肺気腫とは?COPDとの違いや治療方法などを解説
息切れや咳が続く、そんな症状でお悩みの方は少なくありません。
特に喫煙習慣のある方や長年喫煙されていた方の中には、「もしかして肺気腫?」と心配される方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、肺気腫について、症状から治療法まで、分かりやすく解説していきます。
肺気腫とは?
肺気腫は、肺の組織が徐々に壊れていく病気です。
私たちの肺には「肺胞」と呼ばれる、酸素を取り込むための小さな袋がたくさんあります。
肺気腫ではこの肺胞が壊れ、次第に大きな空洞になっていきます。
その結果、十分な酸素を取り込めなくなり、様々な症状が現れるのです。
さらに症状が進行すると以下のような合併症を引き起こす可能性があります。
- 肺がん
- 心臓病
- 不整脈
- 骨粗鬆症
- うつ病
関連記事:COPD(慢性閉塞性肺疾患)はタバコが原因?症状や治療を解説
肺気腫の原因
肺気腫の最大の原因は喫煙です。
タバコの煙に含まれる有害物質が、長期間にわたって肺を傷つけることで発症します。
ただし、喫煙以外にも以下のような要因が関係します。
- 大気汚染物質への長期的な暴露
- 加齢による肺機能の低下
- 職業上の粉塵や化学物質への暴露
- 遺伝的な要因(アルファ1アンチトリプシン欠損症など)
肺気腫の症状
息切れ
肺気腫の最も特徴的な症状が息切れです。
初期では階段の上り下りや運動時にのみ感じる程度です。
ですが、病気が進行すると、歩行や日常的な動作でも息切れを感じるようになります。
咳・痰
慢性的な咳が出ることがあります。
ただし、他の呼吸器疾患と比べると、咳や痰の症状は比較的軽い傾向にあります。
朝方に咳が出やすく、痰は少量の白色や透明なものが一般的です。
体重減少
以下の理由で徐々に体重が減少することがあります。
- 呼吸のために余分なエネルギーを使う
- 食事量減少により十分な栄養が取れなくなる
肺気腫では、呼吸に通常の3~10倍ものエネルギーを消費するため、少量を頻回に分けて食べるなどの工夫が必要です。
関連記事:肺がんの気をつけてほしい初期症状や原因、ステージ(進行度)について
肺気腫とCOPDの違いは?
肺気腫はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の一種です。
COPDは、肺気腫と慢性気管支炎という2つの病態を含む総称を指します。
肺気腫が肺胞の破壊を特徴とするのに対し、慢性気管支炎は気道の炎症が主な特徴です。
肺気腫の診断方法
肺機能検査
呼吸機能検査(スパイロメトリー)を使って、肺活量や息を吐き出す速さを測定します。
特に「1秒間に思い切り吐き出せる空気の量」は、診断の重要な指標となります。
胸部レントゲンやCT検査
胸部レントゲンやCT検査で、肺の形や状態を詳しく調べます。
特にCT検査では、肺気腫に特徴的な肺の変化を詳細に確認することができます。
血液検査
酸素や二酸化炭素の量を測定し、肺の機能がどの程度低下しているかを調べます。
通常は手首の動脈から少量の血液を採取します。
この結果により、酸素療法が必要かどうかの判断も可能です。
その他
問診や聴診なども重要な診断方法です。
特に喫煙歴や職業歴、普段の生活での息切れの程度などを詳しく確認します。
関連記事:血栓とは?原因・症状・予防法・できやすい人の特徴を紹介
肺気腫の治療方法
禁煙
肺気腫の治療で最も重要なのが禁煙です。
これは単なる予防ではなく、積極的な治療の一つです。
禁煙により病気の進行を大幅に遅らせることができます。
禁煙が難しい場合は、禁煙外来の利用や禁煙補助薬の使用を検討しましょう。
薬物療法
肺気腫の薬物治療の中心となるのが吸入薬です。
呼吸の通り道である気管支を広げる薬(気管支拡張薬)を使用することで、息苦しさを軽減します。
特に効果が長く続く長時間作用型の吸入薬は、1日1~2回の使用で症状を和らげることが可能です。
病状が悪化して呼吸が特につらくなったときには、炎症を抑えるステロイド薬を追加することもあります。
理学療法
呼吸リハビリテーションと呼ばれる運動療法が効果的です。
正しい呼吸法を学び、効率よく酸素を取り入れる方法や、体力を維持・向上させる運動を行います。
また、日常生活での動作の工夫についても指導を受けられます。
酸素療法
病気が進行して血液中の酸素が不足するようになった場合、酸素吸入が必要となります。
在宅酸素療法として、自宅で酸素濃縮装置を使用することが一般的です。
外出時は携帯用の小型ボンベを使用できます。
外科療法
一部の患者さんでは手術が検討されます。
大きな空洞になった肺の部分を切除したり、胸腔鏡を使って肺を縮小したりする手術があります。
ただし、手術を行うには、以下の条件を満たすことが必要です。
- 65歳以下の方
- 禁煙を6ヶ月以上継続できている
- 病気の範囲が肺の一部に限られている
- 心臓など他の重要な臓器に重い病気がない
- 手術後のリハビリに意欲的に取り組める体力がある
特に、肺全体に病変が広がっている場合や、年齢が高めの方は手術のリスクが高くなるため、慎重に検討する必要があります。
肺気腫は治る?寿命は?
一度破壊された肺胞は元の状態に戻らないため、肺気腫は完治が難しい病気です。
しかし、適切な治療を継続することで、症状の進行を大幅に遅らせることができます。
寿命は、禁煙や適切な治療を行うかどうかで大きく変わってきます。
早期に発見し、禁煙したうえで適切な治療を続けると、多くの方が普通の生活を送ることが可能です。
ただし、重症化すると日常生活に支障が出たり、感染症などの合併症のリスクが高まったりします。
そのため、定期的な通院と治療の継続が欠かせません。
関連記事:咳喘息は喘息ではない?違いや症状のチェック項目をご紹介
西春内科・在宅クリニックでできること
西春内科・在宅クリニックでは、COPDを含む呼吸器系の疾患に対して、対応可能です。
医師による診察やレントゲン、CT検査を行い、検査結果に応じて適切な治療を行います。
また、オンライン診療にも対応しています。
心配なことがあれば当日に予約をして、受診することも可能です。
受診方法がわからない場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
肺気腫は、主に喫煙が原因で起こる肺の病気です。
完全な治癒は難しいものの、早期発見と適切な治療で進行を抑えることができます。
禁煙を基本に、薬物療法や呼吸リハビリテーションなどの治療を継続的に行うことで、多くの方が日常生活を送ることができます。
気になる症状がある方は、早めに病院を受診しましょう。
参考文献
肺気腫(COPD)の検査・治療|名古屋おもて内科・呼吸器内科クリニック|荒畑駅・御器所駅
肺気腫|症状や治療、ct検査について。健診会東京メディカルクリニック
肺気腫 | しおや消化器内科クリニック | さいたま市中央区 与野本町駅
クループ症候群とは?特徴的な症状と受診目安などについて解説
お子さんが夜中に特徴的な咳をし始めて心配になったことはありませんか?
このような症状は『クループ症候群』の可能性があります。
適切な知識があれば、重症化を防ぎ、お子さんの体調を早期に改善できます。
今回は、クループ症候群の症状から家庭での対処法まで、保護者の方に必要な情報を紹介するので、参考にしてください。
クループ症候群とは?
クループ症候群は、ウイルス感染やアレルギー反応により、喉に炎症が起きる病気です。
主に生後6か月から3歳の乳幼児に多く見られます。
喉が腫れて気道が狭くなることで、以下のような特徴的な症状が現れます。
- 犬の吠え声のような特徴的な咳
- オットセイの鳴き声のような咳
- 息を吸う時に『ゼーゼー』という音がでる
- 声がかすれる
多くの場合は軽い症状で治りますが、中には急に症状が悪化することもあります。
特に、呼吸が苦しくなって唇が青くなるような場合は、すぐに受診が必要です。
関連記事:乾燥で咳が止まらないのはなぜ?咳の特徴や悪化させないための方法を紹介
クループ症候群の原因
ウイルス性
クループ症候群の主な原因はウイルス感染です。
特に以下のウイルスが原因となることが多いとされています。
- パラインフルエンザウイルス
- インフルエンザウイルス
- RSウイルス
- アデノウイルス
インフルエンザウイルスによるクループ症候群は、他のウイルスに比べ重症化しやすい為、注意が必要です。
ただし、持病のある子どもは、どのウイルスでも重症化しやすいので、早めの受診をおすすめします。
非感染性
ウイルス以外にも以下のような要因が、クループ症候群の原因となります。
アレルギー
花粉、ハウスダスト、動物の毛、特定の食品や薬物に対するアレルギー反応が、喉や気道に腫れや刺激を引き起こし、クループ症候群の症状を誘発する可能性があります。
喉や気道への刺激物の吸入
たばこの煙、化学物質、強い香りや工業用の粉塵などが、気道の粘膜を刺激し、喉や気管支の通りを狭くしたり、閉塞したりすることがあります。
逆流性食道炎(GERD)
胃酸が食道に逆流し、喉や気道の近くまで上がってくることで、粘膜を刺激し、炎症を引き起こす可能性があります。
特に子供や乳幼児に多く見られます。
物理的な外傷
激しいせき込みや喉への外傷が、気道の炎症や腫れを引き起こすことがあります。
スポーツ中の事故や異物による損傷が原因となり得ます。
細菌感染
特定の細菌が喉や気道に感染すると、喉に炎症を起こします。
気道を直接刺激することで、せきや声のかすれ、呼吸の困難など、クループ症候群の特徴的な症状が現れる可能性があります。
これを細菌性クループと呼び、重症化することが多く抗生物質による治療が必要です。
このように、クループ症候群の原因は大きくウイルス性と非感染性の2つに分かれ、それぞれ異なる対応が必要です。
ウイルス感染は感染予防が重要で、非感染性の場合はアレルギー管理や環境対策も考慮する必要があります。
クループ症候群の特徴的な症状
声がれ
クループ症候群にかかった子どもは、普段と異なる声になったり、声が出にくくなったりします。
特に、しゃがれた声やか細い声が出る場合があります。
これは喉の奥にある声帯という部分が腫れて炎症を起こしているためです。
この声の変化は、クループ特有の咳の始まりを告げるサインです。
夜間に症状が悪化することも多いため、日中に声の変化に気づいたら、早めに医師に相談することをおすすめします。
犬が吠えるような咳やオットセイの鳴き声
クループ症候群は、気道が狭くなることで以下のような特徴的な咳を伴います。
- 犬が吠えるような乾いた咳
- オットセイの鳴き声のような咳
このような独特な音を伴い、他の風邪や感染症による咳とは異なります。
特に夜間に症状が急に始まることが多く、お子さんが咳き込んで呼吸が苦しそうになったら、すぐに対応が必要です。
顔色が悪くなったり、肩で息をしたりする場合は、迷わず救急受診してください。
吸気性喘鳴
クループ症候群にかかると、息を吸う際に「ゼーゼー」という音が聞こえることがあります。
これを吸気性喘鳴(こきせいぜんめい)と呼びます。
気道が腫れて狭くなっているため空気の通りが悪くなり、息を吸う際に音が発生する状態です。
この喘鳴が聞こえる場合、気道の炎症が進行している可能性があります。
呼吸音が大きくなったり、苦しそうであればすぐに病院を受診してください。
陥没呼吸
息を吸うときに、胸や鎖骨の下がへこんでしまう状態を「陥没呼吸」と呼びます。
これは体が必死に空気を取り込もうとしているサインで、気道が狭くなって肺に十分な空気が入らない状態を表しています。
特に子どもは大人に比べて急激に症状が悪化するため、注意が必要です。
陥没呼吸に加えて、以下のような呼吸の異常が見られることもあります。
- 鼻の穴が大きく開く(鼻翼呼吸)
- 胸やお腹が激しく動く
- 息を吸うたびに頭が上下に動く(ヘッドボビング)
このような症状を見つけたら、様子見はせず、すぐに病院を受診してください。
関連記事:喉のかゆみはなぜ起こる?併発しやすい症状や対処法を紹介
クループ症候群の受診目安と診療科目
受診目安
クループ症候群は、多くの場合自宅での対処が可能な病気です。
ただし、以下の症状が出たときは要注意です。
特に上3つの症状は危険信号なので、すぐに救急車を呼んでください。
- 息を吸うときに「ゼーゼー」という音が聞こえる(喘鳴)
- 唇や皮膚が青白くなる(チアノーゼ)
- 胸やあばらの下がへこむような呼吸をする(陥没呼吸)
- 子どもの様子がいつもと違う(ぐったりしている、反応が遅い)
- 38度以上の熱が続く
- 薬を使っても症状が良くならない
これらの症状は時間とともに急激に悪化することがあります。
特に夜間は症状が強くなりやすいので、悪化する前の昼間のうちに病院を受診しておくことをおすすめします。
診療科目
クループ症候群の診察にはまず、小児科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。
クループ症候群は夜間に症状が悪化しやすい病気です。
夜中や休日に具合が悪くなった場合は、迷わず救急外来を受診してください。
特に「ゼーゼー」という呼吸音が強い場合や、子どもがぐったりしている場合は、夜中でもすぐに救急車を呼んでください。
クループ症候群の治療方法
重症度評価
クループ症候群の治療は、症状の重症度に応じて異なります。
軽症の場合は自宅での対処が可能ですが、重症の場合は入院が必要になることもあります。
呼吸の状態や咳の様子、酸素レベルなどを見て、以下のように重症度を評価します。
軽症
普段通りの生活ができている状態で、自宅での様子見が可能です。
- 時々、犬の遠吠えのような咳が出る
- 遊んだり食事したりは普通にできる
- 呼吸は落ち着いている
中等症
症状が進んできた状態で、病院で治療(ステロイド薬など)が必要です。
- 息を吸うときに「ゼーゼー」という音がする
- 咳が目立って増える
- 夜になると症状が悪化する
重症
危険な状態のサインが出ており、すぐに病院を受診し、入院が必要な場合があります。
- 呼吸が明らかに苦しそう
- 胸やあばらの下がへこむように呼吸する(陥没呼吸)
- 元気がなくぐったりしている
最重症
緊急性の高い危険な状態で、救急車を呼び、すぐに集中治療が必要です。
- 呼吸が極端に苦しい
- 顔色が悪く、ぐったりしている
- 呼びかけても反応が弱い
クループ症候群は夜間に急激に症状が悪化することがあるため、特に注意が必要です。
お子さんの様子がいつもと違うと感じたら、自己判断せず、すぐに病院を受診してください。
ステロイド薬
クループ症候群の治療には、ステロイド薬がよく使用されます。
ステロイド薬は、喉の炎症を抑えることで呼吸を楽にし、つらい咳も落ち着かせてくれる心強い味方です。
内服薬や点滴での投与が一般的で、ほとんどの場合1回の投与で大きな改善が見られます。
主に使われるステロイド薬は2種類あり、それぞれに特徴があります。
デキサメタゾン
- 効果が1~2日間と長く続く
- 夜間の症状悪化を防ぐのに最適
- 寝る前に飲むことで、夜も安心して眠れる
プレドニゾロン
- 効果がすぐに現れる
- 数時間で呼吸が楽になる
- 子どもでも飲みやすい形
これらのお薬は、短期間の使用であれば副作用の心配はほとんどありません。
まれに、一時的な機嫌の変化や食欲増加がみられることがありますが、すぐに元に戻ります。
アドレナリン吸入
アドレナリン吸入は、重症以上のクループ症候群における緊急時の治療として使用されます。
アドレナリン吸入はすぐに効果が現れ、短時間で症状を改善します。
ですが、効果は1~2時間程度と短いため、再び症状が悪化する可能性があるので注意が必要です。
再発した場合は、追加の吸入やステロイドの投与が必要になることもあります。
アドレナリン吸入と他の治療を組み合わせることで、症状の安定が期待できます。
その他の治療法
場合によっては、以下のような治療が補助的に行われます。
- 酸素投与
呼吸困難が進み、体内の酸素レベルが低下している場合に実施されます。 - 鎮静薬
呼吸苦による興奮や過度な呼吸努力を緩和し、子どもの状態を安定させます。 - 加湿療法
気道の乾燥を防ぎ、炎症を抑える効果があります。
温かい蒸気や加湿器の利用で症状の軽減が期待できます。 - 抗生物質の使用
細菌感染が疑われる場合に限り使用されます。
特に持続する発熱や膿性の痰がある場合に検討されます。
これらの治療法は、症状の進行状況や子どもの体力に応じて柔軟に組み合わせて行われます。
関連記事:気管支炎におすすめの市販薬9選!ランキング形式で紹介
クループ症候群の療養中に自宅でできること
部屋の加湿
気道の炎症を軽減し、子どもの呼吸を楽にするためには、適切な湿度コントロールが欠かせません。
部屋の湿度管理には、以下のようなポイントがあります。
- 理想的な湿度は50~60%
- 加湿器の使用が最も効果的
- 湿ったタオルを部屋に干すことでも加湿が可能
特に冬季は室内の空気が乾燥しやすいため、湿度管理にはより注意が必要です。
水分補給
喉の乾燥を防ぎ、気道の湿度を保つためには、慎重な水分摂取が必要です。
水分補給における主なポイントは、以下の通りです。
- 水や温かいお茶、薄めたジュースを適量与える
- 脱水を予防することが目的
- 冷たい飲み物は喉を刺激するため避ける
温かい飲み物は喉の粘膜を潤し、症状の緩和に役立ちます。
少量でも定期的に水分を与えることを心がけましょう。
背中をさする
背中を優しくさすってあげることで呼吸が楽になることがあります。
特に咳が続いて苦しそうな場合、呼吸のリズムを整える効果が期待できます。
さする際は、膝の上に抱いたりして呼吸が楽になる姿勢にしましょう。
親や保護者の温かい手の感触は、子どもに安心感を与え、不安を和らげる効果もあります。
上半身を高くする
上半身を少し高くすることで、気道への負担を軽減し、症状を和らげることができます。
上半身を高くする際の主なポイントは、以下の通りです。
- 枕やクッションを利用して上半身を高く保つ
- 気道への圧迫を減らし、呼吸を楽にする
- 特に夜間の症状悪化に効果的
- 子どもが快適に眠れる姿勢を工夫する
ただし、症状が改善しない場合や、呼吸が苦しそうな際は、すぐに医師に相談することが大切です。
クループ症候群はうつる?登園・登校の目安は?
クループ症候群自体が感染することはありませんが、原因となるウイルスが感染する可能性があります。
したがって、登園・登校の判断は慎重に行う必要があります。
登園・登校の目安としては、以下のポイントが重要です。
- 解熱後24〜48時間が経過していること
- 呼吸器症状が大幅に改善していること
- 全身状態が安定していること
- 医師から登園・登校の許可を得ていること
特に幼児や持病のある子どもは、症状が軽減していても体力が十分に回復していない場合があります。
安全のため、必ず病院で全身の状態を確認し、感染のリスクがないことを確認してから登園・登校を再開しましょう。
自己判断は避け、医師の指示に従うことが最も重要です。
西春内科・在宅クリニックでできること
当クリニックではクループ症候群に対する診察、処方を行っています。
重症度に応じて、検査や大きい病院への紹介も可能です。
また、当クリニックではオンライン診療も対応しています。
自宅で診察を行い、緊急性の判断や、紹介状の作成を行います。
受診方法などがわからない場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
クループ症候群は、幼児に多く見られる呼吸器の病気で、犬が吠えるような咳や呼吸困難が特徴です。
主にウイルス感染が原因で、飛沫や接触で他の子どもにうつることがあります。
感染拡大を防ぐためにも早期の受診と適切なケアをしましょう。
家庭での加湿や水分補給などのケアも有効ですが、症状が悪化したり呼吸が苦しそうな場合は、早めに病院を受診し適切な治療を受けましょう。
医師の指示に従い、安心して療養を続けることが大切です。
参考文献
クループ症候群について | キャップスクリニック(医療法人社団ナイズ)
【チェックリスト掲載】インフルエンザを疑うべき初期症状とは?
肌寒い季節がやってきてこれから冬にかけてインフルエンザが流行する季節がやってきましたね。
体調の変化を感じた時、ただの風邪なのかインフルエンザなのかを見極めることはとても重要です。
特に、家族や周囲の方への感染を広げないためにも、早期の対策が求められるでしょう。
そこで、今回はインフルエンザの初期症状や見分け方、対応策について詳しく解説します。
インフルエンザを疑う初期症状のチェックリスト
流行期に体調の変化を感じたら、インフルエンザの可能性を考えてみましょう。
以下の症状を確認することで、早期発見につながります。
チェックリストに当てはまる症状が多いほど、インフルエンザの可能性が高くなるので、病院への受診を検討しましょう。
- 38℃以上の高熱
- 強い頭痛
- 全身の筋肉痛・関節痛
- 激しい倦怠感や疲労感
- 喉の強い痛み
- 鼻水・鼻づまり
- 悪寒・寒気
- 吐き気や下痢
ただし、このチェックリストはあくまでも目安となります。
発熱しなくても倦怠感がある場合や、少し体調が悪いかも?といったいつもと様子が違うと感じた場合は、チェックリストに当てはまらなくても、無理せず病院に相談しましょう。
早期発見・早期治療が、重症化を防ぎ、周囲への感染拡大を防ぐ方法と言えます。
関連記事:インフルエンザのA型とB型の違いとは?知っておきたい基本情報
インフルエンザの初期症状が現れる順番は?
インフルエンザの症状は、通常の風邪とは違い、急激に現れます。
朝は元気でも、午後には体調が一変することも珍しくありません。
一般的な症状の進行は、まず体が震えるような悪寒が始まり、その直後に38℃以上の高熱が出ます。
続いて、強い倦怠感や関節痛、頭痛などが現れます。
ただし、これは典型的な例であり、年齢や体調によって症状の現れ方は異なるので注意が必要です。
発熱が最初に来たり、喉の痛みから始まったりすることケースもあるため、先述した通りいつもと違う体調の変化を感じたら医療機関を受診しましょう。
「インフルエンザかも?」と思った時の対応
インフルエンザの疑いがある場合は、早急な対策が重要です。
以下の対応方法を取ることで早期治療や感染拡大防止につながります。
- 自宅での安静と休養
- 水分補給
- 他人への感染を防ぐ
- 適切な室内環境を保つ
これらの対応について詳しく解説しましょう。
自宅での安静と休養
インフルエンザから回復するために最も大切なのは「休むこと」といえます。
十分な睡眠を取って安静にすることで、体の自然治癒力を高め、早く回復することが可能です。
もし市販の薬を服用する場合は、医師に相談してからにしましょう。
また、無理に体を動かすと肺炎などの深刻な病気を引き起こすリスクが高まるため無理をせずしっかりと休養しましょう。
水分補給
発熱しているときは水分をこまめに摂取することが非常に大切です。
発熱時の発汗は通常の2倍以上の水分が失われることもあり、脱水症状の恐れがあります。
そのため、喉が渇いていなくても、定期的に少しずつ水分を摂るよう心がけましょう。
また、電解質を含むスポーツドリンクやOS-1、体にやさしい温かいスープなどもおすすめです。
体温が上昇しているときは冷たい水よりも、常温か少し温かい飲み物の方が、身体に負担をかけません。
他人への感染を防ぐ
インフルエンザウイルスは主に咳やくしゃみの飛沫を通じて広がる「飛沫感染」と、ウイルスの付着した物を触ることで感染する「接触感染」の2つの経路で広がります。
周囲感染を防ぐためにも、以下の対策を必ず実行しましょう。
- 人混みでのマスク着用
- 食前や外出後の手洗いの徹底
- 咳やくしゃみの際は、ティッシュや腕の内側で口と鼻を覆う
- 使用したティッシュはすぐにフタ付きゴミ箱に捨てる
- 共有物(ドアノブ、リモコンなど)を触った後は必ず手を消毒
- タオルや食器の共用は避ける
- 1時間に1回、5分程度の換気を行う
これらの対策を確実に実施することで、家族や周囲の人々への感染リスクを大きく減らすことができます。
そして、感染拡大を防ぐためにも、職場や学校には熱が下がってから少なくとも、2日間経ってから戻りましょう。
見た目の症状が改善しても、体の中にウイルスが残っており、感染する力があるためです。
適切な室内環境を保つ
インフルエンザウイルスは乾燥した環境で長く生存するため、部屋の湿度を適切に保つことが重要です。
また、適度な室温を保つことで喉や鼻の粘膜が潤い、ウイルスの侵入を防ぐことが可能です。
以下のポイントを意識して室内の環境を適切に保ちましょう。
- 湿度は50~60%、室温は20~23℃が理想的
- 加湿器を利用したり、濡れタオルを部屋に干すことで湿度を上げる
- 換気を定期的に行う
関連記事:インフルエンザの予防は必要?日常でできる予防方法とおすすめの食品を解説
インフルエンザ・風邪・コロナを初期症状で見分けるには?
インフルエンザ、風邪、そして新型コロナウイルス(COVID-19)は初期症状が非常に似ており、医師でも症状だけでは診断が難しいことが多いです。
確定診断をするためにもインフルエンザ、新型コロナウイルスの検査が必要となります。
以下の表に、それぞれの初期症状を比較して示します。
症状 | インフルエンザ | 風邪 | 新型コロナウイルス |
発熱 | 突然の38℃以上の発熱 | 軽度の発熱 | 高熱が出ることも |
頭痛 | 強い | 軽度 | あり |
筋肉痛・関節痛 | 強い | なし~軽度 | あり |
倦怠感 | 強い | 軽度 | 強い |
喉の痛み | あり | あり | あり |
鼻水・鼻づまり | あり | あり | あり |
悪寒 | あり | なし~軽度 | あり |
胃腸症状 | あり | なし~軽度 | あり |
もしインフルエンザ、新型コロナウイルスが疑わしい症状が現れた場合、自己診断は避けて病院での診断を受けましょう。
また、医療機関への受診が難しい場合はオンライン診療の利用を検討してください。
医師の見解
インフルエンザ、風邪、そして新型コロナウイルス(COVID-19)に関しては、症状だけで判別することは医師であっても困難です。
私の経験では、インフルエンザは突然の高熱(39~40℃)で始まることが多いのに対し、風邪やコロナは喉の痛みや鼻水から始まり、徐々に熱が出てくる傾向があります。
ただ例外も多く、基本的には全国的な流行状況、および患者さん周囲の感染状況を参考にしつつ、必要に応じてインフルエンザや新型コロナウイルスの抗原検査を行います。
インフルエンザの検査は発熱から12時間以降48時間以内が最適です。
発症12時間以内は検査の精度が低く(インフルエンザ検査の正確性は5~7割程度)、かつインフルエンザ治療薬は発症から48時間以内の服用が効果的だからです。
治療については、健康な成人の多くは、自然に回復します。
インフルエンザ治療薬のタミフルは、解熱時間を約18時間短縮する効果がありますが、副作用の可能性もあります。
そのため、メリットやデメリットを踏まえ、患者さんの状態や希望を考慮して処方を判断しています。
関連記事:インフルエンザワクチンにかかる費用や値段はどれくらい?メーカーの種類によって効果は変わる?
西春内科・在宅クリニックでのインフルエンザの初期症状への対応
当院ではインフルエンザのワクチン接種や抗原検査、処方まで行っています。
重症の可能性がある場合は、大きい病院へ紹介することもできます。
さらに、外出が難しい方や遠方の方にも対応できるよう、全国どこからでも利用できるオンライン診療を提供しています。
ご自宅で診察を受けられるので、移動の負担なく診察が可能です。
インフルエンザに関してお困りの際や、ご不明な点がある場合は、お気軽にご連絡ください。
まとめ
インフルエンザは、風邪や新型コロナウイルスと初期症状が似ているため、早期の見極めが難しいです。
突然38℃の高熱が出たり、関節痛や筋肉痛などの症状が現れた場合は、インフルエンザの可能性があります。
早めに対策を取ることで、症状の悪化や感染拡大を防ぐことが出来ます。
症状が疑わしい場合は自己診断せず、必ず医師の診察を受けて適切な対応を行ってください。
参考文献
ロコモティブシンドロームとは?|予防や症状、原因について解説
ロコモティブシンドロームという言葉をご存知でしょうか。
ロコモティブシンドロームとは「骨や筋肉・神経が障害され、動けなくなった(身体機能が低下した)状態」をいいます。
ロコモティブシンドロームが長期間続くと、将来的に動けなくなり介護が必要になる可能性が上昇するとされています。
今回は、ロコモティブシンドロームのリスクや症状、治療法などについて詳しく解説していきます。
ロコモティブシンドロームとはどんな状態?
ロコモティブシンドロームは「骨や筋肉・神経(運動器)の障害によって日常生活制限をきたし、介護・介助が必要な状態になっていたり、そうなるリスクが高くなっていたりする状態」と2007年に日本整形外科学会が提唱した概念になります。
定義だけではわかりにくいので具体例を挙げると、「骨折や骨粗鬆症、筋力低下などで十分に動けなくなり介助を必要とする状況」です。
2012年の報告では、ロコモティブシンドロームに当てはまる人が予備軍を含め4700万人を超えると言われています。
昨今の高齢社会ではさらにこの人数は増えると予想されます。
ロコモティブシンドロームになる原因
主に下記が原因となって、ロコモティブシンドロームが引き起こされます。
- 加齢による筋力低下
- 運動不足による筋力低下
- 骨粗鬆症や骨折、変形性関節症などの整形外科的な疾患
◆高齢者の介護保険が適用になる特定疾病16種類とは?|申請方法やサービスについて
サルコペニア・フレイルとの違いは?
ロコモティブシンドロームと似た概念に「サルコペニア」と「フレイル」があります。
「サルコペニア」は、加齢によって筋肉量が減少し筋力が低下した状態を指します。
「ロコモティブシンドローム」が筋肉だけでなく骨・神経の障害を含むのに対し、「サルコペニア」は筋力低下のみに焦点を絞っています。
次に、「フレイル」は加齢によって心身ともに衰えた状態を指し、以下の3つの側面で成り立つものとされています。
- 身体的側面
- 心理的側面
- 社会的側面
「ロコモティブシンドローム」は身体的側面のみ注目しています。
そのため、心理的・社会的側面を含んでいる「フレイル」の方がより幅広い概念となります。
少々ややこしいですが、まとめると下の図のようになります。
「サルコペニア」→「ロコモティブシンドローム」→「フレイル」と意味の幅が広がっていくようなイメージです。
◆【加齢による筋肉量の低下】サルコペニアとは?症状やフレイルとの違い、診断基準について
◆介護が必要になる原因で多いフレイル(高齢による衰弱)とはどんな状態なのか?
認知症や骨粗鬆症を引き起こすリスク
ロコモティブシンドロームになると、運動量が低下して寝たきりの状態が続くようになります。
寝たきりの状態になると、認知症および骨粗鬆症は悪化します。
認知症や骨粗鬆症が悪化するとさらに身体機能が低下し、より重篤なフレイルの状態へと進行していきます。
フレイルへと至る負のスパイラルになる前に、ロコモティブシンドロームを予防することが重要です。
◆【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
ロコモティブシンドロームの症状
ロコモティブシンドロームの症状としては、四肢の関節や背部の疼痛、機能低下(可動域制限・変形・筋力低下・バランス力の低下)があります。
具体的には、「膝や腰が痛い」「姿勢が悪くなった」「膝の変形がある」「歩きが遅くなった」「つまづきやすい」などです。
ここでは自宅でできる7つのチェック項目をご紹介します。
①片足立ちで靴下が履けない ②家の中で滑ったりつまづいたりする ③階段を登るのに手すりが必要 ④家のやや重い仕事が困難 ⑤2kgの荷物の買い物をして持ち帰るのが困難 ⑥15分以上続けて歩くことができない ⑦横断歩道を青信号で渡りきれない |
以上の7項目のうち1項目でも当てはまればロコモティブシンドロームの可能性があります。
参考記事:ロコモティブシンドロームについて|イノルト整形外科
ロコモティブシンドロームになりやすい人の特徴
ロコモティブシンドロームになりやすい人の特徴として、以下の2点が挙げられます。
- 女性
- 肥満もしくは痩せ過ぎ
①に関しては、女性は閉経前後で骨密度が低下しやすくなっています。
そのため、ロコモティブシンドロームになるリスクが男性より高いとされています。
②に関しては、肥満による関節への負担の増大はロコモティブシンドロームの原因になります。
また、逆に痩せ過ぎも骨粗鬆症やサルコペニアの原因になり最終的にロコモティブシンドロームへと繋がります。
◆パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説
ロコモティブシンドロームの予防法・治療
まず予防ですが、以下の3点が重要になります。
- 毎日無理のない範囲内で運動を行う
- 生活習慣病を予防し適切な体重を維持する
- バランスの良い食事を心がける
①は特に「ロコトレ」と言われ、「片足立ち」や「スクワット」が推奨されています。
無理のない範囲内で毎日継続して行うことが大切です。
次にロコモティブシンドロームの治療です。
※予防と重複している部分があります。
- 毎日無理のない範囲で運動を行う
- 生活習慣病を予防し適切な体重を維持する
- バランスの良い食事を心がける
- 骨粗鬆症や変形性関節症などの整形外科疾患の治療を行う
予防と異なるのは④の「骨粗鬆症や変形性関節症などの整形外科疾患の治療を行う」です。
関節痛や腰痛に対しては鎮痛薬の内服や外用を行い、時には装具を使用します。
骨粗鬆症に対しては、ビタミンD、ビタミンKやカルシウムをしっかりと摂取し、適度な日光浴と運動が有効です。
また、骨の形成を促進するような薬の内服も行います。
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科・在宅クリニックでは、主に腰痛や痺れに対して薬を使った治療を行うことができます。
また、ロコモティブシンドロームに間接的に影響のある生活習慣病に対して、健康診断による予防や早期治療も行っています。
まとめ
今回はロコモティブシンドロームについて解説しました。
筋力低下や骨折などは脳卒中・認知症に次ぐ介護原因第3位であり、事前に防ぐことが重要です。
ストレッチや筋トレなどの運動を行い、痛みに対しては治療を行うことが大切です。
ぜひ、積極的にロコモティブシンドローム予防をしていきましょう。
参考文献
・Nakamura K. A “super-aged” society and the “locomotive syndrome”. J Orthop Sci. 2008 Jan;13(1):1-2. doi: 10.1007/s00776-007-1202-6. ・Epub 2008 Feb 16. PMID: 18274847; PMCID: PMC2779431.
・中村耕三:超高齢社会とロコモティブシンドローム。日本整形外科学会誌(J. Jpn. Orthop. Assoc.) (2009) 82:1-2
・内閣府平成30年版高齢社会白書(全体版)
・ロコモonline
・健康長寿ネット
【高齢者の筋力低下】サルコペニアとは?症状やフレイルとの違い、診断基準について
現代では、超高齢化社会に突入している日本において、加齢による筋力の低下状態を指す「サルコペニア」は特に問題となっています。
65歳以上の高齢者のなかでも約20%程度の方々がサルコペニアに該当していると言われています。
サルコペニアになると、ふとした拍子に転倒して骨折することにより寝たきり状態に陥ってしまうリスクが伴い、日常生活の質を著しく低下させる危険性があります。
今回は、サルコペニアとはどのような状態なのか、症状やフレイルとの違い、診断基準などについて解説していきます。
サルコペニアとはなにか
サルコペニアとは、高齢に伴って筋肉量が減少していく現象を指しています。
一般的に、加齢にしたがって筋肉量は低下しますが、サルコペニアは筋肉量が減少して筋力が低下、あるいは身体機能の低下を表しています。
そして、その低下のレベルが日常生活に多大な支障が生じるほどに影響を受けている状態です。
サルコペニアは、筋肉量が減少していく老化現象と捉えられています。
大体、25~30歳頃ぐらいから病状の進行が始まって生涯を通じて「筋線維(*1))」と「筋肉の横断面積(*2)」の減少が進んでいくものと考えられています。
サルコペニアは、筋肉量や握力が低下することで身体の様々な機能が障害されて転倒などのリスクが上昇する要因になります。
一方で、フレイルとは加齢に伴って身体の予備能力が減少し、精神機能や社会性の低下なども含めて健康に影響を及ぼしやすくなった虚弱状態のことです。
また、介護が必要になる前段階の概念であると考えられています。
筋線維(*1)=筋肉を構成する線維状の細胞の数 筋肉の横断面積(*2)=筋肉を輪切り にした際の面積 |
関連記事:【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
参考記事:サルコペニア(筋肉減少症)について|イノルト整形外科
サルコペニアになる原因
サルコペニアになる原因としては、主に日々の不活動習慣や加齢に伴う様々な変化が直接的な原因と考えられています。
しかし、そのメカニズムはいまだ明確にはわかっていません。
サルコペニアは、入院生活など環境的な外的変化が発症契機になることがあり、数日から1週間といった単位で急激にサルコペニアを発症することがあります。
主に加齢が原因で起こる一次性サルコペニア、加齢以外にも原因がある二次性サルコペニアに分かれます。
二次性サルコペニアとは、生活スタイルに関連する栄養不足の原因や、悪性腫瘍などを始めとする身体的疾患がきっかけなどの場合で起こることです。
サルコペニアは、慢性的な炎症状態、酸化ストレスに関連して筋肉の代謝に関わる
- ステロイドホルモン
- 成長ホルモン
- 炎症性サイトカイン
上記などが健康時から変化し、筋肉の分解量が生成量を上回ることから発症すると考えられています。
肥満や若年層にも注意が必要
近年ではサルコペニアと肥満が重なった状態が心配されています。
サルコペニアであり肥満が重なると、通常の肥満状態よりも生活習慣病などになりやすくなります。
併発すると、身体能力の中でも特に歩行能力を低下させて寝たきりや廃用症候群(*)になる危険性を上昇させると伝えられています。
サルコペニアは筋肉量の減少している状態を意味していると考えられていました。
そのため、これまで糖尿病や高血圧、脂質異常症などを含めた生活習慣病と強く関連している肥満とは直接的に結び付けられていませんでした。
若年層と体重があまり変わらずに体格指数が標準的であっても、筋肉部分が脂肪に置き換わって知らぬ間に生活習慣病などに進展しやすくなるとも指摘されています。
また、ダイエットや運動不足によって筋肉が減少しても、脂肪は燃焼されずに体内に残っていることがあります。
その場合、高齢者のみならず若年層の方たちにもサルコペニアの予備軍が認められます。
年齢に関係なく、日々の食事で必要な栄養素を摂取して運動することが重要です。
廃用症候群(*)=寝たきり状態が長期間継続することで活動性が低下して生じる身体の変化 |
サルコペニアに多い症状
サルコペニアになると以下などの症状が現れます。
- 歩くのが遅くなり信号機が青から赤に変わる間に交差点を渡りきることができない
- 手の握力が弱くなってドアノブやペットボトルのふたを回せない
- 階段の昇降時に支障が生じて手すりが不可欠となる
サルコペニアは、広背筋、腹筋、下肢筋群、臀部の大殿筋や小殿筋など抗重力筋において筋肉量の減少が顕著に認められます。
日常生活において立ち上がる動作や歩行運動が徐々に出来なくなっていくのです。
そこから、放置してしまうと歩行困難に陥って寝たきりの状態になることがあります。
ふくらはぎを測ってサルコペニアかどうかわかる?
サルコペニアは、両手の親指と人差し指を結び、ふくらはぎの周囲の長さを測定する「指輪っかテスト」という検査法によって簡単にセルフチェックを行うことが可能です。
指輪っかテストでは、体格にある程度比例する手の大きさを活用することで、ふくらはぎの筋肉量が体格に比べてどの程度維持されているかを自己判断できます。
ふくらはぎの一番太い部分が両手の親指と人差し指で囲まれる輪よりも小さければ、サルコペニアである疑いがあります。
また、サルコペニアは以下の3つを、問診や身体診察によって判断していきます。
- 筋肉量の減少
- 筋力の低下
- 歩行速度の低下
1と2もしくは、3のどちらかに該当する際に、サルコペニアの可能性が非常に高いと考えられています。
具体的には、筋肉量に以下の低下が認められる際にサルコペニアと判断されます。
- BMI値が18.5未満
- 下腿範囲が男性34cm未満、女性33cm未満
- 握力が男性28kg未満、女性18kg未満
- 歩行速度が1.0m/秒以下
また、問診以外に行われる検査としては、筋肉量を測定するためのDXA法(*1)やBIA法(*2)と呼ばれる方法があります。
DXA法(*1)=微量なX線をあてて正確な骨密度を測定する *2BIA法(*2)=微弱な電流を流し、その際の電気の流れやすさ(電気抵抗値)を計測することで体組成を推定する方法 |
関連記事:パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説
サルコペニアが引き起こすかもしれない危険な病気
サルコペニアは、認知症やフレイルを引き起こす原因としても注目され始めています。
フレイルとは、年齢を重ねて身体の様々な役割が衰えて日常における生活能力が低下して介護が必要になる状態です。
栄養状態の不良が原因で起こるサルコペニアが、フレイルを発症させる原因となる可能性があります。
また、サルコペニアに伴って身体機能が低下すると、認知機能が低下して認知症を発症するリスクが上昇します。
その逆に認知機能が低下すれば身体機能が衰えてフレイルの状態が進行する危険性も考えられています。
筋力が下がるサルコペニアになれば、高齢者において転倒して骨折を起こすことによって寝たきりの状態になる恐れがあります。
筋肉の組織は「作る」と「壊される」という変化を繰り返しています。
主に若い人ではこれらの筋肉のバランスがほぼ一定に保たれています。
若い頃には特に運動をしていなくても、食事内容に気を使っていなくても、筋肉量が目立って減ってしまうことはほぼありません。
しかし、高齢になって同じような生活をすれば筋肉が減少してしまうことにつながります。
普通の生活を送っているだけでは年齢を重ねるごとに筋肉の量が自然と落ちてきてしまうのです。
そのため、身体機能が低下する「サルコペニア」になりやすくなります。
関連記事:介護が必要になる原因で多いフレイル(高齢による衰弱)とはどんな状態なのか?
サルコペニアを改善する治療と予防法は?
サルコペニアを改善するために、食事や運動による治療介入が有効であることが判明してきました。
なるべく前向きに運動を実践し、普段の生活のなかでたんぱく質の摂取を積極的に心掛けることが重要です。
以下のことを前向きに行うことでサルコペニアを改善していきましょう。
- 筋肉組織は良質なたんぱく質を確実に摂取することで産生されるので、動物性たんぱく質である赤身の肉や魚類などのたんぱく質を多く含有する食事メニューを心がけること
- 分岐鎖アミノ酸と呼ばれるタンパク成分は身体の内部で産生することができず、鶏肉やマグロ、牛乳など食事として摂取する
- 骨粗鬆症を予防するためにもカルシウムやビタミンDの摂取
また、サルコペニアでは、筋肉に負荷をかけて筋肉量や機能を改善する効果に優れている以下の運動を日々の生活に無理なく取り入れることも大切な要素となります。
- レジスタンス運動(筋肉に負荷をかける運動を繰り返し行うこと)
- ウォ―キング
- ラジオ体操
- テレビを見ながら椅子から立ち上がる運動
前述のとおり、サルコペニアを事前に予防するためには、栄養バランスの優れた食事と適度な運動を意識的に心がけて日常生活を送ることが重要です。
関連記事:骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由|副作用や注射治療について解説 | 横浜内科・在宅クリニック
もし家族がサルコペニアかもしれないと思ったときは
もし家族のなかで、以下の症状を認める方がいる場合は、かかりつけの医師や最寄りの内科医に相談して下さい。
- 最近になって特に手足が細くなり重い荷物が持てなくなった
- 身体機能が低下して下半身に力が入りにくく、椅子からスムーズに立ち上がれない
骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由|副作用や注射治療について解説 | 横浜内科・在宅クリニック
西春内科在宅クリニックができる対応
西春内科在宅クリニックなどの診療所では、筋肉量が減少するサルコペニアに対して、薬物療法、食事療法、運動療法、心理療法を包括した専門的な治療を実践することができます。
医師が患者さんの診察や握力・歩行速度の測定、あるいは認知機能検査を実施するとともに管理栄養士などを中心に普段の栄養摂取状況などを調査していきます。
そして、その結果からサルコペニアに至った原因を診断し、治療計画を立てます。
定期的に検査を繰り返して行って治療効果を判定するだけでなく、各種検査結果に基づいて、望ましい生活状況や服用薬などに関して保健指導を行います。
必要に応じて、理学療法士による運動指導や臨床心理士・公認心理師による心理的カウンセリングを実践することができます。
まとめ
サルコペニアは、高齢に伴って筋肉量が減少して筋力が低下していきます。
そして、立ち上がる、歩くなど日常生活における基本的動作のなかでも特に移動に関連する動作が困難に陥る状態を指しています。
サルコペニアは、認知症、骨粗鬆症、糖尿病など、高齢者の健康を左右する病気と密接な関連があることが知られています。
日常的に必要な動作に悪影響が生じて介護が必要になる、あるいは転倒して骨折しやすくなったりする可能性が増加します。
サルコペニアの予防や治療には、継続的に適度な運動を行って、優れた栄養成分を取り入れることが重要なポイントです。
人生100年時代の近年において、要介護状態にならずに健康長寿を楽しむために、サルコペニアを常日頃から予防するように努めて、不安や疑問を感じたら最寄りの内科クリニックなどで相談することが大切になります。
今回の記事の情報が少しでも参考になれば幸いです。
参考文献
・厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトHP|サルコペニア
・エーザイの肝疾患サポートサイトHP|サルコペニアは自分でチェックできる?
【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
骨粗鬆症(骨粗しょう症)とは、骨の強度が低下して弱くなり、骨折しやすくなる病気です。
主に女性ホルモンが不足する、あるいは運動不足などに関連する生活習慣が原因として考えられています。
一般的に認識されている骨粗鬆症では、加齢や女性ホルモンのエストロゲンが不足するため、特に閉経後の高齢女性が発症しやすくなっています。
骨粗鬆症になってしまうと些細なことで骨折しやすくなるだけでなく、身体全体の不調を招きかねない病気ですので十分に注意することが必要です。
今回は、高齢者の骨折原因となる、骨粗鬆症とはどのような病気なのか、薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はあるかなどを詳しく解説していきます。
骨粗鬆症の原因
世界保健機関によると「骨粗鬆症は低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴としており、骨の脆弱性が増大して骨折の危険性が増大する疾患である」と定義しています。
一般的に骨粗鬆症とは、骨の強度が低下することで引き起こされると考えられています。
骨の強度を規定する要因としては、骨密度と骨質が挙げられ、約70%が骨密度、残りの30%前後は骨質に影響されると言われています。
通常、骨粗鬆症の原因には、原発性と続発性の2種類があります。
原発性の骨粗鬆症では、その原因となる明らかな疾患などはありません。
主に女性ホルモンの低下や加齢によって引き起こされるものであり、全体の約9割を占めます。
健康的な骨の維持には骨の形成や吸収といった代謝のバランスが鍵となります。
しかし、加齢に伴うビタミンDや副甲状腺ホルモンの働きの異常性変化によって骨の代謝のバランスが崩れていきます。
女性の場合は、閉経や加齢によって骨の分解を抑制するエストロゲンというホルモンの分泌が急速に低下していきます。
その結果、骨の形成が吸収に追いつかなくなり、より骨が脆弱になる方向性へと傾くということです。
これら以外にも、無理なダイエットや偏食により栄養バランスが崩れてしまうと、カルシウムやタンパク質、ビタミン群などが不足して骨量が減りやすくなってしまうので注意が必要です。
その一方で、続発性の骨粗鬆症とは特定の病気や薬の影響によって起こるとされています。
具体例には、甲状腺機能亢進症(*1)やクッシング症候群(*2)などの内分泌疾患、あるいは胃切除や吸収不良症候群(*3)など栄養に関連した疾患が影響している場合です。
それ以外にも、ステロイドなどの薬剤、先天性疾患など多種多様な原因によって続発的に骨粗鬆症が引き起こされます。
また、糖尿病を抱えている方では、同じ骨密度であっても骨折のリスクが高くなることが知られており、骨質の変化が発症に関わることが判明しています。
骨粗鬆症は女性に多い病気ですが、男性が発症した場合には生活習慣病が原因となっている場合が多く、症状が重くなりやすいとされています。
甲状腺機能亢進症(*1)=甲状腺が活発に活動し、血中に甲状腺ホルモンが多く分泌される病気 クッシング症候群(*2)=副腎で合成・分泌されるコルチゾール(副腎皮質から分泌されるホルモンの一種)の作用が過剰になることで、体重増加や、顔が丸くなったり、血糖値や血圧が高くなったりという症状を引き起こす病気 吸収不良症候群(*3)=食べたものに含まれる栄養素が様々な理由により小腸で適切に吸収されない状態 |
◆パーキンソン病になりやすい人の特徴や症状とは?|原因から治療、社会サービスの解説
骨粗鬆症の症状
骨粗鬆症とは、骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。
一度背骨に骨折が生じると、再び骨折する危険性も上昇します。
気になる症状があれば、放置せずに速やかに医療機関を受診しましょう。
特に、直近で4cm以上身長が縮んだ場合には、前向きに専門医療機関で骨密度検査やレントゲン検査を受けることがお勧めです。
骨粗鬆症は基本的に自覚症状が乏しく、背中が丸くなる、身長が縮むなどの症状が少しずつ認められていきます。
そのため、「病気」と気付かずに放置する。
あるいは気付いた時には病状がかなり進行していたということも多い疾患です。
年齢を重ねるごとに身長が縮むことはよくありますが、加齢の影響だけではなく、身長低下の主な原因は骨粗鬆症であると指摘されています。
骨粗鬆症では骨が弱くなり、背骨がつぶれてしまい身長が縮むことがあります。
骨粗鬆症における初期段階では、特に痛み症状も強くなく、外観などにも明らかな変化は見られません。
ですが、背中から腰部にかけて重苦しく疲れやすいという症状を自覚する場合があります。
これらの症状は、骨が減少するところを見ると、特に背骨に引き起こされやすくなっています。
弱くなった背骨の負担を周囲の筋肉で補おうとするために、異常な緊張がかかり筋肉の疲労が生じることによって症状が出るのです。
病状が進行すると腰、背部痛が出現して、外観的にも背中や腰が曲がって円背(*1)の姿勢になっていきます。
そのため、身長も低くなり、X線レントゲン検査でも明確に骨の粗鬆化、背骨の椎体(*2)の変形、あるいは背骨が上下から押しつぶされる圧迫骨折もよく見受けられるようになります。
骨粗鬆症により、高齢者が股の付け根を骨折すると治療に時間がかかり、その間に全身機能が衰弱して、寝たきり状態になるリスクもあります。
軽く転んで尻もちをついただけで圧迫骨折を引き起こします。
圧迫骨折を起こすと、通常であれば激しい痛みを自覚します。
特に高齢者においては痛みの感度が低く、症状に気付きにくいこともあるため注意が必要です。
骨粗鬆症かどうかが判断できるチェック方法として以下のようなものがあります。
自分の背中が曲がっていないかどうかを確認です。 まっすぐな正常な姿勢になり、鼻が胸より前方に突出していて、背中が曲がっている場合には、骨粗鬆症が隠れているかもしれません。 |
円背(えんばい)=脊柱が前に倒れた状態。一般的に猫背と呼ばれている。 椎体(*2)=椎骨の円柱状の部分 |
高齢者に骨粗鬆症が多い理由
高齢になると骨を作るスピードや機能が低下していきます。
そのため、骨密度が減少して骨粗鬆症を発症しやすくなると言われています。
生活習慣が乱れ食事バランスが悪くなると、骨を形成するために必要なカルシウムやビタミン群などの栄養素が十分に摂取できなくなっていきます。
骨粗鬆症は、基本的に男性より女性に多く、65歳以上の女性の約半分が発症していると言われています。
前述のとおり、主に加齢によって引き起こされると同時に女性は特に閉経をきっかけとして骨密度が低下し、骨粗鬆症を発症すると考えられています。
女性の骨密度は、加齢によって腸からのカルシウムの吸収力が悪くなる影響で50歳前後から急速に低下します。
閉経期に骨を破壊する細胞の働きを抑制する女性ホルモンの分泌が低下することも大きな要因となっています。
以上のことは、高齢女性に骨粗鬆症の罹患率が高い理由と言えます。
◆介護が必要になる原因で多いフレイル(高齢による衰弱)とはどんな状態なのか?
骨粗鬆症の治療について
骨粗鬆症の治療には、背中の痛み症状などを認める際に、まずは患者さんの苦痛である痛みの症状を緩和することが基本となります。
特に急性期治療では、以下などが使用されることになります。
- 安静
- 湿布
- 消炎鎮痛剤の内服
- 痛み止めの坐薬
骨粗鬆症における治療おいて、腰、背部痛など痛みがあまりない場合には、骨量の減少を少しでも改善して、骨折を予防することが治療の大原則となります。
骨粗鬆症になった場合に、圧迫骨折などを伴う場合には、骨折の治療が最優先となり、保存的治療で治療ができる際にはギプス固定や体幹コルセットを装着することになります。
また、大腿骨頚部(*1)骨折など手術治療が求められるケースでは、早めに起き上がれること目標として、骨接合術(*2)(ヒップスクリュー)や人工骨頭置換術(*3)などの根治的治療が実施されます。
慢性期になると、自覚症状としては激しい痛みはあまり認められないため、湿布や軟膏などを含む外用薬での治療が中心となります。
その他、腸管からのカルシウム吸収を促進する作用のある活性型ビタミンD剤や、女性ホルモン剤が主に内服薬として活用されています。
注射薬としてはカルシトニン剤(骨吸収(*4)を抑制)が用いられます。
カルシウム成分は基本的に食事内容から摂取するのが通常です。
大量のカルシウム剤を内服した場合、不整脈を誘発したり、吐き気などの胃腸症状に関連した副作用も出現しやすいので一定の注意が必要になります。
大腿骨頚部(*1)=太ももの骨(大腿骨) の脚の付け根に近い部分 骨接合術(*2)=骨を金属などの器具で固定して,折れた部分をくっつける手術 人工骨頭置換術(*3)=大腿骨頭を切除し人工骨頭に置換する手術 骨吸収(*4)=骨が壊されること |
🔻こちらも合わせてご覧ください。
▶︎骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由|副作用や注射治療について解説 | 横浜内科・在宅クリニック
薬を飲みたくない場合の治療は?
薬剤治療に抵抗がある場合には、治療方法の一つとして、ストレッチや筋力強化体操などを始めとする理学療法が挙げられます。
理学的な運動リハビリの中には、全身の血流を良くし、筋肉の緊張を和らげるマイクロ波を利用した温熱療法や、低周波治療を実施することも含まれます。
また、骨粗鬆症を改善するためには、日々の生活習慣を見直すことも大切な要素です。
例えば、喫煙行為は胃腸の働きを抑えてカルシウムが効率よく吸収できないだけでなく、女性ホルモンが減少して骨粗鬆症になりやすいと指摘されています。
そのため、タバコを吸っている場合には禁煙することをお勧めします。
また、アルコールは過度に摂取しすぎると尿と一緒にカルシウム成分が体外に排出されてしまいます。
どうしても飲みたい場合には適量に抑えるようにしましょう。
以上のことから骨粗鬆症は、薬物治療以外に食事療法や運動療法を地道に続けていくことによって、骨折のリスクを減らすことが期待されているのです。
🔻こちらも合わせてご覧ください。
▶︎骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由|副作用や注射治療について解説 | 横浜内科・在宅クリニック
骨粗鬆症にならないためにできる予防法
骨粗鬆症の予防には、日々の食事や運動といった生活習慣の改善が重要なポイントです。
骨粗鬆症は、全身を構成している骨組織が、粗く弱くなり、骨の質量や密度が少なくなる病気です。
発症を予防するためには、毎日の食事からカルシウムを摂取する、運動を行うことによって骨芽細胞(*1)を活性化して骨量の増加や筋力の増強に努めることが重要となります。
食事内容としては、以下の成分の多い食物をバランスよく摂取することが大切です。
- カルシウム
- たんぱく質
- ビタミンD
特にカルシウム成分は、日本では摂取不足の傾向であると指摘されています。
カルシウム成分は、最低1日あたり約600mg以上取り入れることが望ましいと考えられています。
また、マグネシウムを中心にビタミンD、ビタミンK、リン、適量のたんぱく質を摂取することも必要です。
マグネシウムはミネラル成分のひとつであり、体内で多くの酵素の働きを助けています。
特に骨を作る骨芽細胞(*1)に働きかけ、骨の中に入るカルシウム量を調節する役割を有しています。
マグネシウムは、以下のものに多く含まれています。
- 大豆製品
- 海藻
- ナッツ類
- ゴマ類
特に海藻類や大豆製品などは、体に大切なミネラルやビタミンの宝庫と言われています。
ひじきや昆布はカルシウム・マグネシウムともに豊富に含んでいます。
成人では、1日に必要なマグネシウムの摂取推奨量はおよそ270~340mgとされています。
マグネシウムが日常的に不足してしまうとせっかく摂取したカルシウムが骨形成に役立ちません。
普段からカルシウムとあわせてマグネシウムをバランス良くとることが重要な視点となります。
カルシウムだけ摂取していても、マグネシウムが不足していると血中カルシウム濃度が低下してしまいます。
そのため、日常的な食事において、カルシウムとマグネシウムは2対1の比率でバランスよく摂取することがお勧めです。
また、骨を強く発育させるためには、骨に負荷がかかる運動を実践することが重要です。
高齢者でも実施しやすい運動としては、背筋運動や片脚立ちなどが挙げられます。
背筋運動は、うつぶせに寝て、クッションなどをおなかに入れた状態で両手を腰に置き、背筋の力で胸が少し浮く程度に上体を持ち上げて10秒間維持するものです。
加齢に伴う腰椎の骨密度の低下を抑えて、背骨の骨折の発症頻度を減らす効果があります。
片脚立ちは、机や手すりの横で片方の足を5~10cm程度上げた状態にして、反対側の脚で1分間立つエクササイズです。
反対側の足も同様に行うことによって、歩行の安定性が増加して転倒を予防する効果が発揮できます。
また、大腿骨頚部の骨密度が負荷によって上昇します。
骨芽細胞(*1)=骨を作る細胞 |
参考記事:骨粗鬆症で食べてはいけないものとは?骨を強くする食べ物や飲み物を紹介|イノルト整形外科
参考記事:骨粗鬆症の予防対策|食べ物・運動・サプリ・薬などにわけて紹介|イノルト整形外科
骨粗鬆症の検査について
背中や腰が湾曲している高齢者は、ほぼ外見だけで骨粗鬆症であると判断されます。
しかし、確実に診断するためには、レントゲン検査による骨密度の減少や椎体(*1)の変形が認められることが必要です。
補助的な診断ツールとして、他の病気が原因となって起こる骨粗鬆症を調べるためにも血液検査によってカルシウム、リンなどを測定します。
その他、尿検査や内分泌検査などを実施されることもあります。
最近では、骨密度の測定が一般的に用いられ、診断や治療経過を評価するために有用な手段です。
しかし、骨密度の測定値のみでは、測定部位や医療機関によって測定結果の誤差もあるために慎重に結果を判断する必要があります。
もし外出が厳しく診療所や病院に毎回通院できない場合には、2010年7月23日に骨粗鬆症治療薬として承認されたテリパラチド(商品名:フォルテオ皮下注カート600μg、同皮下注キット600μg)を在宅治療のための薬剤として使用できることが可能となりました。
フォルテオ皮下注キット600μg(日本イーライリリー製造販売)は、骨折の危険性が高い骨粗鬆症患者に1日1回20μgを皮下注射することになっています。
その主成分は、遺伝子組換えヒト副甲状腺ホルモン(PTH)のテリパラチドです。
作用の仕組みとしては、骨の元となる細胞への変化を促すと同時に、定期的に投与を繰り返すことで、骨形成を促進し、骨密度を速やかに増加させて骨折するリスクを減少させる効果が期待されています。
椎体(*1)=椎骨の円柱状の部分 |
西春内科在宅クリニックができる対応
骨粗鬆症と診断された場合、通常は内服薬や注射薬による治療を組み合わせ、以下などが処方されることになります。
- 骨吸収(*1)を抑える骨吸収抑制剤
- 骨形成を助ける骨形成促進剤
- 骨合成を補助するビタミンD製剤
西春内科在宅クリニックでは、患者さんに対してどの薬を使用するかを医師が判断して、年齢や病気の程度、骨密度や副作用の有無などを評価しながら状況に応じて適切に治療に当たることができます。
骨粗鬆症では、薬による治療が中心となっており、薬物治療が奏功すれば、骨折するリスクは半減します。
今以上に骨が弱くなってしまわないように飲み薬や注射薬を処方してもらって医師の指示通りに治療を実践することをお勧めします。
骨吸収(*1)=骨が壊されること |
まとめ
骨粗鬆症は、骨の強度が低下して、骨組織が弱まり、骨折しやすくなる病気です。
骨の単位容積当たりの質量が減少した状態で、以下など様々な原因によって骨からカルシウム成分が少なくなり、骨が脆くなるすべての要素を総称した病気と位置付けられています。
- 加齢
- 栄養状態
- 女性ホルモン分泌量
- 内分泌機能
- 遺伝
- 生活習慣
骨粗鬆症は、それ自体では直接的に死に直結する疾患ではありません。
骨粗鬆症に陥った場合には、骨折しても治癒しにくくなってしまうだけでなく、高齢者が寝たきり状態になって認知機能が低下します。
さらに、様々な内科的疾患を合併し、結果的に寿命が短くなってしまうと言われています。
骨粗鬆症は、以下のことに注意して予防することが肝心です。
- 日常的にたんぱく質などバランスの良い食事を取り入れる
- 骨の材料となるカルシウムやカルシウムの吸収を助けるビタミンDの摂取
- 骨を造るのを助けるビタミンK、リン、マグネシウムなどのミネラル成分の摂取
また、心配な症状がある場合や骨粗鬆症の検査・治療でお困りの際には、最寄りのクリニックや診療所を受診して相談するようにしてください。
参考文献
・J-STAGE 理学療法の歩み「理学療法士から広める骨粗鬆症の予防」
・健康長寿ネットHP「骨粗鬆症」
高齢者に多い骨折の部位を解説|治癒期間や手術ができない場合について
高齢になると転びやすくなったり…
骨粗しょう症で骨がもろくなったり…
骨折のリスクが高まってしまいます。
自分や家族がもし実際に骨折してしまったら…?
わからないこともたくさんあるかと思います。
今回は、
- 高齢者に多い骨折の部位
- 保存治療(手術をしない治療)や手術を含めた治療内容
- 治療期間
などを含めつつ、高齢者の骨折について詳しく解説していきます。
高齢者に多い骨折の部位
高齢の方によくみられる骨折の部位は、以下の4か所です。
- 背骨
- 脚の付け根
- 腕の付け根
- 手首
どの骨折も、原因としては転倒が一番多く、打撲と比べて強い痛みがあり動かせないといった症状が特徴です。
それぞれ順番に説明していきます。
1.背骨
背骨の骨折は「圧迫骨折」や「いつの間にか骨折」とも呼ばれています。
体重がかかることによって、症状がなくてもじわじわと起こっていることがあります。
また、中腰の姿勢や重いものを持った時、あるいは尻もちをついただけでも骨折を起こしてしまうことがあります。
手術は必要ないことがほとんどです。
しかし、進行すると腰がどんどん曲がって腰痛が悪化し、姿勢が悪くなることによって持続的に胸焼けを起こしたり、バランス能力が低下したりすることもあります。
2.脚の付け根
大腿骨という太ももの骨が股関節に近い部分で折れてしまう骨折です。
大腿骨の一番上の部分は球形をしており、 そのすぐ下の部分は細くなっています。
そのため、とても折れやすい構造となっています。
股関節は歩く際に体重がかかるので、多くの場合骨折すると痛みがひどくて歩けないといった症状が出ます。
そのまま放置すると、歩けないために筋肉が衰え、寝たきりやそれに伴う誤嚥性肺炎を起こす危険性があります。
3.腕の付け根
上腕骨と呼ばれる腕の骨が肩関節の近くで折れてしまう骨折です。
打撲とは違い、腫れや内出血が強く出たり、痛みがひどく動かすことができないといった症状が出ます。
骨が比較的くっつきやすいため保存治療となる場合が多いのです。
しかし、折れた骨のズレが大きい場合や骨がバラバラになっている場合は手術も考慮されます。
4.手首
前腕の骨は2本あるのですが、そのうち橈骨(とうこつ)という骨が手首の近くで折れてしまう例がよくみられます。
玄関の段差やたたみ・布団の縁などでつまずいて手をついた際に骨折が起きます。
高齢者に多い骨折ですが、40〜50代など比較的若い方でも起こることがあります。
その場合は骨折の原因となり得る骨粗しょう症などの病気がないかどうか調べることもあります。
高齢者の骨折が起こる主な原因
主な原因として、以下の2つが挙げられます。
- 加齢によって骨がもろくなる病気(骨粗しょう症)が進行する
- バランスをとる力が落ちて転びやすくなる
1.骨粗しょう症
骨粗しょう症は日本に約1000万人以上いるとされ、高齢化の進行に伴いさらに増加傾向にあります。
骨は骨形成(新たに作る)と骨吸収(溶かして壊す)を繰り返しています。
骨粗しょう症はこのバランスが崩れることで起こり、骨の形成よりも吸収の方が多くなってしまった結果、骨がスカスカになっていきます。
特に閉経後の女性に多くみられ、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられています。
その他、糖尿病などの病気でも起こることがあるので注意が必要です。
◆【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
2.バランス能力の低下
バランス障害は病気による影響のほかに、加齢による運動機能の低下によって起こる場合があります。
バランス能力とは、立っている・動いているときなどに姿勢を維持する能力のことを指します。
感覚・中枢司令・筋力などの様々な要素によって成り立っています。
脳卒中など脳の病気を起こしてしまったり、筋力が落ちてしまったりすることでバランスをとる力が落ちてしまい、転倒しやすくなってしまうのです。
バランス能力をあげる方法として、日本整形外科学会では片脚立ちやスクワットを推奨しています。
日々の生活に是非取り入れてみてください。
🔻こちらも合わせてご覧ください。
▶︎骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由|副作用や注射治療について解説 | 横浜内科・在宅クリニック
骨折によって起こり得る合併症
1.せん妄
認知症は記憶や判断力が低下する病気ですが、骨折をした際に「せん妄」という状態となり、認知症と同じような症状が出ることがあります。
せん妄の原因として、骨折による痛みや入院などによる環境の変化、手術による身体への負担などが挙げられます。
せん妄では以下など様々な症状が出てきます。
- 注意力や判断力、記憶力が低下
- 眠れなくなる
- 幻覚や妄想を起こす
- 気分が変動する
また、安静期間が長くなることで認知機能が低下する場合もあります。
できるだけ早く普段の生活に戻れるような治療を考える必要があります。
◆【認知症外来監修】高齢者に多いせん妄とは?認知症との違いや症状、原因について解説
2.骨粗しょう症
骨粗しょう症は骨折の原因であるとお伝えしましたが、逆に骨折によって骨粗しょう症が進行することもあります。
一般的に、骨折を起こした高齢の方には元々骨粗しょう症があることが多いです。
しかし、骨折をして体を動かさなくなり、骨に負荷がかからない状態になると、筋肉と同じく骨もどんどんと痩せ衰えてしまい、より骨折を起こしやすくなってしまうのです。
◆【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法はある?
3.筋力低下・寝たきり
特に背骨や脚の付け根の骨折では、安静期間が長くなることによって筋力が落ちてしまい、寝たきりの原因となることがあります。
寝たきりの原因として、筋肉が衰えて歩けなくなることや活動意欲が低下することなどが挙げられます。
腕や手首の骨折であれば歩くことができますが、背骨や脚の付け根の骨折では痛みで動けないため、安静が必要となります。
しかし、ベッドの上での安静は1週間で10~15%も筋力低下が起こると言われています。
さらに高齢者では、2週間のベッド上安静で脚の筋肉が2割も萎縮するとされています。
そのため、痛みの程度に応じた足の筋力訓練が必要です。
また、脚の付け根の骨折では、早めに手術して筋力訓練・歩行訓練を行い、寝たきりにならないようにすることが大切です。
腕や手首の骨折では、片手が使えないのは不自由ですが、寝たきりにならないように普段通りの生活を心がけましょう。
◆【加齢による筋肉量の低下】サルコペニアとは?症状やフレイルとの違い、診断基準について
◆介護が必要になる原因で多いフレイル(高齢による衰弱)とはどんな状態なのか?
高齢者の骨折の手術・治療について
骨折における治療は部位ごとに違うので、先ほど説明した4つの部位ごとに解説します。
1.背骨
背骨の骨折の場合、ほとんどは保存治療です。
保存治療では腰のバンドや硬いコルセットなどを使用し、痛みに応じて安静を保ちます。
自宅での療養で構いませんが、動けないほどの痛みがある場合は入院も考慮されます。
手術治療は、数週間経っても痛みがひどい場合や、骨折によって脊髄という神経が圧迫されている場合に行われます。
方法は色々あり、骨折した部分に専用のセメントを入れる方法や、ネジや金属の棒で骨折している部分を固定する方法などがあります。
いずれの場合も入院した時の期間はおよそ2〜4週間程度です。
2.脚の付け根
基本的には手術治療となります。
保存治療では骨がつくまで数ヵ月の間ベッド上での安静が必要となります。
また、その間に筋力低下や褥瘡(床ずれ)、肺炎などの合併症が起こりやすくなってしまいます。
手術は骨折した部位によってそれぞれ方法があります。
ねじや金属の板、棒などで固定する方法と、人工物に入れ替える方法があります。
どの手術の場合でも、早期から筋力訓練を開始して寝たきりにならないようにすることを目標にします。
入院期間は大体2〜4週間程度です。
持病などで手術ができない場合は保存治療が選ばれることもあります。
3.腕の付け根
骨のズレが少ない場合は、保存治療が選ばれることがほとんどです。
保存治療ではまず三角布などで腕を固定し、肩関節を安定させるためにバストバンドを使用して腕を体に固定します。
痛みや腫れが少なくなってくる約1週間後から症状に応じて動かし始め、3週間程度は固定を続けます。
骨が大きくずれていてくっつきにくい場合や、肩が上がらなくなってしまうようなバラバラな骨折の場合は手術による治療を考えます。
手術は以下など様々です。
- ワイヤーなどを用いる方法
- 金属の棒やプレートで固定する方法
- 人工物に置き換える方法
入院期間はおおむね2週間程度です。
4.手首
手首の骨折は、ズレが少なければギプスを巻いて治します。
ズレが大きければ、麻酔をして痛みを取ってからずれた骨を元に戻す整復操作を行った上で、ギプスで固定します。
ズレが戻らないときや関節の軟骨に骨折があるときは手術となります。
手術はワイヤーで固定する方法やプレートで固定する方法などがあります。
入院期間は、ブロック麻酔を用いて日帰りで行う場合と、全身麻酔で手術をして数日〜1-2週間程度入院する場合があります。
高齢者の骨折で手術ができない場合の治療
残念ながら手術ができない場合があるのは事実です。
しかし、絶対に手術をしてはいけないと決めるのは難しく、患者さんの状態をみながら担当医をはじめとした複数の医師、患者さん、ご家族で相談して決めることが多いです。
手術は保存治療を選んだ時と比べてメリットが大きいと判断したときに勧められますが。
全身の状態が悪いときには手術が勧められない場合があります。
手術をした方がいい場合とは、骨のズレが大きく保存治療では機能が落ちる場合や、手術をしなければ寝たきりとなってしまうリスクがある場合などです。
逆に、手術ができない場合とは、麻酔や手術に身体が耐えられず、より状態が悪くなってしまう可能性がある場合などです。
最近では、麻酔技術の進歩により全身麻酔のほかに脊髄麻酔やブロック麻酔などで手術を行うことが可能になっています。
しかし、麻酔の合併症としてアレルギー反応や肺炎、脳卒中・心筋梗塞などといった血管系の病気の発症が少なからずあります。
また、手術そのものが身体を傷付ける行為であるため、出血や感染症などのリスクがあります。
加えて、麻酔や手術で身体に負担がかかった結果、持病が悪化してしまうこともあります。
患者さんの心臓や肝臓、腎臓の機能、持病などを踏まえながら、手術のリスクとメリットを考えたうえで患者さんとそのご家族で決定していきます。
骨折が治るまではおよそ3〜6ヶ月程度とされています。
保険診療では手術後150日(約5ヶ月)までのリハビリが認められています。
骨折では大体3週間で仮骨という弱い骨ができて、3ヶ月程度かかって硬い骨になっていきます。
その間もしっかり動かせるように手術を行います。
どの程度動かしてよいか、負担をかけてよいかは骨折した部分と手術の内容について決まってきます。
そのため、治るまでの期間やリハビリの内容については担当医とよく相談するようにしましょう。
ほとんどの場合、手術翌日から動かしていき、数週間程度入院しながらリハビリを行い、リハビリのやり方を覚えていきます。
その後はリハビリ専門の病院や施設、自宅へと戻り、ご自身でリハビリを続けていくという方が多いです。
リハビリにはやはり痛みを伴いますので、この間に鎮痛薬などを使って痛みをとりながらリハビリを行いましょう。
🔻こちらも合わせてご覧ください。
▶︎骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由|副作用や注射治療について解説 | 横浜内科・在宅クリニック
高齢者の骨折を防ぐのに効果的な日常生活の過ごし方
骨折を予防するために効果的なものは以下のような方法があります。
- カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、リン、マグネシウム、適量のタンパク質などをとる
- 運動、日光浴をする
- 禁煙し、アルコールは控えめにする
それぞれ説明します。
1.栄養補給
骨はカルシウムやリン、マグネシウムなどでできているため、不足しないように十分摂取することが重要です。
ビタミンDはカルシウムの吸収を良くして骨を強くする作用があり、ビタミンKも骨を強くするのに必要な栄養素です。
骨を強くするには筋肉もつけることが重要なので、筋肉をつけるために適量のタンパク質を摂りましょう。
2.運動・日光浴
宇宙飛行士が宇宙に行った後に骨がスカスカになってしまうように、骨を強くするためには運動などで骨に負荷をかける必要があります。
また、日光浴をすることで身体の中でビタミンDが生成されるので、一日に数十分程度は日光にあたるようにしましょう。
3.禁煙・節酒
タバコやアルコールはそれ自体が骨を弱くしてしまいます。
また、必要な栄養素が不足してしまうため、骨にとっていいことはありません。
楽しむ程度であればいいのですが、可能な限り控えるようにしましょう。
参考記事:骨粗鬆症の初期症状は気づきにくい?骨粗鬆症の原因も解説|イノルト整形外科
西春内科在宅クリニックができる対応
ご自宅でできる対応として痛みのコントロールがあります。
手術後も痛みが続く場合が多く、患部の痛みに対しては痛み止めが効果があります。
また、傷口からの感染がないかどうか確認することも必要です。
骨粗しょう症がある場合は骨粗しょう症のお薬も必要になってきます。
このような症状に対し、西春内科在宅クリニックでは診察や症状に応じた薬の処方をすることができます。
まとめ
今回は高齢者に多い骨折について骨折の多い部位や、治療方法、治療期間などについて解説しました。
高齢者の骨折は手術だけでなく保存治療という選択肢もあります。
また骨折の原因となる骨粗しょう症の治療も必要となってきます。
今回の記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。
お困りの症状がある場合にはぜひご相談ください。
参考文献(accessed on January 23rd, 2023)
・日本整形外科学会「骨粗鬆症」
・渡部欣忍「大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折 ~高齢者の脚の付け根の骨折~”」日本骨折治療学会
・井上尚美「上腕骨近位端骨折」日本骨折治療学会
・日本整形外科学会「橈骨遠位端骨折」
ぎっくり腰になるかもしれない予兆|病院へ行くべき痛みレベルを解説
2019年の厚生労働省の調査では
病院を受診する理由として”腰痛”は男性で第一位、女性では肩こりに次ぐ第二位となっており、悩んでいる方がとても多い症状です。
中でも「ぎっくり腰」は突然起こり、動くこともできないほどの痛みがあることもあります。
今回は、ぎっくり腰の原因や症状、対処法などについて解説していきます。
急な腰痛で困っている方はぜひ参考にしてみてください。
ぎっくり腰の原因とは
ぎっくり腰とは急に起こった強い腰痛を指す一般的に用いられている名称であり、病名や診断名ではありません。
そのため、ぎっくり腰の痛みの原因は様々であり、腰の中の関節の捻挫や軟骨である椎間板の損傷、腰を支える筋肉や靭帯の損傷などが考えられます。
しかし、足に痛みやしびれがあったり、力が入らないなどの症状があったりするときには椎間板ヘルニアや中年以上では腰部脊柱管狭窄症などの病気の可能性もあります。
さらに、がんが背骨に転移して痛みを生じたり、ばい菌による背骨や軟骨(椎間板)の化膿などの重大な原因が潜んでいることも時にあります。
そのため、腰痛がひどいときは整形外科を受診して診断を受けることが大切です。
関連記事:高齢者に多い圧迫骨折の自宅療養のポイントや治療について解説
ぎっくり腰の症状と痛みレベル
ぎっくり腰の症状は何か物を持ち上げようとしたときや、腰をねじるなどの動作をしたときなどに起こることが多いです。
しかし、朝起きた直後や何かしていなくても起こることもあります。
ここから、ぎっくり腰の症状と痛みのレベルについて解説していきます。
軽症の場合
軽度のぎっくり腰では、動作の時に少し痛みがある程度ですので、慎重に過ごせばいつもと同じような日常生活を送れます。
通常は1〜2週間程度で自然によくなることが多いのです。
しかし、腰痛の他に足の痛みやしびれなどの症状がある場合や、痛みが長引いているときには病院を受診することがお勧めです。
中程度の場合
痛みのレベルが中程度の時には日常生活が大変な程度の腰痛がみられるので、慎重に日常生活を送ることが必要です。
重度の場合
重度の腰痛では、痛みがひどく、立ったり座ったりする動作や、歩行も困難な状態になります。
痛みがひどい場合には動くのも大変ですが、診断をつけるためにも早めに整形外科を受診することが必要です。
関連記事:高齢者の足のむくみの原因とは|放っておくと危険な理由も解説
筋膜性腰痛とぎっくり腰の違い
筋膜性腰痛とは、筋肉を覆っている筋膜がなんらかの理由で損傷したり炎症を起こすことで痛みを生じる腰痛のことを言います。
ぎっくり腰が腰痛全般を言うので、ぎっくり腰の方がより広い概念で、その中に筋膜性腰痛が含まれることとなります。
腰痛の原因を調べた近年の報告によれば、腰痛の原因の内訳は
- 背骨の関節(椎間関節)由来が22%
- 筋膜性腰痛が18%
- 椎間板による痛みが13%
- 脊柱管狭窄が11%
- 椎間板ヘルニアが7%
と言われています。
そのため、筋膜性腰痛は腰痛の原因の中で比較的多いと考えられます。
関連記事:高齢者に多い骨折の部位を解説|治癒期間や手術ができない場合について
ぎっくり腰の前兆・予兆チェックリスト
ぎっくり腰は突然起こることが多いのですが、前兆がある場合もあります。
ここからぎっくり腰の前兆、予兆について解説していきます。
✅寝返りでの腰の痛み ✅仰向けで寝ていると腰が痛む ✅起き上がる時、立ち上がる時に腰が痛む ✅前屈みで腰が痛む ✅座っていると腰が痛む ✅歩いた時や階段で腰が痛む ✅咳、くしゃみで腰に響く |
症状が悪化する前に早めに整形外科や整骨院で治療を受けることがお勧めです。
関連記事:【加齢による筋肉量の低下】サルコペニアとは?症状やフレイルとの違い、診断基準について
ぎっくり腰になったときの対処法やツボ
ぎっくり腰になった時には痛みで動けなくなってしまい慌ててしまうことと思います。
まずは症状をしっかり確認して、すぐに病院を受診した方がよい症状があるか確認しましょう。
また腰痛の対処法とツボについても解説するので参考にしてください。
ぎっくり腰になった時に確認することとして、緊急性のある腰痛の可能性を除外することが必要です。
緊急性のある腰痛は下記のようなものです。
✅骨折 ✅細菌の感染 ✅大動脈解離など血管の病気 |
これらの病気の可能性がある症状は下記となっています。
✅高齢(もしくは未成年) ✅安静時の痛み ✅胸部の痛みを伴う、突然の激痛 ✅癌の治療をしている、ステロイドなどの免疫を抑制する治療を行っている ✅最近体重が減少している ✅発熱 ✅足の痺れ、麻痺などの神経の症状がある ✅排尿の問題(尿がでないなど)がある |
上記のような症状があるときにはただのぎっくり腰ではない可能性が高いので早めに病院を受診するようにしましょう。
次にぎっくり腰の対処法について解説します。
参考記事:ぎっくり腰になる原因とは?症状のチェック項目と合わせて解説!|イノルト整形外科
安静
急性期の痛くて動けないようなときは安静を保ち、動けるようになったら無理をしない範囲で動きましょう。
多少痛くても、痛みの範囲で動かすようにした方が治りは早いです。
お薬での治療
病院を受診すると、痛み止めのお薬が処方されます。
飲み薬、坐薬、湿布などの種類があり、それぞれを組み合わせて炎症を抑えることで痛みを和らげます。
リハビリ、エクササイズ、マッサージ
ストレッチやヨガ、ピラティスなどのエクササイズは運動療法と言われており、腰痛自体の治療や再発予防に有効です。
また、マッサージも痛みを和らげることが期待できます。
効果的なツボは腰を押してみて痛みがある部分です。
入浴後やベッドに入る前などに、心地よい程度の強さで押してあげることで痛みの改善に効果があります。
関連記事:【高齢者に多い骨折】骨粗しょう症とは?薬を飲みたくない人向けの予防法や治療法は?
ぎっくり腰で動けないときはどうすればいい?
ぎっくり腰になってしまって動けないときは、まずは慌てずに症状を確認することが大切です。
先述した通り突然の激痛や発熱、足の痺れ、麻痺、尿がでないなどの症状がなければ緊急性は低いと考えられます。
そのため、無理をせずに安静にして、腰に負担がかからない楽な姿勢を取り、患部を冷やすようにしましょう。
また、痛み止めの薬を使って、痛みの範囲で腰のストレッチを行います。
痛みがよくなってきて動けるようになってきたら早めに病院を受診して診断をつけてもらい、治療を開始するようにしましょう。
病院やクリニックでの処方について
病院やクリニックを受診した際には痛み止めのお薬が処方されます。
痛み止めは飲み薬、坐薬、湿布、注射などの種類があります。
ここから、お薬の成分について解説していきます。
非ステロイド性抗炎症薬
ロキソニンやイブプロフェン、アスピピリンといった薬剤で、炎症を抑えて痛みを和らげます。
腰痛に対して第一選択薬で市販薬も多く販売されています。
副作用として胃腸障害や腎機能障害、喘息などが起こり得ます。
アセトアミノフェン
カロナールという薬剤名で販売されています。
こちらも腰痛に対して第一選択薬で、子供や高齢者でも安全に使用でき、非ステロイド性抗炎症薬よりも副作用が少ないというメリットがあります。
筋弛緩薬
筋弛緩薬とは、筋肉の緊張状態を緩和させる薬のことです。
ぎっくり腰では、筋肉の緊張が腰痛を悪化させていることがあります。
そのため筋肉を弛緩させることで、痛みを和らげる効果が期待できます。
オピオイド
オピオイドとは「医療用麻薬」のことです。
非ステロイド性抗炎症薬やアセトアミノフェンで効果が少ない時には作用が弱い弱オピオイドが処方されることがあります。
吐き気や便秘などの副作用がありますが、吐き気止めや便秘薬を使用することで問題なく使える方がほとんどです。
西春内科在宅クリニックができる対応
ぎっくり腰である急性腰痛症は発症した直後は激痛で動くことができませんが、多くの方は安静とお薬で自然によくなります。
しかし、腰痛をしっかり直すためにも整形外科の受診が望ましいです。
痛みがひどい場合は別の病気の可能性もあります。
西春内科在宅クリニックでは、レントゲン検査が可能です。
丁寧な問診と身体検査を行い、必要に応じてレントゲン検査を行います。
症状を和らげるよう、鎮痛剤の処方も行えますのでまずはお気軽にご相談ください。
また、必要に応じて近隣の病院へ紹介することが可能です。
まとめ
ぎっくり腰とは急に起こった強い腰痛を指す名称です。
痛みの原因は様々であり、腰の中の関節の捻挫や軟骨である椎間板の損傷、腰を支える筋肉や靭帯の損傷などが考えられています。
痛みが強いときには安静、お薬での治療を行い、痛みが和らいできたら病院を受診して診断をつけてもらうようにしましょう。
また、痛みの範囲内でストレッチ、エクササイズを行うことが腰痛の再発予防にお勧めです。
お困りの症状がありましたらいつでもご相談ください。
参考文献
‣日本整形外科学会.ぎっくり腰
‣ぎっくり腰を即効で治す方法4選!痛みレベル別の症状と正しい治し方
‣筋膜性腰痛とぎっくり腰の違いってなに?
‣【ギックリ腰の前兆】チェックする方法
‣腰痛のツボを知って、痛みの軽減や予防をしよう
更年期の関節痛とリウマチの違いとは?起床時や冬の症状に注目
更年期における関節の痛みは、多くの方が経験する一般的な症状です。
しかし、この痛みが単なる更年期の影響なのか、それともリウマチなどの他の疾患が原因なのかを見分けることは非常に重要です。
本記事では、更年期の関節痛とリウマチの違い、特に起床時や冬の寒い時期に現れる症状に注目し、それぞれの特徴と対処法について解説します。
更年期に関節痛が生じるのはなぜ?
更年期は、特に女性において重要な生理的変化の時期です。
この時期には、ホルモンバランスの大きな変動が生じ、それが様々な身体的不調を引き起こす原因となります。
特に影響を受けるのはエストロゲンというホルモンで、この減少が関節痛の一因になり得ます。
また、更年期に起こる関節痛は、リウマチの初期症状と似ていることがあります。
リウマチは自己免疫疾患で、関節の慢性的な炎症を引き起こします。
そのため、更年期に関節痛を経験する場合、リウマチの可能性も考慮する必要があります。
関連記事:関節リウマチのしてはいけない10項目とは|リウマチになりやすい性格がある?
更年期の関節痛はリウマチかも?ホルモンバランスの乱れによる関節痛とリウマチの特徴の違い
更年期の関節痛とリウマチは、症状が似ているため、しばしば混同されがちです。
しかし、両者は原因と特徴が異なります。
これを理解するために、更年期のホルモンバランスの乱れによる関節痛とリウマチの症状を分けて考えてみましょう。
ホルモンバランスの乱れによる関節痛
原因
更年期のエストロゲン減少が主な原因です。
エストロゲンは関節の潤滑と健康を保つ役割を果たしているため、その減少は関節の痛みやこわばりに直結します。
症状の特徴
関節痛は一般的に軽度から中等度で、一時的なものが多いです。
手、膝、肩、腰など、複数の関節に痛みが現れることがありますが、痛みは絶えず同じ場所にあるわけではありません。
時間帯や環境の影響
症状は特定の時間帯に限定されず、日中にも感じることがあります。
気温や季節による影響は比較的少ないです。
リウマチ
原因
リウマチは自己免疫疾患で、体の免疫システムが誤って関節を攻撃し、炎症を引き起こします。
症状の特徴
リウマチによる関節痛は、一般的に慢性的で、関節の腫れや発赤を伴うことがあります。
痛みはしばしば対称性に現れ、同じ関節が両側に影響を受けます。
時間帯や環境の影響
症状は特に朝、起床時に顕著で、関節のこわばりが数時間続くことがあります。
寒い季節や湿度が高い環境では症状が悪化する傾向があります。
関連記事:自律神経失調症のセルフチェック26項目!こんな兆候は危険かも?
参考記事:関節リウマチかもしれない初期症状や変形性関節症との違いを解説!|イノルト整形外科
リウマチかも?と思ったら
リウマチは、早期発見と適切な治療が重要な慢性的な自己免疫疾患です。
関節に痛みや腫れ、こわばりを感じた際、リウマチの可能性を考えることが重要になります。
以下に、リウマチを疑うべき状況とその後のステップを詳しく説明します。
リウマチを疑うべき症状
関節の痛みと腫れ
特に朝に強く感じる関節の痛みがあります。
リウマチはしばしば手の指、手首、足の関節に影響を及ぼします。
症状の持続性
一時的な関節痛と異なり、リウマチの症状は数週間から数ヶ月にわたって持続することが一般的です。
朝のこわばり
特に朝に強く感じる関節の痛みやこわばりが特徴です。
一般的には起きて30分で症状が落ち着きます。
微熱・倦怠感・食欲不振
37℃台の微熱や体のだるさ、食欲がわかないなどの症状がある場合があります。
対処法
リウマチを疑うべき症状が出た場合、早期に病院の受診をおすすめします。
発症から1〜2年の間に正しい治療を行うことで完治する率は高くなります。
治療としては、薬物療法や、リハビリテーション、手術療法などがあり、日常で出来るセルフケアと並行して治療を行っていきます。
関連記事:高齢者だけじゃない!40代からでもなる若年性認知症とは?なりやすい人や原因について
更年期の関節痛は早めに診てもらおう
更年期による関節痛を放置すると、場合によってはリウマチによる関節の破壊が進行することがあります。
早期発見・早期治療が非常に重要であり、痛みや不調を感じたら迅速に医師の診断を受けるべきです。
関連記事:乳がんのしこりは痛みがない?なりやすい人の特徴や検査についても
更年期の関節痛の検査・治療なら西春内科・在宅クリニックへ
更年期の関節痛に対して、西春内科・在宅クリニックでは患者一人ひとりの症状に合わせた治療プランを立て、適切なケアを行っています。
また、西春内科・在宅クリニックではCT機器を導入しております。
常勤医に読影専門医(レントゲン・CT画像を読影するプロ)がおり、総合病院と遜色ない画像診断力があります。
CT検査で進行度の評価をすることが可能です。
専門的な治療を必要とする場合は、連携している病院等へご紹介させて頂きます。
名古屋市で急な往診は西春内科・在宅クリニックをご利用ください
当クリニックでは、夜間休日の急な病気やケガの際に、ご自宅で診察が出来るよう【家来るドクター】と連携して往診サービスを提供しています。
急な発熱や、風邪諸症状、皮膚のかゆみやかぶれ、火傷や軽い捻挫など幅広い症状に対応しています。
往診だけでなく、電話での医療相談も行っていますので、こんな症状の時どうしたらいいの?というお悩みなどお気軽にご相談ください。
まとめ
今回は、更年期の関節痛とリウマチの違いについて解説しました。
更年期の関節痛とリウマチは、似ているようで異なる症状を示します。
特に起床時や冬の寒い時期に痛みが強まる場合は、リウマチの可能性も考慮し、早めの診断と治療が重要です。
寒さが続いておりますが関節痛でお悩みの方はお気軽にご相談下さい。
本記事が更年期の関節痛とリマウチについての理解を深め、適切な対応をするための一助をなれば幸いです。
参考文献
時事メディカル|更年期の手指関節痛 リウマチとの違いは?
中外製薬|リウマチの症状とは~あれ?もしかしてリウマチ?~
関節リウマチのしてはいけない10項目とは|リウマチになりやすい性格がある?
関節リウマチとは、免疫反応の異常で関節に炎症が起こってしまい、関節の痛みや腫れが出る病気です。
症状が進行すると、関節が変形して歩きにくい・関節が動かなくなるなどといった強い症状が出てしまいます。
今回は、関節リウマチの原因や初期症状、治療などについて詳しく解説していきます。
関節リウマチになる原因
関節リウマチは、自己免疫の異常によって滑膜(かつまく)(*1)を攻撃してしまう病気です。
なぜ自己免疫の異常が起こるかについてはまだはっきりとわかっていない部分があります。
しかし、遺伝因子と環境因子が関与していると考えられています。
遺伝因子も一つだけではなく、関節リウマチの発症に関わる遺伝子はすでに数十個ほど見つかっています。
しかも、それらの遺伝子を持っているからといって必ずしも関節リウマチになるというわけではありません。
環境因子としては、以下などが知られています。
- 喫煙
- 感染症
- 出産
- 手術
- ストレス
滑膜(*1)=関節を内側から覆っている膜 |
参考記事:関節リウマチの原因はストレス?なりやすい性格がある?|イノルト整形外科
関節リウマチのしてはいけない10項目とは
関節リウマチのしてはいけない10項目は下記になります。
- 激しい運動
- 関節を冷やす
- 和式トイレ
- 高い枕
- 肥満
- 重い物を持つ
- 正座
- 長時間同じ姿勢をとる
- 喫煙
- ストレスを溜める
関節の痛みが出ている時に激しい運動をすると痛みが強くなります。
発熱をしている時や強い痛みがある時は激しい運動は避けて安静にしましょう。
発熱や強い痛みがない状態の時は、適度な運動を心がけましょう。
水中では膝に過剰な負荷がかからないため、水中運動はおすすめです。
リウマチによる炎症が強い時期でなければ、関節を定期的に動かして拘縮(凝り固まること)を予防しましょう。
ゆっくり手足の関節を曲げ伸ばししたり、関節を支えるふとももの筋肉を鍛えたりすると効果的です。
関節を冷やすとリウマチの症状を悪化させる可能性があります。
痛みがある場所は外気に触れないように衣服やサポーターなどで覆いましょう。
運動前に関節を温めてから運動をすると効果的です。
和式トイレは膝を強く曲げなくてはいけないので、過剰な負荷となります。
洋式トイレに変更するなど工夫しましょう。
関節リウマチは首の靭帯にも影響します。
症状が進むと、軽い力でも首の骨の脱臼(環軸椎亜脱臼)を起こしかねません。
環軸椎亜脱臼は首と頭の境目の部分の脱臼で、手足のしびれ、動かしにくい、呼吸がしにくい、めまい、ふらつきなどの重い症状を起こすこともあります。
首を無理に曲げたり伸ばしたりするような枕は避けて、タオルなどで調節しましょう。
肥満は手足の指など末端に負担がかかるため、関節リウマチの場合は関節破壊が進む一因となりえます。
単純に健康を考慮する上でも肥満は様々なリスクがあるため、適正体重の維持に努めましょう。
重い物を持つと手足の指や膝といった、リウマチ性関節炎の好発部位に負担がかかります。
事情を話して他の人に依頼するか、専用の道具を使うようにしましょう。
正座は下肢の関節に大きな負担がかかる姿勢です。
もし正座しなければならない状況が訪れたら、事情を説明して免除してもらうようにすると良いでしょう。
長時間同じ姿勢をとると、場合によっては同じ部位に負担がかかることに繋がります。
そのため、意識できるのであればこまめに姿勢を変えるか、負担の少ない姿勢を心がけましょう。
喫煙も関節リウマチの悪化因子の一つとされています。
他の健康リスクもあるため、特に関節リウマチの場合は禁煙するのが望ましいです。
ストレスを溜めることも関節リウマチの悪化因子とされています。
関節リウマチになりやすい性格がある?
免疫疾患であるため性格による罹患のしやすさというのは特にありません。ただし、神経症気質の人は初期症状にいち早く気づいたり、罹患後に患部をいじって増悪させてしまうケースがあることから、こうした性格の人がかかりやすいといわれることもあります。
遺伝が関連しているため、親や兄弟で関節リウマチの人がいる場合、そうでない人と比べると4倍も関節リウマチになりやすいことがわかっています。
男女比はおよそ1:3であり、女性に多い病気で40〜50歳前後から症状が出てくることが多くあります。最近ではさらに高齢での発症が増えてきています。
関節リウマチの主な症状
関節リウマチの初期は、手首や足首の関節が左右両方とも腫れたりします。
特に朝、からだを動かし始める時にこわばりを感じることが多いです。
病状が進行すると、膝や股関節などの大きい関節に炎症が起こります。
そして、水がたまったりして動かしにくくなり強い痛みが出ることがあります。
また、関節の痛みだけではなく、微熱やだるさ、貧血を起こす場合もあるので、注意が必要です。
関節リウマチは、以下など多くの合併症が起こりやすくなることがわかっています。
- ドライアイや強膜炎(白目の炎症)などの眼の症状
- ドライマウスやシェーグレン症候群(涙腺や唾液腺に炎症を起こす病気)などの他の自己免疫性疾
- 首の骨の脱臼(環軸椎亜脱臼)
- 間質性肺炎や心外膜炎などの肺・心臓の病気
- アミロイドーシス(アミロイドという異常なタンパクが全身の臓器に沈着して機能障害を起こす病気)
関連記事:骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由|副作用や注射治療について解説 | 横浜内科・在宅クリニック
関節リウマチの診断基準
関節リウマチは、症状が進行してしまう前に早期診断することが重要です。
関節の腫れが1ヶ所以上あり、以下のような他の病気よりも関節リウマチを疑うような場合に、血液検査を行い数値化して診断します。
関節の腫れや痛みを起こしうる他の病気
- 変形性関節症
- 痛風
- 感染性関節炎
- 乾癬性関節炎
- その他の自己免疫性疾患・膠原病
一つの症状や血液検査項目から関節リウマチと診断することは難しく、全ての情報を総合的に判断する必要があります。
血液検査では、炎症反応(CRP・血沈)やリウマトイド因子、抗CCP抗体などを確認します。
関節リウマチの治療について
関節リウマチの治療は、以下の薬を中心として使用されます。
- 関節で起こっている免疫異常を抑える抗リウマチ薬
- 痛みや炎症を軽減するステロイド
- 痛み止めとして消炎鎮痛薬
抗リウマチ薬は、関節リウマチで起こる異常な炎症を抑える薬剤の総称です。
Disease modifying anti rheumatic drug; DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)とも呼ばれます。
関節リウマチで最もよく用いられるのはメトトレキサートなどの免疫抑制薬や免疫調節剤です。
新薬として生物学的製剤とJAK阻害薬という分子標的薬が抗リウマチ薬に含まれます。
薬物治療を行っても関節の破壊や拘縮が強い場合は、人工関節置換術などの手術療法を行うこともあります。
関連記事:骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由|副作用や注射治療について解説 | 横浜内科・在宅クリニック
関節リウマチの予防・改善策
関節リウマチの発症は遺伝要因と環境要因が複雑に関わっていることはわかっています。
しかし、未だに詳しいメカニズムはわかっていない状態です。
残念ながら関節リウマチで確立された予防法はありません。
環境要因として以下があります。
- 喫煙
- 感染症
- 出産
- 手術
- ストレス
また、疲れや体調不良など、免疫力が低下した時に発症しやすいと言われています。
食事のバランスや睡眠をしっかりとる、適度に運動するなどの生活習慣を整えて病気を予防しましょう。
ヨーグルトを食べると関節リウマチの予防になるという噂がありますが、こちらは残念ながら科学的根拠はありません。
関節リウマチの患者さんでは乳酸菌などの腸内細菌が変化していることがわかっています。
しかし、必ずしもヨーグルトで予防・治療できるというわけではありません。
関節リウマチを発症した場合には、早期診断と治療がとても大切です。
関節リウマチを疑った場合は、自己判断やセルフケアだけではなく病院を受診しましょう。
関節リウマチはリウマチ内科や整形外科、総合内科で診察が可能です。
関連記事:痛風の症状の特徴や起こりやすい場所とは?原因となる食べ物についても
西春内科在宅クリニックができる対応
関節リウマチの症状が進行すると、痛みが強く通院が難しいこともあります。
また、冬場は寒さで症状が悪化してしまうこともあります。
そのような場合、西春内科在宅クリニックでは在宅診療で関節リウマチの診察や治療、薬の処方などを受けることができます。
まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
今回は関節リウマチの原因や初期症状、治療などについて解説しました。
関節リウマチは一度の治療で症状がすっきり治ってしまうものではありません。
発症後長く付き合っていかなくてはならない疾患です。
最近では研究も進み、関節リウマチを早くから治療することで痛みや関節の重い障害を防ぐことができるようになってきました。
そのためには、早期に関節リウマチを発見・治療することが大切です。
記事を読んでいただき、「もしかして関節リウマチかも?」と思ったり、関節の症状があったりする場合は、ぜひ病院を受診くださいね。
参考文献
日本リウマチ学会「メトトレキサートを服用する患者さんへ 第3版」のお知らせ
関節リウマチの合併症・副作用対策
日本整形外科学会「関節リウマチ」
関節リウマチの疫学・診断・診療ガイドライン
健康長寿ネット「関節リウマチの原因」
日本脊髄外科学会「頭蓋頚椎移行部病変(環軸椎亜脱臼など)」
前田悠一ら.関節リウマチ患者における腸内細菌叢の異常.日本臨床免疫会会誌Vol39.No1.