西春内科・在宅クリニック

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【倦怠感・疲労感が続く】これって新型コロナ感染症の後遺症?その他考えられる原因

こんにちは。

西春内科・在宅クリニックです。

寒くなってきて、またコロナウイルス感染症の患者さんが増えてきてしまいました。

欧米ではLong COVIDや、Post-acute COVIDなどと呼ばれています。

様々な症状を呈していることが報告されています。

特に、倦怠感や疲労感はコロナウイルス感染症の後遺症でも多くみられる症状です。

今回はコロナウイルス感染症後遺症の倦怠感や疲労感の病態や対策について詳しく解説していきたいと思います。



コロナウイルス感染症後遺症とは


はじめにコロナウイルス感染症後遺症の定義について皆さんは知っているでしょうか。

アメリカ疾病予防センター(CDC)の定義では「新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)に感染してから4週間以上後に発生する可能性のある幅広い健康への影響(※)」とされています。

また、世界保健機関(WHO)の定義では「新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)に感染してから3か月の時点で、他の病気ではない2か月以上持続する症状(※)」とされています。

例えば、米国での研究では新型コロナウイルス感染症の患者の30%が9か月後の時点でも症状が持続しており、85%は軽症の患者であったと報告されています。

つまり、軽症であったからといって、後遺症が起きないということではありません。

※英文をわかりやすい形に意訳しています。

新型コロナ感染症で多い倦怠感・疲労感の特徴




新型コロナウイルス感染症後遺症のうち、倦怠感や疲労感は64%の患者で見られたとの報告もあり多くの患者でみられています。

日本では慶應大学が中心となって1000人以上の調査を行いました。

その結果、感染12か月後の患者の13%に倦怠感・疲労感の症状が出ていたことがわかっています。

これらは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(Myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome :ME/CFS)とよばれています。

6か月以上続く活動能力の低下と安静によって改善されない症状となります。

症状として以下のようなものがあるとされています。

  1. 疲労と機能障害:休息によっても実質的に軽減されない社会活動への障害
  2. 労作後倦怠感(Post-exertional malaise;PEM):発症前には耐えられた身体的、認知的ストレス暴露後に、症状や機能が悪化すること
  3.  睡眠の質の悪化(爽快感のない睡眠)
  4.  起立性不耐症:直立姿勢をとること、維持することによって症状が悪化するため姿勢をとれない
  5.  認知機能障害:労作、努力、ストレスによって悪化する思考や行動の障害

なかでも、労作後倦怠感(Post-exertional malaise;PEM)のコントロールが最も重要です。

治療においても管理のポイントとなります。



倦怠感・疲労感のセルフチェック

 


さて、ご自身がこの筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群にあてはまるかは以下のチェックリストを参考にするとよいでしょう。

①疲労と機能障害

 

  • インフルエンザのような疲労感/倦怠感
  • 何度も休んで、必要最低限の活動しかしていないのに、充電が終わらない電池のような感じ
  • 思考が以前よりずっと難しくなった
  • 手足や体が重く感じられ、動かしにくい
  • 個人生活や家事における深刻な制限
  • 仕事、キャリアの喪失
  • 家に閉じこもることが多くなった
  • 社会的な交流の減少や孤立感の増大

②労作後倦怠感

 

  • わずかな労作で精神的に疲れる
  • 軽い活動で体力が消耗したり、体調が悪くなったりする
  • より厳しい、より長い、より繰り返される活動ほどひどくなる倦怠感

③睡眠の質の悪化

 

  • 眠ったことがないような感覚
  • 寝付けない、眠り続けられない
  • 長時間、または通常の睡眠時間でも、朝はまだ気分が良くない

④起立性不耐症

 

  • 長時間座っていたり、立っていたりする際のふらつき、めまい、時に失神
  • 空間的な見当識障害または平衡感覚の喪失

⑤認知機能障害

 

  • ブレインフォグ
  • 混乱、見当識障害
  • 集中できない
  • 情報を処理することができない/マルチタスクができない
  • 適切な言葉がでない
  • 意思決定できない
  • ぼんやりする/忘れっぽい

①~③のすべての症状が6か月以上続き、④、⑤のいずれかの症状を認めた場合、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群と診断されることとなります。

倦怠感や疲労感が回復する時期について


これらの症状はどれだけ続くのか、いつ回復するのかを完全に把握することはできていません。

また、症状の回復期間にもかなりの個人差があると考えられます。



その他考えられる倦怠感・疲労感の原因



倦怠感・疲労感の原因には新型コロナウイルス感染症以外にも考えられます。

例えば、以下の疾患など様々です。

  • コロナウイルス以外の感染症(インフルエンザなど)
  • がんなどの悪性疾患
  • 呼吸器疾患
  • 心疾患

基礎疾患がある方は、持病の悪化に伴う症状の可能性があります。

そのため、まずは除外が必要と考えられます。

倦怠感や疲労感があるときに控えるべきこと


とくに労作性倦怠感(PEM)は無理をしてしまうと症状が悪化していくことがわかっています。

そのため、自身の許容度を超えた運動やストレスへの暴露には十分注意をする必要があります。

「休んでしまった分仕事をしなければ」と感じてしまう方も多いと思います。

しかし、過負荷には注意しながら慎重に対応していく必要があります。

倦怠感や疲労感の治し方


ここまでご説明した筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群には治療法はありません。

そのため症状を管理していく必要があります。

アメリカ疾病予防センターでは以下のような対策を推奨しています。

① 労作後倦怠感(PEM)


PEMの患者は個人差のある一定量の運動やストレスを超えた場合に症状が出ます。

そのため、まずは「自分自身の精神的、身体的活動の限界を把握する」必要があります。

その後、その制限内にとどまる程度での日常生活での負荷をかけていき、徐々に活動量を増やしていく必要があります。

 

② 睡眠

 

睡眠後の回復が少ないと感じる方も多いと思います。

必要があれば睡眠薬の投与が補助となる可能性があります。

 

③ 痛み


筋肉や関節の痛み、頭痛、皮膚の痛みを感じることがあります。

ロキソニンやカロナールといった鎮痛剤は痛みの除去に役立つことがあります。

医学的な治療とは離れてしまいますが、マッサージ、ストレッチ、ヨガ、軽い運動などは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の改善につながる場合があります。


しかしすべてにおいて、確たる裏付けはありませんので治療は手探りで行うほかありません。

もし倦怠感や疲労感が続くときは


さて、ここまで読んでいただいた中で、ご自身が筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群ではないかと思った方もいるかと思います。

コロナ後遺症は患者さんが少ないため、まだまだ手探りでの治療となります。

そのため、同じような患者が多く受診されるコロナ後遺症外来を受診いただくことは効果的な治療を得ることができる可能性があります。


西春内科在宅クリニックができる対応


当院では、症状に合わせた簡単な投薬治療は行うことができます。

また、症状の程度によってはコロナ後遺症外来をご紹介することもできます。

「もしかしたら?」と思ったらまずは当院までご相談ください。



まとめ


今回は、コロナウイルス感染症後遺症の倦怠感や疲労感の病態や対策について詳しく解説しました。

この記事を読んでいただき、コロナ後遺症の倦怠感についてご理解いただけたでしょうか。

なかなか、治ることのない倦怠感が続く方は一度ご相談ください。

無理をすることは返って症状の悪化につながってしまいます。

まずは、無理をせず過ごしていただくようお願いいたします。


参考資料

厚生労働科学研究成果データベース「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の長期合併症の実態把握と病態生理解明に向けた基盤研究」

Centers for Disease Control and Prevention

National Library of  Madicine「Frequency, signs and symptoms, and criteria adopted for long COVID‐19: A systematic review」

MECFScliniciansguide

老人性うつとは?|原因や特徴・認知症との違いを解説

老人性うつ

年齢を重ねると、体のあちこちに変化を感じることは増えてくると思います。

以下などの加齢に伴い若いころに比べて衰えを感じることは、とても自然なことではあります。

  • 階段を上るのが辛くなった
  • 脂っこいものが食べられなくなった
  • 髪の毛が白くなった

当然ながら脳の細胞にも、見えないところで色々な変化が現れます。

以下などは高齢者に特有の病気に繋がる事象であり注意が必要です。

  • アルツハイマー型認知症の原因となっているタンパク質(脳のゴミ)が溜まってくる
  • 体の症状には表れない小さいな脳梗塞ができる
  • 転んで頭を打った所から少しずつ出血している

今回は、高齢者特有の精神疾患として、老人性うつについて原因や治療方法などを詳しく解説していきます。

もの忘れ外来

老人性うつとは


老人性うつ

老人性うつは通称で、精神科領域での正式名称は老年期うつ病といいます。

うつ病の一つに分類されています。

うつ病は、以下の症状などを伴う、気分障害と言われる病気の一つです。

  • 1日中気分が落ち込んでいる
  • 何をしても楽しめない
  • 食欲がわかない
  • 眠れない
  • 疲れやすい
  • 集中できない
  • 不安でソワソワする
  • 死んでしまおうと繰り返し考える

うつ病自体は、年齢問わず誰にでも起こりうる病気です。

うつ病の中でも特徴的なものには名前が付いています。

老年期うつ病の他、産後1~3か月に起こりやすい産後うつ病や、特定の季節(冬に多い)に発症する季節性うつ病などがあります。

老年期うつ病(以後は老人性うつ)は、一般的には65歳以上の方を対象に用いられるうつ病です。

単に年齢で分けているわけではなく、若い人のうつ病と違い、高齢者に特有の症状がみられるため分類されています。

◆【認知症外来監修】高齢者に多いせん妄とは?認知症との違いや症状、原因について解説

老人性うつの症状の特徴(わがまま・攻撃的・食べない等)


一般的なうつ病の診断基準については、以下を確認してみてください。

【参考1:うつ病(DSM5)】

以下のA~Cをすべて満たす必要がある。

A: 以下の症状のうち5つ (またはそれ以上) が同一の2週間に存在し、病前の機能からの変化を起している。

これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。

注: 明らかに身体疾患による症状は含まない。

1. その人自身の明言 (例えば、悲しみまたは、空虚感を感じる) か、他者の観察 (例えば、涙を流しているように見える) によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分

注: 小児や青年ではいらいらした気分もありうる

2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味、喜びの著しい減退 (その人の言明、または観察によって示される)

3. 食事療法中ではない著しい体重減少、あるいは体重増加 (例えば、1ヶ月に5%以上の体重変化)、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加

注: 小児の場合、期待される体重増加が見られないことも考慮せよ

4. ほとんど毎日の不眠または睡眠過多

5. ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止 (ただ単に落ち着きがないとか、のろくなったという主観的感覚ではなく、他者によって観察可能なもの)

6. ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退

7. 無価値観、または過剰あるいは不適切な罪責感 (妄想的であることもある) がほとんど毎日存在(単に自分をとがめる気持ちや、病気になったことに対する罪の意識ではない)

8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日存在 (その人自身の言明、あるいは他者による観察による)

9. 死についての反復思考 (死の恐怖だけではない)、特別な計画はない反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画

B: 症状は臨床的に著しい苦痛または社会的・職業的・他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている

C: エピソードが物質や他の医学的状態による精神的な影響が原因とされない


うつ病では、基本的に、気分が落ち込む、何をしても楽しくないといった状態が延々と続きます。

様々な研究で、うつ病かどうかは別としても、高齢者では約10~15%でその様な抑うつ症状がみられると報告されています。

年齢自体がうつ病の危険因子となっているわけではありません。

配偶者を失うなどの大きなショックを受けやすかったり、様々な体の病気に悩まされていたりといったことが、うつ病へのなりやすさと関係があるのではないかと推測されています。

そのような背景から、老年期うつ病では、気分の落ち込みを訴えると言うよりも、身体的な訴えが目立つ場合があるのが特徴と言えます。

また、うつ病では思考力や集中力が低下するのですが、高齢者ではその様子が認知症と間違われることもあります。

老年期うつ病の指標の一つに、老年期うつ病尺度 (GDS)があります。

以下15個の質問のうち、  が引いてある方の回答の数が、5個以上ある場合は、うつ病の可能性があるので、是非最寄りのクリニックへ相談する様にしましょう。

【老年期うつ病尺度(GDS)】


毎日の生活に満足していますかはいいいえ
毎日の活動力や周囲に対する興味が低下したと思いますかはいいいえ
生活が空虚だと思いますかはいいいえ
毎日が退屈だと思うことが多いですかはいいいえ
大抵は機嫌よく過ごすことが多いですかはいいいえ
将来の漠然とした不安に駆られることが多いですかはいいいえ
多くの場合は自分が幸福だと思いますかはいいいえ
自分が無力だと思うことが多いですかはいいいえ
外出したり何か新しいことをするより家にいたいと思いますかはいいいえ
何よりもまず、もの忘れが気になりますかはいいいえ
いま生きていることが素晴らしいと思いますかはいいいえ
生きていても仕方がないと思う気持ちになることがありますかはいいいえ
自分が活気にあふれていると思いますかはいいいえ
希望がないと思うことがありますかはいいいえ
周りの人があなたより幸せそうに見えますかはいいいえ

◆物忘れがひどくなる原因は?|認知症との違いや物忘れ対策について

老人性うつが起こる原因とは?


老人性うつ

高齢者にみられるうつでは、他の年齢層とは異なる特徴がいくつかあります。

その原因の一つに、高齢者はその他の年齢に比べて、加齢に伴う心身の機能低下、社会的な役割喪失への不安が生じやすい社会的な背景があります。

以下などが、心身機能の低下と孤独を受け入れられないことが発症に関わってくることが多いとされます。

  • 昔の様に体が動かせない
  • 配偶者や友人などが亡くなってしまった
  • 周囲から必要とされていない気がする(もしくは、周囲のお荷物になっている気がする)

高齢者では、加齢に伴う脳の機能低下に加えて、様々な身体疾患の合併があることも、発症の原因と言えます。

特に、糖尿病や高血圧といった生活習慣病との関連が認めらます。

うつ病と糖尿病の発症はお互いに影響を与え合っています。

うつ病において糖尿病の発症リスクは1.6倍に上がり、糖尿病例ではうつ病発症リスクが1.15倍高いことが報告されています。

高齢者においてうつを予防するためには、このような生活習慣病に対する身体管理への意識を高めることも重要です。

◆アルツハイマーと認知症の違いは?原因や初期症状、なりやすい人の特徴について

老人性うつと認知症の違い


老人性うつ

うつ病では思考力や集中力の低下がみられ、時に周囲から認知症と誤解されます。

正確に区別することはとても難しいです。

いつもと様子が違うなと感じたら、まずは最寄りのクリニックに相談していただくことがお勧めです。

簡単に両者の違いについて説明します。

まず、病気の発症の仕方に違いがあります。

認知症(今回は特にアルツハイマー型認知症を指す)の場合、進行はとても緩やかで、そもそも認知症が発症したことに気づくこともとても難しいと思われます。

「いつからかわからないけど、そういえば○○ができなくなった様な気がする」と言ったイメージです。

一方で、老人性うつでは、症状は比較的短い期間で現れます。

物忘れ(思考力や集中力が低下している影響によるもの)以外にも、診断基準にもあるような複数の症状がみられることが多くあります。

「〇月頃から何かおかしいんです」と、おおよその発症日が分かるケースが多い印象です。

また、認知症(アルツハイマー型認知症)の場合、徐々に物忘れが悪化していった結果、例えば「財布をどこにしまったかを忘れた」のではなく、「財布をしまったとこと自体」を忘れてしまうようになります。

一方で、老人性うつの場合では、自分の記憶力が落ちているという自覚があり、財布をしまったこと自体を忘れるということもありません。

気分の落ち込みに加えて、そういった記憶力の低下などの症状をさらに思い悩み、よりうつの症状を悪化させる可能性もあります。

また、質問への返答の仕方にも違いがみられます。

認知症(アルツハイマー型認知症)では、分からない質問であった場合に、とりつくろいがみられます。

例えば日付を聞かれて分からない場合に、「新聞を読まないから」「気にしていないから」などと返事することがあります。

一方で、老人性うつの場合は、一生懸命考えるのですが、返答できずに黙ってしまったり、分かりませんと困惑した様子がみられます。

◆認知症における顔つきが変わる理由と初期症状や代表的な種類など医師が解説

老人性うつの介護認定とは


老人性うつ

老人性うつの場合も、日常生活に支障を来し、介護を要するようになった場合は、介護保険を申請することが可能です。

介護保険制度は、平成12年4月からスタートしました。

ご自身が住んでいる市区町村(保険者といいます)が制度を運営しています。

私たちは40歳になると、被保険者として介護保険に加入しており、介護保険料を支払っています。

65歳以上の方は、市区町村(保険者)が実施する要介護認定において介護が必要と認定された場合、いつでもサービスを受けることができます。

介護保険申請には、主治医意見書という書類が必要になります。

まずは最寄りのクリニックを受診し相談してみましょう。

もの忘れ外来

家庭内の老人性うつの治療方法

 

老人性うつ

老人性うつに限らず、うつ病の治療の基本や、休養と薬物療法になります。

とにかく頑張らないこと、無理をしないことが大切です。

そして、薬が効果を発揮し、うつの症状が軽くなるのをじっくり待ちましょう。

もしも、日常生活に支障を来すほどの症状であれば、介護保険申請を行い、生活の手助けをしてもらうのも良いかもしれません。

また、老人性うつと診断された場合、どのように関わってよいか分からないという方は、以下をぜひ参照してください。

【参考2 共感】

自分の思いや考えを相手に聞いてもらうには、相手が自分に対して“心を開いていなければならない”ということです。

例えば、夫婦喧嘩やカップルの喧嘩を想像してみましょう。

自分の思いを必死に話しても、相手に伝わらず、言い争いが続いた経験は少なからずお持ちではないでしょうか。

精神科を受診してくれる患者さんは、もちろん医師に対して自分のことを話に来てくれてはいるのですが、それでも「この人に話しても大丈夫だろうか」とためらうことも多いはずです。

しかし、私たちとしては状況や心情を正確に理解するためにも心を開いてもらう必要があります。

さあ、このように、自分の思いを相手に届けたいとき、相手に心を開いてもらいたいとき、どのようにしたらいいのでしょう。

その時に用いられる技術が“共感”です。

共感とは何か。

例を出しますので、共感について学んでいきましょう。

あなたの妻(彼女)は、体型に悩んでいる女性であったとします。

ダイエットに真面目に、そして真剣に取り組んではいますが、なかなか成果がでず、非常に落ち込んでいます。

こんな時、あなたはどんな声かけをしますか?

きっと多くの人が、「こんなダイエット方法がいいらしいよ」などのアドバイスをしたり、「太っていてもかわいいよ」など慰めたりしているのではないでしょうか。

それも決して悪いわけではないですし、手っ取り早くアドバイスが欲しい場合もあります。

しかし、せっかくの自分のアドバイスに乗り気でなかったり、全然慰められていない表情をしている、なんてことありませんか?

それはなぜか。

自分の気持ちを理解してもらえていないと感じているからです。

もし、あなた自身が、必死に頑張っても報われないことがあったとしたら、どのような気持ちになりますか?

悲しい、悔しい、そういった心情ではないでしょうか。

共感とは、相手の立場に立ち、相手の気持ちを想像し寄り添うことです。

このケースで言うと、「毎日頑張っていたのを知ってるよ。結果がでないとつらいよね。」と声をかけたならどうでしょう。

この人は自分のことを分かってくれていると思うと、その人の意見を聞いてみようと思うものです。

このような場面は、日常に数多く存在します。

医療の現場での一例です。

あなたが糖尿病患者で、今回も血糖値(正確にはHbA1c)が悪かったとします。

医者から「糖質を控えろ」「運動しろ」と言われるのと、その前に一言「甘いものを我慢するのは辛いですよね」「毎日運動するのは、案外難しいですよね」などと共感の姿勢があるのでは、どちらが相手に心を開きますか?

夫婦喧嘩においても同様です。

自分は怒っている、そして相手も怒っている。

そこで、自分の意見を言う前に、相手がなぜ怒っているのか、相手の立場にたって考えてみたとします。

そして、「あなたは○○で怒っていたんだね。それはよく分かった。でも、僕(私)は、こう思うんだけど、どうだろう」と共感を交えれば、もちろん○○があっていることが前提ですが、結果は変わってくるのではないのでしょうか。

言い争いがなぜ起こるのか、その多くが、自分の思いが相手に伝わっていないと感じるイライラに起因しています。

逆に言えば、相手に十分伝わっているならば、そんなに興奮して話さなくても会話は進んでいくはずです。





西春内科在宅クリニックできる治療方法


西春内科在宅クリニックでは、精神科専門治療はできません。

しかし、老人性うつはこれまでご説明したように、認知症と間違われやすい特徴があります。

また、気分の落ち込みに関しても、体の病気の影響や薬の影響で生じることもあります。

西春内科在宅クリニックでは、常勤の内科医がおり、認知症検査や、体の病気についての診察、治療が可能です。

精神科医としても、認知症や、その他の体の病気が隠れていないか、もしくは合併していないかについては、非常に注意を払っています。

そのため、普段と様子が違うことに気づいた場合は、最寄りのクリニックや、かかりつけ医に相談することをお勧めしています。

もの忘れ外来

まとめ


高齢者では、加齢による脳の機能低下に加えて、様々な人生のイベントにより、抑うつ症状を来しやすい背景があります。

また、老人性うつは、認知症に間違われやすい疾患でもあります。

適切な治療に加えて、介護保険などの福祉サービスを利用することで、生活状況を改善することも可能です。

普段と様子が違うなと感じたら最寄りのクリニックへ相談する様にしましょう。


参考文献

・カプラン臨床精神医学テキスト第2版

国立長寿医療研究センター「高齢者「うつ」の原因は?  」

認知症に似ている病気とは?老人性精神病との違いについて解説

認知症に似ている病気

「最近物忘れが多くなった」「家族が昔より怒りっぽくなった」といったこれらの症状。

つい認知症を疑ってしまうもの。

しかし、認知症と症状が似ている違う病気がある場合ということをご存じでしょうか。

本記事では、そんな認知症と症状が似ている病気や症状、その違いや特徴を解説していきます。

そもそも認知症には4つの種類がある


認知症に似ている病気

そもそも認知症にはいくつもの種類があります。

そんな数ある認知症のなかでアルツハイマー型認知症」「レヴィー小体型認知症」「脳血管性認知症」「前頭側頭型認知症の4種類は「4大認知症」と呼ばれ、認知症患者全体の約90%を占めています。

アルツハイマー型認知症


認知症に似ている病気

アルツハイマー型認知症は加齢や生活習慣、遺伝的な原因で脳にアミロイドβという特殊なタンパク質がたまり、それが神経細胞を破壊して脳が委縮することで発症します。

認知症患者全体の約60%を占めるもっともメジャーな認知症で、女性に多く発症します。

初期の症状として、記憶力の低下や、新しい情報の学習が困難になることが特徴です。

進行すると日常生活の判断力の低下や、人格変化なども見られるようになります。

レヴィー小体型認知症


認知症に似ている病気

レヴィー小体型認知症は脳の年齢的な変化によって、レヴィー小体という異常なタンパク質が大脳皮質にたまり、神経細胞が徐々に減っていき認知症の症状が現れます。

認知症患者全体の約4%とあまり知られていませんが、男性の発症率が高く、女性の2倍とも言われています。

レヴィー小体型認知症の特徴的な症状は、認知機能の変動や、幻視、パーキンソン病に似た運動障害です。

認知機能が日によって大きく変動することが多く、ある日ははっきりと過ごすことができ、次の日には混乱してしまうといった変化があります。

脳血管性認知症


認知症に似ている病気

脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血などが原因で起きる認知症です。

脳の障害される部位によってさまざまな症状が現れるのが特徴で、症状自体が出たり出なかったりすることから「まだら認知症」と呼ばれることもあります。

具体的な症状として記憶障害、言語障害、運動障害などがみられることもあります。

患者数はアルツハイマー型の次に多く、認知症患者全体の約20%で、発症率は男性がやや多い傾向です。

前頭側頭型認知症


認知症に似ている病気

前頭側頭型認知症はタウたんぱく質、TDP-43が関与しているということは分かって来ていますが、詳しい原因に関しては未だ分かっていません。

認知症患者全体の1%程しか発症せず、認知症の中で唯一難病指定されている病気でもあります。

特徴として人格や行動に大きな変化が見られ、社会的に不適切な行動や感情の制御が効かなくなることがあります。

記憶力の低下よりも行動や言動の異常が目立つため、初期の段階で認知症と気疲れにくいことが多いです。

認知症に似ているが異なる病気


認知症に似ている病気

「あれ、認知症かも」と思っても、認知症に似た別の病気という可能性も。

症状が似ている分、よく認知症と間違えやすい病気が多々あります。

そんなよく間違えられやすい病気を一部ご紹介します。

難聴・白内障


難聴・白内障の場合は、単純に「耳が遠くなった」「見えにくくなった」といった症状があります。

周りから見ると「話が通じなくなった」「ボーっとしている時間が増えた」と感じ、認知症に疑われることがあります。

しかし、難聴や白内障はどちらも感覚機能の障害であり、脳の認知機能そのものに問題があるわけではありません。

適切な治療を行い、感覚機能が回復すれば認知症に疑われる症状も元に戻ることが多いです。

うつ病


うつ病の「1日中ボーっとしている」「なんとなく元気がない」という症状は、認知症の初期症状にもみられるため、認知症に勘違いされる病気の一つです。

65歳以上の人がかかるうつ病は「老人性うつ」とも呼ばれています。

うつ病は早期に治療を行えば治りやすい病気ではありますが、認知症と見分けがつきにくい為、知らない間に悪化しているのが厄介な点です。

詳しい違いや特徴は後ほど解説します。

水頭症


水頭症とは頭蓋内にある髄液と呼ばれる水が何らかの理由で過剰に貯留して生じる病気です。

症状としては歩行障害、尿失禁、物忘れが挙げられます。

これらの症状は、アルツハイマー型認知症などと非常によく似ており、主にタップテストと呼ばれる方法で診断を行います。

水頭症の治療を行うことで症状が改善される可能性が高い病気です。

認知症とは異なり、適切な治療で大幅に回復が期待できるため、早期発見がとても重要です。

慢性硬膜下血腫


転倒などをきっかけに脳と頭蓋骨との間に血が溜まっていく病気です。

頭を強く打った記憶がない軽微な外傷であっても、数週間から数か月後にゆっくりと血が溜まり、認知機能の低下、歩行困難、意識の混濁といった症状が現れることがあります。

これらの症状は、認知症と似ているため間違えられやすく見過ごされることがあります。

慢性硬膜下血種は、外科的手術で回復することが多い病気です。

頭部のCT
で原因をしっかりと診断する必要があります。


認知症と間違えられやすい症状


認知症とよく間違えられる病気との違いや特徴をご紹介してきました。

以下に認知症に間違われやすいが実は認知症ではないかもしれない症状をまとめてご紹介します。

生理的物忘れ


生理的物忘れとは、年齢とともに誰にでも起こる自然な現象です。

記憶力が少しづつ低下していくことを指します。

日常生活の中で、新しい情報を思い出しづらくなる、特定の出来事を忘れるといった軽度の物忘れが見られることがありますが、認知症ではなく、加齢による一般的な変化です。

本人が忘れたことに気が付く、時間をかければ思い出すといった場合は、生理的物忘れといえるでしょう。

認知症の場合は、物忘れが頻繁で、時間が経っても思い出せず、本人もその事実に気づかないことが多いです。

歩行障害


歩行障害は、高齢者に見られる運動機能の低下です。

足がもつれる、バランスをとるのが難しいなどの症状をさし、進行すると歩行が不安定になり、転倒のリスクが高まります。

水頭症やパーキンソン病などの疾患も、歩行障害が見られますが、病気が進行すると認知機能の低下を伴うこともあります。

歩行障害は認知機能の問題とは異なり、主に身体のバランスや筋力に関連する問題です。

認知症によっても歩行障害を生じる場合がありますが、特にレヴィー小体型認知症や脳血管型認知症で多く見られます。

歩行障害があるだけでは、認知症と診断はされませんが、他の認知機能の低下と組み合わせると誤解されやすいため注意が必要です。

せん妄


せん妄とは見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたり、意識が曖昧な状態で興奮したりする状態のことを指します。

高齢者になると環境変化への適応能力が下がる為、現実検討能力が低下する事から脳が一時的に混乱する事で突発的にこのような症状が出るとされています。

また、せん妄は短期間で急激に症状が現れ、一時的なものです。

原因が解消されれば回復する可能性があるため、適切な治療で改善が見込めます。

老人性精神病と認知症の違い


老人性精神病とは、高齢者において発症する精神疾患の総称で、具体的な疾患としてはうつ病や不安障害などがあります。

高齢者のうつ病は「老人性うつ」とも呼ばれ、認知症と間違われるケースが多い為、気づかないうちに症状が進行してしまう事があります。

症状が悪化すると介護が必要になったり、認知症を発症したりすることもあるので、早期に診断をつけて治療を始めることが大切です。

老人性うつの原因


老人性精神病は、加齢に伴う精神的な障害を指し、主に幻覚や妄想、不安、抑うつといった精神症状が特徴です。

老年期には身体の変化や社会的な孤立、喪失体験などがストレスとなり、これらの症状が現れることがあります。

原因は多岐にわたり、心理的・環境的な要因、長年の精神的負荷、または薬物や身体的な病気の影響も関係しています。

老人性うつの症状


老人性精神病の症状は、幻覚、妄想、不安感、抑うつなどです。

特に被害妄想が強くなることがあり、家族や介護者に対して強い不信感を抱く場合があります。

精神症状が主な特徴であるため、感情や気分に強い影響が及びます。

老人性うつと認知症の違い

老人性うつと認知症の違いについて以下の表にまとめてみました。

以下の5点からもわかるように両者には明確な違いがあります。

医療機関受診の際は下記の点に注意して医師に伝えるとよいでしょう。


 
認知症

老人性うつ
症状の進行速度
進行が遅い
変化に気づきにくい

数週間の間に急激に進行
変化に気づきやすい
記憶障害(物忘れ)
軽度の記憶障害から少しづつ進行

環境の変化なので急に思い出せなくなる
自責の念
自責の念はなく、ケロリとしている

「周囲に迷惑をかけている」と自責の念が強い
本人の自覚
初期のうちは自覚があるが、症状の進行とともに無関心に

地震の認知機能の悪化をよく気にし、自覚がある
受け答えの違い
受け答えはするが的外れな回答

熟考するが答えられないことが多い



脳梗塞後に急な物忘れが起こる?


脳梗塞後に記憶障害が現れることがあります。

特に長期記憶よりも短期記憶の方に影響が出ることが多いと言われています。

この記憶障害は時間とともに改善することもありますが、何年も続く事があります。

そのため記憶障害を改善するためのトレーニングや、記憶障害を抱えながらの生活していけるための工夫が必要になります。

記憶障害

  • 重要な日付や約束の時間
  • 大切なものを置いた場所
  • 人の名前や、前回あったときにした会話の内容
  • 慣れた場所での徘徊や迷子

脳梗塞後の記憶障害への対処法


認知症に似ている病気

記憶障害を完全に改善するのではなく、記憶障害があることを受け入れることが大切です。

下図のような記憶障害がある状態でも日常生活に支障をきたさない工夫を取り入れる事も可能です。

また、最近はスマートフォンなどで手軽に行える記憶訓練用のアプリなどもあります。適度な運動と合わせて行うことで高い治療効果も期待できます。

西春内科・在宅クリニックで出来る対応


認知症に似ている病気

認知症の診断では、他の病気の可能性も考えて、血液検査やレントゲン検査などの身体検査やCT、MRIといった脳画像検査なども行います。

西春内科在宅クリニックでは、小規模クリニックとしては珍しくCT検査装置を有しています

またそういった画像検査の他にも、確定診断や治療のためにより高度な医療機関への紹介も行っています。

まとめ


認知症は似ている症状・病気が意外と多く、症状だけではなかなか判別が難しいものです。

認知症を含め水頭症や老人性うつといったものは適切な治療を行えば改善が見込める病気です。

しかし、症状に気づかず病気が進行すると、生活に支障をきたすような症状が残ってしまう可能性もあります。

「おかしいな」と思ったら一度お近くの医療機関までご相談ください。

参考文献

認知症について知ろう(種類・違い)

それぞれの原因・症状を解説 

認知症のおもな4つの種類・特徴・割合について解説

健康長寿ネット「認知症とは」

認知症と間違えやすい病気とは?心や身体の病気と見分けるポイント 

認知症と似た病気

認知症と間違えやすい病気

老人性うつってどんな病気?症状・原因・対策・認知症との違い

老人性うつとは? 認知症との5つの違いと対処法

手術で改善できる認知症「水頭症」をご存じですか? 

脳梗塞後にみられる記憶障害について

【治る認知症】高齢者がなりやすい水頭症の症状から原因、治療について解説

自己導尿の目的とは?カテーテルとの違いや男女別の手順を解説



自己導尿
とは自力で排尿をできなくなってしまった場合に、尿を出す手段の一つです。

尿が膀胱(ぼうこう)にたまった時に、カテーテルと呼ばれる管を尿道から膀胱に入れて尿を排出します。

排尿の度にカテーテルを挿入する手間はあります。

しかし、衛生面に気をつけて行えば、カテーテルを入れたままにするよりも合併症が少ない優れた方法です

この記事では、自己導尿を行う目的、やり方、どんな人に適用されるのかなどについて解説していきます。



自己導尿を行う目的




尿は、腎臓で血液から不要な老廃物をろ過して作られます

そして、膀胱に貯められてから尿道を通じて排出されます。

通常、膀胱に一定量の尿が貯まると尿意を感じることで排尿することが可能です。

しかし、以下の場合には膀胱が尿で一杯になってしまいます。

  • 何らかの病気で尿意を感じなくなった
  • 尿を出す機能が低下した
  • 尿道が狭くなってしまった

その結果、膀胱が膨らんでお腹の張りを感じたり、膀胱内の圧力が高まって、腎臓へ逆流してしまうこともあります

そのため、腎臓の機能の悪化や感染症の原因となってしまう場合があります

これらの合併症を防ぐために、尿を適切な間隔で排出することが必要です。

自己導尿はその中の有効な方法の1つです



自己導尿のメリット・デメリット




自力で尿を排出できなくなった際の対応として、自己導尿、尿道留置カテーテル、膀胱ろうがあります。

以下、順にメリット・デメリットを解説しています。

自己導尿


メリット
尿路感染症の可能性が低い
・腎機能障害の発生頻度を減らすことができる
・社会生活にも大きな支障がない
デメリット
・本人もしくは介護する方が処置を覚える必要がある
1日複数回の処置が必要となりコストがかかる

尿道留置カテーテル


メリット
管を尿道に留め、尿をバッグ内に貯めておくことができる
・本人や介護する方の負担が少ない
デメリット
長期にわたり留めておくことは推奨されない
・日常生活が制限される
・カテーテル周囲からの尿漏れ
・血尿
尿路感染症などの合併症

膀胱ろう


メリット
カテーテル留置に比べ、合併症が少ない
・排尿の自由度が向上する
・睡眠の質が向上する
デメリット
・手術で膀胱ろうを造設することが必要
手術自体の身体への負担や合併症が懸念される
・膀胱が小さくなることがある
・皮膚トラブルが生じる場合がある


関連記事:腎ろうとは?どんな人が対象になるのか?在宅における注意点を解説

どんな人が自己導尿をするのか




自己導尿は以下の場合の方に対して使用されることが多いです。

  • 脳血管障害
  • 脊髄損傷(せきずいそんしょう)
  • パーキンソン病などの神経疾患
  • 糖尿病
  • 神経因性膀胱(*1)
  • 前立腺肥大症(*2)
  • 排尿障害
    (尿道狭窄(*3)などによる)

神経因性膀胱(*1)=脳・脊髄の中枢神経や脊髄から膀胱に至るまでの末梢神経の様々な病気により、膀胱や尿道の働きが障害され、排尿の障害をきたしてしまう病気の総称

前立腺肥大症(*2)=前立腺が肥大して、様々な排尿の症状を引き起こす病気


尿道狭窄
(*3)(にょうどうきょうさく)=外傷や炎症により、尿道が狭くなること

▶︎パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説

尿道留置カテーテルとの違い




尿道留置カテーテルは、膀胱内にカテーテルを挿入し、先端の風船を膨らませて尿道から抜けない様に固定します。

そのことから、バルーンカテーテルとも呼ばれます。

尿は自然とカテーテルを通り、膀胱に溜まらず専用の袋の中に溜まる仕組みです。

カテーテルは2~4週間で入れ替えをします。

カテーテルの交換までは基本的に挿入したままです。

自己導尿のように1日に数回の処置が不要です

バッグ(尿をためる袋)を持ち運びして外出もできます。

ご自分や周囲の方が排尿の管理をでき、自己導尿と尿道留置カテーテルのどちらかを選べる場合、まずは自己導尿を受けるのがおすすめです

また、以下のような方の場合は、尿道留置カテーテルが勧められます

自己導尿がご本人と介護者の負担になってしまうことが多いからです。

  • 足腰が弱ってしまった方
  • 認知症が進行してしまい、1日の大半をベッド上で過ごしている方

男女別の自己導尿のやり方・注意点




1日に導尿する回数は1日の尿量、膀胱の容量、残尿の程度によります。

しかし、基本的には膀胱に尿をためすぎないことが必要です。

一般的には、尿は400ml以上ためないように1日に4-6回程度が適切であるとされています。

またカテーテル挿入に伴い、尿道を傷つけたり、雑菌が入らないように適切に行う必要があります

以下は男女別の手順です。

男性の場合

手を洗う


手を洗う場所がない場合はウェットティッシュやアルコールなどで手を消毒する。

消毒綿で拭く


片手で陰茎をもち、もう一方の手で尿道の中心から周囲にかけて消毒綿で拭く。

挿入する


カテーテルをケースから取り出して、尿道口に挿入する。

排出する


尿が出る位置までカテーテルを挿入したら、下腹部を軽く圧迫したり、カテーテルの位置を調整して尿が残らないように排出する。

ゆっくり引き出す


尿を出し終えたらカテーテルをゆっくり引き出す。

廃棄または洗浄する


カテーテルが使い捨てであれば指定の容器に廃棄、再度使うタイプは洗浄、消毒を行う。

女性の場合


女性の場合、尿道口の位置がご自分ではわかりにくいです。

そのため、慣れるまでは鏡を用いて外尿道口を確認しながら行うことがおすすめです。

手を洗う


手を洗う場所がない場合はウェットティッシュやアルコールなどで手を消毒する。

消毒綿で拭く


片手で陰唇(いんしん)を広げ、もう一方の手で尿道を中心として消毒綿で尿道口を拭く。

挿入する


カテーテルをケースから取り出して、片手で陰唇を広げたまま、尿道口に挿入する。

排出する


尿が出る位置までカテーテルを挿入したら、下腹部を軽く圧迫したり、カテーテルの位置を調整して尿が残らないように排出する。

ゆっくり引き出す


尿を出し終えたらカテーテルをゆっくり引き出す。

廃棄または洗浄する


カテーテルが使い捨てであれば指定の容器に廃棄、再度使うタイプは洗浄、消毒を行う。

自己導尿はいつまで続ける必要がある?




自力で排尿ができる状態に治るか、一生続ける必要があるかは原因となった病気の状態に応じて変わってきます

例えば、以下などで神経の機能が損なわれてしまった場合には回復が難しい場合が多いです

  • 脊髄損傷
  • 骨盤手術

脊髄損傷患者で自力で排尿ができる割合は約20%と報告されています。

しかし、病気の治療や自己導尿を行うことによって、膀胱の定期的な伸び縮みを促し、再び排尿機能を取り戻すことができる場合もあります

前立腺肥大症では内服や手術で治療ができるため、改善できる可能性が高い疾患
です。

ご自分の状態と今後の見通しについては医師とよく相談して理解することが重要です。

自己導尿による痛みがつらいときは




自己導尿の副作用には、以下などがあります。

  • カテーテル挿入時の痛みや不快感
  • 尿路感染症

まだ慣れていない導入初期に起こりやすく、徐々に症状は減っていきます

しかし、痛みが続く場合には尿道が狭かったり、前立腺肥大症が合併している場合もあります

原因自体の治療や、尿道留置カテーテル、膀胱ろうなどの他の方法への変更も検討することが必要です。

そのため、痛みがつらいときには早めに医師に相談するようにしましょう。

訪問診療での対応




訪問診療では在宅で自己導尿を行っている方を対象に自己導尿のやり方の確認や適切に行えているかの指導を行います

対象となる疾患は以下の通りです。

  • 神経因性膀胱
  • 前立腺肥大症
  • 排尿困難
    (尿道狭窄などによる)

自己導尿では痛みや血尿、尿路感染などを起こすことがあります

そのため、定期的に医師の診察を受けることが必要です



西春内科在宅クリニックができる対応


西春内科在宅クリニックでは、自己導尿を行っている方で体力が低下して病院への通院が難しい方向けに訪問診療を行っています。

自己導尿のやり方の確認や適切にできているかの指導を行うことが可能です。

また、尿路感染症を起こした時の抗生物質の処方など合併症に対する治療も行えます

導尿の回数、やり方が適切か、合併症の有無など心配なことは多いかと思います。

まずはお気軽にご相談ください。



まとめ


今回は、自己導尿を行う目的、やり方、どんな人に適用されるのかなどについて解説しました。

排尿の障害や症状はご高齢になるほど多くなります

症状が強い場合には日常生活にも支障をきたしてしまうことがあります

自力で尿が出せなくなることに不安を感じる方も多いと思いますが、自己導尿は合併症が少なく、社会生活にも大きな支障がないです

定期的に医師の診察を受けることが必要ですので、お困りの症状がある際にはご相談ください。


参考文献

・日本泌尿器科学会編「男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン」 

・日本排尿機能学会/日本脊髄障害医学会/日本泌尿器科学会/脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン作成委員会編「脊髄損傷における下部尿路機能障害の診療ガイドライン」

・吉田正貴「下部尿路機能障害(排尿障害)に対するガイドラインを踏まえた高齢者診療」

五月病になったときの抜け出し方・乗り越え方、対策法などを紹介



五月の大型連休であるゴールデンウイークが終わった頃に、毎年話題となる五月病

五月病の乗り越え方や抜け出し方はあるのでしょうか。

今回は、五月病を予防することや、心身の不調を感じた時に少しでも症状が軽くなるような方法、乗り越え方などについて詳しく解説していきます。

 

 

五月病とは?




四月は新年度です。

大学生となり一人暮らしを始めたり、新社会人となり新人研修が始まったり。

中には昇進や心機一転転職したりと、環境の変化が起きやすい時期に当たります。

最初は期待に胸を膨らませ、意欲に満ちていたはず。

しかし、五月のゴールデンウイークが明けて、いざ再び登校、出勤しようとすると、

「なんだか体がだるい」

「気分がふさぐ」

といった症状が出現し、学校を欠席したり、仕事を欠勤してしまったりする人が増加傾向にあります

これらを昔から広く『五月病』と呼んできました。

最近では、企業の新人研修期間の延長などから六月頃までみられると言われています。

五月病の具体的な症状やうつ病との違いなどについては、別の記事にまとめてありますので、是非そちらをご参照ください。

 

関連記事:五月病の症状やなりやすい人の特徴|うつ病との違いなども解説

 

 

五月病になる原因




五月病になる主な原因は、人間関係に馴染めない、もしくは環境の変化に適応できないことが挙げられます。

新年度は、環境の変化によって、それまでの人間関係とは異なることも多いと思います。

対人関係の悩みは人間にとって大きなストレスです。

また、人間関係以外にも、以下などの悩みも多く抱える時期でもあります。

  • 一人暮らしによって生活リズムが著しく乱れた
  • 就職後に残業やノルマに追われる経験を初めてした
  • 新しい仕事を中々覚えられない


時には、前年度まで必死に頑張ってきて、新年度に燃え尽きてしまったというケースもありますが、あまり多くはありません。

やはり典型的には、新年度に新しい環境となり、緊張状態が長く続いたことや、新しい環境で多くのストレスを受けたことがきっかけとなります。

 

 

五月病は適応障害?




実は、五月病は正式な医学用語ではありません

臨床現場において、精神科診断では「適応障害」とする症例が多い印象があります。

適応障害とは特定のストレスが原因で、だいたい3か月以内に精神的もしくは身体的な不調がでる、その不調のせいで仕事や生活に明らかな支障がでている

と言う状態です。

「適応障害」と聞くと、怠けている、サボっていると言う誤ったイメージを持っている方もいらっしゃいます

しかし、診断基準において、日常生活に著しく支障を来していると明確に記載されています

なんか仕事に行くのが嫌だな、面倒くさいなと言う状態ではなく、そこに病気の存在を仮定しないと説明しがたい心身の異変がある、軽視できない精神疾患です

また、五月病の中には、「うつ病」など、その他の精神疾患の可能性もあります。

「五月病」と言う言葉から軽く考えることなく、十分に注意が必要です。

精神的な不調の原因が、身体疾患から生じることもあります

以下などの場合で、体がだるいと感じることがあり、それに気が付いたのが偶然五月や六月という事もあり得ます。

  • 甲状腺などの代謝異常
  • 免疫の病気
  • 血液のがん
  • 肝臓などの臓器の不調

適応障害の正確な診断基準は以下です。

適応障害の診断基準:DSM-5

A


識別可能なストレス因子が原因の情緒的、行動的な症状が、一連のストレス因子が始まってから3か月以内に起こる。

 

B


その症状や行動は、下記の1つまたは両方によって証明されることが、臨床的に明らかである。

  1. 症状の重大性と存在に影響を及ぼす外的要因や文化的背景を考慮したとしても、ストレス因子の強さや酷さとは釣り合わない、著しい苦痛がある。
  2. 社会的、職業的、あるいは他の重要な領域での機能的な、著しい障害がある。

 

C


そのストレス関連の症状は、他の精神疾患の基準を満たさないし、既存の精神疾患の増悪でもない。

 

D


その症状は通常の死別による悲しみの表現ではない。

 

E


一度そのストレス因子やその結果がなくなれば、その症状は更に6か月以上続くことはない。

 

 

五月病の抜け出し方・乗り越え方




精神的に苦しい、その結果登校や出勤ができない、体がだるいなど、日常生活に支障を来すようであれば、まずは医療機関を受診することをお勧めします

きちんと診察を受け、適切に治療を受けるべきであると考えています。

「自分で治す方法はないのか」と問われそうですが、まず「自分で何とかしよう」と考えてしまうこと自体が、五月病を悪化させてしまう原因の一つです

「五月病」になりやすい人にはいくつかの特徴があります。

一般的には、まじめで頑張り屋さんがなりやすいと言われています。

もう少し具体的に言うと以下などにあてはまる人です

  • 新しい環境に馴染むことが昔から苦手である
  • 新しい環境で対人関係を作ることを苦手としている
  • 誰にでもいい顔をしてしまう
  • 失敗を極度に恐れる
  • 困ったときに誰かに相談できない

人間関係を作るというのは、みなさんが想像しているよりもずっと多くのエネルギーを使います

  • 周囲への過剰な気遣い
  • 新しい環境で失敗してはいけないという極度の緊張
  • 悩みを一人で抱えてしまう


などは、ストレスを多くため込む原因です

つまり、何か苦しいことや悩みを抱えた時に、「上手に周りに頼ること」が、五月病を抜け出す、乗り越える最善の方法と言えます

そして、原因となっているストレスからきちんと距離をとることです

 

関連記事:五月病の症状やなりやすい人の特徴|うつ病との違いなども解説

 

 

五月病が続く期間




五月病になった原因が、特定の環境や特定の人間関係にあるのであれば、その状況が変わらない限り、症状が持続する可能性が高いと推測されます

ストレスが原因である疾患では、「何か薬を飲んで頑張ろう」ではなく、「原因となっているストレスから一旦距離を置いてみよう」と言う姿勢が大切です

 

 

五月病にならないための予防対策




五月病の主な原因は、以下といったストレスが持続することによるものです。

  • 新しい環境に馴染めない
  • 新しい人間関係に疲弊する

しかし、そういったストレスは皆が経験するものであり、それらを避けることはできません

ストレス自体は決して0になることはないのです

したがって、ストレスをいかに発散させていくか、貯めないでおくかということが重要になります。

忙しいからと、趣味の時間を削ってしまうのではなく、ストレスを上手に処理するために、可能な範囲で続けることが気分転換につながります

そして、一人で悩まないことが何よりも重要です

また、五月病に限ったことではありませんが、以下などはすべての健康の基本です。

  • 規則正しい生活
  • 食事
  • 運動


夜更かしによる睡眠不足や栄養の偏りは、

脳の機能を低下させ、結果的に精神疾患を発症させる原因となります

 

 

病院やクリニックでの処方




「五月病」と言う状態を診察し、必要な治療を行うのは一般的に精神科、もしくは心療内科になります

しかし、精神的な不調の原因が、以下などの身体疾患から生じることもあり、注意が必要です

  • 甲状腺などの代謝異常
  • 免疫の病気
  • 血液のがん
  • 肝臓などの臓器の不調

精神科、心療内科クリニックで身体疾患の存在を見つけることは難しい場合もあります

まずは体に問題がおこっていないか、最寄りのクリニックで一度確認しておくことをお勧めします

体の病気が見つかれば、もちろんその治療を優先しましょう。

体に特に問題がないのであれば、精神科や心療内科へ紹介してもらいましょう。

しかし、以下のような方もいらっしゃると思います。

  • 最寄りに精神科や心療内科が無い
  • 病院の数が少なく初診の予約が取れない

専門外であっても精神科領域を多く診察されている医師もおり、そのような医師に治療を行ってもらうことも検討することをお勧めします

極力早めに治療を開始するようにしましょう。

長く放置する、長くストレス環境にさらされることで、病状が悪化する可能性があります

一番良くないのは、自分で「五月病」だと決めつけて、睡眠薬や安定剤といった薬を処方してもらうように、医師に依頼することです

それらの薬は対症療法であり、風邪で例えると、解熱剤や咳止めなどにあたります。

症状が緩和しているからと言って、治ったと勘違いし、余計風邪を悪化させた経験はありませんでしょうか。

また、それらの薬は依存性や耐性の観点からも、漫然(*1)と使用することには注意が必要なものも多いです

十分に使い慣れた医師に相談し、治療を受けるようにしましょう。

漫然(*1)=これという目的や意識を持たず、とりとめのないさま

 

 

西春内科在宅クリニックができる対応


西春内科在宅クリニックでは、常勤の内科医が様々な心身の不調に対して、診察を行っております

まずは、精神的な不調の陰に、体の病気が隠れていないかを確認します

必要であれば最寄りの精神科や心療内科と連携し、治療を行います

まずは、お気軽にご相談ください。

 

 

まとめ


今回は、五月病を予防することや、心身の不調を感じた時に少しでも症状が軽くなるような方法、乗り越え方などについて解説しました。

五月病の主な原因は、新しい環境に馴染めないことや、環境の変化に適応できないことです。

そういったストレスをいかに発散させていくか、貯めないでおくかということが重要となります。

精神的に苦しい、体がだるいなど、日常生活に支障を来すようであれば、まずは医療機関を受診することをお勧めします

腸ろうとは?チューブが詰まったときの対処やメリット・デメリット



腸ろうとは、お腹に開ける小さなお口です。

口から水分や栄養が取れなくなったときに、口以外から水分や栄養を補給する方法のひとつです。

栄養剤の行き先が小腸になるので『腸ろう』と呼ばれます。

身体機能の低下や重度の認知機能の低下に伴って、

  • 口から食事をとることが難しくなった方
  • 病気の関係で一時的に十分な水分や栄養が不足する方


が対象となります。

今回は、腸ろうのメリットや胃ろうとの違い、チューブが詰まったときの対処法などについて解説していきます。

 

 

腸ろうのメリット・デメリット




メリット
  • 胃ろうと比べて逆流することが少ない
  • 経口摂取や胃ろうと比べて誤嚥(*1)による肺炎のリスクが減る
  • 必要な栄養を確保しやすい
  • 腸ろうの穴は衣服で隠しやすいため、生活がしやすく不快感が少ない
デメリット
  • 胃ろうと比べて、注入時間が長くなる(栄養剤を貯める胃がないため)
  • 腸ろう周囲の皮膚トラブルが起こりやすい
  • 腸ろうの交換には、病院の受診が必要
  • カテーテルが細長いため、詰まりやすい
  • 腸に直接栄養剤を入れるため、下痢が起こりやすい
  • また、血糖値の急激な変化を起こすことがある
  • 胃ろうよりもさらに受け入れてくれる施設(*2)が少ない

誤嚥(ごえん)(*1)=食物などが、なんらかの理由で、誤って喉頭と気管に入ってしまう状態

施設(*2)=デイサービス、ショートステイ、ナーシングホームなど

 

 

腸ろうと胃ろうの違い




胃ろうは胃を使いますので、栄養剤を一時的に貯めることができます

半固形の栄養剤を短時間(15分)で注入することが可能です。

胃は胃酸を分泌しますので、胃ろうはご家族と同じものをミキサーにかけた食事も可能です。

胃の方が腸よりも、口に近いところにあります。

そのため、栄養剤の逆流は胃ろうの方が起きやすいです

注入の速度は、胃ろうに比べ腸ろうの方がゆっくり入れる必要があります

カテーテルの交換は、胃ろうの場合は自宅もしくは施設(デイサービス、ショートステイ、ナーシングホームなど)で可能です。

腸ろうは通院となります。

腸ろうは腸に栄養剤を直接入れますので、下痢が起こりやすく、血糖値の急激な変動が起こることがあります

腸ろうと胃ろうの違い早見表


 腸ろう胃ろう
栄養剤の逆流少ない起きやすい
食事の注入できないできる
カテーテルの交換通院が必要自宅もしくは施設で可能
下痢や血糖値の変動起きやすい少ない

 

 

腸ろうでの食事について(栄養剤の種類、選び方)




腸ろうの栄養剤の種類には医薬品食品があります。

医薬品は医療保険が適応され、医師の処方が必要です

食品は、医療保険の適応になりません

そのため、処方箋が必要ありませんのでドラッグストアや通販で購入できます。

選び方としては、栄養剤だけで1日の必要栄養量をまかなえる、汎用性(*1)の高い栄養剤を選びましょう。

病状が急性期の場合、タンパク質が必要と考えます。

タンパク含有量の多い汎用栄養剤を使いましょう

腸の状態が悪く、吸収不良や下痢が心配なら、半消化態ではないものがいいでしょう。

病状が安定し、栄養剤の注入時間を短くしたい場合、高濃度の栄養剤を選びます。

注入時間を短くできますし、水分量の制限にもなります

また、逆流が気になったり、もっと注入時間を短くしたい場合、半固形栄養剤を選ぶといいでしょう。

半固形栄養剤は粘りがあるため、逆流が起こりにくいことや、短時間で注入しても下痢になりにくいことが取り柄です

汎用性(*1)=ある物事について、幅広く適用したり、一般的に活用したりすることができる性質

 

 

腸ろうのチューブが詰まったときの対処法や交換時期




チューブが詰まった場合は、病院を受診する必要があります

バルーン型は、バルーンが破裂することがあるため、概ね1~2ヶ月に1回の交換となります。

バンパー型は、カテーテルが抜けにくいため、概ね4~6ヶ月に1回の交換になりますが、主治医の先生の判断になりますので、よくご相談ください

一番緊急性が高いのは、チューブの自己抜去です。

不快感から無意識に抜いてしまうこともあります。

抜いてしまうと数時間で穴が塞がります

抜けていることを確認した場合、早急に病院を受診してください

チューブが詰まってしまった場合、付属の針金(ガイドワイヤー)や注射器で水を流し込むことで再開通が可能です。

しかし、再開通が出来ない場合は、チューブの交換が必要となります。

 

関連記事:膀胱ろうとは?在宅でのカテーテル交換時の注意点を解説

 

 

在宅介護における腸ろうの注意点




チューブの自己抜去


前述したように、不快感から無意識にチューブを抜いてしまうことがあります。

チューブが抜けていることが確認できた時点で、早急に病院で再挿入する必要があります

チューブを固定した際にマジック等で目印を付けることで、チューブの動きを目視できます。

また、チューブを動きにくくするため、弾性テープで皮膚に固定する方法も有効です。

頻発するしゃっくり


栄養剤を注入した際に、栄養剤の温度や注入速度が刺激となったり、

消化器官が活発に動くことでしゃっくりが出ることが稀にあります

しゃっくりが出ることで胃腸の内容物が逆流し、誤嚥につながり肺炎の原因となります

しゃっくりが出たら、すぐに栄養剤の注入をやめ、医師や看護師に対応を仰ぎましょう

チューブの閉塞


腸ろうの際に使用されるチューブの多くは、カテーテルが使用され細くなっています。

そのため、栄養剤を注入し続けると栄養剤のカス等が溜まり、チューブが閉塞することがあります

チューブが閉塞した場合、付属の針金(ガイドワイヤー)や注射器で水を流し込むことで再開通が可能です。

しかし、再開通が出来ない場合は、チューブの交換が必要となります。

下痢、腹痛、嘔吐の場合


栄養剤の注入速度や温度、濃度、水分量で下痢や腹痛を起こすことがあります

また、栄養剤を注入する際の姿勢等が原因で嘔吐の症状が見られることがあります。

皮膚トラブル


腸ろうでは、チューブから垂れた栄養剤の影響で、

皮膚の感染症が起こる、

固定テープでかぶれる

といった皮膚トラブルも多いです。

皮膚トラブルを防ぐためにも、石鹸などで丁寧に洗い、清潔に保ちましょう

 

関連記事:自己導尿の目的とは?カテーテルとの違いや男女別の手順を解説

 

 

腸ろうをやめることはできるのか




十分な水分量および栄養を、口から取れる状況となれば腸ろうは必要ありません

口の中のものを飲み込み、胃に送ることが難しくなった場合や、

認知機能に問題があって腸ろうとなった方は、少し難しいかもしれません

 

関連記事:腎ろうとは?どんな人が対象になるのか?在宅における注意点を解説

 

 

西春内科在宅クリニックが出来る対応


西春内科在宅クリニックでは、在宅診療患者様の腸ろうによる栄養剤の注入に対応しております。

腸ろうの造設・交換には対応しておりませんが、腸ろうの造設・交換の可能な医療機関をご紹介します

まずは、お気軽にご相談ください。

 

 

まとめ


今回は、腸ろうのメリットや胃ろうとの違い、チューブが詰まったときの対処法などについて解説しました。

口から食事を摂ることが出来ない方・リスクが高い方にとって、腸ろうは非常に有用な栄養摂取方法です。

ただし、良い側面もあれば、悪い側面もあります。

意識が無い状態の方の場合、腸ろうにより栄養は投与されるため、身体としては何とか生命活動が可能です。

しかし、その状態が続くことになります

その形が患者様ご本人・ご家族様が望むものであるかどうかをよくご検討頂いた上で、腸ろう造設を行って頂ければと思います


【参考文献】

NPO法人PDN(Patient Doctors Network) HP

フランスベッド HP

健達ねっと HP

ドケルバン病になったら病院に行くべき?|自宅でできる対処法も紹介

ドケルバン病


ドケルバン病とは手の靭帯と腱に炎症が起こることで痛みや腫れをきたす病気です。

別名で狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)、またはスマホ指ともいいます。

このドゲルバン病は手の使いすぎで起こることが多く、近年スマートフォンの使用とも関連が疑われています。

今回はこのドゲルバン病になりやすい原因や症状、対処法について詳しく解説していきます。

 

 

ドケルバン病になりやすい原因


ドケルバン病

ドケルバン病になりやすい原因としていくつかありますが、なりやすい人と起こしうる行動の2種類があります。

なりやすい人


中年以降の女性がなりやすいとされています。

これは後述しますが家事などで手を日常的に酷使していることや、女性の手指の腱が男性より大きくカーブしていることが原因と考えられています。

また妊娠中や授乳中の女性にも起こることがあります。

起こしうる行動


不慣れな仕事や手の酷使などの慢性的に手への刺激を与えることが原因となりえます。

特にスマートフォンやパソコンの使いすぎが原因として多いとされています。

 

関連記事:高齢者の足のむくみの原因とは|放っておくと危険な理由も解説

 

 

ドケルバン病の症状


ドケルバン病

ドケルバン病の患者さまの訴えとして最も多いものが手首の親指側の刺すような痛みです。

また痛みのある部分に一致した腫れも認めます。

また手の指を伸ばした時に引っかかるような感じがあり、スムーズに指を伸ばせないように感じることもあります。

さらに症状が進行して行くと手の指を自分では動かすことが困難になります。

最終的には手の指の関節が硬くなり、動きが制限されます。

 

関連記事:高齢者の便秘は危険?主な原因や解消方法、病院での治療を解説

 

 

ドケルバン病の対処法


ドケルバン病

ではドケルバン病かもしれない手の痛みがある場合、ご自身でできる対応に関して説明します。

まず第一に手を休めることが大事です。

軽症のドケルバン病であれば手の休養だけで症状は完治することもあります。

しかしながら仕事や育児などを長期間休むことは不可能だと思います。

その場合は手首を伸ばすストレッチが簡単でお勧めです。

やり方としては手のひらを上に向けて腕を伸ばした後に、反対の手を使って手首を下に折り曲げます。

痛みのない程度まで曲げたら力を抜くを15程度回繰り返すことを1セットとし、一日に3セット程度行います。

パソコンやスマートフォンを長時間使用しているのであれば、こまめに上記のストレッチを休憩毎に行いましょう。

また痛みを一時的に強く感じる際は氷嚢などで冷やすことも症状軽減に効果的ですが、基本的には保温が症状改善に効果的です。

痛みの程度が強い場合は湿布の使用もお勧めです。

湿布を貼る際は疼痛・腫脹のある部分に貼るようにします。

しかし、湿布の成分によっては日光が湿布に当たることで副作用(光線過敏症といいます)が出ることがあるので外出する際は注意しましょう。

 

関連記事:VDT症候群とは?スマホが原因?|症状のチェック項目や治療について

 

 

ドケルバン病のセルフチェック


ドケルバン病

手の痛みがありドケルバン病を疑う場合、ご自宅で簡単にできるセルフチェック方法があります。

その方法はアイヒホッフテストといい、以下に詳しい方法を説明します。

Youtubeなどでやり方を調べてみれば、より分かりやすいかもしれません。

まず痛い方の手の親指を握ります。

親指側を上にした状態で手首をゆっくりと小指側に曲げていきます。

その時に手首の親指側や親指の付け根あたりに鋭い痛みが生じればドケルバン病の可能性があります。

 

 

ドケルバン病になったら病院に行くべき?


ドケルバン病

上記のセルフチェックでドケルバン病かもしれないとなった場合はどうすべきでしょうか。

まず上記のセルフチェックはあくまでも簡易的なものであり、リウマチなどの疾患との区別は困難です。

リウマチなどの手の関節痛を来す疾患であった場合、放置しておくと重症化し最悪の場合手の不可逆的な変形を起こします。

加えてドケルバン病も悪化することで手の指の関節が硬くなり、動きが制限されるまで重症化することもあります。

ご自身のみで判断することは危険です。

ドケルバン病を疑う症状があった場合は、まずは病院で診察を受けるようにしましょう。

 

 

ドケルバン病は治るのか?治療について


ドケルバン病

ドケルバン病は早期であれば安静と疼痛管理で症状は改善します。

しかしながら重症化した場合や再発を繰り返す場合はステロイドの注射を行います。

ステロイド注射は効果が数ヶ月持続しますが、それでも再発する場合では手術が必要となります。

 

関連記事:癬疥(かいせん)を放っておくとどうなる?うつる確率や高齢者に多い理由とは

 

 

西春内科在宅クリニックができる対応


上記のセルフチェックでドケルバン病を疑う、またはその症状があるようなら西春内科在宅クリニックに受診して頂くことをお勧めいたします。

ドケルバン病以外にも手の関節痛を起こす病気は多岐にわたり、まずは確定診断を受けることが必要です。

西春内科・在宅クリニックでは採血・レントゲン検査・CT検査で、ドケルバン病を診断することが可能です。

また、診断がついた際は、鎮痛剤処方をはじめとして治療も同時に行います。

局所麻酔や手術などの更なる治療が必要な症例では、適切な高次医療機関(大学病院など)に紹介します。

ご安心頂ける医療が提供出来ます。

 

 

まとめ


今回はドケルバン病になりやすい原因や症状、対処法について解説しました。

手首が痛い・腫れるなどがあり不安な場合、簡単に行えるセルフチェックで確認してみましょう。

ドケルバン病の疑いのある場合は医療機関への受診をお勧めします。

症状が軽度の場合は安静にすることで症状が改善されることもありますが、自身での判断は難しいので医師に相談しましょう。

今回の記事が皆様のお役にたてると幸いです。

参考文献

1)酒井昭典瞳. 日本医事新報 2021;5059:38-39
2)洪 淑貴. MB Orthop 2022.35(4):1-6

VDT症候群とは?スマホが原因?|症状のチェック項目や治療について

VDT症候群

現代人には必須となったスマートフォンとパソコンですが、みなさまは一日何時間くらい使用しているでしょうか?

仕事のほかにプライベートの時間でもスマホなどを1日中使っている人も多いと思います。

実はスマホやパソコンの長時間の使用で引き起こされる病気があることをご存知ですか?

今回はそんなVDT症候群について原因や症状、なりやすい人の特徴などを解説していきます。

 

 

VDT症候群とは?原因について


VDT症候群

VDT症候群とはパソコンやスマートフォンやテレビゲームなどのディスプレイを持つ電子機器を長時間使用することで引き起こされる可能性のある一連の症状のことをいいます。

VDT症候群を引き起こす原因としては以下のようなものが挙げられます。

長時間の画面利用


長時間デジタルディスプレイを見つめることで、目の疲労や負担が増える
可能性があります。

また デジタルディスプレイから発せられるブルーライトの過剰な曝露自律神経(ばくろじりつしんけい)に影響し、目の疲労や睡眠障害を引き起こす可能性があります。

不適切な作業環境


明るさや照明、ディスプレイの位置や高さ、作業椅子やデスクの姿勢など、作業環境の不適切さが原因
となることがあります。

 

 

VDT症候群の主な症状


VDT症候群は様々な症状を引き起こすことが特徴です。

大きく分けて目の症状・身体的症状・精神的症状に分類されます。

以下にそれぞれの症状の特徴を説明します。

目の症状(眼精疲労)


VDT症候群

主な自覚症状は目の疲れや充血、眼痛や目のかすみ感があります。

症状が進行すると視力低下やドライアイなどに発展することがあります。

また眼精疲労が持続することで吐き気やめまいといった症状を引き起こすこともあります。

身体的症状


VDT症候群

身体的症状はパソコン作業などで不適切な体勢を取ることで引き起こされます。

肩こりや頸部や腰の痛み、手の痺れなどの筋骨格系の症状を呈することが多いです。

肩こりが酷くなることで慢性的な頭痛(筋緊張性頭痛)がパソコンの使用後も持続することもあります。

精神的症状


VDT症候群

自律神経への影響で不安感、不眠や抑うつ症状などが現れることがあります。

また精神的症状から波及して不眠や胃痛などへ悪化することもあります。

 

関連記事:高齢者の足のむくみの原因とは|放っておくと危険な理由も解説

 

 

VDT症候群になりやすい人の特徴


VDT症候群

VDT症候群になりやすい人の特徴としては第一に長時間のパソコン作業を行う人になります。

特に事務職などで体を動かすことがほとんどなく、座ってパソコン作業を行う人は要注意です。

加えて視力の悪い人はVDT症候群になりやすいです。

これは視力補正がうまくできないことや、姿勢が悪くなりやすいことが原因とされています。

小児でも長時間テレビゲームやスマートフォンを使用することでVDT症候群を引き起こすことがあるため注意が必要です。

 

関連記事:ドケルバン病になったら病院に行くべき?|自宅でできる対処法も紹介

 

 

VDT症候群のセルフチェック項目


VDT症候群

では自分がVDT症候群であるかどうか調べる方法はあるのでしょうか?

以下のチェック項目に当てはまる場合はVDT症候群の可能性があるかもしれません。


✅目の疲れや不快感
長時間ディスプレイを見つめると目が疲れるか?

ディスプレイの使用後に目が乾燥したりかすんだりするか?

✅頭痛やめまい
ディスプレイを使用した後または慢性的に頭痛やめまいが生じることがあるか?

✅視力の変化
ディスプレイの使用後に一時的に視界がぼやけたり、焦点が合いにくくなったりすることがあるか?

最近視力が悪くなってきているか?

✅肩こりや首の痛み
ディスプレイの使用中または使用後に肩や首のこりや痛みが生じることがあるか?

前屈みなどの悪い体勢でディスプレイを見ているか?



VDT症候群の治療について


VDT症候群

それではVDT症候群となった場合はどのような治療を行えばいいのでしょうか?

基本的にはVDT症候群は軽度であれば十分な休息を取ることで症状は軽減することがほとんどです。

しかしながら重度のVDT症候群であれば内服薬または点眼薬による治療が必要となってきます。

眼精疲労に対してはビタミン点眼薬や内服のビタミン剤が用いることがあり、またドライアイに関しては人工涙液の点眼が有効です。

肩こりや腰痛などの筋骨格系の症状に関しては鎮痛剤など内服に加え、筋弛緩作用のある内服薬を使用することがあります。

またストレッチなどの運動を取り入れることも有効です。

VDT症候群による精神的症状に関しては抗不安薬や睡眠薬などを内服することもあります。

 

 

VDT症候群にならないための予防対策


VDT症候群に対する治療に関して説明しましたが、VDT症候群は予防を行うことが最も重要です。

具体的な予防策は以下の通りです。

定期的な休憩・運動をしましょう

VDT症候群

長時間の連続したディスプレイ作業はVDT症候群のリスクとなります。

定期的に10分程度の休憩を挟むようにしましょう。

またその際に軽いストレッチを行うことで肩こりなどの筋骨格系の症状を予防することが可能です。

適切な作業環境を整備しましょう


VDT症候群

暗い照明の下でのディスプレイ作業は眼精疲労を悪化させます。

ディスプレイの文字が見やすい明るさの照明に変更しましょう。

またデスクや椅子を自分にあった物にし、高さも調整しましょう。

ディスプレイの高さや机の位置が適切でないと悪い姿勢となりVDT症候群のリスクとなります。

適切な視力補正(メガネやコンタクト)であるか注意しましょう


VDT症候群

使用しているメガネやコンタクトの度数があっていないとVDT症候群を引き起こしやすいです。

そのため定期的に眼科へ受診し適切な視力補正が行えているか確認してもらいましょう。

睡眠の量と質を高めましょう


VDT症候群

睡眠不足はVDT症候群による精神症状を悪化させる可能性があります。

疲労感などが残る場合はディスプレイ作業を切り上げて睡眠時間を確保するようにしましょう。

また寝る前のディスプレイ作業は入眠困難や中途覚醒の原因となるため、就寝前2時間前にはディスプレイを使用しないようにしましょう。

 

関連記事:尿漏れの原因は男性と女性で違う?予防になるトレーニング対策も紹介

 

 

西春内科在宅クリニックができる対応


VDT症候群かもしれないと思ったら一度西春内科在宅クリニックに受診してみてはいかがでしょうか?

クリニックでは患者様の症状の程度にもよりますが、点眼薬や内服薬での治療を行います。

また問診などからVDT症候群の原因となるような状況を見極め、症状が悪化しないように予防や対策法のご提案もさせていただきます。

VDT症候群の症状に似た疾患(緑内障やうつ病など)もあることから、上記チェックリストに当てはまる場合は一度精査をすることをお勧めします。

西春内科在宅クリニックでは様々な病気に対応が可能です。

 

 

まとめ


今回はVDT症候群について原因や症状、なりやすい人の特徴などを解説させていただきました。

VDT症候群は大人だけでなく小児でも発症する恐れのある病気です。

予防・対策を行える病気です。

無理せず休憩をはさみながら便利にスマートフォン・パソコンを利用できると良いですね。

少しでもVDT症候群を疑う症状があるようでしたら、いつでも西春内科在宅クリニックにご相談ください。

参考文献

‣石川 哲,他:日本眼科医会VDT研究班業績集 1986-1989,日本の眼科別冊集1-263,1989.
‣伊比健児:産業医実務研修教育の立場から,眼科オピニオン④,テクノストレス眼症,初版.増田寛次郎編,中山書店,東京,
 192-202,1998.
‣前原直樹=労働医学の立場から肩こりや腰痛にいかに対応するか,眼科オピニオン④,テクノストレス眼症,初版,増田寛次郎編,
 中山書店,東京,163-180,1998.
‣青木 繁=テクノストレス眼症,眼科の最新医療,初版.増田 寛次郎ほか編,先端医療技術研究所,東京,41-46,2003.

高齢者に多い褥瘡(じょくそう)の好発部位や予防対策、治療方法を解説

褥瘡

寝たきり状態になってしまった時、気を付けたいのが【褥瘡(じょくそう)】です。

褥瘡とは、先にもお伝えしましたが、寝たきり状態が続いたり、活動量が少ない高齢者に起きやすい症状です。

初期段階では皮膚の赤みやふくらみが現れますが、進行してしまうと感染症や合併症のリスクが高まります。

今回は、そんな褥瘡の重症度や、治療、予防方法などについて詳しく解説していきます。

 

 

褥瘡とは


褥瘡

褥瘡とは一般的に「床ずれ」と呼ばれるもので、体重での圧迫で起こる皮膚の傷やただれのことです。

例えば、自分で動ける人は眠っていても寝返り等を行い、同じ部分に体重がかかり続けないようにしています。

しかしながら寝たきりになっている人は自分で身体を動かすことができず、同じ部分に体重がかかり続けてしまいます。

そのため、ずっと圧迫され続けている部分の血流が悪くなってしまい、皮膚などの細胞に酸素や栄養が届かなくなってしまいます。

その結果、細胞が壊れてしまい、傷や皮膚のただれ、潰瘍ができてしまうのです。

これが褥瘡です。

 

関連記事:癬疥(かいせん)を放っておくとどうなる?うつる確率や高齢者に多い理由とは

 

 

褥瘡の好発部位


褥瘡

褥瘡は先述の通り、身体の同じ部分に体重がかかり続けてしまうことにより起こる物です。

そのため、褥瘡は身体の下の部分(床やベッドであれば床やベッドと接するところ、座っているのであれば床や椅子などと接するところなど)にできやすくなります。

つまり、その態勢の時に体重がかかりやすくなっている部分に多くできるのです。

例えば、あおむけでベッドに寝ている場合は、後頭部、おしり(仙骨など)の部分や肩甲骨、かかとなどに体重がかかり、褥瘡ができやすくなります。

横向きに寝ている場合は、肩やひじ、太ももの付け根の外側(大転子部)や腸骨、ひざなどに体重がかかりやすいため、褥瘡ができやすくなります。

車いすなど座った状態でずっといる場合にはおしり(尾骨や坐骨の部分)、背中やひじ等にできることもあります。

 

関連記事:高齢者に多い圧迫骨折の自宅療養のポイントや治療について解説

 

 

ステージ別:褥瘡の重症度について


褥瘡は皮膚の圧迫による細胞の障害です。

褥瘡は、初めは体重による圧迫のため皮膚の赤み(発赤)を認めます。

短時間の圧迫であれば、赤みが出ている皮膚も圧迫を取ることでしばらく時間が経過するともとに戻ります。

しかしながらこのまま圧迫を続けてしまうと、発赤が消えなくなってしまいます。

これが褥瘡の始まりとなります(時には皮膚に赤みがなくても、皮膚の奥の方に触れることで硬さを感じることがあります)。

そしてさらにそのまま圧迫を続け褥瘡が進行していくと、次は皮下出血や水膨れなどを認めます。

さらにそのまま体重での圧迫を解除せずに放置すると、血流が悪くなることで皮膚がめくれてしまったり、傷ができてしまい、の傷がどんどん深くなっていきます。

褥瘡の重症度はどの部分まで障害されているか、その「深さ」により分類されます。

NPUAP(米国褥瘡諮問員会) のステージ分類とEPUAP(欧州褥瘡諮問委員会)のステージ分類を使用することが多いのですが、それらにおいて褥瘡の深さにより1-4までのステージに分類されます。

褥瘡

ステージⅠ圧迫をとっても消えない発赤。
皮膚には傷を認めない
ステージⅡ水ぶくれ、浅い潰瘍、皮膚、真皮がなくなるような傷
ステージⅢ皮膚の下の脂肪まで及ぶ傷。
ただしその奥にある骨、腱、筋肉には達していない。
骨や筋肉等は露出していない全層皮膚欠損
ステージⅣ深く、広くなった傷で、骨、腱、筋肉の露出してしまうような全層組織欠損

褥瘡を放置した場合、どんどん重症化してしまいます。

また、傷口を清潔に保たないと細菌などに感染してしまうこともあります。

そうなると全身の状態も悪くなりますし、感染などが起こっていると、最悪の場合、命にも関わりかねなくなってしまいます。

高齢者が褥瘡になりやすい理由


褥瘡

高齢者の場合、そもそも高齢者では若年者と違い、皮膚の弾力もなくなってしまいます。

そのため、体重などでの圧迫やずれに弱く、褥瘡を作りやすい皮膚になってしまっています。

また、筋肉や脂肪の量が落ちてしまっている場合が多くあります。

筋肉や脂肪が落ちてしまうと骨ばった身体になり、そこに圧迫がかかりやすくなってしまいます。

年齢により寝たきりになった場合などは筋肉量や脂肪もさらに少なくなりますし、そもそも身体を動かさないと関節が変形して固まってしまいます。

そのため同じ姿勢になってしまうことも多く、同じ場所に体重がかかりやすくなるため褥瘡もできやすくなってしまうのです。

また、高齢者では、糖尿病などでもともと血流が悪くなっている人の割合も多くなります。

認知症などであまり動かない人も多く、褥瘡ができやすい条件がそろいやすいことも一因となるでしょう。

 

関連記事:高齢者における慢性疼痛とは?痛みの特徴や治療について解説

 

 

褥瘡の治療について


褥瘡

褥瘡は褥瘡ができてからどのぐらいの時期か、また、どのぐらいの重症度かによって変わってきます。

褥瘡ができてすぐの急性期(~3週間まで)は傷口を清潔に保ち、ドレッシング剤というシートで傷口を覆います。

これにより傷口の感染を予防し、傷口を湿潤な環境に保ちます。

場合によっては塗り薬を使用したり、痛みが強い場合は痛み止めを使うこともあります。

一方で、褥瘡ができて時間が経過した慢性期(3週間~)は傷口がどの程度の深さかによって治療が変わります。

褥瘡の中でも浅いものであれば塗り薬をぬる、先述のドレッシング剤を使用して傷口を保護します。

傷口が深い場合や、組織の一部が死んでしまった(壊死)場合はその死んだ組織をはさみやメスなどで切りとる処置を行います。

さらに深い場合は汚くなった組織や死んでしまった組織などを取り除くための手術や、褥瘡で組織が死んだりして皮膚がなくなった場合は、必要に応じてその部分を埋める手術を行ったりします。

時によっては皮膚や組織が一部なくなるような傷になってしまった場合、その傷口を覆い陰圧をかけることで傷口を閉じる処置もあります。

また、どの時期によっても傷口に細菌などが感染することがあります。

その場合は塗り薬や抗菌薬の飲み薬、点滴等で感染の治療を行っていきます。

 

 

褥瘡にならないための予防対策


褥瘡

褥瘡は同じ部分に体重などでの圧迫がかけられ続けることによって起こる物です。

そのため、体重が同じところにかかり続けないように身体の向きを変えることが予防では重要です(これを体位変換と言います)。

患者さん本人が動けない場合は家族など、周囲の介護者が定期的に身体を動かしてあげることが必要となります。

また、体重を分散させるように体圧を分散するような寝具を使用することも効果的でしょう。

布団やベッドに寝ている場合はシーツや洋服がよれてしわになっていると、その部分だけ圧迫が強くなったり皮膚の摩擦が強くなったりして褥瘡ができてしまうことがあるので、しわやよれを取ることも重要です。

さらに、皮膚自体がもろくなってしまうと褥瘡もおこりやすくなります。

しっかりと栄養を取り、状態を整えることも重要です。

栄養状態が悪くなってしまうと、筋肉や脂肪も少なくなり骨ばった身体になってしまい、そこに圧がかかりやすくなるため褥瘡ができやすくなってしまいます。

また、栄養状態が悪いと、万一褥瘡になったときも治りが悪くなります

皮膚を清潔に保ち、保湿などスキンケアを行うことも重要です。

例えば寝たきりの人の場合やトイレも行けずにおむつなどで生活せざるを得ない場合もありますが、褥瘡はそのおむつの中、おしりの部分にできることもあります。

そのため、褥瘡ができてしまったのであれば便や尿などで汚染されないように注意しなければなりません。

そして何より、褥瘡ができていないのか細かく観察しておくことも重要です。

褥瘡は一度なってしまうと治るまで時間がかかるものです。

褥瘡になりかけている部分を早期に見つけることができれば、傷が浅い、赤くなっているだけの状態で治療を開始することができますし、早期に治療を開始できれば治るのも早くなります。

 

関連記事:MRSAとは?感染経路や症状を解説|高齢者がなりやすい理由も

 

 

西春内科在宅クリニックができる対応


在宅での褥瘡対応では、ヘルパーさんや家族が褥瘡を見るけることがおおいでしょう。

ただ、褥瘡と言われてもその見分け方、どのように注意すればいいかなどわからない場合が多くあります。

西春内科・在宅クリニックでは訪問診療を行っています。

ご自宅や施設に定期的にお伺いし診察を行いますので褥瘡が出来ていた場合速やかに治療を開始していただけます。

また、褥瘡ができてしまった後には、在宅でできる範囲の処置、薬の処方や皮膚を清潔に保ち、保湿するなどのケアの指導などを行って治療していきます。

万一褥瘡がひどくなってしまい、病院での処置が必要となれば、大きな病院に紹介することもできます。

まずはお気軽にご相談ください。

 

 

まとめ


褥瘡は寝たきりの人など、長時間同じ姿勢で動きにくい人になりやすい症状です。

そのような状況では誰でもなり得る症状です。

褥瘡は悪化すると骨付付近まで組織が傷ついてしまうこともあります。

また、細菌に感染してしまった場合、重症化することもあります。

褥瘡は、放置するとどんどん傷が深くなってしまうため、早期発見を行い早期に治療すること、そもそも褥瘡を作らないように定期的に身体を動かすなど予防に努めることが重要です。

参考文献

日本褥瘡学会 褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)
荒木真由美ら 持続吸引による陰圧閉鎖療法を導入した褥瘡ケアの一例 日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 2000; vol4; 68-71

排尿障害とは?尿が出にくい原因や症状、治し方について解説

排尿障害

頻尿や尿の出にくさ、残尿感など、尿に関するお悩みはありませんか?


これらの症状は排尿障害が原因であることが多く、尿を膀胱内にためる(畜尿)や膀胱内の尿を排出する(排尿)に問題があると考えられます。

40歳以上では約8人に1人はこのような問題を抱えているといわれています。

また、加齢とともに問題を抱える人の割合(有病率)もさらに高くなります。

今回は、多くの人が悩まされている排尿障害の原因や、症状、治し方について解説いたします。

 

 

排尿障害になる原因とは?


排尿障害

まずは排尿のメカニズムについて簡単に説明します。

排尿は以下の3つ段階に分けることができます。

  1. 膀胱に尿をためる(畜尿)
  2. 尿意を感じる/排尿をこらえる
  3. 尿を出す(排尿)
 

①膀胱に尿をためる(畜尿)


尿は腎臓で産生されて膀胱に送られます。

畜尿の段階では膀胱の筋肉(膀胱壁平滑筋ぼうこへきへいかつきん)がゆるむことで、膀胱内の圧が上がることなく尿をためることができます。

この段階では膀胱内の圧が高くならないため、尿意などは感じません。

②尿意を感じる/排尿をこらえる


200~300ml程度尿が溜まると膀胱内の圧が上がり、膀胱内の圧の上昇が自律神経を介して脳に伝わることで尿意を感じます。

尿道には尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)という尿道を閉める筋肉があり、その筋肉の一部(外尿道括約筋がいどうにょうかつやくきん)は自分の医師で動かすことのできる筋肉であることから、尿道括約筋を収縮させることで排尿を我慢することができます。

また、膀胱や子宮を支える骨盤底筋にも尿道を閉める作用があり、力んだ時や咳をしたときなど腹圧が上がった際の尿漏れを予防しています。

③尿を出す(排尿)


排尿の段階では尿道括約筋をゆるめて膀胱内に溜まった尿を排出します。

この時、正常な膀胱では膀胱壁平滑筋が収縮して風船がしぼむような形で膀胱が小さくなり、尿はほとんど膀胱内には残りません。

正常な人では以上のように畜尿~排尿が行われます。

排尿障害は以下などで出現します。

  • 膀胱が十分に弛緩できない
  • 尿意を感じやすい
  • 骨盤底筋が弱いなどの畜尿の障害や尿道が狭い
  • 膀胱が収縮しないなどの排尿の障害

 

 

排尿障害の主な症状

 

過活動膀胱(かかつどうぼうこう)


排尿障害

過活動膀胱とは耐えられないような尿意を突然自覚する症状(尿意切迫感)で、尿意を感じてから排尿を我慢することが困難となります。

尿意が心配で頻回にトイレに行くようになったり、実際に尿意を頻回に感じるようになったりして頻尿となり、時に尿失禁をしてしまうこともあります。

脳血管障害、パーキンソン病、脊髄疾患などの様々な神経疾患に合併し、40歳以上の男女では14.1%にみられるといわれています。

腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)


排尿障害

腹圧性尿失禁とは骨盤底筋と呼ばれる子宮や膀胱などの骨盤内臓器を支える筋肉が弱くなることで力んだ時や咳をした時など腹圧が高くなったときに尿漏れを起こしてしまうという症状です。

量はそれほど多くはないですが無自覚に尿が漏れてしまい、陰部の不快感や尿路感染の原因にもなります。

骨盤底筋が弱くなる主たる要因は妊娠や出産であることから、主に女性で問題となります。

夜間頻尿(やかんひんにょう)


排尿障害

夜間頻尿は夜間や入眠中にトイレに1回以上起きなければならないような症状のことです。

尿量自体が多い場合だけでなく、畜尿の障害や排尿の障害(残尿により、結果的に短時間で膀胱がいっぱいになる)がある場合や寝つきが悪くて尿意を自覚しやすい場合にもこの症状がみられます。

前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)


排尿障害

前立腺は尿道を取り囲むように存在する男性の生殖器です。

前立腺肥大症とは加齢とともに前立腺が大きくなり、尿道を圧迫することで尿が出しにくくなってしまう病気です。

膀胱に尿が溜まっても排尿しづらく、また尿が出し切れないことで、以下などの症状が出現します。

  • 尿意を感じても尿がなかなか出ない
  • 尿の勢いが弱い
  • 一回の排尿量が少なく残尿感がある
  • 尿を出すのにお腹に力を入れたり下腹部を圧迫したりと補助が必要になる
  • 頻回に尿意がある

 

関連記事:前立腺肥大は自然に治る?原因と症状、予防対策について解説

 

 

低活動膀胱(ていかつどうぼうこう)


排尿障害

低活動膀胱とは膀胱の収縮ができなくなり、膀胱がゴムの緩んでしまったゴム風船のような状態となる病気です。

膀胱内から尿を押し出せないため、1回ごとの尿量が減り、尿が出なくなることもあります。

常に膀胱内に尿が残っているため、尿意を感じやすく、また細菌が入った場合には排出されないため尿路感染にも罹患しやすくなります。

膀胱の壁を収縮させる神経の障害が原因となることが多く、薬物的な治療は困難であるため、症状がひどい場合には自己導尿や膀胱留置カテーテルが必要となります。

パーキンソン病になると排尿障害を伴いやすくなる?


排尿障害

パーキンソン病は動作が遅くなったり、歩きにくさがでてきたりすることで気づかれることの多い神経難病の一つです。

神経難病の中では発症率の高い病気で、加齢とともに、特に60歳以上で発症率が急激に増加し、65歳以上では100人に1人程度罹患しているとも言われているため、病名を耳にしたことがあるのではないでしょうか?

パーキンソン病では動き出しにくくなる、動きが遅くなるという動きにかかわる症状が注目されがちです。

しかし、その他の症状として便秘や起立性低血圧、排尿障害、不眠症なども出現します。

パーキンソン病では過活動膀胱(2-1参照)のような排尿障害を合併しやすく、トイレに移動したり、ズボンを下ろしたりするのに時間がかかってしまうため、間に合わずに失禁してしまうことも少なくありません。

そのため、常にトイレのことを気にしてしまい、頻回にトイレに行ったり、安心して眠れなくなったりしてしまいます。

尿意を感じる前から頻回にトイレに行ったり、老人用おむつを着用したりするなどして対応している方もいるかと思います。

環境調整や薬物治療で症状が改善することも多いのでパーキンソン病の治療中にこのような症状がみられた場合には主治医に相談しましょう。

 

関連記事:パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説

 

 

排尿障害を放置するとどうなるのか


排尿障害

排尿障害では頻尿による生活上の支障や不眠、尿意切迫感による転倒などの外傷、残尿や陰部の汚染による尿路感染症などが問題となります。

排尿障害を放置した場合には、トイレを常に気にしてしまうことで頻尿が悪化したり、不眠や尿失禁などのエピソードを繰り返すことで鬱傾向となったりと精神面でも悪影響が出現します。

また前立腺肥大症などで排尿に問題がある場合には、尿路感染症を繰り返す、膀胱がつねに広げられて低活動膀胱を併発するなどの問題が起きてしまうこともあるため、生活に支障のある症状がある場合には泌尿器科で相談しましょう。

 

関連記事:高齢者の便秘は危険?主な原因や解消方法、病院での治療を解説

 

 

排尿障害の治し方


排尿障害はその原因により治療法が異なります。

過活動膀胱


排尿障害

過活動膀胱は行動療法と薬物療法で主に治療を行います。

行動療法は日常生活での工夫やトレーニングで症状の改善を目指す治療法です。

行動療法

 

過活動膀胱では過度な飲水やカフェインの摂取により症状が悪化するため、それらの摂取を控えることで症状の改善が期待できます。

また外出時にはトイレの位置を確認する、早めにトイレに行くなどにより心理的な負担が軽くなり、症状が改善することがあります。

尿意を感じた後も排尿を我慢して少しずつ排尿間隔を延長する訓練を行うことで排尿間隔を伸ばすことができる場合もあります。

具体的には排尿計画をたてて、15分~60分単位で排尿間隔を延長する形で訓練を行います。

予定時間まで我慢できないこともあるため、いつでもトイレに行ける環境で行いましょう。

また、骨盤底筋のトレーニングことで症状の改善が得られることがあります。

薬物療法

 

薬物療法では主に以下の薬剤を使用します。

  • 膀胱の収縮を抑制する抗コリン薬(ベシケア®、ウリトス®など)
  • 膀胱の拡張を促すβ3受容体作動薬(ベタニス®、ベオーバ®)

これらの薬剤が使用できない場合には漢方薬などを使用する場合もあります。

腹圧性尿失禁


排尿障害

腹圧性尿失禁は骨盤底筋のトレーニングにより治療を行います。

改善しない場合には手術を行うこともあります。

骨盤底筋のトレーニングは肛門・膣あたりを締めたり、緩めたりするトレーニングで様々な姿勢で行うことが可能です。

一般的な筋肉トレーニングと同じく、継続して行うことが重要で結果がでるのに時間がかかります(数週間~数か月)が、侵襲のない根本的な治療で、非常に重要な治療法です。

前立腺肥大症


排尿障害

前立腺肥大症は薬物療法または手術で治療を行います。

前立腺肥大症では前立腺の肥大により尿道を圧迫して尿を出しづらくしてしまう病気です。

前立腺には前立腺平滑筋という筋肉があり、交感神経の興奮により前立腺が収縮することも排尿障害に関与しています。

そのため、薬物治療では以下の薬剤により治療を行います。

  • 前立腺平滑筋の収縮を抑えるα1遮断薬(フリバス®、ユリーフ®)
  • 前立腺平滑筋を弛緩させるホスホジエステラーゼV阻害薬(レバチオ®、ザルティア®)
  • 前立腺肥大の原因となる男性ホルモンの作用を抑える5α還元酵素阻害薬(アボルブ®)

これらの薬剤で症状が改善しない場合には、手術で前立腺を切除/核出します。

以前は開腹手術も行われていましたが、現在では主に経尿道的な手術が行われています。

低活動膀胱


排尿障害

低活動膀胱の治療は薬物による治療が中心となりますが、薬物治療で十分な改善が得られない場合には間欠的自己導尿や膀胱留置カテーテルの留置が必要となります。

薬物療法では以下の薬剤により治療を行います。

  • 膀胱の収縮を促進するコリン作動薬(ベサコリン®)、コリンエステラーゼ阻害薬(ウブレチド®)
  • 尿道を広げるα1遮断薬


薬物治療でも十分な排尿が得られない場合には、尿道の出口から膀胱まで管(尿道カテーテル)を入れて排尿する治療(間欠的自己導尿や膀胱留置カテーテル)が必要となります。

 

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排尿障害におけるトイレの工夫


排尿障害

排尿障害でお困りの場合には以下のような工夫を行うことで症状のコントロールができる場合があります。

① 定期的にトイレに行く


定期的にトイレに行くことで突発的に強い尿意を感じたり、尿漏れを起こしたりすることを予防できる場合があります。

また排尿したという安心感から急に尿意が来るのではないかという不安の解消にもつながります。

② 排尿時に腹圧をかける、下腹部を押すなどして自身にあった排尿方法を行う


排尿の障害がある場合には自然な排尿だけでは十分に排尿ができないため、腹圧をかける、下腹部を押すなどで膀胱を圧迫することにより、よりしっかりと排尿ができる場合があります。

③ 便秘を予防する


直腸と膀胱は近接しており、便秘の方では直腸が膀胱を圧迫することが排尿に悪影響をあたえている場合があります。

緩下剤を使用するなど排便管理を行うことも排尿障害の改善につながります。

④ トイレに行きやすい環境を整える


運動機能に障害のある方ではトイレに行くまでに時間がかかってしまうため、失禁してしまったり、不安でトイレに頻回に行ってしまったりするようになります。

手すりをつける、バリアフリーにする、他人の手を借りるなどでトイレへのアクセスをよくすることで症状の改善が得られる場合があります。

⑤ 排尿日誌をつける


排尿日誌をつけることで自身の排尿状況を正確に把握することができ、排尿間隔をどの程度にすべきかなど生活に支障がないように対策を行うことができます。

また、医療機関に受診をした際の説明にも役立ちます。

 

 

西春内科在宅クリニックができる対応


西春内科在宅クリニックでは超音波検査やCTなどの画像検査などを用いて排尿障害の原因検索を行い、生活指導や薬物療法などの治療を行うことができます。

また、診断が困難な排尿障害や手術などのより専門的な治療が必要な場合には適切な医療機関に紹介を行うことができます。

恥ずかしくて相談しづらいこともあるかと存じますが、患者様によりそった医療を心がけておりますので、お気軽にご相談ください。

 

 

まとめ


排尿障害はコントロールができない尿意や尿失禁などの症状があり、日常生活への支障が大きい疾患です。

また日常生活に支障があるだけでなく、いつ尿意が来るかが不安でいつもトイレを気にするようになってしまい、精神的にも悪影響を及ぼします。

排尿障害は原因ごとに適切に対応すれば、一定の症状改善が期待できる症状であるため、排尿の問題でお困りの際にはお気軽に医療機関でご相談ください。


参考文献

日本老年医学会雑誌
浜辺の診療所HP
名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室「過活動膀胱」
名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室「過活動膀胱 治療法」
名古屋大学大学院医学系研究科 泌尿器科学教室「前立腺肥大症の治療法のいろいろ」
過活動膀胱診療ガイドライン
神経治療 vol.39 No.2
日本泌尿器科学会
利根中央病院HP

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