高齢者に多い骨折の部位を解説|治癒期間や手術ができない場合について

高齢になると転びやすくなったり…
骨粗しょう症で骨がもろくなったり…
骨折のリスクが高まってしまいます。
自分や家族がもし実際に骨折してしまったら…?
わからないこともたくさんあるかと思います。
今回は、
- 高齢者に多い骨折の部位
- 保存治療(手術をしない治療)や手術を含めた治療内容
- 治療期間
などを含めつつ、高齢者の骨折について詳しく解説していきます。
高齢者に多い骨折の部位

高齢の方によくみられる骨折の部位は、以下の4か所です。
- 背骨
- 脚の付け根
- 腕の付け根
- 手首
どの骨折も、原因としては転倒が一番多く、打撲と比べて強い痛みがあり動かせないといった症状が特徴です。
それぞれ順番に説明していきます。
1.背骨
背骨の骨折は「圧迫骨折」や「いつの間にか骨折」とも呼ばれています。
体重がかかることによって、症状がなくてもじわじわと起こっていることがあります。
また、中腰の姿勢や重いものを持った時、あるいは尻もちをついただけでも骨折を起こしてしまうことがあります。
手術は必要ないことがほとんどです。
しかし、進行すると腰がどんどん曲がって腰痛が悪化し、姿勢が悪くなることによって持続的に胸焼けを起こしたり、バランス能力が低下したりすることもあります。
2.脚の付け根
大腿骨という太ももの骨が股関節に近い部分で折れてしまう骨折です。
大腿骨の一番上の部分は球形をしており、 そのすぐ下の部分は細くなっています。
そのため、とても折れやすい構造となっています。
股関節は歩く際に体重がかかるので、多くの場合骨折すると痛みがひどくて歩けないといった症状が出ます。
そのまま放置すると、歩けないために筋肉が衰え、寝たきりやそれに伴う誤嚥性肺炎を起こす危険性があります。
3.腕の付け根
上腕骨と呼ばれる腕の骨が肩関節の近くで折れてしまう骨折です。
打撲とは違い、腫れや内出血が強く出たり、痛みがひどく動かすことができないといった症状が出ます。
骨が比較的くっつきやすいため保存治療となる場合が多いのです。
しかし、折れた骨のズレが大きい場合や骨がバラバラになっている場合は手術も考慮されます。
4.手首
前腕の骨は2本あるのですが、そのうち橈骨(とうこつ)という骨が手首の近くで折れてしまう例がよくみられます。
玄関の段差やたたみ・布団の縁などでつまずいて手をついた際に骨折が起きます。
高齢者に多い骨折ですが、40〜50代など比較的若い方でも起こることがあります。
その場合は骨折の原因となり得る骨粗しょう症などの病気がないかどうか調べることもあります。
高齢者の骨折が起こる主な原因

主な原因として、以下の2つが挙げられます。
- 加齢によって骨がもろくなる病気(骨粗しょう症)が進行する
- バランスをとる力が落ちて転びやすくなる
1.骨粗しょう症
骨粗しょう症は日本に約1000万人以上いるとされ、高齢化の進行に伴いさらに増加傾向にあります。
骨は骨形成(新たに作る)と骨吸収(溶かして壊す)を繰り返しています。
骨粗しょう症はこのバランスが崩れることで起こり、骨の形成よりも吸収の方が多くなってしまった結果、骨がスカスカになっていきます。
特に閉経後の女性に多くみられ、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。
その他、糖尿病などの病気でも起こることがあるので注意が必要です。
◆【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
2.バランス能力の低下
バランス障害は病気による影響のほかに、加齢による運動機能の低下によって起こる場合があります。
バランス能力とは、立っている・動いているときなどに姿勢を維持する能力のことを指します。
感覚・中枢司令・筋力などの様々な要素によって成り立っています。
脳卒中など脳の病気を起こしてしまったり、筋力が落ちてしまったりすることでバランスをとる力が落ちてしまい、転倒しやすくなってしまうのです。
バランス能力をあげる方法として、日本整形外科学会では片脚立ちやスクワットを推奨しています。
日々の生活に是非取り入れてみてください。
骨折によって起こり得る合併症
1.せん妄

認知症は記憶や判断力が低下する病気ですが、骨折をした際に「せん妄」という状態となり、認知症と同じような症状が出ることがあります。
せん妄の原因として、骨折による痛みや入院などによる環境の変化、手術による身体への負担などが挙げられます。
せん妄では以下など様々な症状が出てきます。
- 注意力や判断力、記憶力が低下
- 眠れなくなる
- 幻覚や妄想を起こす
- 気分が変動する
また、安静期間が長くなることで認知機能が低下する場合もあります。
できるだけ早く普段の生活に戻れるような治療を考える必要があります。
◆【認知症外来監修】高齢者に多いせん妄とは?認知症との違いや症状、原因について解説
2.骨粗しょう症
骨粗しょう症は骨折の原因であるとお伝えしましたが、逆に骨折によって骨粗しょう症が進行することもあります。
一般的に、骨折を起こした高齢の方には元々骨粗しょう症があることが多いです。
しかし、骨折をして体を動かさなくなり、骨に負荷がかからない状態になると、筋肉と同じく骨もどんどんと痩せ衰えてしまい、より骨折を起こしやすくなってしまうのです。
◆【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
3.筋力低下・寝たきり

特に背骨や脚の付け根の骨折では、安静期間が長くなることによって筋力が落ちてしまい、寝たきりの原因となることがあります。
寝たきりの原因として、筋肉が衰えて歩けなくなることや活動意欲が低下することなどが挙げられます。
腕や手首の骨折であれば歩くことができますが、背骨や脚の付け根の骨折では痛みで動けないため、安静が必要となります。
しかし、ベッドの上での安静は1週間で10~15%も筋力低下が起こると言われています。
さらに高齢者では、2週間のベッド上安静で脚の筋肉が2割も萎縮するとされています。
そのため、痛みの程度に応じた足の筋力訓練が必要です。
また、脚の付け根の骨折では、早めに手術して筋力訓練・歩行訓練を行い、寝たきりにならないようにすることが大切です。
腕や手首の骨折では、片手が使えないのは不自由ですが、寝たきりにならないように普段通りの生活を心がけましょう。
◆【加齢による筋肉量の低下】サルコペニアとは?症状やフレイルとの違い、診断基準について
◆介護が必要になる原因で多いフレイル(高齢による衰弱)とはどんな状態なのか?
高齢者の骨折の手術・治療について

骨折における治療は部位ごとに違うので、先ほど説明した4つの部位ごとに解説します。
1.背骨
背骨の骨折の場合、ほとんどは保存治療です。
保存治療では腰のバンドや硬いコルセットなどを使用し、痛みに応じて安静を保ちます。
自宅での療養で構いませんが、動けないほどの痛みがある場合は入院も考慮されます。
手術治療は、数週間経っても痛みがひどい場合や、骨折によって脊髄という神経が圧迫されている場合に行われます。
方法は色々あり、骨折した部分に専用のセメントを入れる方法や、ネジや金属の棒で骨折している部分を固定する方法などがあります。
いずれの場合も入院した時の期間はおよそ2〜4週間程度です。
2.脚の付け根
基本的には手術治療となります。
保存治療では骨がつくまで数ヵ月の間ベッド上での安静が必要となります。
また、その間に筋力低下や褥瘡(床ずれ)、肺炎などの合併症が起こりやすくなってしまいます。
手術は骨折した部位によってそれぞれ方法があります。
ねじや金属の板、棒などで固定する方法と、人工物に入れ替える方法があります。
どの手術の場合でも、早期から筋力訓練を開始して寝たきりにならないようにすることを目標にします。
入院期間は大体2〜4週間程度です。
持病などで手術ができない場合は保存治療が選ばれることもあります。
3.腕の付け根
骨のズレが少ない場合は、保存治療が選ばれることがほとんどです。
保存治療ではまず三角布などで腕を固定し、肩関節を安定させるためにバストバンドを使用して腕を体に固定します。
痛みや腫れが少なくなってくる約1週間後から症状に応じて動かし始め、3週間程度は固定を続けます。
骨が大きくずれていてくっつきにくい場合や、肩が上がらなくなってしまうようなバラバラな骨折の場合は手術による治療を考えます。
手術は以下など様々です。
- ワイヤーなどを用いる方法
- 金属の棒やプレートで固定する方法
- 人工物に置き換える方法
入院期間はおおむね2週間程度です。
4.手首
手首の骨折は、ズレが少なければギプスを巻いて治します。
ズレが大きければ、麻酔をして痛みを取ってからずれた骨を元に戻す整復操作を行った上で、ギプスで固定します。
ズレが戻らないときや関節の軟骨に骨折があるときは手術となります。
手術はワイヤーで固定する方法やプレートで固定する方法などがあります。
入院期間は、ブロック麻酔を用いて日帰りで行う場合と、全身麻酔で手術をして数日〜1-2週間程度入院する場合があります。
高齢者の骨折で手術ができない場合の治療

残念ながら手術ができない場合があるのは事実です。
しかし、絶対に手術をしてはいけないと決めるのは難しく、患者さんの状態をみながら担当医をはじめとした複数の医師、患者さん、ご家族で相談して決めることが多いです。
手術は保存治療を選んだ時と比べてメリットが大きいと判断したときに勧められますが。
全身の状態が悪いときには手術が勧められない場合があります。
手術をした方がいい場合とは、骨のズレが大きく保存治療では機能が落ちる場合や、手術をしなければ寝たきりとなってしまうリスクがある場合などです。
逆に、手術ができない場合とは、麻酔や手術に身体が耐えられず、より状態が悪くなってしまう可能性がある場合などです。
最近では、麻酔技術の進歩により全身麻酔のほかに脊髄麻酔やブロック麻酔などで手術を行うことが可能になっています。
しかし、麻酔の合併症としてアレルギー反応や肺炎、脳卒中・心筋梗塞などといった血管系の病気の発症が少なからずあります。
また、手術そのものが身体を傷付ける行為であるため、出血や感染症などのリスクがあります。
加えて、麻酔や手術で身体に負担がかかった結果、持病が悪化してしまうこともあります。
患者さんの心臓や肝臓、腎臓の機能、持病などを踏まえながら、手術のリスクとメリットを考えたうえで患者さんとそのご家族で決定していきます。
骨折が治るまではおよそ3〜6ヶ月程度とされています。
保険診療では手術後150日(約5ヶ月)までのリハビリが認められています。
骨折では大体3週間で仮骨という弱い骨ができて、3ヶ月程度かかって硬い骨になっていきます。
その間もしっかり動かせるように手術を行います。
どの程度動かしてよいか、負担をかけてよいかは骨折した部分と手術の内容について決まってきます。
そのため、治るまでの期間やリハビリの内容については担当医とよく相談するようにしましょう。
ほとんどの場合、手術翌日から動かしていき、数週間程度入院しながらリハビリを行い、リハビリのやり方を覚えていきます。
その後はリハビリ専門の病院や施設、自宅へと戻り、ご自身でリハビリを続けていくという方が多いです。
リハビリにはやはり痛みを伴いますので、この間に鎮痛薬などを使って痛みをとりながらリハビリを行いましょう。
高齢者の骨折を防ぐのに効果的な日常生活の過ごし方

骨折を予防するために効果的なものは以下のような方法があります。
- カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、リン、マグネシウム、適量のタンパク質などをとる
- 運動、日光浴をする
- 禁煙し、アルコールは控えめにする
それぞれ説明します。
1.栄養補給
骨はカルシウムやリン、マグネシウムなどでできているため、不足しないように十分摂取することが重要です。
ビタミンDはカルシウムの吸収を良くして骨を強くする作用があり、ビタミンKも骨を強くするのに必要な栄養素です。
骨を強くするには筋肉もつけることが重要なので、筋肉をつけるために適量のタンパク質を摂りましょう。
2.運動・日光浴
宇宙飛行士が宇宙に行った後に骨がスカスカになってしまうように、骨を強くするためには運動などで骨に負荷をかける必要があります。
また、日光浴をすることで身体の中でビタミンDが生成されるので、一日に数十分程度は日光にあたるようにしましょう。
3.禁煙・節酒
タバコやアルコールはそれ自体が骨を弱くしてしまいます。
また、必要な栄養素が不足してしまうため、骨にとっていいことはありません。
楽しむ程度であればいいのですが、可能な限り控えるようにしましょう。
西春内科在宅クリニックができる対応
ご自宅でできる対応として痛みのコントロールがあります。
手術後も痛みが続く場合が多く、患部の痛みに対しては痛み止めが効果があります。
また、傷口からの感染がないかどうか確認することも必要です。
骨粗しょう症がある場合は骨粗しょう症のお薬も必要になってきます。
このような症状に対し、西春内科在宅クリニックでは診察や症状に応じた薬の処方をすることができます。
まとめ
今回は高齢者に多い骨折について骨折の多い部位や、治療方法、治療期間などについて解説しました。
高齢者の骨折は手術だけでなく保存治療という選択肢もあります。
また骨折の原因となる骨粗しょう症の治療も必要となってきます。
今回の記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。
お困りの症状がある場合にはぜひご相談ください。
参考文献(accessed on January 23rd, 2023)
・日本整形外科学会「骨粗鬆症」
・渡部欣忍「大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折 ~高齢者の脚の付け根の骨折~”」日本骨折治療学会
・井上尚美「上腕骨近位端骨折」日本骨折治療学会
・日本整形外科学会「橈骨遠位端骨折」
ロコモティブシンドロームとは?|予防や症状、原因について解説

ロコモティブシンドロームという言葉をご存知でしょうか。
ロコモティブシンドロームとは「骨や筋肉・神経が障害され、動けなくなった(身体機能が低下した)状態」をいいます。
ロコモティブシンドロームが長期間続くと、将来的に動けなくなり介護が必要になる可能性が上昇するとされています。
今回は、ロコモティブシンドロームのリスクや症状、治療法などについて詳しく解説していきます。

ロコモティブシンドロームとはどんな状態?

ロコモティブシンドロームは「骨や筋肉・神経(運動器)の障害によって日常生活制限をきたし、介護・介助が必要な状態になっていたり、そうなるリスクが高くなっていたりする状態」と2007年に日本整形外科学会が提唱した概念になります。
定義だけではわかりにくいので具体例を挙げると、「骨折や骨粗鬆症、筋力低下などで十分に動けなくなり介助を必要とする状況」です。
2012年の報告では、ロコモティブシンドロームに当てはまる人が予備軍を含め4700万人を超えると言われています。
昨今の高齢社会ではさらにこの人数は増えると予想されます。
ロコモティブシンドロームになる原因

主に下記が原因となって、ロコモティブシンドロームが引き起こされます。
- 加齢による筋力低下
- 運動不足による筋力低下
- 骨粗鬆症や骨折、変形性関節症などの整形外科的な疾患
◆高齢者の介護保険が適用になる特定疾病16種類とは?|申請方法やサービスについて
サルコペニア・フレイルとの違いは?

ロコモティブシンドロームと似た概念に「サルコペニア」と「フレイル」があります。
「サルコペニア」は、加齢によって筋肉量が減少し筋力が低下した状態を指します。
「ロコモティブシンドローム」が筋肉だけでなく骨・神経の障害を含むのに対し、「サルコペニア」は筋力低下のみに焦点を絞っています。
次に、「フレイル」は加齢によって心身ともに衰えた状態を指し、以下の3つの側面で成り立つものとされています。
- 身体的側面
- 心理的側面
- 社会的側面
「ロコモティブシンドローム」は身体的側面のみ注目しています。
そのため、心理的・社会的側面を含んでいる「フレイル」の方がより幅広い概念となります。
少々ややこしいですが、まとめると下の図のようになります。
「サルコペニア」→「ロコモティブシンドローム」→「フレイル」と意味の幅が広がっていくようなイメージです。

◆【加齢による筋肉量の低下】サルコペニアとは?症状やフレイルとの違い、診断基準について
◆介護が必要になる原因で多いフレイル(高齢による衰弱)とはどんな状態なのか?
認知症や骨粗鬆症を引き起こすリスク

ロコモティブシンドロームになると、運動量が低下して寝たきりの状態が続くようになります。
寝たきりの状態になると、認知症および骨粗鬆症は悪化します。
認知症や骨粗鬆症が悪化するとさらに身体機能が低下し、より重篤なフレイルの状態へと進行していきます。
フレイルへと至る負のスパイラルになる前に、ロコモティブシンドロームを予防することが重要です。
◆【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
ロコモティブシンドロームの症状

ロコモティブシンドロームの症状としては、四肢の関節や背部の疼痛、機能低下(可動域制限・変形・筋力低下・バランス力の低下)があります。
具体的には、「膝や腰が痛い」「姿勢が悪くなった」「膝の変形がある」「歩きが遅くなった」「つまづきやすい」などです。
ここでは自宅でできる7つのチェック項目をご紹介します。
①片足立ちで靴下が履けない ②家の中で滑ったりつまづいたりする ③階段を登るのに手すりが必要 ④家のやや重い仕事が困難 ⑤2kgの荷物の買い物をして持ち帰るのが困難 ⑥15分以上続けて歩くことができない ⑦横断歩道を青信号で渡りきれない |
以上の7項目のうち1項目でも当てはまればロコモティブシンドロームの可能性があります。
ロコモティブシンドロームになりやすい人の特徴

ロコモティブシンドロームになりやすい人の特徴として、以下の2点が挙げられます。
- 女性
- 肥満もしくは痩せ過ぎ
①に関しては、女性は閉経前後で骨密度が低下しやすくなっています。
そのため、ロコモティブシンドロームになるリスクが男性より高いとされています。
②に関しては、肥満による関節への負担の増大はロコモティブシンドロームの原因になります。
また、逆に痩せ過ぎも骨粗鬆症やサルコペニアの原因になり最終的にロコモティブシンドロームへと繋がります。
◆パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説
ロコモティブシンドロームの予防法・治療

まず予防ですが、以下の3点が重要になります。
- 毎日無理のない範囲内で運動を行う
- 生活習慣病を予防し適切な体重を維持する
- バランスの良い食事を心がける
①は特に「ロコトレ」と言われ、「片足立ち」や「スクワット」が推奨されています。
無理のない範囲内で毎日継続して行うことが大切です。
次にロコモティブシンドロームの治療です。
※予防と重複している部分があります。
- 毎日無理のない範囲で運動を行う
- 生活習慣病を予防し適切な体重を維持する
- バランスの良い食事を心がける
- 骨粗鬆症や変形性関節症などの整形外科疾患の治療を行う
予防と異なるのは④の「骨粗鬆症や変形性関節症などの整形外科疾患の治療を行う」です。
関節痛や腰痛に対しては鎮痛薬の内服や外用を行い、時には装具を使用します。
骨粗鬆症に対しては、ビタミンD、ビタミンKやカルシウムをしっかりと摂取し、適度な日光浴と運動が有効です。
また、骨の形成を促進するような薬の内服も行います。
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科・在宅クリニックでは、主に腰痛や痺れに対して薬を使った治療を行うことができます。
また、ロコモティブシンドロームに間接的に影響のある生活習慣病に対して、健康診断による予防や早期治療も行っています。

まとめ
今回はロコモティブシンドロームについて解説しました。
筋力低下や骨折などは脳卒中・認知症に次ぐ介護原因第3位であり、事前に防ぐことが重要です。
ストレッチや筋トレなどの運動を行い、痛みに対しては治療を行うことが大切です。
ぜひ、積極的にロコモティブシンドローム予防をしていきましょう。
参考文献
・Nakamura K. A “super-aged” society and the “locomotive syndrome”. J Orthop Sci. 2008 Jan;13(1):1-2. doi: 10.1007/s00776-007-1202-6. ・Epub 2008 Feb 16. PMID: 18274847; PMCID: PMC2779431.
・中村耕三:超高齢社会とロコモティブシンドローム。日本整形外科学会誌(J. Jpn. Orthop. Assoc.) (2009) 82:1-2
・内閣府平成30年版高齢社会白書(全体版)
・ロコモonline
・健康長寿ネット
コロナの後遺症で喉が痛い!こんな症状が続いたら一度コロナ外来へ!

こんにちは。
西春内科・在宅クリニックの伊藤です。
寒くなってきて、またコロナウイルス感染症の患者さんが増えてきてしまいました。
今回もコロナウイルス感染症後遺症について説明していこうと思います。
欧米ではLong COVIDや、Post-acute COVIDなどと呼ばれていますが、様々な症状を呈していることが報告されています。
その中でも咽頭痛や咽頭の違和感について、その病態や対策について詳しく解説していきたいと思います。

喉の痛みや違和感で考えられる原因

のどの痛みや違和感は咽頭(のどの奥)への病原体の感染が起こることで、局所の炎症が起こり、痛みを引き起こします。
新型コロナウイルス感染症においては、ウイルスが咽頭に感染し、炎症を引き起こすことがわかっています。
原因としては、コロナウイルス感染症だけでなく、以下などが痛みの原因となりえます。
- インフルエンザなどの他のウイルス感染症
- 溶連菌などの細菌感染症
- アレルギー
- 頻回にわたる咳
- 空気の乾燥
- 長期間にわたって叫ぶなどの筋障害
- 喫煙
◆【倦怠感・疲労感が続く】これって新型コロナ感染症の後遺症?その他考えられる原因
新型コロナ感染症の後遺症に多い喉の痛みや違和感の特徴

慶應大学が中心となって1000人を対象として日本人の症状経過について調査しました。
その結果によるとコロナウイルス感染症では約24%で咽頭痛を生じていることがわかりました。
熱は80%、咳は57%と報告されています。
咽頭痛を引き起こす方は多いわけではないこともわかりますね。
咽頭痛の程度としては患者さんから「インフルエンザと同じくらい」との声を多くいただいております。
「水が飲めないほど」までの痛みを生じることは比較的少ないと思われます。
また、比較的長く症状が続いている方からは「痰が絡んでいる感じ」や「痰があるけど出ない」ということもお聞きしています。
おそらくではありますが、炎症のあとには必ずと言っていいほど浮腫(むくみ)が起きます。
その状態が痰が絡んでいる感じによく似てしまうため、症状として感じてしまうのではないかと思われます。
発熱がおさまった後までのどの痛みや違和感が続く場合も見られます。
患者さんによっては、自宅療養期間を超えても症状が持続し、社会生活への復帰のタイミングが難しくなってしまう方も見られます。

新型コロナ感染症の後遺症で喉の痛みや違和感が回復する時期

先ほどもお示しした、慶應大学の研究では1年間にわたって後遺症のデータを集めて報告しています。
咽頭痛の発症率については次のようになっています。
発症時 | 24% |
診断後3か月 | 4% |
診断後6か月 | 3% |
診断後1年 | 2% |
多くの患者さんで3か月以内に症状が回復していることがわかります。
発症時に咽頭痛があった患者さんの10%程度では1年近く症状が持続することがわかりました。
◆新型コロナ感染症の後遺症に多い味覚・嗅覚障害の治し方|亜鉛不足が原因?
咽頭炎との違いは?
発生している病態についてもいまだはっきりしていない部分も多いです。
局所で発生している事象としては、おそらく一般的な咽頭炎と同様と考えられます。
局所的な炎症の程度が強いためか、一般的な咽頭炎よりも症状改善までの期間が長い印象があります。
◆動悸や息切れが治らない|原因はコロナの後遺症?ストレス?対処方法について解説
喉の痛みや違和感を治す方法はある?

のどの痛みに対しては、以下の薬が多く用いられています。
- トラネキサム酸(トランサミン)
- ロキソプロフェン(ロキソニン)
- アセトアミノフェン(カロナール)
これらの薬は炎症や痛みを抑えるだけであり、感染症を治す薬ではありません。
長期にわたって症状がある方に対しては上咽頭擦過療法(*1)と呼ばれる治療が行われています。
コロナ後遺症に有効とも言われていますが、効果には個人差があり、治療適応となるかは耳鼻科の先生にご相談ください。
また、避けた方がよいこととしては次のようなものがあります。
- 喫煙
- 飲酒
- 大声を出す
- 刺激物(辛い物、すっぱいもの)を食べる
- 熱いものを食べる
上記の行為などは、炎症の回復を遅らせる可能性がありますので避けた方が良いと考えられます。
上咽頭擦過療法(*1)=上咽頭に薬液を付けた綿棒などを擦り付ける方法 |
◆新型コロナの後遺症の一覧と症状が長引くときの対処法
もし喉の痛みや違和感は続くときは

コロナウイルスの自宅療養期間が終了してからも咽頭痛が続き、少しも回復の兆候が見られない場合は病院を受診することをお勧めします。
はじめはかかりつけの先生あるいは耳鼻咽喉科を受診すると良いでしょう。
また、上記に書いたような内服治療をおこなっているにもかかわらず症状が持続する場合はコロナ後遺症外来の受診をお勧めします。
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科・在宅クリニックでは、症状に合わせた簡単な投薬治療を行うことができます。
また、症状の程度によってはコロナ後遺症外来をご紹介することもできます。
初期治療については当院でも可能となりますので、「もしかしたら?」と思ったらまずは当院までご相談ください。

まとめ
今回はコロナウイルス感染症後遺症のうち咽頭痛について説明しました。
のどの痛みはコロナウイルス感染症だけでなく、普段の生活でも起こりえる症状です。
コロナウイルス感染症では普段よりも「強い」症状が「長く」続く場合があるかと思います。
コロナウイルス感染症の後遺症で咽頭痛にお困りの場合はご相談いただくようお願いいたします。
参考文献
・厚生労働科学研究成果データベース「新型コロナウイルス(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究」
【倦怠感・疲労感が続く】これって新型コロナ感染症の後遺症?その他考えられる原因
西春内科・在宅クリニックの伊藤です。
寒くなってきて、またコロナウイルス感染症の患者さんが増えてきてしまいました。
欧米ではLong COVIDや、Post-acute COVIDなどと呼ばれています。
様々な症状を呈していることが報告されています。
特に、倦怠感や疲労感はコロナウイルス感染症の後遺症でも多くみられる症状です。
今回はコロナウイルス感染症後遺症の倦怠感や疲労感の病態や対策について詳しく解説していきたいと思います。

コロナウイルス感染症後遺症とは
はじめにコロナウイルス感染症後遺症の定義について皆さんは知っているでしょうか。
アメリカ疾病予防センター(CDC)の定義では「新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)に感染してから4週間以上後に発生する可能性のある幅広い健康への影響(※)」とされています。
また、世界保健機関(WHO)の定義では「新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)に感染してから3か月の時点で、他の病気ではない2か月以上持続する症状(※)」とされています。
例えば、米国での研究では新型コロナウイルス感染症の患者の30%が9か月後の時点でも症状が持続しており、85%は軽症の患者であったと報告されています。
つまり、軽症であったからといって、後遺症が起きないということではありません。
※英文をわかりやすい形に意訳しています。
新型コロナ感染症で多い倦怠感・疲労感の特徴

新型コロナウイルス感染症後遺症のうち、倦怠感や疲労感は64%の患者で見られたとの報告もあり多くの患者でみられています。
日本では慶應大学が中心となって1000人以上の調査を行いました。
その結果、感染12か月後の患者の13%に倦怠感・疲労感の症状が出ていたことがわかっています。
これらは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(Myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome :ME/CFS)とよばれています。
6か月以上続く活動能力の低下と安静によって改善されない症状となります。
症状として以下のようなものがあるとされています。
- 疲労と機能障害:休息によっても実質的に軽減されない社会活動への障害
- 労作後倦怠感(Post-exertional malaise;PEM):発症前には耐えられた身体的、認知的ストレス暴露後に、症状や機能が悪化すること
- 睡眠の質の悪化(爽快感のない睡眠)
- 起立性不耐症:直立姿勢をとること、維持することによって症状が悪化するため姿勢をとれない
- 認知機能障害:労作、努力、ストレスによって悪化する思考や行動の障害
なかでも、労作後倦怠感(Post-exertional malaise;PEM)のコントロールが最も重要です。
治療においても管理のポイントとなります。

倦怠感・疲労感のセルフチェック
さて、ご自身がこの筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群にあてはまるかは以下のチェックリストを参考にするとよいでしょう。
①疲労と機能障害
・インフルエンザのような疲労感/倦怠感
・何度も休んで、必要最低限の活動しかしていないのに、充電が終わらない電池のような感じ
・思考が以前よりずっと難しくなった
・手足や体が重く感じられ、動かしにくい
・個人生活や家事における深刻な制限
・仕事、キャリアの喪失
・家に閉じこもることが多くなった
・社会的な交流の減少や孤立感の増大
②労作後倦怠感
・わずかな労作で精神的に疲れる
・軽い活動で体力が消耗したり、体調が悪くなったりする
・より厳しい、より長い、より繰り返される活動ほどひどくなる倦怠感
③睡眠の質の悪化
・眠ったことがないような感覚
・寝付けない、眠り続けられない
・長時間、または通常の睡眠時間でも、朝はまだ気分が良くない
④起立性不耐症
・長時間座っていたり、立っていたりする際のふらつき、めまい、時に失神
・空間的な見当識障害または平衡感覚の喪失
⑤認知機能障害
・ブレインフォグ
・混乱、見当識障害
・集中できない
・情報を処理することができない/マルチタスクができない
・適切な言葉がでない
・意思決定できない
・ぼんやりする/忘れっぽい
①~③のすべての症状が6か月以上続き、④、⑤のいずれかの症状を認めた場合、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群と診断されることとなります。
倦怠感や疲労感が回復する時期について
これらの症状はどれだけ続くのか、いつ回復するのかを完全に把握することはできていません。
また、症状の回復期間にもかなりの個人差があると考えられます。

その他考えられる倦怠感・疲労感の原因
倦怠感・疲労感の原因には新型コロナウイルス感染症以外にも考えられます。
例えば、以下の疾患など様々です。
- コロナウイルス以外の感染症(インフルエンザなど)
- がんなどの悪性疾患
- 呼吸器疾患
- 心疾患
基礎疾患がある方は、持病の悪化に伴う症状の可能性があります。
そのため、まずは除外が必要と考えられます。
倦怠感や疲労感があるときに控えるべきこと
とくに労作性倦怠感(PEM)は無理をしてしまうと症状が悪化していくことがわかっています。
そのため、自身の許容度を超えた運動やストレスへの暴露には十分注意をする必要があります。
「休んでしまった分仕事をしなければ」と感じてしまう方も多いと思います。
しかし、過負荷には注意しながら慎重に対応していく必要があります。
倦怠感や疲労感の治し方
ここまでご説明した筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群には治療法はありません。
そのため症状を管理していく必要があります。
アメリカ疾病予防センターでは以下のような対策を推奨しています。
① 労作後倦怠感(PEM)
PEMの患者は個人差のある一定量の運動やストレスを超えた場合に症状が出ます。
そのため、まずは「自分自身の精神的、身体的活動の限界を把握する」必要があります。
その後、その制限内にとどまる程度での日常生活での負荷をかけていき、徐々に活動量を増やしていく必要があります。
② 睡眠
睡眠後の回復が少ないと感じる方も多いと思います。
必要があれば睡眠薬の投与が補助となる可能性があります。
③ 痛み
筋肉や関節の痛み、頭痛、皮膚の痛みを感じることがあります。
ロキソニンやカロナールといった鎮痛剤は痛みの除去に役立つことがあります。
医学的な治療とは離れてしまいますが、マッサージ、ストレッチ、ヨガ、軽い運動などは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の改善につながる場合があります。
しかしすべてにおいて、確たる裏付けはありませんので治療は手探りで行うほかありません。
もし倦怠感や疲労感が続くときは
さて、ここまで読んでいただいた中で、ご自身が筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群ではないかと思った方もいるかと思います。
コロナ後遺症は患者さんが少ないため、まだまだ手探りでの治療となります。
そのため、同じような患者が多く受診されるコロナ後遺症外来を受診いただくことは効果的な治療を得ることができる可能性があります。
西春内科在宅クリニックができる対応
当院では、症状に合わせた簡単な投薬治療は行うことができます。
また、症状の程度によってはコロナ後遺症外来をご紹介することもできます。
「もしかしたら?」と思ったらまずは当院までご相談ください。

まとめ
今回は、コロナウイルス感染症後遺症の倦怠感や疲労感の病態や対策について詳しく解説しました。
この記事を読んでいただき、コロナ後遺症の倦怠感についてご理解いただけたでしょうか。
なかなか、治ることのない倦怠感が続く方は一度ご相談ください。
無理をすることは返って症状の悪化につながってしまいます。
まずは、無理をせず過ごしていただくようお願いいたします。
参考資料
・厚生労働科学研究成果データベース「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究」
・Centers for Disease Control and Prevention
・National Library of Madicine「Frequency, signs and symptoms, and criteria adopted for long COVID‐19: A systematic review」
・MECFScliniciansguide
新型コロナの後遺症の一覧と症状が長引くときの対処法について

新型コロナウイルスは感染した時の症状だけではなく、後遺症としてさまざまな症状を引き起こします。
症状も数週間くらいのものから、数ヶ月から1年と、長期間症状が続いてしまう方もいます。
今回は新型コロナ感染症の後遺症に多い症状と症状が長引く時にどうすればいいのかについて解説します。

新型コロナの主な後遺症について

新型コロナウイルス感染後72.5%の方がなんらかの後遺症があるといわれています。
それぞれどのような症状がでるのか、順番にみていきましょう。
倦怠感、疲労感
だるい、疲れやすいという症状は40%と高い頻度でみられます。
その他にもブレインフォグと呼ばれる「頭の中にフォグ(霧)がかかったような状態」となり、集中力が低下したり、記憶の障害などが出ることなどがあります。
このブレインフォグなどの神経症状は、感染による症状が強く集中治療室で治療を要するような重症な方や、喫煙、女性、肥満、糖尿病の合併などがあると起こりやすいことがわかっています。
息切れ
息切れも36%と高頻度な後遺症の症状です。
コロナウイルス感染は単に肺炎を起こすだけではなく、心筋梗塞や心不全、不整脈、脳梗塞などの血管病変を起こすウイルスであることがわかっています。
心不全などからくる息切れや、肺炎による肺の機能低下による息切れなどが原因と考えられます。
◆動悸や息切れが治らない|原因はコロナの後遺症?ストレス?対処方法について解説
嗅覚障害
流行しているコロナウイルスの型にもよりますが、嗅覚障害は24%程度といわれています。
臭いがしない、変な臭いがするなどの症状がでます。
嗅覚障害はほとんどは1週間程度で改善するといわれています。
しかし、中には長期的に症状が残る場合もあります。
◆新型コロナ感染症の後遺症に多い味覚・嗅覚障害の治し方|亜鉛不足が原因?
不安
新型コロナウイルスが精神面に及ぼす影響は非常に大きく、コロナ禍のストレスや未知のウイルスへの恐怖からくる不安などが問題視されていました。
コロナ感染の後遺症としても、およそ22%の患者さんで不安や睡眠障害などの精神症状がでるといわれています。
咳
コロナ感染で肺炎を起こすと、ダメージを受けた部分の肺機能が低下して咳や息苦しさの原因になります。
肺炎を起こさず、肺機能検査をしても異常がない場合にも17%程度で咳が長期的に残ってしまうことがあります。
味覚障害
コロナ感染後から、16%程度に味覚障害が出るといわれています。
味を感じにくい、味がしない、変な味がするなどが特徴的です。
◆新型コロナ感染症の後遺症に多い味覚・嗅覚障害の治し方|亜鉛不足が原因?
風邪やインフルエンザの後遺症との違い

コロナ感染以外の風邪やインフルエンザウイルス感染症でも、後遺症が出ることがあります。
風邪はかぜ症候群というさまざまな感染症の総称で、以下のウイルスなどが原因となり、鼻水、鼻づまり、喉の痛みなどの風邪症状を引き起こします。
- ライノウイルス
- コロナウイルス(新型以外)
- RSウイルス
- パラインフルエンザウイルス
- 細菌
- マイコプラズマ
風邪は通常は後遺症を残さずに治ることがほとんどです。
しかし、肺炎、気管支喘息、中耳炎、ごく稀ではありますが心筋炎を合併することがあります。
このような合併症を起こすと後遺症を残す可能性が出てきます。
肺炎、気管支喘息の症状としては咳や呼吸困難、中耳炎は聴こえにくさなどがでることがあります。
心筋炎は不整脈や心不全を起こすために、治療期間が長くなる傾向にあり、心機能の低下に時間を要する場合があります。
インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症ですが、風邪よりも強い症状がでるのが特徴です。
また、合併症も起こりやすいといわれています。
インフルエンザで多い合併症としては、脳症、肺炎、心筋炎があります。
特にインフルエンザ脳症は10-35%と頻度が高く、特に5〜9歳のお子さんで起こりやすい怖い合併症です。
頭痛、嘔吐、けいれん、意識障害などを起こし、命に関わる合併症です。
命は助かっても、長い期間意識障害が続いたり、知能障害、けいれん、麻痺などを起こす可能性があります。
新型コロナウイルス以外の後遺症と比較すると、新型コロナの後遺症の頻度は非常に高いです。
だるいだけなどの軽い症状から息苦しさ・動悸などの生活に支障がでるものまでさまざまであることが大きな違いです。
◆インフルエンザワクチンの副反応・副作用で起こる症状や出やすい人の特徴について解説!

新型コロナ感染症の後遺症が出やすい人の特徴

コロナ後遺症の症状が出やすいリスク因子としては高齢、新型コロナ感染症急性期の症状の数が多いなどが挙げられます。
感染した時に肺炎を合併し、集中治療室で治療を要したような方は、後々の後遺症の数も、症状の程度も強くなる傾向があります。
また男女比を見ると、女性の方が後遺症の症状が長くつづく傾向があることがわかっています。
新型コロナ感染症の後遺症が回復する時期について

後遺症の症状がどれくらい続くのかについては非常に個人差が大きいのです。
大半は時間経過とともに数週間程度で改善しますが、中には1年後も症状が残る方がいらっしゃいます。
新型コロナ感染症の後遺症は他人にもうつる可能性はあるのか

新型コロナ感染症の急性期(発症2日前〜発症後7-10日)をすぎ、後遺症症状のみがある状態の場合、周りの方に感染をうつしてしまうリスクは低いと考えられます。
ただし、最近では変異株も複数見つかっており、一度罹患して後遺症のみがある状態でも、新型コロナに再感染してしまうことがあります。
引き続き感染予防対策を取った上で生活しましょう。

新型コロナワクチンは後遺症に効果があるのか

新型コロナワクチン接種をして感染を予防できると、後遺症のでるリスクを減少させることができます。
ワクチンの予防効果は年齢によって若干変わります。
高齢者に対する発症予防効果はファイザー社、モデルナ社、武田社のいずれのワクチンも90%以上と報告されています。
ワクチンがすでにある後遺症を改善するかどうかは、研究結果はまだ出ておらずはっきりしません。
現時点では、感染してしまうまえにワクチン接種とマスク、手洗いなどの感染予防策が重要だと考えられます。
◆インフルエンザワクチンにかかる費用や値段はどれくらい?メーカーの種類によって効果は変わる?
もし症状が長引くときはどうすればいい?

新型コロナ感染から時間がたっても症状が改善されない場合には、一度病院を受診しましょう。
後遺症の症状の多くは、後遺症だけに特徴的な症状ではなく、他の病気でも起こりえます。
まずは、後遺症なのか、それ以外の病気がないかどうかを調べる必要があります。
◆風邪をひいたかも・・病院に行くべきタイミングはいつ?風邪と症状が似ている病気の見分け方
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科・在宅クリニックでは、症状で辛い場合に、ご自宅にお伺いして診察を受けることができます。
後遺症に対しての特効薬というものはなく、症状に応じて薬を調節する対症療法が中心となります。
現在お困りの症状に対して適切な薬の処方や調節をさせていただきます。
症状でお困りの際にはご相談ください。

まとめ
今回は、新型コロナ感染症の後遺症に多い症状と症状が長引く時にどうすればいいのか解説しました。
新型コロナの後遺症は症状や程度も個人差が大きいです。
また、後遺症の症状に長い期間、苦しむ方もいらっしゃいます。
できることとしては、ワクチンや感染予防で新型コロナ感染にならないように気をつけていただくことが重要です。
新型コロナ感染症になってしまって感染症状や、後遺症にお困りの際には、医師の診察を受けましょう。
参考文献
・新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 罹患後症状のマネジメント
・日本呼吸器学会「かぜ症候群」
・国立感染症研究所「インフルエンザとは」
・厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A」
【監修医師】
救急科専門医 Dr.新井 久美子
動悸や息切れが治らない|原因はコロナの後遺症?ストレス?対処方法について解説

「動悸」「息切れ」は多くは心臓や気管支・肺の病気が原因で起こります。
最近増えてきたのが、新型コロナウイルス感染症にかかって、熱も下がり咳が出なくなっても、動悸や息切れがして苦しいと訴える患者さんが増えてきました。
実はその症状、コロナの後遺症かもしれません。
今回は動悸・息切れの原因や、治療方法について解説していきましょう。

新型コロナ感染症の後遺症に多い動悸や息切れの特徴

動悸とは、自分の心臓の拍動するドキドキという動きにより、不快感や違和感を覚えることです。
心臓の拍動する速度が早くなったり遅くなったり、脈が飛んだりなどの脈も不整が起こることで動悸を自覚されることが多いです。
不整脈がなくても動悸を感じることがあります。
脈拍数というのは自分の意識では動かせない自立神経で制御されています。
しかし、ストレスなどで心拍に異常に敏感になったり、自律神経の働きが乱れることで動悸を自覚することもあります。
息切れも、実際に気管支喘息や肺炎、心不全などの病気で息切れを起こすことが多いのです。
身体に明らかな異常がなくても息切れを自覚して、息が吸えなくなってしまってパニックを起こす方もいらっしゃいます。
新型コロナの後遺症で動悸・息切れが起こることもあります。
新型コロナウイルス感染症は、単に肺炎を起こすウイルスではなく、以下の病気などを起こす可能性のある感染症だということがわかってきました
- 心筋梗塞
- 心不全
- 不整脈
- 脳梗塞
- 血栓塞栓
新型コロナウイルス感染症の後遺症として代表的な症状として動悸・息切れ以外にも以下の症状など、多彩にあります。
- 疲労感
- 倦怠感
- 関節痛
- 筋肉痛
- 咳
- 痰
頻度は報告によりばらつきがありますが、息切れ・動悸は18-88%、動悸は5-68%に及びます。
新型コロナの後遺症の場合には時間が経てば大半は改善します。
しかし、1年後も動悸・息切れなど後遺症の症状が残る方もいるようです。
実際に心不全や肺炎後の後遺症として症状が出る場合もありますが、心臓・肺に異常がなくても症状が出てしまうこともあります。
新型コロナの後遺症の動悸・息切れは、胸のレントゲン検査や心電図などの検査をしても異常はないにもかかわらず、症状が持続してしまうのが特徴です。
◆脳梗塞後遺症について知りたい|どんな症状やリハビリがある?
◆脳卒中について知ってほしい危険なサインとは|症状や後遺症、脳梗塞との違いについても
その他考えられる動悸や息切れの原因

新型コロナの後遺症以外で動悸・息切れを起こす原因の中で、心臓の病気は見逃せません。
最も危険な病気としては、心筋梗塞や心不全で心臓の機能が低下している場合です。
心臓は通常定期的に脈を打っていますが、脈がゆっくりすぎる徐脈、早すぎる頻脈、リズムの乱れがある不整脈の場合には動悸、息切れの原因になります。
診断や治療が遅れると命の危険があります。
飛行機などで長時間座って動かない状態の後に、動き出したら突然動悸や息切れが出たなどの場合には、肺血栓塞栓症を疑います。
脚にできた血栓が肺に血液を送る肺動脈に詰まってしまうことで、肺での酸素供給ができず、動悸息切れの症状がでます。
肺血栓塞栓症も治療が遅れると命に関わりますので、疑った場合にはすぐに病院受診が必要です。
心臓や肺の病気でなくても、以下が原因になって動悸・息切れが起こる場合があります。
- 貧血や低血糖
- 甲状腺機能異常
- 脱水
- ストレス
- 睡眠不足などによる自律神経の乱れ
- カフェインの取りすぎ
- 薬剤性
動悸や息切れが起きやすい人の特徴
前途したように、心筋梗塞や心不全、心房細動などの不整脈は、高齢者で合併しやすい病気です。
高齢者でなくて、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などがある場合には若い方でも心臓病のリスクは高くなります。
その他以下などの病気でも動悸・息切れが起こりやすくなります。
- 貧血
- 甲状腺機能異常
- 更年期障害
- 自律神経失調症
◆動悸はなぜ起こる?原因や起こりやすい人の特徴とは|すぐに病院に行くべき症状を解説
動悸や息切れの治し方
動悸、息切れの治し方は、原因によります。
心筋梗塞や心不全、肺血栓塞栓症などの重い病気の場合にはすぐに病院を受診し治療を行う必要があります。
診断や治療が遅れた場合には、命の危険が出てきます。
貧血、低血糖、甲状腺機能異常などが原因の場合にも、病気の治療をすることで動悸、息切れの症状は改善します。
病気が原因ではなく、ストレスや睡眠不足によって起こっているものの場合には、ホームケアとしてストレスを溜めない、睡眠を十分に取れるような生活習慣に見直しましょう。
自立神経失調のための生活習慣で気を付けるポイントは、自律神経失調の原因になるストレスを解消する方法を知ることです。
散歩や体操などの適度な運動、入浴などがおすすめです。
もし動悸や息切れが続くときは

例えば運動後などに動悸や息切れが出て、数分で改善してしまう場合、この症状が何度もあるようなら平日の日中に内科に相談してみましょう。
症状が改善せず、30分以上症状が継続する場合や悪化傾向の場合には、すぐに病院を受診しましょう。
動悸・息切れの症状が軽いものの、2-3日継続する、コロナ感染症後から常に症状があるなどの場合にも、病院でご相談ください。
まずは心臓や肺の病気がないかどうかを診察や検査を行います。
特に治療が必要な病気がない場合には、ストレスや自律神経失調症などを疑います。
ストレスを溜めないような生活習慣についてアドバイスをさせていただきます。

西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科在宅クリニックでは、動悸や息切れの症状が持続し辛い場合、ご自宅にお伺いし診察や治療を行います。
症状に対して医薬品や漢方薬で症状を改善させることができます。
コロナ感染症の後遺症として症状がある場合には、長い期間症状が続く方もいます。
辛い症状がある場合には、ぜひご相談ください。

まとめ
今回は新型コロナの後遺症として出やすい動悸・息切れの原因や治療方法について解説しました。
新型コロナ感染は感染している時も、その後も辛い症状が続く場合があります。
記事を読んでいただき気になる点や不安なことがある場合には、お気軽に医師にご相談ください。
参考文献
新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 罹患後症状のマネジメント
日本循環器学会「日本不整脈心電図学会合同.不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」
【監修医師】
救急科専門医 Dr.新井 久美子
新型コロナ感染症の後遺症に多い味覚・嗅覚障害の治し方|亜鉛不足が原因?

日本での新型コロナウイルス感染者の中で味覚障害の発生数は、過去の全国調査で年間約24万人と報告されています。
決して少ない人数ではなく、味覚障害は誰にでも生じる可能性のある症状です。
新型コロナウイルス感染症に罹患した後、ほとんどの方は時間とともに症状が改善します。
しかし、後遺症として味覚・嗅覚障害になってしまう人が存在しています。
新型コロナウイルス感染症にかかると回復した後にも後遺症として、以下の症状などが見受けられる場合もあります。
- 微熱・発熱
- 呼吸困難
- 咳
- 倦怠感
- 脱毛
- 集中力の低下
- 精神症状
厚生労働省が改訂した後遺症についての診療の手引きによれば、日本で新型コロナウイルスの代表的な後遺症として以下の症状を含む約20種類の症状が挙げられています。
- 疲労感・倦怠感
- 関節痛
- 嗅覚障害
- 味覚障害
- 睡眠障害
後遺症に関して現時点でも不明なことが多く、国内外を含めてさまざまな調査が行われている段階です。
今回は、新型コロナウイルス感染症の後遺症である味覚障害や嗅覚障害に関する発症原因や治療方法などについて解説していきます。

新型コロナ感染症で味覚・嗅覚障害が起きてしまう理由

新型コロナウイルス感染症や、その後遺症の特徴的な症状として話題になった嗅覚障害は、「嗅細胞」と呼ばれるにおいを感じる細胞がダメージを受けることによって出現することが段々とわかってきました。
新型コロナウイルスは、細胞の表面にあるアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体という細胞と結合して細胞内に入り込んで増殖します。
このACE2受容体は鼻の上皮細胞で多く発現しています。
また、このACE2受容体の発現は小児では少なく、年齢を重ねるにしたがって多くなることが報告されています。
味覚障害自体の症状は匂いの感覚が弱くなる、あるいは匂いをまったく感じなくなる嗅覚障害に伴う風味障害も同時に発生することによって出現する場合が多くあります。
味覚・嗅覚のセルフチェック

新型コロナ後遺症では、味覚障害がみられることがあります。
味覚障害とは味に対する感度が低下して、味を感じなくなる状態のことです。
特に30歳代以下の若年者に多いと言われています。
味覚障害には、以下のチェック項目のなかで1つでも該当すれば、味覚障害である可能性があります。
- 味を感じない
- 食べ物がおいしくない
- 本来の味と違って感じる
- 常に口の中が苦い
- 甘みや酸味、塩味など特定の味が分からない
- 調味料をいつもより多く使うようになった
軽度の嗅覚障害は自覚されにくいことから、客観的な嗅覚検査を行い嗅覚障害の早期診断につなげることが重要です。
「簡易嗅覚確認キット」では、嗅覚のみを刺激するニオイ物質を選択して、1キットで複数回利用できる検査手段となっています。
以下の症状など嗅覚異常を感じた場合は、ウイルス感染により嗅粘膜がダメージを受けている可能性が考えられます。
- 急に匂いを感じなくなる
- 何もないところで匂いがする
- いつもと同じように匂いが感じられない
味覚・嗅覚障害はいつ治る?自然回復する時期について

新型コロナウイルス感染症での味覚・嗅覚障害自体は自然に回復することも多くあります。
症状を有する人の60〜80%は2週間以内に改善するとの報告が多く、決して治療を急ぐ必要はありません。
味覚障害が出る際には、以下のケースがあります。
- 新型コロナ後遺症として病気になりはじめの時期から持続するケース
- 発症直後から回復した後に新たに出現するケース
症状の程度は変化しやすくいったん症状が治まった後に再び症状が現れることもあります。
味覚障害や嗅覚障害が治るまでの期間については、症状の経過は個人差があり、一般的に感染後1か月程度で自然に治癒する例が多いと考えられています。
後遺症全般では、半数以上が5か月以内に症状の改善を自覚する一方で、1年以上後遺症が続くケースも見受けられます。

その他考えられる味覚・嗅覚障害の原因

味覚障害とは
味に対する感度が鈍くなり、味を感じなくなったり、味が分かりづらくなったりする症状全般を「味覚障害」と呼んでいます。
味覚障害を発症する人の数は、高齢化やストレスを感じやすい社会のなかで増加傾向を示しています。
通常、口に入れた食べ物の味を脳に伝達する「味蕾(みらい)(*1)」という味覚受容器の数が減少すると、味覚が減退して、味覚障害を生じます。
味覚異常の原因のうち、ほとんどが味蕾の減少によるものです。
しかし、脳腫瘍や外傷などが原因で神経に異常が生じて味が分からなくなる、神経性の味覚障害も存在します。
味覚障害の症状は「味覚低下」と「異味覚」の大きく2種類に分けられています。
味覚には甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の5種類が存在しています。
味覚低下とは、これらの5つの味覚が減退したり、全く感じなくなったりする症状のことです。
稀にある特定の味だけを感じなくなることもありますが、ほとんどの例では5つの味覚全てにおいて感度が低下すると言われています。
異味覚とは、本来は感じるはずのない味を感じる症状を指しています。
例えば口の中で常に渋味が感じられるといった症状が認められます。
味蕾(みらい)(*1)=味細胞の集まりで、甘味・苦味・塩味・酸味などを感じることができる |
味覚障害の原因
味覚障害を引き起こす原因について、未だ解明されていない点も多いです。
特定の原因だけでなく、複雑な要因が影響し合っている例もあると考えられています。
現時点で判明している代表的な原因として、以下のようなものが挙げられます。
- 加齢
- 栄養不足
- 薬の副作用
- 慢性的な病気
特に、加齢に伴って味覚障害が多くみられると言われています。
高齢者では加齢によって味蕾の数が減少し、味蕾が味を感じる機能自体も年齢を重ねるごとに低下してしまうのです。
そのため、高齢者では味覚障害を生じやすい傾向にあります。
若い世代でも、ストレスや偏食などのさまざまな要因によって、味覚障害を起こす場合があります。
◆【加齢による筋肉量の低下】サルコペニアとは?症状やフレイルとの違い、診断基準について
◆介護が必要になる原因で多いフレイル(高齢による衰弱)とはどんな状態なのか?
味蕾の減少を予防するには
味蕾の新陳代謝に必要不可欠なのが、「亜鉛」という栄養素です。
食事から亜鉛の摂取量が不足すると、味蕾に機能低下が生じて味覚に異常が出現する場合があります。
亜鉛以外にも、鉄分の摂取不足で鉄欠乏性貧血の状態になると、舌の表面が赤くつるつるになり、味覚障害が起こる場合もあると言われています。
さらに、鉄の吸収には「ビタミン」が関連しています。
亜鉛や鉄だけでなく、ビタミン不足にも注意することが必要です。
ビタミンの中でも「ビタミンB12」の摂取が不足すると、舌の粘膜に異常を生じて味覚障害の原因になることがあります。
ビタミンB12以外にも、ビタミンB2の摂取不足によって、口内炎や舌炎といった症状が引き起こされることで味を感じにくくなる場合もあります。
病気の薬の副作用や病気自体が原因になることも
以下の病気などの薬の副作用でも味覚障害を生じることもあります。
しかし、多くの場合には服薬の中止と共に徐々に味覚が改善します。
- 糖尿病
- 高血圧
- 関節リウマチ
- パーキンソン病
- 消化性潰瘍
その他、がんや中耳炎、精神疾患などの病気そのものが原因で味覚障害が生じる場合もあります。
特に心身症、神経症、うつなどが関連している心因性の味覚障害については、60代の女性に圧倒的に多く発症すると言われています。
新型コロナウイルス後遺症以外での嗅覚障害の原因として最も多いのは慢性副鼻腔炎です。
慢性副鼻腔炎は、鼻汁が漏出して鼻づまりを引き起こすなどの慢性的な症状が12週間以上に渡ってなかなか改善しない状態を指しています。
この病気は、風邪症状に関連して細菌感染をベースにして急性副鼻腔炎の状態から続発することが知られています。
成人では鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)(*2)、小児ではアデノイド肥大(*3)なども発症のリスク因子と捉えられています。
鼻中隔彎曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)(*2)=鼻中隔が強く曲がっているために、いつも鼻がつまったり、鼻出血が多くなったり、口呼吸やいびきなどの症状 アデノイド肥大(*3)=鼻の突き当たりの部分であり、鼻からのどに移行する部分でもある上咽頭にあるリンパ組織のかたまりをアデノイドいい、このアデノイドが色々な原因で大きくなり、鼻や耳に様々な症状を引き起こすこと |
◆パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説
◆高血圧症と脂質異常症に共通している原因とは|命にかかわる合併症の危険性|定期的な検診を
◆【放置すれば危険】糖尿病が引き起こす可能性のある合併症とは?原因や症状、予防法についても
亜鉛は味覚・嗅覚障害に効果があるのか

新型コロナウイルス感染症の後遺症としての味覚障害では亜鉛を摂取することで有効性があるかどうかはケースバイケースです。
亜鉛不足での味覚障害と診断された場合には、亜鉛を含む薬が処方されるケースが多くなっています。
栄養不足が原因の味覚障害では、不足している栄養素を補給することで、すぐに症状の改善がみられるケースもあります。
亜鉛の内服薬には、飲み合わせに注意が必要な薬もあります。
市販薬などを併用する場合は、事前に医師や薬剤師に相談しましょう。
亜鉛を多く摂取できる食べ物は?
亜鉛は、以下の食材などに多く含まれています。
- 生かき
- 煮干し
- しらす
- かつお節
- ほたて
- うなぎ蒲焼き
- 豚レバー
- 鶏肉
- 枝豆
- たけのこ
- ごぼう
- 納豆
- あずき
- そば
- 牛乳
- チーズ
亜鉛とは体内に存在する量が最も多いミネラルであり、生命維持に欠かせない役割を担っている栄養素のひとつです。
18歳以上の亜鉛の推奨摂取量は男性では10〜11mg、女性では8mg程度です。
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、亜鉛の平均摂取量は20歳以上の男性で9.2mg、女性で7.7mgになります。
そのことから、男女共に推奨されている摂取量よりも実際の摂取量が下回っていることがわかります。
亜鉛は主に骨格筋・皮膚・肝臓・膵臓・前立腺・脳・腎臓などの臓器に存在しています。
約300種類以上の酵素の構成要素として重要な働きを担っている必須ミネラルの1つです。
人の身体は基本的には亜鉛を作り出すことができませんので、普段の食事やサプリメントなどから亜鉛を摂取する必要があります。
味覚障害予防のためには、日々の食生活が重要です。
普段の食生活で心がけたいことは、以下などが挙げられます。
- 栄養バランスよく亜鉛や鉄分が多く含まれる食品を積極的に摂取する
- たんぱく質やビタミンを同時に摂取して鉄分の吸収率を上げる
漢方は味覚・嗅覚障害に効果があるのか

新型コロナウイルス感染症の後遺症、あるいは原因が特定できない味覚・嗅覚障害に対しては、漢方薬の使用が検討されることもあります。
漢方薬のなかでも、特に当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) という漢方薬が味覚・嗅覚障害の症状に対して有効だということがわかってきています。
過去の調査では、風邪症状後に特に嗅覚障害を訴える患者さんに当帰芍薬散を服用してもらったところ、3か月で3割以上の人に症状の改善がみられました。
同時に、1年の期間に漢方薬の服用を続けた場合は約8割が症状改善したという報告があります。
当帰芍薬散を服用した場合は、自然治癒の場合と比べて、特に嗅覚障害に対する高い治療効果が得られています。
さらに、通常嗅覚障害の治療で使用されるステロイド薬と比較しても、当帰芍薬散のほうが高い治療効果を示したとも言われています。
味覚障害や嗅覚障害が短期間で劇的に改善する治療法は、現状見つかっていません。
しかし、当帰芍薬散の服用を中心に効果的な治療を地道に続けるのが、症状改善に向けた一番の近道と考えられます。
もし味覚・嗅覚障害が治らないときは

嗅覚障害に対して嗅細胞の再生を促す方法としては「嗅覚刺激療法」が知られてます。
強いにおいをかぎ、嗅覚をトレーニングすることで、嗅細胞の再生が促されてにおいを感じやすくなることがわかっています。
このトレーニング方法は、朝食の前と夜寝る前の1日2回。 レモン、ユーカリ、バラ、クローブのにおいを、それぞれ10秒ずつかいで、嗅覚を支配する細胞の再生を促します。 |
このトレーニングを行った場合と行っていない場合を比較すると、トレーニングを行った場合のほうが、症状の改善効果が高いという結果が出ています。
家庭でも入手しやすい入浴剤やアロマオイルなどの強いにおいを意識的にかぐと、嗅覚の改善が促されると想定されます。
後遺症としての嗅覚障害の場合は、においを感じないのではなく「においは感じるけれど本来のにおいとは違う」という質的な嗅覚障害であることが多いです。
そのため、何事も嫌なにおいに感じられてトレーニング自体を継続するのがつらいという場合があるかもしれません。
後遺症としての嗅覚障害は、普段何とも思わない食べ物のにおいが気になるせいで食欲や食事量が減少して健康を害してしまうことも少なくありません。
漢方薬やトレーニングを活用して、できるだけ早く後遺症状を改善するように努めることをおすすめします。
新型コロナウイルス感染症を発症して14日以上にわたって嗅覚障害や味覚障害に関する症状が続く場合には、後遺症を疑って確実な形で適切な診療科を選択しましょう。
その場合は、病院での治療とコロナ専門外来を受診されることをお勧めします。

西春内科在宅クリニックができる対応
味覚・嗅覚障害は通常、自然治癒するとされているため、休息を取ったり生活習慣を整えたりして過ごすことが大切です。
しかし、これらの症状が2週間以上続くなど気になる症状がある場合は、西春内科・在宅クリニックを始め、かかりつけ医や近隣の医療機関に相談してください。
西春内科・在宅クリニックでは、後遺症に悩む患者さんの症状をお伺いして後遺症が少しでも早く改善されるよう症状に合わせた治療や処置を行っています。
新型コロナウイルス感染症に関連した味覚・嗅覚障害が疑われる場合には、嗅覚刺激療法、漢方薬、ステロイド点鼻などの治療を組み合わせて対応します。
もし、ご家族や自身について気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。

まとめ
新型コロナウイルスは肺炎などの呼吸器感染症を発症するとともに味覚障害や嗅覚障害を認めるケースもちらほら見受けられています。
後遺症が起こるメカニズムがわかっても、長い間、味覚や嗅覚の異常に悩まされている人は、希望が持てなくなることもあるでしょう。
新型コロナウイルス感染症に感染していから、以下の気になる症状などがある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
- 味を感じにくい
- 変な味がする
- 食べ物の味が以前と変わった
- においを感じない
- 変なにおいがする
- 何をかいでも嫌なにおいがする
味覚障害や嗅覚障害を認める際には、新型コロナウイルスに感染して後遺症を患っている可能性も想定されます。
速やかに最寄りのクリニックや診療所を始めとする医療機関や相談窓口に足を運ぶことをお勧めします。
今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。
参考文献
・厚生労働省HP「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について」
・eHealth clinic HP「新型コロナウイルス感染症の後遺症にある味覚障害の特徴とは? ~特に30歳代以下の方に多く発症している~」
医師 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)
【プロフィール】
平成19年に現大阪公立大学医学部医学科を卒業。初期臨床研修修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科勤務、平成26年より国家公務員共済組合連合会大手前病院で勤務、令和3年より同院救急科医長就任。どうぞよろしくお願い致します。
【専門分野】
救急全般(特に敗血症、播種性血管内凝固症候群、凝固線溶異常関連など)、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
【保有資格】
日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医、日本救急医学会認定ICLSコースディレクター、厚生労働省認定緩和ケア研修会修了医、厚生労働省認定臨床研修指導医など
高齢者の介護保険が適用になる特定疾病16種類とは?|申請方法やサービスについて

こんにちは。
西春内科・在宅クリニックの伊藤です。
今回は病気ではなく、行政サービスである介護保険についてです。
家族が特定疾病(とくていしっぺい)と診断されたときには介護保険が利用できます。
これは自動的に付帯するものではなく、自身でサービスの申請を行うことが必要です。
知らないままですと受けられるはずだった補助が受けられなくなってしまいます。
今回はこの介護保険、特定疾病についてわかりやすく説明していきます。
特定疾病とはなにか

皆さん、特定疾病(とくていしっぺい)と、特定疾患(とくていしっかん)の違いについて知っていますか?
ここを理解しておかないと、介護保険制度を上手に活用することはできません。
まずは、この特定疾病と特定疾患について簡単に説明します。
特定疾病とは
特定疾病とは、介護保険施行令によって定められている16の病気のことを指します。
その多くの発症が加齢と関連していると考えられています。
詳細な病名については後ほどご説明します。
特定疾患とは
特定疾患とは2014年頃までは厚生労働省が実施する難治性疾患克服研究事業の対象に指定されている疾患とされていました。
現在は難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)ができたことにより指定難病と呼ばれ、300以上の疾患が該当します。
16種類の特定疾病一覧
厚生労働省が選定する特定疾病を順に紹介していきます。
① がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
知っている方も多いと思いますが、悪性腫瘍を総じて「がん」と呼びます。
ここには肺がんや胃がんなどのほかにも、悪性リンパ腫や白血病といった血液がんも含まれます。
回復の見込みがない状態とは、治癒見込みがないことであり、状態によっては抗癌剤治療中でも介護保険サービスを受けることが可能です。
◆肺がんの初期症状や原因、ステージ(進行度)について【早期発見で治療が可能】【医師監修】
◆胃がんの症状は胃炎や胃潰瘍と似ている?前兆や原因、治療など医師が解説
② 関節リウマチ
免疫の異常によって関節に影響を及ぼす慢性炎症性疾患をいいます。
40~60歳代の女性に多い疾患です。
③ 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
原因不明の運動ニューロン(神経細胞)が障害されることによって全身の筋肉が衰えていく疾患となります。
◆【加齢による筋肉量の低下】サルコペニアとは?症状やフレイルとの違い、診断基準について
④ 後縦靱帯骨化症
背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨に変化してしまうことで、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫されて、感覚障害や運動障害などの神経症状を引き起こす病気です。
⑤ 骨折を伴う骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
骨の強度が弱くなりもろくなった状態を骨粗鬆症といいます。
転倒などにより大腿骨(ふとももの骨)や、椎骨(背骨)の骨折を起こすことが多くなります。
◆【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
⑥ 初老期における認知症
脳の病気や障害などの原因で、認知機能が低下(記憶障害、行動障害など)し、日常生活に支障が出てくる状態です。
加齢に伴う物忘れとは異なります。
アルツハイマー型認知症が有名ですが、他の原因でも起こることがあります。
◆【認知症外来監修】高齢者に多いせん妄とは?認知症との違いや症状、原因について解説
◆認知症が一気に進む原因や知っておきたい予防と対策について |西春内科・在宅クリニック
◆認知症における顔つきが変わる理由と初期症状や代表的な種類など医師が解説
◆認知症の検査方法と費用について|治療の副作用は?|検査を拒むときはどうすればいい?
⑦ 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病【パーキンソン病関連疾患】
神経変性疾患とよばれ、振戦(しんせん:体の一部のふるえ)、筋固縮(筋肉のこわばり)、無動(動きが遅くなる)、姿勢反射障害(姿勢を保てない)といった症状が代表的です。
ゆっくりとし進行していきます。
◆パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説
⑧ 脊髄小脳変性症
小脳を中心とした神経の変性によって生じる病気の総称となります。
箸を使う・字を書くなどの細かい動きがしにくい、歩行時のふらつき、呂律が回らず言葉が滑らかに出ない、などの小脳性運動失調の症状が特徴的です。
⑨ 脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症とは、背骨(脊椎)の中心にあり、神経が通っている脊柱管が狭くなることで神経が圧迫されてしまい、痛みやしびれを引き起こす病気のこととなります。
歩いているとだんだん腰痛や足のしびれといった症状が現れ、少し休むと回復する間欠性跛行(かんけつせいはこう)になるのが特徴的です。
症状がひどくなっていくと、筋力低下、運動障害、排尿・排便障害といった症状が見られることもあります。
この病気は加齢や背骨の病気などの影響で背骨、椎間板、靱帯などが変形することが原因で起こります。
⑩ 早老症
若年性白内障、白髪、脱毛、鳥様顔貌(鼻がとがって鳥のような顔つきになる)、軟部組織の石灰化など、実際の年齢よりも早く老化の兆候が現れる病気を総じて早老症と呼びます。
遺伝子の異常によって引き起こされ、進行すると糖尿病や骨粗鬆症、高脂血症、がんなども起こります。
⑪ 多系統萎縮症
原因不明の自律神経症状、パーキンソン症状、小脳症状といった神経症状が組み和わせて発生する疾患を総じて多系統萎縮症と呼びます。
◆自律神経失調症とは?原因や症状、治療方法などについて解説
⑫ 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
これら3つの疾患は糖尿病が進行した場合起こる三大合併症となります。
糖尿病だけでは特定疾病ではありませんが、これらの診断基準を満たした場合、特定疾病として認められます。
・糖尿病性神経障害:運動神経、感覚神経、自律神経のいずれも障害を受けることがあります。手足のしびれや痛みを感じることもありますが、逆に痛みを感じなくなることもあります。立ちくらみなども起こることがありますが、神経の種類、障害の程度によって症状が異なります。
・糖尿病性腎症:高血糖状態が続くことで腎臓の働きが低下してしまい起こります。症状が進むにつれて、むくみや息切れなどから始まり、最終的には透析が必要になってしまいます。
・糖尿病性網膜症:目の網膜にある血管が傷ついて出血してしまう病気です。飛蚊症や視野がかけることもあり、進行すると失明にもつながります。
◆【放置すれば危険】糖尿病が引き起こす可能性のある合併症とは?原因や症状、予防法についても
◆高血圧症と脂質異常症に共通している原因とは|命にかかわる合併症の危険性|定期的な検診を
◆生活習慣病の方は注意!動脈硬化が引き起こす命に関わるリスクについて
⑬ 脳血管疾患
代表的な病気として脳出血、脳梗塞などがある、脳の血管の異常によって起こる疾患の総称です。
顔面や手足の片側の麻痺やしびれ、記憶障害など障害をうけた部位や程度によって症状は大きく異なります。
特定疾病と認められない場合として外傷(事故など)が原因で発生したものがありますので注意が必要です。
◆脳梗塞後遺症について知りたい|どんな症状やリハビリがある?
◆脳卒中について知ってほしい危険なサインとは|症状や後遺症、脳梗塞との違いについても
⑭ 閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化を原因として足の血管が細くなったり詰まったりすることで起こる病気になります。
足先まで血液が届かなくなるので、足先の冷えや痛み、歩いているとだんだん足のしびれや痛みといった症状が現れ、少し休むと回復する間欠性跛行(かんけつせいはこう)といった症状が現れます。
さらに血流が悪くなると足に潰瘍ができ、最悪の場合壊死してしまうこともあります。
無症状の動脈硬化のみでは特定疾病とは認められません。
⑮ 慢性閉塞性肺疾患
慢性閉塞性肺疾患とは、気管支喘息、気管支炎、肺気腫などの肺の働きを低下させる病気の総称となります。
息切れや咳・痰などの症状を認め、喫煙習慣が大きな原因となっています。
◆動悸はなぜ起こる?原因や起こりやすい人の特徴とは|すぐに病院に行くべき症状を解説
⑯ 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
変形性関節症とは、加齢によって関節のクッションとなる軟骨がすり減り炎症を起こしてしまうことで起こる病気です。
はじめは動き始めるときの関節痛程度ですが、進行すると歩行時にも痛みが出てきて、日常生活に支障をきたすこともあります。
特定疾病と診断されるとどのようなサービスを受けられるのか

特定疾病と診断されて、要介護認定を受けた場合には以下のサービスを受けることが可能です。
要支援1あるいは2に認定された場合は、要介護認定よりも受けられるサービスの内容が少なくなります。
(要支援認定の場合◎で示したもののみ受けることができます。)
〇訪問介護(ホームヘルプ)
◎訪問入浴
◎訪問看護
◎訪問リハビリ
〇夜間対応型訪問介護
〇定期巡回・随時対応型訪問介護看護
〇通所介護(デイサービス)
◎通所リハビリ
〇地域密着型通所介護
〇療養通所介護
◎認知症対応型通所介護
◎短期入所生活介護(ショートステイ)
◎短期入所療養介護
◎小規模多機能型居宅介護
〇看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
〇介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
〇介護老人保健施設(老健)
〇介護療養型医療施設
◎特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど)
〇介護医療院
◎認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
〇地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
〇地域密着型特定施設入居者生活介護
◎福祉用具貸与
◎特定福祉用具販売
要介護認定を受けるには

要介護認定を受けるためにはお住いの自治体の窓口での申請が必要です。
本人による申請が難しい場合は、家族あるいは地域包括支援センターなどが代理申請することができます。
申請すると自治体の調査員が自宅を訪れ、認定調査が行われます。
認定調査の結果と主治医となっている先生からの意見書の結果をもとに審査が行われ要介護度が決まります。
結果は申請から原則30日以内に通知されます。

第2号被保険者でも介護保険制度は受けられるのか

介護保険が適用されるのは原則として65歳以上の第1号被保険者となります。
しかし例外として、40歳~64歳の第2号被保険者も特定疾病により要介護状態になった場合は要介護認定を受け、介護保険を利用できます。
もし家族が特定疾病と診断されたときの対応

ご家族が特定疾病と診断されたときには介護認定を受けて、介護保険を利用することができます。
介護認定を受けたのち、ケアプランを作成することで先述した様々な介護サービスを受けることができます。
審査期間中から介護サービスを受けたいと思った場合、結果が通知される前であっても、申請日にさかのぼって保険給付を受け、サービスを受けることが可能です。
ただし、要介護・要支援認定を受けることができなかった場合には、利用したサービスは全額自己負担になってしまいますので注意が必要となります。
また、認定の程度によって給付額が異なるため、想定とは異なる自己負担が発生する場合もあります。
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科在宅クリニックを受診いただきますと、主治医意見書を作成することができます。
また、定期的な診察、状態によっては定期的な往診を行うことができます。
介護保険について気になる方は、お気軽にご相談ください。

まとめ
介護保険、特定疾病についてご理解いただけたでしょうか。
介護保険サービスは様々なものがあることが分かってもらえたかと思います。
これらのサービスは申請しないと受けることができません。
知らないまま過ごしてしまうと、損をしてしまうこともあります。
自身が・家族が受けられるかどうかわからないといった際は西春内科在宅クリニックを受診しご相談ください。
参考文献
厚生労働省ホームページ「公表されている介護サービスについて」
【加齢による筋肉量の低下】サルコペニアとは?症状やフレイルとの違い、診断基準について

現代では、超高齢化社会に突入している日本において、加齢による筋肉量の低下状態を指す「サルコペニア」は特に問題となっています。
65歳以上の高齢者のなかでも約20%程度の方々がサルコペニアに該当していると言われています。
サルコペニアになると、ふとした拍子に転倒して骨折することにより寝たきり状態に陥ってしまうリスクが伴い、日常生活の質を著しく低下させる危険性があります。
今回は、サルコペニアとはどのような状態なのか、症状やフレイルとの違い、診断基準などについて解説していきます。

サルコペニアとはなにか

サルコペニアとは、高齢に伴って筋肉量が減少していく現象を指しています。
一般的に、加齢にしたがって筋肉量は低下しますが、サルコペニアは筋肉量が減少して筋力が低下、あるいは身体機能の低下を表しています。
そして、その低下のレベルが日常生活に多大な支障が生じるほどに影響を受けている状態です。
サルコペニアは、筋肉量が減少していく老化現象と捉えられています。
大体、25~30歳頃ぐらいから病状の進行が始まって生涯を通じて「筋線維(*1))」と「筋肉の横断面積(*2)」の減少が進んでいくものと考えられています。
サルコペニアは、筋肉量や握力が低下することで身体の様々な機能が障害されて転倒などのリスクが上昇する要因になります。
一方で、フレイルとは加齢に伴って身体の予備能力が減少し、精神機能や社会性の低下なども含めて健康に影響を及ぼしやすくなった虚弱状態のことです。
また、介護が必要になる前段階の概念であると考えられています。
筋線維(*1)=筋肉を構成する線維状の細胞の数 筋肉の横断面積(*2)=筋肉を輪切り にした際の面積 |
◆【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
サルコペニアになる原因

サルコペニアになる原因としては、主に日々の不活動習慣や加齢に伴う様々な変化が直接的な原因と考えられています。
しかし、そのメカニズムはいまだ明確にはわかっていません。
サルコペニアは、入院生活など環境的な外的変化が発症契機になることがあり、数日から1週間といった単位で急激にサルコペニアを発症することがあります。
主に加齢が原因で起こる一次性サルコペニア、加齢以外にも原因がある二次性サルコペニアに分かれます。
二次性サルコペニアとは、生活スタイルに関連する栄養不足の原因や、悪性腫瘍などを始めとする身体的疾患がきっかけなどの場合で起こることです。
サルコペニアは、慢性的な炎症状態、酸化ストレスに関連して筋肉の代謝に関わる
- ステロイドホルモン
- 成長ホルモン
- 炎症性サイトカイン
上記などが健康時から変化し、筋肉の分解量が生成量を上回ることから発症すると考えられています。
肥満や若年層にも注意が必要

近年ではサルコペニアと肥満が重なった状態が心配されています。
サルコペニアであり肥満が重なると、通常の肥満状態よりも生活習慣病などになりやすくなります。
併発すると、身体能力の中でも特に歩行能力を低下させて寝たきりや廃用症候群(*)になる危険性を上昇させると伝えられています。
サルコペニアは筋肉量の減少している状態を意味していると考えられていました。
そのため、これまで糖尿病や高血圧、脂質異常症などを含めた生活習慣病と強く関連している肥満とは直接的に結び付けられていませんでした。
若年層と体重があまり変わらずに体格指数が標準的であっても、筋肉部分が脂肪に置き換わって知らぬ間に生活習慣病などに進展しやすくなるとも指摘されています。
また、ダイエットや運動不足によって筋肉が減少しても、脂肪は燃焼されずに体内に残っていることがあります。
その場合、高齢者のみならず若年層の方たちにもサルコペニアの予備軍が認められます。
年齢に関係なく、日々の食事で必要な栄養素を摂取して運動することが重要です。
廃用症候群(*)=寝たきり状態が長期間継続することで活動性が低下して生じる身体の変化 |
サルコペニアに多い症状

サルコペニアになると以下などの症状が現れます。
- 歩くのが遅くなり信号機が青から赤に変わる間に交差点を渡りきることができない
- 手の握力が弱くなってドアノブやペットボトルのふたを回せない
- 階段の昇降時に支障が生じて手すりが不可欠となる
サルコペニアは、広背筋、腹筋、下肢筋群、臀部の大殿筋や小殿筋など抗重力筋において筋肉量の減少が顕著に認められます。
日常生活において立ち上がる動作や歩行運動が徐々に出来なくなっていくのです。
そこから、放置してしまうと歩行困難に陥って寝たきりの状態になることがあります。
ふくらはぎを測ってサルコペニアかどうかわかる?

サルコペニアは、両手の親指と人差し指を結び、ふくらはぎの周囲の長さを測定する「指輪っかテスト」という検査法によって簡単にセルフチェックを行うことが可能です。
指輪っかテストでは、体格にある程度比例する手の大きさを活用することで、ふくらはぎの筋肉量が体格に比べてどの程度維持されているかを自己判断できます。
ふくらはぎの一番太い部分が両手の親指と人差し指で囲まれる輪よりも小さければ、サルコペニアである疑いがあります。
また、サルコペニアは以下の3つを、問診や身体診察によって判断していきます。
- 筋肉量の減少
- 筋力の低下
- 歩行速度の低下
1と2もしくは、3のどちらかに該当する際に、サルコペニアの可能性が非常に高いと考えられています。
具体的には、筋肉量に以下の低下が認められる際にサルコペニアと判断されます。
- BMI値が18.5未満
- 下腿範囲が男性34cm未満、女性33cm未満
- 握力が男性28kg未満、女性18kg未満
- 歩行速度が1.0m/秒以下
また、問診以外に行われる検査としては、筋肉量を測定するためのDXA法(*1)やBIA法(*2)と呼ばれる方法があります。
DXA法(*1)=微量なX線をあてて正確な骨密度を測定する *2BIA法(*2)=微弱な電流を流し、その際の電気の流れやすさ(電気抵抗値)を計測することで体組成を推定する方法 |
◆パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説
サルコペニアが引き起こすかもしれない危険な病気

サルコペニアは、認知症やフレイルを引き起こす原因としても注目され始めています。
フレイルとは、年齢を重ねて身体の様々な役割が衰えて日常における生活能力が低下して介護が必要になる状態です。
栄養状態の不良が原因で起こるサルコペニアが、フレイルを発症させる原因となる可能性があります。
また、サルコペニアに伴って身体機能が低下すると、認知機能が低下して認知症を発症するリスクが上昇します。
その逆に認知機能が低下すれば身体機能が衰えてフレイルの状態が進行する危険性も考えられています。
筋力が下がるサルコペニアになれば、高齢者において転倒して骨折を起こすことによって寝たきりの状態になる恐れがあります。
筋肉の組織は「作る」と「壊される」という変化を繰り返しています。
主に若い人ではこれらの筋肉のバランスがほぼ一定に保たれています。
若い頃には特に運動をしていなくても、食事内容に気を使っていなくても、筋肉量が目立って減ってしまうことはほぼありません。
しかし、高齢になって同じような生活をすれば筋肉が減少してしまうことにつながります。
普通の生活を送っているだけでは年齢を重ねるごとに筋肉の量が自然と落ちてきてしまうのです。
そのため、身体機能が低下する「サルコペニア」になりやすくなります。
◆介護が必要になる原因で多いフレイル(高齢による衰弱)とはどんな状態なのか?
サルコペニアを改善する治療と予防法は?
サルコペニアを改善するために、食事や運動による治療介入が有効であることが判明してきました。
なるべく前向きに運動を実践し、普段の生活のなかでたんぱく質の摂取を積極的に心掛けることが重要です。
以下のことを前向きに行うことでサルコペニアを改善していきましょう。
- 筋肉組織は良質なたんぱく質を確実に摂取することで産生されるので、動物性たんぱく質である赤身の肉や魚類などのたんぱく質を多く含有する食事メニューを心がけること
- 分岐鎖アミノ酸と呼ばれるタンパク成分は身体の内部で産生することができず、鶏肉やマグロ、牛乳など食事として摂取する
- 骨粗鬆症を予防するためにもカルシウムやビタミンDの摂取
また、サルコペニアでは、筋肉に負荷をかけて筋肉量や機能を改善する効果に優れている以下の運動を日々の生活に無理なく取り入れることも大切な要素となります。
- レジスタンス運動(筋肉に負荷をかける運動を繰り返し行うこと)
- ウォ―キング
- ラジオ体操
- テレビを見ながら椅子から立ち上がる運動
前述のとおり、サルコペニアを事前に予防するためには、栄養バランスの優れた食事と適度な運動を意識的に心がけて日常生活を送ることが重要です。
もし家族がサルコペニアかもしれないと思ったときは
もし家族のなかで、以下の症状を認める方がいる場合は、かかりつけの医師や最寄りの内科医に相談して下さい。
- 最近になって特に手足が細くなり重い荷物が持てなくなった
- 身体機能が低下して下半身に力が入りにくく、椅子からスムーズに立ち上がれない
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科在宅クリニックなどの診療所では、筋肉量が減少するサルコペニアに対して、薬物療法、食事療法、運動療法、心理療法を包括した専門的な治療を実践することができます。
医師が患者さんの診察や握力・歩行速度の測定、あるいは認知機能検査を実施するとともに管理栄養士などを中心に普段の栄養摂取状況などを調査していきます。
そして、その結果からサルコペニアに至った原因を診断し、治療計画を立てます。
定期的に検査を繰り返して行って治療効果を判定するだけでなく、各種検査結果に基づいて、望ましい生活状況や服用薬などに関して保健指導を行います。
必要に応じて、理学療法士による運動指導や臨床心理士・公認心理師による心理的カウンセリングを実践することができます。

まとめ
サルコペニアは、加齢に伴って筋肉量が減少して筋力が低下していきます。
そして、立ち上がる、歩くなど日常生活における基本的動作のなかでも特に移動に関連する動作が困難に陥る状態を指しています。
サルコペニアは、認知症、骨粗鬆症、糖尿病など、高齢者の健康を左右する病気と密接な関連があることが知られています。
日常的に必要な動作に悪影響が生じて介護が必要になる、あるいは転倒して骨折しやすくなったりする可能性が増加します。
サルコペニアの予防や治療には、継続的に適度な運動を行って、優れた栄養成分を取り入れることが重要なポイントです。
人生100年時代の近年において、要介護状態にならずに健康長寿を楽しむために、サルコペニアを常日頃から予防するように努めて、不安や疑問を感じたら最寄りの内科クリニックなどで相談することが大切になります。
今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。
参考文献
・厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトHP|サルコペニア
・エーザイの肝疾患サポートサイトHP|サルコペニアは自分でチェックできる?
医師 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)
【プロフィール】
平成19年に現大阪公立大学医学部医学科を卒業。初期臨床研修修了後、平成21年より大阪急性期総合医療センターで外科研修、平成22年より大阪労災病院で心臓血管外科研修、平成24年より国立病院機構大阪医療センターにて心臓血管外科、平成25年より大阪大学医学部附属病院心臓血管外科勤務、平成26年より国家公務員共済組合連合会大手前病院で勤務、令和3年より同院救急科医長就任。どうぞよろしくお願い致します。
【専門分野】
救急全般(特に敗血症、播種性血管内凝固症候群、凝固線溶異常関連など)、外科一般、心臓血管外科、総合診療領域
【保有資格】
日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医、日本救急医学会認定ICLSコースディレクター、厚生労働省認定緩和ケア研修会修了医、厚生労働省認定臨床研修指導医など
【認知症外来監修】高齢者に多いせん妄とは?認知症との違いや症状、原因について解説

せん妄という病気を聞いたことがある方は少ないと思います。
せん妄は、体の病気などによって生じる意識の障害のことです。
認知障害や幻覚、妄想を伴うため、時に認知症と間違われてしまう ことがあります。
特に高齢者に起こりやすく、もともと認知症を患っている人の2/3でせん妄を発症するという報告もあります。
今回は、「せん妄について」「認知症との違い」について解説していきますね。

せん妄とはなにか

せん妄とは、全身状態の影響によって生じる脳の機能不全であり、意識障害に分類されます。
脳波検査を行うと、徐派化といって脳の機能が低下していることを示す所見が得られます。
脳の機能低下が起こった結果、注意の障害や認知の障害が引き起こされ、幻覚や妄想といった精神症状も見られます。
これだけではとても難しい様に感じますが、多少の語弊はあるかもしれませんが「ねぼけのひどい状態」をイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。
一見起きているようには見えるのだけれど、
- なんどかぼんやり、もうろうとしている印象を受ける
- つじつまの合わない話をする
- 夢の中のようなあり得ない話
などをするといった状態です。
せん妄は一般病院の入院患者さんでは10-30%程度に発症する と言われており、決して珍しい病気ではありません。
典型的には、比較的高齢の患者さんが何らかの病気で入院したり、手術を受けた後に、
- 急におかしなことを言い出したり
- 幻覚が見えたり
- 興奮したり
- 安静にできなくなってしまいます。
私が良く経験するのは、施設入所中の認知症患者さんが、「急に認知症が悪化しました」と相談を受け診察したところ、実は体の病気がきっかけでせん妄を発症していたというケースです。
◆アルツハイマーと認知症の違いは?原因や初期症状、なりやすい人の特徴について
せん妄になる原因
せん妄の原因は多岐に渡りますが、以下の3つに分けられます。
準備因子 | 高齢であることや、すでに認知症であること、脳血管障害の既往などが挙げられます。 大雑把に言うと、せん妄になりやすい人ということです。 |
直接因子 | その名の通り、せん妄の直接的な原因となる因子です。 体の病気、せん妄を誘発する可能性のある薬、そして大きな手術、アルコールの離脱などが挙げられます。 体の病気と言うと範囲が広すぎると感じられるかもしれませんが、直接脳を傷つける頭部外傷以外にも、心不全や不整脈などの循環器系、低酸素や肺炎などの呼吸器系、ホルモンの代謝異常などなど、とても多くの病気でせん妄はみられます。 そのため、大病を患った時には、幻覚をみることや、認知症の様な状態になってしまうことは、誰にでもあり得るということです。 また、せん妄を誘発する可能性の薬についても、細かくみればたくさんあるのですが、特に脳に作用する薬はよりハイリスクと言えます。 例えば、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や安定剤が挙げられます。 |
促進因子 | 睡眠覚醒リズムに影響を与えて、せん妄を誘発したり、長引かせてしまったりする要因のことです。 入院環境はそれ自体が促進因子に挙げられています。 慣れない病院の環境や、病気に対する不安などから、睡眠のリズムが乱れてしまいます。 その他にも、激しい痛み(疼痛のコントロールが不十分)だったり、部屋の照明などから昼と夜の区別がつきにくい環境であったり、過度なストレス などが挙げられます。 |
これらのことはよく、焚火に例えられます。
すなわり、準備因子が薪、直接因子がライターやマッチ、そして促進因子が油です。
薪をくべるにしても、燃えやすい木や燃えにくい木がある様に、せん妄になりやすい条件があります。
また、その薪は自然発火するわけでは無く、体の病気や薬、手術といった火が着く原因があります。
さらに、そこに油がかかる様なことがあれば、より状態は悪化する のです。
◆物忘れがひどくなる原因は?|認知症との違いや物忘れ対策について
せん妄の症状

せん妄では、注意障害がみられます。
つまり、周囲に注意を向けたり、何かに集中して取り組んだりすることが難しくなる、周囲の状況をきちんと理解することが難しくなるといった症状がみられます。
それらの症状は、一般的には短時間のうちに出現し、変動する傾向がみられます。
一般的には数時間から数日で起こり、1日の中で症状の強弱があります。
特に夕方から夜間にかけて症状は悪化するケースが多い です。
さらに、幻覚や妄想を伴うことがあります。
しかし、それらはせん妄以外の病気でも見られるため注意が必要です。
せん妄の症状について説明しましたが、せん妄の診断基準の最後には、「身体疾患や物質の中毒などが原因となっている」という但し書きがあります。
せん妄は、健康な人にある日突然起こる病気ではなく、認知症や全身の病気、お酒や薬といった物質の影響が原因となって生じる ということです。
以下は、国立がん研究センターの記事より引用した「せん妄の主な症状のチェックリスト」です。
どれか一つ当てはまったらという事ではなく、せん妄であればほとんど全てに当てはまる場合が多いとされます。
□意識がくもってぼんやりしている
□もうろうとして話のつじつまが合わない
□朝と夜を間違える、病院と家を間違える、家族のことが分からない
□治療していることを忘れて点滴のチューブ類を抜いてしまう
□怒りっぽくなる、興奮する
□見えないものを見えると言ったり(幻視)、あり得ないことを言う(妄想)
□夜、眠らない
□症状は急に生じることが多く、夜になると症状が激しくなる
◆認知症が一気に進む原因や知っておきたい予防と対策について
せん妄と認知症の違い
認知症は、せん妄発症のリスクを高めますが、認知症とせん妄は別の疾患です。
その違いについて、いくつか説明しましょう。
発症の仕方に違いがあります。
せん妄は急に発症するのに対して、認知症はゆっくりと時間をかけて発症します。
そのため、「ある日突然物忘れが出た」「急に物忘れが悪くなった」といった場合は、認知症や認知症の悪化というよりも、せん妄を発症している可能性が高い と言えるでしょう。
せん妄は症状に日内変動(1日の中での症状の変化)がみられます。
一般的には、特に夕方から夜間にかけて症状が悪化する傾向にあります。
「お昼ごろは普通に話ができたのに、夕方になったら急に変な話をはじめた。」といった具合です。
認知症では、ゆっくりと少しずつ症状が進行していくため、特別に時間の影響をうけることはありません。
せん妄は、せん妄の原因を取り除くことや、治療を行う事で、症状が改善する可能性があります。
通常は、全身性の内科疾患や、せん妄を起こしやすい薬剤が原因ですので、それを取り除くことができれば、せん妄が消失する可能性は十分にあります。
しかし、認知症 (ここではアルツハイマー型認知症)は、現時点では根治する治療法はないため、症状は持続していくことになります。
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せん妄になると死期が近いって本当?

終末期のがん患者さんでは、その8~9割でせん妄を生じ、さらにそのうち5~7割の方は回復せずに死に至るという報告があります。
体の状態が悪ければ、それだけせん妄となるリスクは当然高くなります。
せん妄による幻覚や妄想によって興奮状態となってしまったり、点滴類を自己抜去するなどがでしょ起こりうるでしょう。
そういった場合は、本人の安全を確保するため薬物療法による鎮静をかけることもあります。
しかし、鎮静がかかると残された時間での患者-家族間のコミュニケーションが難しくなってしまうという問題もあり、慎重な対応が求められます。
せん妄の治療

せん妄の3つの因子、「準備因子」「直接因子」「促進因子」についてお話しました。
せん妄の治療で最も大切なのは、やはりせん妄の直接的な原因となっている「直接因子」を取り除く ことになります。
体の病気でせん妄になっているのであれば、それをきちんと治療することです。
しかし、その改善に時間がかかる場合は、せん妄を抑えるための薬物療法 を行います。
一方で、せん妄を悪化させないためには、「促進因子」に対しても目を向ける必要があります。
つまり、療養環境を整え、睡眠覚醒リズムを良い状態で保つことが大切です。
例えば以下などの工夫も有用です。
- 日中はカーテンを開けてしっかりと光を浴び、夜には照明を暗くするなどして、昼夜のメリハリをつける。
- 時計やカレンダーを愛用品や身近な物などの目のつくところに置いて、時間や曜日の感覚を保つ。
また、病気の不安を取り除くため、家族との十分な会話や、馴れ親しんだ医療スタッフとの接触を頻回にすることで安心感を与えることも、せん妄対策になります。
身内がせん妄になったときはどう対応すればいいか

まず、一般の方がせん妄と診断するのはとても難しいということを、最初にお伝えしておかなければなりません。
そのため、せん妄かなと思ったら可能な限り「医療機関を受診する」「往診依頼をする」などして、医師の診察を受けるようにしましょう。
次にせん妄の予防についてお話します。
せん妄の原因には「準備因子」「直接因子」「促進因子」の3つがあることを既に解説しました。
「準備因子」には、高齢者や認知症を患っている方などが挙げられますが、こういったことは予防することはできません。
「直接因子」はどうでしょうか。
体の病気、特に全身の病気はせん妄を引き起こしやすいですが、病気にならないということはできませんね。
お薬もせん妄を引き起こす一つの要因ではありますが、せん妄を予防するために、他の持病を悪化させてしまってはいけません。
また、急な薬の中止もせん妄の原因となりえるので、注意が必要 です。
ただし、以下のようなことは行うことができるのではないでしょうか。
- 自分の飲んでいる薬にせん妄を起こしやすい薬が無いか確認しておく
- もし薬が増えすぎてしまったと感じた場合は主治医と相談して整理をしておく
最後に「促進因子」ですが、ここが予防には最も重要と言えます。
まず、高齢者では睡眠覚醒リズムが崩れやすくなっているので、昼間によく活動をし、夜はしっかり眠れるような工夫が大切です。
また、夜間頻尿など体の不調から睡眠不足にならないように注意が必要です。
環境の変化によるストレスも睡眠の質を下げるので、住み慣れた環境は大きく変えない方が良いでしょう。
幻覚妄想といった精神症状がみられる場合は、看護や介護をされているご家族は、怪我をしないように十分注意が必要です。
また、ご本人もケガをしないように、危険物は近くに置かないようにしましょう。
点滴や酸素投与など、治療器具がある場合、取り外してしまう可能性もあるため、見守りも必要になります。
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西春内科在宅クリニックができる対応
せん妄は高齢者に起こりやすく、認知症と間違われやすい病気です。
しかし、せん妄であれば、せん妄の原因を取り除くことで症状が改善する可能性があります。
そのため、認知症かな、せん妄と言う病気があったなと不安に感じた方は、早めの受診をお勧めします。
西春内科在宅クリニックでは、常勤の内科医師の診察、及び頭部CT検査などを用いて、早期の介入が可能です。

まとめ
せん妄とは、高齢者に多く発症する意識障害の一種であり、症状が認知症と似ていますが、異なる病気です。
一見認知症のように感じられたとしても、せん妄の特徴として、突然発症すること、症状が時間とともに変化すること、幻覚や妄想を伴うことなどが挙げられます。
せん妄は以下のようなことが原因で生じることが多くあります。
- 認知症や体の病気
- 薬やアルコール
原因が取り除かれることで、症状が改善する可能性が十分にある病気です。
疑問に感じたら、最寄りのクリニックに相談するようにしましょう。
参考文献
がん治療のために重要な「せん妄 もう 予防」と「心のケア」|国立がん研究センター (ncc.go.jp)
【監修医師】
精神科専門医 Dr.竹下 理