・脂質異常症


高血圧・脂質異常症については以下の記事を参考にしてください。

関連記事:気づきにくい高血圧と脂質異常症は定期的な健診が大切です


糖尿病


糖尿病については以下の記事を参考にしてください。

関連記事:知らないと危ない糖尿病の症状と合併症について

 

高尿酸血症の予防法


高尿酸血症は、環境要因のみによって発症するものではありませんが、
生命予後に関連する肥満、高血圧、糖代謝異常、脂質異常などともに、関連する生活習慣を改善するなど、自身でもできることを意識的に積み重ねていくことが大切です。

 

生活習慣の改善が第一


薬物療法の有無に関わらず、
食事療法、飲酒制限、運動療法が基本となります。

食事管理


BMI(肥満度指数)や体脂肪率が高くなると血清尿酸値も高くなります。

生活習慣病一般に当てはまることですが、前提として
適正なエネルギーの摂取が重要です。


さらに、血清尿酸値の上昇をもたらすプリン体の摂取を控えるために、
肉類や魚の過剰摂取を避け、野菜の摂取を心がけましょう。

 

アルコールを控える


血清尿酸値に影響を与えるのはビールだけと思われがちですが、アルコールが肝臓で代謝される際に上昇するため、そうではありません。


しかし、酒類そのものに含まれるプリン体も影響するため、
酵母、麦芽由来のプリン体を多く含むビールの方が、蒸留酒やワインよりも血清尿酸値を上昇させます。

 

水を飲む


血清尿酸値は脱水によっても悪化するため、
適度な水分摂取は効果的です。

 

適度な運動


適度な運動は、肥満を是正しメタボリックシンドロームを改善することによる効果が期待されます。

一般にメタボリックシンドロームにおける運動療法は有酸素運動とレジスタンス(筋肉トレーニングなど)運動を組み合わせることが効果的とされていますが、短時間の激しいレジスタンス運動が血清尿酸値を上昇させてしまうため、痛風の患者さん(痛風発作歴のある患者さん)は、
低強度の運動が推奨されます。

   

病院での診察


過去に健診などで高尿酸血症の指摘歴があったり、痛風発作歴がある場合は容易に診察できることもありますが、健診異常の指摘歴がなかったり、初発症状の場合には、
それ以外の関節炎との鑑別が必要になります。

 

高尿酸血症や痛風の診察は内科へ


内科では
血液検査で血清尿酸値を測定し、身体所見と併せて診断の一助とします。

 

尿酸値が高いと痛風発作の発症率は高まる


血清尿酸値と痛風発作の発症率は相関するため、
適正な値を維持することが大切です。

発作歴の有無や併存疾患によって、血清尿酸値の治療目標値は変わってきます。

 

食事療法や運動療法、痛風等で痛みがあれば薬物療法を行う


大前提は
食事療法、飲酒制限、運動療法です。

また、発作による疼痛に対しては薬物療法を行いますが、関節炎の発作極期とそれ以外とでは治療法は異なります。


血清尿酸値を急激に下げると症状が悪化
することもありますので、状況を見ながら至適尿酸値を目指していきます。

 

西春内科在宅クリニックができる対応


痛風発作による疼痛と診断できた場合には
症状を和らげる薬物療法を行います。

その後も、至適尿酸値を維持できるよう、フォローを行ってまいります。


何かお困りの際のご相談は受け付けておりますので、
お気軽にご相談ください。



 

まとめ


いかがでしたか?痛風は単なる贅沢病、関節痛ではなく、その背景疾患である高尿酸血症は、様々なリスクをはらんだ状態であることが伝わりますと幸いです。


いまいちど、
健診結果や血液検査結果を確認されてみることをお勧めいたします。

心筋梗塞の前兆や症状について|生活習慣病の方は必見!

 

 

この前の健康診断でコレステロールの値が高いと言われた
血圧高いから塩分に注意するように言われた


このようなことに心当たりはありませんか?


高血圧や脂質異常症(高コレステロール血症などとも表現します)を放置していると、心筋梗塞で命を落としてしまう危険がある
ことをご存じですか?


今回はそんな怖い心臓の病気、心筋梗塞について解説していきます。



 心筋梗塞について

心筋梗塞とは、心臓自体に血液を届ける血管である冠動脈が詰まったりすることで心臓の筋肉が死んでしまう病気のことです。そもそも心臓は全身の臓器に血液を送り届けるためのポンプの役割を果たしている臓器です。


心臓がドックン、ドックン、と規則正しく動くことにより全身に血流が行きわたり、そして筋肉を動かしたり食べ物を消化吸収出来たりするのです。ただその心臓自体にも血液が行きわたらないと心臓が動くことができなくなってしまいます。そのための血管が冠動脈という

血管で心臓をぐるっと取り囲むように表面を走っています。この冠動脈がさまざまな原因で狭くなったり、最終的には詰まったりすることがあります。


このようにして冠動脈の血流が途絶えたり、急激に不足することにより心臓の筋肉が壊死していく病気が心筋梗塞です。

心筋梗塞のほとんどが突然くる急性心筋梗塞


さて、心筋梗塞はどのようにして起こるのでしょうか。血管は水道管と同じで、経年劣化もしますし、流れるものによってはぬめりが起きやすかったりします。そのような要因から
血管の多くは時間をかけて徐々に硬く、狭くなっていきます。


この時点で心臓が血流不足のサインを出してくれれば狭心症と診断することができるのですが、不運にもSOSが出ず、最終的に急激に進行したり詰まったりしたときに心筋梗塞になってしまいます。ですので心筋梗塞のほとんどが急激な胸痛をもたらします。


急性心筋梗塞を含む急性冠症候群において7割以上の患者に胸痛の症状があったと報告されています。

なかでも心筋梗塞の胸痛は急激に発生し、特に長く続くことが特徴です。痛み始めてから数分以内にピークに達し、その後20分以上続くと、かなり心筋梗塞が疑わしい痛み方になります。


日本人に多い死因でがんの次に心疾患その中でも急性心筋梗塞の割合が高い


急激な胸痛に加えて
心筋梗塞が怖いのは、死亡率が高いということです。


厚生労働省の2020年の集計では、がんに次いで2番目に多い死因(15%)と報告されています。
3) そして我が国における様々な研究で、典型的な心筋梗塞の患者のうち7~10%が入院中に亡くなってしまうと報告されています。
4-6) そして初回の治療を乗り切って退院した後も油断できないのが心筋梗塞の怖いところです。


血流が不足して壊死してしまった心臓の筋肉は多少は回復するものの、元通りにはなりません。全身に血流を送るポンプの機能が弱くなってしまい、さまざまな合併症を引き起こしてしまう恐れがあります。


典型的な心筋梗塞を患った患者において、退院後6か月以内の死亡率は4.8% 7) 、退院後2年での死亡率は6.3% 8) と報告されており、20人に1人以上が亡くなってしまう恐ろしい病気なのです。

心筋梗塞は突然死してしまうこともある


多くが急激な胸痛を生じる心筋梗塞ですが、怖いことに突然死してしまうこともあります。


特に怖いのが不整脈と心臓破裂です。激烈な胸痛により神経がたかぶり、身体は興奮状態となります(交感神経の作用です)。これにより興奮ホルモンが多量に分泌され、刺激された心臓がリズムを取り損ねてしまった状態が不整脈です。


不整脈にも種類がありますが、なかでも心室細動という不整脈は左心室がけいれんしており、有効な拍出がなくなってしまうため数分で命を落としてしまいます。


また、壊死してボロボロになった心臓に興奮ホルモンの刺激が強すぎて心臓が破裂してしまうこともあり、これも同じように突然死の原因になります。


あとで述べますが、このような怖い合併症を起こさないようにということも含めて、心筋梗塞は時間との闘いなのです。


心筋梗塞と狭心症との違いは?


「うーん、心筋梗塞が怖い病気だってことはわかったけど、よく耳にする狭心症とも違うの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。


狭心症と心筋梗塞という分け方は少し古い言い方であり説明が難しいのです。語弊を恐れずにざっくりと言うならば、血管が狭くなってきていて運動したときなどに一時的にギューッと痛むものが狭心症、完全に詰まったり急激に細くなったりすることで長時間痛みが生じたり心臓の筋肉が壊死したりするものが心筋梗塞と思っていただいてよいと思います。

狭心症とは


狭心症といっても、
不安定狭心症は(ST上昇型)心筋梗塞と並んで急性冠症候群という概念に含まれます。


安定した労作性狭心症や冠攣縮性狭心症などについて別の記事を作成しています。狭心症についてもっと知りたいという方はこちら(現在、作成中)の記事をご参照ください。

心筋梗塞は狭心症に比べて胸の痛みが強い



急性心筋梗塞を含む急性冠症候群において、
最も典型的な症状は胸痛です。

痛みは主観的な指標であり断言はできませんが、狭心症に比べて心筋梗塞の方が痛みが強く、長い傾向にあります。


また、顎、肩、背中などにも痛みが広がることがあります。中にはモルヒネを必要とするような激しい痛みを生じることもあります。

心筋梗塞は痛みが長く続く(30分ほど)



先ほど少し触れましたが、狭心症であれば胸痛は長くは続きません。

数分程度が多く、長くても15~20分程度です。

胸痛が20分以上続く場合には心筋梗塞の可能性が高いです。

心筋梗塞は冷汗や意識が遠のくことも


また、随伴症状として
冷や汗、呼吸困難、吐き気、嘔吐、失神などを生じることもあります。 

とくに糖尿病を患っている方や高齢者は痛みを感じにくいことがあり、意識消失などが唯一の症状として搬送されることもあります。


心筋梗塞を引き起こす原因は


ではこのような心筋梗塞はなぜ起こってしまうのでしょうか。繰り返しになりますが、心筋梗塞は冠動脈という血管が詰まったりすることが問題です。


いわゆる「パイプのトラブル」です。水道管と同じように、経年変化で硬くなってヒビが入ったり、どろどろしたものが流れたことで内部にぬめりなどが生じることが原因になります。

心筋梗塞は冠動脈硬化が原因


血管が硬く脆くなることを
動脈硬化といいます。動脈硬化は全身のあらゆる血管に起こりますが、冠動脈が硬化することで狭心症や心筋梗塞の原因になります。


動脈硬化の初期には血管の内側の膜が分厚くなったり脂肪分などが沈着したりすることでプラーク(粥腫とも言います)と呼ばれるものが発生します。プラークが成長して血管の中を狭めてしまうのです。

心筋梗塞は冠動脈硬化を招く危険因子


日本人の心筋梗塞において危険因子は、
高血圧、糖尿病、喫煙、家族歴、脂質異常症(高コレステロール血症)です。

高血圧・脂質異常症


血圧が高いと、血管に負担がかかることはご想像いただけると思います。医学的には血
管内皮細胞が障害されやすく、動脈硬化の原因になります。


また血液中の脂肪分が増えることでプラークの生成が促進され、これも粥状硬化症という動脈硬化の一つのパターンになります。


高血圧、脂質異常症に関してはこちらの記事に詳しくまとめていますので、ご参照ください。

糖尿病


糖尿病においても、末梢の細い血管において
血管内皮細胞が障害されやすいことが知られています。また血液の粘性が高くなり、より閉塞しやすい状態になるとも考えられます。


糖尿病についてはこちらの記事に詳しくまとめていますので、ご参照ください。

肥満


目に見えるもので注意していただきやすいのが、肥満です。
体重が増えると、血圧が高くなりやすくなり動脈硬化のリスクが増えます。


また肥満の原因には食生活の乱れや運動不足が背景にあると想像されます。塩分、糖分、脂肪分の多い食事をしていると、高血圧や糖尿病、脂質異常症の原因になります。

喫煙


生活習慣病と並んで、
心筋梗塞のリスクが高くなるのが喫煙です。


余談ですがDick Cheney 元アメリカ副大統領はヘビースモーカーで37歳から狭心症発作を繰り返し、このような重要職に就くのは不適切と言われたそうです。特に現在吸っていることが危険で、やめるのが早ければ早いほど良いです。欧米諸国では禁煙により心筋梗塞などが激減していると報告されています。

ストレス


意外に侮れないのが、ストレスです。
慢性的なストレスにより緊張状態が続いたりすることで自律神経がバランスをとりにくくなることがあります。

血圧の上下が激しくなったりすることが考えられます。

遺伝


心筋梗塞自体が遺伝するとは言えませんが、
家族歴は非常に重要な要素の一つです。

特に若くして発症した心筋梗塞などは生活習慣病だけでなく、血管それ自体になんらかの遺伝的異常が隠れている可能性があります。


Marfan症候群では血管が裂けやすいため大動脈解離などの血管の病気を発症しやすくなります。
また、家族性高コレステロール血症という病気もあり、調べてみると実は遺伝的要素が隠れていたということがありえるのです。

   

 もし心筋梗塞を発症してしまったら

発症してから1~2時間が予後を決める、すぐに救急車を呼ぶ

 




先ほど少し述べましたが、
心筋梗塞の治療は時間との戦いです。血流が得られなくなった心筋細胞は虚血の時間が長くなればなるほど壊死が進んでいきます。

壊死が進むほど、破裂などの合併症のリスクも上がりますし、心臓の機能が足りなくなり心不全を起こしやすくなります。


また急性期を乗り切った後の心臓の機能も悪くなる可能性が上がります。

心筋梗塞は一分一秒を争う病気なのです。


発症から3時間以内に治療すれば、後遺障害なく退院できることも


心筋梗塞の予後は、ズバリ
発症からいかに迅速に血流を再開(再灌流)させるかに依存します。


本邦における大規模研究でも、発症から3時間以内の早期に再灌流できた症例では良好な成績が得られたのに対し、総虚血時間が長くなるに連れて治療成績が悪化していました。

ただし、発症2時間以内の早期来院例では、来院から再灌流までの時間が90分以内を達成していれば、長期臨床成績は有意に良好でした。


 90分、2時間、3時間など様々な指標が出ていますが、「血流の悪い時間をなるべく短くする」ことが重要なのは間違いありません。早期治療ができれば、元通りの生活ができる可能性が十分にあります。

発症する前に循環器内科などで定期的な受診を


1分1秒を争う心筋梗塞ですが、時間は刻々と過ぎていきます。

仮に症状が出てすぐに119番通報して救急要請をしても、状況の説明、救急車の移動時間などでも時間はとられていきます。

我々医療者としては
診断から治療(血流再開)までの時間を少しでも削ることができるよう日夜努力していますが、残念ながら患者さま全員に確実に早急な血流再開をもたらすには至っていません。


心筋梗塞は、起こさないように血管のトラブルを早期発見しておくことが重要な病気なのです。

生活習慣病を見直すことが大事


「せんせー、結局予防と早期発見が大事なのはわかったから、何に気を付けたらいいか教えてよ~!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。


繰り返しになりますが狭心症や心筋梗塞といった血管のトラブルは、水道管のぬめり・つまりと同じようなものです。身体中に張り巡らされた水道管にあたる血管に負担をかけないことが重要になります。


具体的に気を付けるべきことは、ズバリ、血圧、血糖値、コレステロール、喫煙です。生活習慣病を見直すことが非常に大事なのです。


当院でも高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を早期に発見、介入することで、少しでも皆さんが元気でお過ごしいただけるよう努めています。当院の健康診断でコレステロールや血糖などを測ることもできます。心当たりのある方は、一度相談に来てみてはいかがでしょうか。お気軽にご相談ください。


西春内科在宅クリニックができる対応

上で少し触れましたが、当院では様々な生活習慣病の早期発見・早期治療に努めています。

健康診断も実施しており、血圧やコレステロール、血糖値などを検査することができます。

また心電図検査や胸部レントゲン検査も行っております。
CTや超音波検査の設備もあり、様々な角度から検査を行うことができます。



  まとめ

今回は恐ろしい心臓の病気、心筋梗塞についてまとめてみました。

がんや脳卒中などと並んで死亡率の高い非常に怖い病気です。

予防と早期発見がとても大事ですので、この機会に生活習慣病の見直しをしてみてはいかがでしょうか。


血圧、コレステロール、糖尿などに関して不安をお持ちの方、それ以外にも気になることがある方は一度受診してみることをお勧めします。この記事が皆様のお役に立てれば嬉しく思います。最後までご覧くださりありがとうございました。

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